65 当て馬(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
家に帰ったら、ちょうど洗濯物を取り込んでいるシアが庭に出ていた。
すごくほっとする。
私達に気づいて声を掛けてくれた。
「おかえりなさい!?
早かったって……、ロバートさん!?
えっ! お久しぶりです!!」
「ああ、……シアさん、お久しぶりです!
マイネではどうも!
お元気そうで!」
シアが微笑みながら『あれ?』という表情で私を見た。
「ミコトさんに名前をお聞きしたんですよ。
みなさん、本来の自分の名に近いものにしたと」
ロバートさんの説明にシアはにっこりして言った。
「はい、そうなんです!」
シアとロバートさんがニコニコ話し始めたので、ホークが面白くなさそうな……。
おや、ライカンもちょっと戸惑っているような……。
シアは素敵だから、もてるんだよ! 自覚せえや!
あ……、私もクルトに絡んでくるミカエラを見てもやもやしたもんね……。
それがクルト、今のエドガーへの自分の気持ちを自覚した……出来事だったっけ。
ドアが開いて「あー!! ロバートさんだっけ! ボアに追いかけられてた!」とユミエラも出てきた。
「あ! ……ユミエラさん!? お久しぶりです!」
ユミエラは目を丸くして、シアを見て『あ? 名前?』と口パクして私を指差すような素振りをした。
『そうだよ! 教えた!』という意味でウインクして親指を立てて身振りで応えた。
結局、ロバートさんを家に招いて、夕食を一緒にってことになった。でも、ロバートさんはちゃんと収納魔法からチーズとかパンとか出してくれたよ!
そして、ホークより一足早く帰っていった。商会の方で明日の朝一番の仕事があるそう。
商会の建物の中に泊まっていると聞いたので、ホークもギルドの方のアパートだし、一緒に帰ったらってなったんだけど、帰らなかった。
なんだ?
私とエドガーは大通りまでロバートさんを送って戻ってくると……、あれ?
なんかシアが困っているような。
「ただいま……、なに? どうしたの!?」
「ミコト……、その……」
シアの小さな声。
ホークがやけにきりっとした表情で言った。
「シアに、結婚を申し込んだ!!」
「また!?」
私が言うとユミエラが笑った。
「そうよね!
前にもミコトに『嫁にならないか』とか言ってたもんね!」
「そうだよ。その時にシアとユミエラは大人なきれいなお姉さんだから……とかごにょごにょ言ってたじゃん!」
ホークはちょっと動揺したけど、何とか持ち直して、またきりっとすると宣言する様に言った。
「俺だって!
だいぶ大人になったし、冒険者としても認められてきた!
シアはきれいでやさしくて……。
きっといい奥さんになる!!
俺と結婚して下さい!!」
「えっと、その……」
シアが困ってる。
「それとも……、あのロバートの方が好きなのか!?」
なんでロバートさん!?
シアもびっくり顔をしている。
「俺にはわかる。
ロバートはシアに好意を持っている。
もう少し親しくなったら……『結婚を前提に』とか言って来る奴だ!!」
うーん、なかなか。確かに想像できるな。
「ごめんなさいっ!
私……、誰とも結婚する気はないの!」
シアが涙目で微笑んだ。
「ホーク、ごめんね」
ホークは動かない。顔だけ顰めた。
「……誰とも?」
「うん、誰とも。
結婚自体、考えられないし、することはないと……思う」
「なんで!?」
「私は……」
シアが震える声で言いかけると、ライカンが大股で歩み寄り、シアを無言で抱きしめた。
シアはそのまま素直に抱きしめられてる。
「えっ……!?」
戸惑うホーク。
私とエドガーはホークの肩にふたりで手を掛けると「「送るよ」」と言った。
ユミエラも一足遅れて慌てたようについてきた。
ホークが外の道を歩きながらボー然としていたが、急に叫んだ。
「俺……、また当て馬っすか!?」
あ?
私の時はエドガーが私に告白するってスイッチ入っちゃったんだっけ?
シアの時はライカンの……。
「まあ、そうかもな」
エドガーが苦笑して。
「うおー!
なんだよ!
ロバートも俺も当て馬かよー!!」
「でも! ホーク!
ちゃんと好きです、結婚して下さいって言ったのは良かった。
私の時よりは、良かった!」
私が褒めるとホークは複雑そうな顔をした。
エドガーがユミエラを親指で示して「ユミエラは今フリーだぞ」と言った。
「いや! ユミエラは俺のタイプじゃないっす!」
ホークの即答。
「なに~!!
私の方も願い下げじゃ!!」
ユミエラが叫んだ。
あらら。
でも、なんとなくみんなで笑ってしまって、ちょっと空気が緩んだ。
ホークが心配そうに言った。
「シアとユミエラ……、もう一緒に狩りに行ってくれないかな?」
「行くでしょ!?
それとこれとは話は別」
ユミエラが笑って言った。
「恋愛とか結婚とかじゃなく。
私、ホークのことは仲間として認めているというか、買っているというか。
シアもあんまり気にしないと思う。
ってか、ミコトとだってホーク、お互いに普通でしょ?」
ホーク、『あ!?』みたいな顔して。
「……そうだな。そう言われてみれば」
「ライカンとシアは……、結婚するか、しばらくそういう形を取らないかはまだわからないけど。
ホークさえ良ければ、このパーティの友達ってことでいいんじゃない?」
「うーん、まあ……。
とりあえず、ユミエラ、明日狩りに行こうぜ!
シアが無理でも……」
ユミエラが笑った。
「うん、了解」
大通りまでホークを送り、三人で家に帰りながら……。
「えっと……、ライカンとシアは12歳ぐらい違う?
それで、シアとホークは7歳ぐらい違うよね!?
シア……、モテ期?」
ユミエラが感心したように言うから、なんか笑っちゃった。
そんな私を見て、ユミエラが言葉を続ける。
「ミコトとエドガーも7歳差だっけ?
わお! それより歳の差があるのか~!
でも、不思議。
シアだったら、ライカンとでもホークとでもなんかいいんじゃないかと思えちゃうわ」
「そうだね。
でも、ライカンとなら……。なんか安心な気がする」
私が微笑むとユミエラも微笑んだ。
「うん、シアには……、幸せになってもらいたい」
「うん」
私はユミエラと手を繋いだ。
なんだか、小さな頃のことを思い出した。
私を守ってくれていた、三人のお姉さんとお兄さん。
自分だって大変な苦しい時に、私を助けてくれたんだもんね。
恩返しというほどのことはできないけれど、みんなが幸せになるのを見たいというか見届けたい……。
「……で、帰ってもいいわけ?
私達。
もう少し遠回りした方がいいのかな?」
ユミエラの何だか自信無げな言葉に私とエドガーは大笑いしちゃった!
「帰っちゃいけないってことないだろう!」
エドガーの言葉。
うん、だけどね。まあまあ。
「大きな声で『ただいまー!!』って言ってから、ゆっくり家に入って行けばいいんじゃないの?」
私の言葉にエドガーが苦笑した。
「また……、何、想像してんだよ!?」
読んで下さり、ありがとうございます。
明日、明後日と仕事が急に入ってしまい、投稿をお休みします。
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