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64 椅子取りゲーム(ミコト視点)

朝から雨が大変ですね!

みなさま、お気をつけて!

どうぞよろしくお願いします。

 チョップされた私を見て、塔主様とメグミ様は笑い出し、ザイマさんは苦笑している。

 あー。

 でも、ちょんってだから、痛くないよ。

 頬を摘ままれる方がちょっと痛いかも。

 でもすぐに放してマッサージしてくれるし。

 はっ!

 じゃあさ、ラスター様も危なかったんじゃない!?

 っと話が脱線しかけたけど、ここにいる人はエドガーの出生の秘密は知ってるってこと!?


「スミレ様のことはどこまで知っているのですか?

 第2王子だった王との間に双子を授かり、エドワード王子の方だけ公表されて、エドガーは隠して育てられていたことは……」


 塔主様が頷いた。


「そのことはわかっている。

 そして、なぜ、今になって王妃がエドガーを探そうとしているのかもね」


 ん、スミレ様の悲劇までは話が及んでいないのかな。

 それならそれでいいんだけど。


「何故ですか?」


 エドガーが聞いた。

 そうだよね。そりゃ聞きたいか。


「エドガーをいない者として闇に葬ろうとしたのは、双子がいれば、我が子エリオットが第3王子になるからだろう。

 王と神殿を双子に取られる。

 そして今、エドガーをいなかった者となり、エドワード第1王子が引きこもりと言ったが、廃嫡となると、エリオット第2王子が王になり、エラン第3王子が、神殿に入ることになる。

 王妃はそれが気に食わないのでしょう。

 エドワード王子がもう少し気概を見せていれば、エリオット王子と立場を仕事を能力に合わせて入れ替えるということもできたかもしれないが、エドワード王子はなかなか筋金入りの引きこもりらしい。

 エラン王子を神殿に入らせないためには、もうひとり年上の王子がいればいい。

 そこでエドガーの出番だ。

 隠された悲劇の第1王子として公表し、平民として育ったので王は無理だろうが、補佐する神官がたくさんいて、決められた儀式的なことが多い神殿なら務まるだろうということだろう。

 よくわからなければ、こちらの言いなりになるだろうし」

「王子の椅子取りゲームって、そのことか!」


 エドガーが呻いた。


「そんなことで、死んでも構わないと外に出した俺が生きていて良かったと……。

 しかも助けて育ててくれた、母さんを、ライザを脅すとか人質に取るとか……」


 うん、王妃って怖い人だね。

 エリオット王子とエレノア王女が王妃の子どもなんだよね。

 でもエレノア王女はけっこういい人みたいな話もあったけど?


 塔主様を交えて、これからのことを相談するために、魔法塔に呼ばれたんだ。

 良かったよ、注意とか説教じゃなくて。


 弟だったイサクに何とかして、護衛の男に気づかせないで会うというのが次にしなくてはいけないことだなとなった。

 ジュノーで別行動をしている時、それが把握できる魔法塔の施設にいる時にという話になる。

 うんうん。


「視察のふたりはまだコタンに?」


 メグミ様が聞いてくれた。

 塔主様が笑う。


「ああ、図書館を細かく視察しているそうだ」


 エドガーが微笑んだ。


「イサクらしいです。

 コタンの図書館は憧れだと言ってましたから」

「となると、一応イサクの希望は聞いてもらえてるってことなのかな?

 いないから、次行こう! って感じではないってことですもんね」


 私が言うと、塔主様は頷いた。


「護衛もそこまで王妃に忠実ではないのかもしれない。

 今回のことで、金で雇われた者かもしれない」


 ふーん。情報合戦的な?

 まあマイルズの魔法塔の方が一歩リードしている感があって、安心だけど……。

 話が終わり、いつもの建物に戻ってくるとほっとした。

 塔主様、怖い人ではなかったけれど、偉い人だと思うと緊張する……。

 メグミ様も『魔法塔』ではけっこう偉い人なんだけど。

 そんなに緊張しないのは、マルミさん、レイさん、エルくん、ナルちゃんを知っているからだろうな。


「お疲れ様!

 いろいろ気になることを話せて良かったわ!

 ライカンにも来るように連絡を入れるから、今日はこのまま早帰りしなさい」


 メグミ様の言葉に甘えて、ライカンと一緒に帰ることにする。

 今日はシアとユミエラ、家にいるはずだもんね!

 おいしいもの買って帰ろう! ということになり、久しぶりにギルドにも顔を出すことにした。

 ホークがいるかもだもんね!



 ギルドに寄ったら、ホークがいた!

 午前中、ソロで近くの狩場に行ったが、人やパーティがたくさんで、獲物も見つかりにくく、すぐあきらめて戻ってきたそう。


「へー、首都の近くの狩場ってそんな感じなの!?」


 私がびっくりして言うと、ホークが頷いた。


「ああ、だから、シアとユミエラは弁当作って来てくれて、いつも遠くの狩場に行くんだよ。

 三人で狩りをすればある程度獲物も見込めるし、大物も相手できる。

 馬車代がかかっても利益はしっかり残るしな」

「なんと! 

 首都での狩りはそんなに大変だったなんて!

 ユミエラ……、すごく頑張ったんだね……」


 思わず、呟いてしまった。

 その時「お久しぶりです! ミコトさん!」と声を掛けられ、振り返ったら、ロバートさんで!!


「ロバートさん!?

 お久しぶりです!」


 ロバートさんは私達を見回して、エドガーを見た。


「ああ、ク……」


 私はロバートさんの口をとっさに押さえてしまった。

 目を白黒させるロバートさん、ごめん……。


「あ、あの、説明しますので!」


 私達はギルドの貸会議室みたいな個室を借りて、話し始めた。


「ロバートさん、私達、名前をけっこう変えたんです。

 まずクルトはエドガーに。

 それからプリシアはパトリシアでシアに、ミカエラはユミエラに。

 変えたというより、本当の名前に近い呼び名にしたというか……」

「……エドガーさん、それからシアさん、ユミエラさん、ですね。

 ミコトさんは変えていない?」

「はい、私は、変えてないです」

「そして?」


 ライカンとホークを見るロバートさん。


「ライカンです。

 一緒のパーティで一緒に暮らしてます。騎士です。

 私とエドガーが魔法塔の魔法使いをしていて。護衛騎士をしてくれてます。

 こちらはホーク。

 デュランで友人になって、ジュノーで再会したんです。

 こちらはオルガ商会のロバートさん!

 マイネの支店にお勤めだけど、マイルズ川沿いの街やシーザー王国へも買い付けに行ったりするんですよね!」

「はい、ケレスへ行く途中、山の主のようなボアに追いかけられたところを助けて頂いたんです」


 そうか、まだあれから3ヶ月ぐらいだもんね。


「あ! ロバートさん!

 おいしいお食事のお店を教えて下さい!

 持ち帰れるとうれしいです!

 シアとユミエラに買ってくの!」

「それなら、お任せを!

 ご案内します!」


 ロバートさんの案内でギルド前の道をぞろぞろと……。

 ん? なんでホークも!?

 私がホークを『なんで?』という表情で見ると、ぷいっとされた。無視?

 でも、ついてきてる。


「なんだ?」


 スープがおいしいレストラン。

 お鍋にスープ入れてもらえた。

 それから、ジュノーはマカロニというか、そういう感じの料理が盛んだそう。

 茹でてスープに入れたり、ソースを絡めたりして食べるんだって。

 乾いてる保存できるタイプもいろいろあり、リボンみたいなのとか、丸いのとか、いろいろな形のを買ってみた。

 それから瓶詰のソースも何種類もあって。

 香草の塩オイルペーストみたいなのと、トマトソースみたいなの買ってみた。

 それから揚げ物!

 ボアのフライ……。

 つまり、とんかつみたいの!


「わー、おいしそうなものばかり!!

 教えて頂き、ありがとうございます!」


 私がお礼を言うとロバートさんが言った。


「その……、シアさんとユミエラさん、にもご挨拶したいので、すぐお暇しますから、お家に伺ってもよろしいですか?」


 ホークが『んなっ!?』という表情だ。

 私は「はい! どうぞ!」と答えた。


読んで下さり、ありがとうございます。

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