58 エドガーのもの(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
「もうエドガーと私は……」
「もう?」
「愛し合ってるから!」
「えっ!?」
カイラムがなんだか余裕がない感じになり、従者のふたりもそんなカイラムを気にしている。
奥の裏口から入ってきてるエドガー達に全く気付いてない。
よしよし。
私はすーっと息を吸って、微笑んだ。
「初めてだったけど……。
エドガーはやさしかった。
私が初めてだから不安がったのも……。
途中からエドガーが余裕がなくなったのか強引なところもあったけど……。
そんなのも、なんだか……、うれしかったし……」
「ミコト?」
ザイマさんが戸惑っている。
恥ずかしいけど、私は峰不二子だから!!
「エドガーが私の中に入ってくるのを感じて……、涙が出ちゃったけど、それはこわいっていうより、そんなに愛する人に欲してもらえるって、喜びとかうれしさとか……」
カイラムが絶望したような顔をしている。
「……エドガーともう?
あいつとミコトが!?」
止めじゃ!!
「私の身も心も、エドガーのものよ!」
「なっ!?」
カイラムがちょっとふらついて、踏み止まった。
「……それでも構わない」
「私は構います。
私は自由に自分の意思で生きたい。もう構わないで!!」
「カイラム様!!」
従者が叫んだ。
その時、馬車の音が玄関の外、つまり家の前から聞こえてきて。
「カイラム! カイラム!!」と叫ぶ、少年の声?
知ってる声だ……。
「ラスター様!?」
ラスター様まで連れてきたの!?
「カイラム!
魔法塔が動いてる!!
逃げるよ!!」
あ、メグミさん達、成功したんだ!
ザイマさんが玄関のドアを開けてくれた。
私とザイマさんは玄関への通路を塞がないように避けた。
「お引き取りを!」
ザイマさんが玄関のドアを、外を手で示す。
カイラムの表情が引き攣った。
「魔法塔に!?」
私は頷いた。
すれ違う時、ザイマさんが私を庇うように守ってくれた。
カイラムの金の瞳が怒りなのからんらんと輝いていて、こわい。
カノンの『エスタ』ではいつもニコニコしていたのに……。
「転移者を……、殺した男の気持ちがわかったよ」
ぼそっと呟いて、玄関から出ていった。
すうっと身体が冷えたけど……。
とりあえず、作戦成功!? 成功だよね!!
エドガー達がこちらの部屋に入ってきて、変な沈黙が……。
少し赤くなりながらエドガーが口を開いた。
「なんで、あんな……。
その嘘を……?」
私は微笑んだ。
「嘘じゃないよ。
エドガー、あんな風にキスしてくれたじゃない!」
「えっ?」
ザイマさんが変な声で言った。
「私の中に入ってくる、云々は……?」
私はさらににっこり微笑んだ。
「うん、あれ、キスされてる時のね。
エドガーのベロね」
「えっ!?
あ! なんだ!
そうなんですね!」
「えー!!
なんだと思ったの~!!
私はわざと子どもみたいに笑った。
『峰不二子』っぽくはなかったか?
でも、小説の悪女はさすがにできそうもないし。
うん、私、頑張ったよね!
カイラム見事に勘違いしてくれたしさ!
エドガーを見ると、がっと抱きしめられて囁かれた。
「……わかってやってる?」
「うへへ、さあ、どうでしょう?」
「もう……、変な知識だけはついてるんだから……。
でも……、もうエドガーのものって言葉、うれしい」
トントンと肩を叩かれて、振り返るとザイマさんで。
「さあ、メグミ様の所へ参りましょう。
カイト達も心配してるでしょう」
裏口から出ると、そっちの方でカイトとカテリーナさんとクラウスさん、そしてメグミさんとレイさん、ライカンまでいた!
「うまくいって良かったわ!
ザイマもありがとう!」
メグミさんがにっこり笑って。
ザイマさんが苦笑した。
「私はほぼ必要ありませんでしたよ。
いやー、久しぶりにドキドキさせて頂きました!
ミコトさんの機転と度胸には、参りましたよ!
あの場で、的確にカイラム王弟の感情を揺さぶって見せるとは!」
「いや、裏口からエドガー達が家に入って来ていたのが、私達側からはちらっと見えて。
気を逸らさないとって、思って……。
それにカイラムのことは知っていたので。
その時はやさしい職場のお兄さんみたいな感じで……。
後から、私にそういう感情があったみたいな話も聞いていたし、クルト、エドガーのことにこだわってたし、それで……」
「いやー、すっごく、盛大に勘違いしてくれましたよね!
私も勘違いして、変な汗が出ましたよ!」
ザイマさんが思い出したように笑って。
メグミさんとライカンが『?』という表情だ。
クラウスさんとカテリーナさんとカイトはしばらく図書館の職員の家の方に住むことになった。
一応アサニヤ王国に対して従った風にはできたけれど、何されるかわからないし、カイラムが出国したとしても他の人に何か命じていくことも考えらえる。
レイさんと魔法使いのひとりと、騎士がついてくれて、当面必要な荷物だけを持って移動することになる。
私は先にメグミさんと一緒にシア達の所へ戻ることにした。
「ミコトさん……、来てくれてありがとう」
カテリーナさんに言われた。
「いえ、私と関わってしまったということもあるし……。
カイトとカテリーナさんが無事で、本当に良かったです」
カイトも「ありがとう」と言ってくれた。
「怖かったね。
でも、よく頑張ったね!」
私はカイトの頭をそっと撫でた。
「ミコトは『魔法塔』に入るのですか?
アサニヤの聖女……ではなく」
クラウスさんに問いかけられて、私はクラウスさんを見た。
「私が転移したのはシーザー王国の街でした。
ずっと隠れてました。
その時に、カイラムは身分を隠して探りに来てたみたいで。
シーザー王国から追われるようになり、一度逃走経路をわかりにくくするためにアサニヤ王国に入り、またマイルズ共和国に戻ろうと乗った船で、カイトとカテリーナさんと知り合って……」
「……もともとアサニヤの聖女というわけではなかったのですね」
「転移してきた場所で言えばですけど。
でも、私はアサニヤ王国にもシーザー王国にも行くつもりはなく。
マイルズ共和国でいろいろ話を聞けたことで『魔法塔』に入ることにしました」
「そうですか……。
わかりました。
私達もこれからのことを家族で話し合ってみたいと思います。
カイトを助けに戻らないという選択もできたのに、来て頂いたことは、心からお礼を。
ありがとうございます」
私はメグミさんと一緒にマルミさんとレイさんの家に戻ろうと馬車に乗りこんだ。
ライカンとエドガーが私を護衛するかのように一緒だよ。
レイさんはクラウスさん親子の図書館までの移動を見届けてから戻ってくるそう。
ギルド、騎士団へはザイマさん達魔法使いが対応してくれると。
ありがたい。
きっとカイラム達は大騒ぎになる前にと船でアサニヤ王国へ戻ろうとするだろうから、出航できるようにした方がいいだろうし。
すぐにいつもの感じのコタンの街に戻りそうだな。
読んで下さり、ありがとうございます。
ミコトの持つ峰不二子イメージとしてはマモーの映画の峰不二子です。
お父さんがルパンが好きで観てました。
マモーの話は難しい感じだと思ったのですがそのぶんミコトには強く印象に残っています。
カリオストロの峰不二子はカッコいい感じだと思ってます。




