62 プチショック(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
私達は思いを巡らし、思いついたことを話し合うが、確実なことはわからない。
明日、メグミ様とザイマさんに相談してみることにする。
「なんだかうまく会わないようにやり過ごせたのに……。
イサクか……。
イサクと母さん……、イサクが仕事の旅に出ているなら、母さんひとりで?
大丈夫かな?」
「そこは弟さんだって、ちゃんと考えてこちらに来ているでしょう?」
シアが苦笑しながら言ってライカンを見た。
「エドガーもミコトも魔法塔に所属して守られているから大丈夫と思うけれど。
弟さんとエドガー、なんとか会える機会を作ってあげたいわね」
「そうだね。
護衛の男は胡散臭いが、なんとか……。
今、どのあたりに視察中なのか、騎士団で確認してみるよ」
なんかこの二人、いい感じなのよね。
私がニマニマしちゃったのか、エドガーに両頬を摘ままれた。
「顔!」
「いひゃいよ!」
「こっちきて!」
エドガーに手をつかまれ、エドガーの部屋へ。
一応、この家ではエドガーとライカンは個室。
シアとユミエラと私は同室なんだよね。
「シアとライカンのこと、いろいろ言うなよ」
「なんで?
いい感じじゃない?
お似合いだし。
まあ、10……ちょっと歳違うけど。
ライカンは若く見えるし」
「あー。
たぶん、口に出さない方がいい。
ライカンなら、そのうち自分で言うと思うけど。
周りがわいわいしたら、変な空気になるだろ!?」
変な空気。
うーん、一番頼りになるふたりが変な空気になったら、それはヤダ。
でもさ……。
「んー、でも、シアもライカンも……。
うん、わかった!
でも、気になるの。
シアもライカンも自分は幸せになっちゃいけないとか、思ってないよね?」
「えっ!?」
「なんとなく……。
ユミエラは借金返して、自分のために生きるって、ほら!
エドガーのことやディーのこと、とか。
他の人と関わって、恋とかして生きていこうっていうのを感じるんだけど。
ライカンとシアは……、なんか、俗世のこと、自分のことはもういいみたいな。
ふたりともそんな感じだから、お互いに言い出せないんじゃないかって……」
エドガーも気づいたような表情になった。
「あー、確かに。
そういう感じは……、あるかもな。
保護者としてって感じ」
「だよね?
私は、二人にも幸せになってもらいたい」
次の日、ライカンはシーザー王国の視察が今どこにいて、どこに向かうのか調べると騎士団の方へ行き、私とエドガーはメグミ様のところに行った。
「おはよう!
おふたりさん!
これから、私と一緒に来てもらうわ!」
「おはようございます!
メグミ様、私達、ご相談したいことが……」
メグミ様達がじっと私達を見た。
「それもあっちで話した方が早そうね。
行くわよ!」
「えっ? はい!」
私とエドガーは動揺したが、ザイマさんにも促され、メグミ様の後を追って歩いていく。
それもって、何か見抜かれてる?
でも、そんな細かいことまでわかるのかなあ。
なんか心配してるとか緊張してるとか、能力は変わらないからほらステータスみたいに見えるかもだけど、考えてることまでは無理だよね……。
一度、建物を出て、おや、これは塔に向かっているのか!?
『魔法塔』と呼ばれるけど、いつも私達が修行したり、事務仕事したり、泊まる場所や食堂があったりする場所は塔ではない。
塔の周りに建っている建物だ。
騎士団の建物もそのひとつ。
真ん中にシンボルのように建っているのが、白い石造りの塔で、昔の魔法使いの拠点というか魔法使いの集会所とかそんな場所だったらしい。
塔の前の警備の騎士に頭を軽く下げ合い、塔の中へ!
ここ立ち入り禁止だよね!
呼ばれないと入れない所!!
……なんで呼ばれたんだ?
私達はメグミ様とザイマさんには、シーザー王国を出ることになった理由は話してある。
シアとユミエラとエドガーと娼館『エスタ』で働いていたこと。
三人に匿われていたこと。
カイラムはその時に従業員として近づいてきた男性であったこと。
そして、貴族の男に見つかり、咎められないようにうまく図ってやるから、我が家に仕えよと言われ……。
三人は仕事をやめて、自由の身になって、私と一緒に逃げてくれたこと。
それで、途中でライカンに出会って、神殿の騎士だったこともあり、転移者の私を守ろうと仲間になってくれたこと、とか。
でも、エドガーが王子だったことは話していない。
うん……、スミレコ……、スミレ様のことや、双子のひとりが隠されて育てられ、王妃に殺されそうになったとか……、言えないよね。
白い石造りの塔の中は思ったより広くって。
客間のような部屋に入った。
ということはなんか校長室に呼び出されて怒られるとかの感じではない!?
お話しをって、こと!?
ソファに座るように言われて、お茶まで出される。
ほー、美しいティーカップだなぁ。
「シーザー王国から、ミコトの行方を追っていた者を捕らえました」
メグミ様の言葉に私は弾かれたように、メグミ様を見た。
「ミコト、あなたが話していた、貴族の若い男とは、エリオット第2王子のことでした」
「第2王子!?」
私はびっくりしてエドガーを見た。
エドガーの本当の弟ってこと!?
あの坊ちゃんが!?
エドガーはちょっと納得したような顔をしている。
「なんとなく……、腑に落ちました。
カイラムにしろ、エリオット王子にしろ……、なんでこんなにミコトに惹かれるのか、拘るのか。
王家の血のせいですね」
メグミ様は頷いた。
「そうね。
シーザー王国、アサニヤ王国は先祖は同じですものね。
原初の聖女と結ばれ、子孫を成し、三つの国に分かれた。
シーザー、アサニヤ、マイルズと。
マイルズは王政から共和政になり、貴族の概念もかなりゆるくなっています。
今では家柄や地方領主として、世襲が続いているところもある、その家の血筋が選ばれやすいとかぐらいかしらね」
王家の血。私に対する拘り。
スミレコに対する第2王子……現国王の執着。それにより歪んだ第3王子の愛。歪んでも、スミレコを手放すことはなく、苦しめた。
なんだっけ、癒しの力……みたいのが、王族の方が感じる力が強いとか言ってたっけ。
肌を触れ合わせて……。
えっ!?
じゃあ……、エドガーもそんな理由で私に惹かれたのか?
私だからじゃなく、転移者だからって理由なの?
プチショック……というか、かなりショック。
メグミ様の言葉がさーと流れていくように聞こえる。
「エリオット第2王子は自分の独断で動いているようね。
プリシラ、ミカエラ、ミコトを探すように命じられてた。
マイネあたりであなた達を見失ったと。
それで周辺を回って、ジュノーで聞き込みをしていて、不審者として拘束されたってわけ」
「エリオット第2王子とシーザー王国の視察は関係ない?」
エドガーが怪訝そうに言った。
メグミ様も私を怪訝そうに見た。
「ミコト? どうしたの?」
はっとして、慌てて返事した。
「あ、すみません!
あの、思ってたことが違うかもって……」
「思ってたこと? 違う?」
エドガーに聞き返されて、なんと言っていいか困る。
読んで下さり、ありがとうございます。




