56 カイトが!?(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
それからレイさんとマルミさんの家に移動する話になる。
メグミさんの馬車があるそうで、7人だけど乗れるそうだ。メグミさんって『魔法塔』のけっこう偉い人なのかも!?
馬車の中で『聖魔法』について聞いてみた。
「私、ずっと仕事で掃除洗濯をしてきたからか、汚れ落としや染み抜きに力を使ってたみたいで……」
「掃除や洗濯に聖魔法を使ってたの!?」
「いや、そういう力があるなんて知らなかったし。
でも、この旅で怪我を治したりってこともできるようになりましたけど、もっといろいろできるのかな?」
「ミコトは歌を歌うんですよ!
でたらめな感じなんだけど、かわいいの」
ユミエラが笑いながら言って。
メグミさんとレイさんが目を丸くした。
「原始の聖魔法みたいじゃないか! 興味深い!」
「ね! 私もそう思った!
ミコト、聖魔法の最初は願いを歌にするところから始まったそうよ」
「へー、じゃあ、私は知らないまま……。
聖魔法を使ってたんですね!」
これから魔法のことをいろいろ教えてもらったら、もっとできることが増えて、周囲の大切な人を守ることもできるかもしれない。
今は守られているけど、私も守りたいもん!
馬車は魔法研究所の方に停めてもらい、降りて歩いて家へ向かう。
「エルやナルに会うのは……、3年振りかしら!」
メグミさんがウキウキしている。
あ、そういえば誰の誕生日!?
こそっとマルミさんに確認すると「誕生日? あ、ふたりともよ。ふたりとも今月の二日違いなの」と言われて、あー、二人に用意して来て良かったー! と改めて思った。
夕食の準備をするというのでお手伝いすることに。
シアに私にマルミさんにメグミさん。
ユミエラは……魔法について知りたいことがあるとレイさんに質問があるそう。
熱魔法についてかな?
活かす方法を気にしてたもんね。
そちらにライカンとエドガーが行ってくれて、ジュノーの魔法塔のことについても聞いておいてくれると……。
メグミさんは一週間ほどコタンに滞在するそう。帰る時に一緒にジュノーに向かうというわけだから、ね。
私はお米を見て歓声を上げた。
「白いご飯、懐かしいわよね!」
メグミさんが『わかってるわよ』というように笑う。
「はい!!
炊き立て、楽しみ!!」
本当に楽しみ!!
それから昆布と干しきのこで出汁を取って、野菜を煮たり、私は煮干しでお味噌汁を作ってみた話をしたりと楽しく料理を進めていた。
その時、玄関の方でドアを叩く音がして、レイさんが対応に出て行った。
怪訝そうな顔で、連れて入ってきた人はカテリーナさんだった。
顔色が悪い。
エドガーとライカンとユミエラもこちらに来た。
「カテリーナさん?」
私は呼びかけた。
カテリーナさんは涙をはらはらとこぼした。
「ミコト、ごめんなさい。
戻って来て欲しいの……。
その……、カイトが……、その……怪我をして……」
「え? 学校で!?
今、学校ですか?
病院!?」
私は慌ててカテリーナさんの方へ行こうとしたんだけど、シアが止めた。
「カテリーナさん。
私達がここにいることは何で知りました?」
「え……、ここにいると」
マルミさんが表情を引き締める。
「誰に?」
「え、あ、薬学研究所……で!」
行くと話した気がするけど……、わざわざ怪我をしたカイトのそばを離れて、捜しまわる?
私、船酔いをなんとなく緩和はしてたけど、そこまで……。
「なんでカイトの怪我で私を?」
私のその言葉でユミエラが言った。
「そうよ。なんで?
怪我してるなら、お母さんがついていてあげないと!
クラウスさんには?」
カテリーナさんはわっと泣き出してしまった。
「ごめんなさい!
カイトを助けて!
クラウスが仕事に行って、私達も学校へと準備している時に……、王家の方が家に……」
「アサニヤ王家?」
私は確認のように聞き返しながら悪い予感がした。
「ええ、アサニヤから、あなた方を追ってきたと。
クラウスの方に研究所で話を聞いて、隣家で仲良くしていると……。
それで、クラウスは研究所に留め置かれて。
ミコトを家に連れてくるようにと言われて、カイトは家にいます」
「……学校へ行けなかった?」
頷くカテリーナさん。
「ミコトを連れて戻ってくるまで預かると」
人質ってことか。
マルミさんがレイさんを見る。
レイさんは「エルとナルを迎えに行ってくる!」と出て行った。
向こうにどんな情報が渡っているかわからない! ふたりを保護しないと!
「どんな人? 何人くらい?」
エドガーが聞いてくれた
「……金色の目の浅黒い肌の人と……、服装は貴族っぽい。
その部下らしい二人……」
「カイラムっぽいな。20代の男?」
カテリーナさんは頷いた。
「そうか、コタンのアサニヤ王国民を訪ねて、ミコトのことを聞いて回ったのね」
シアが気づいたように言った。
「はい、そのようです。
ミコトさんは……、聖女なの?
アサニヤ王国から逃げている?」
「あ……、私はシーザー王国から逃げていて……、アサニヤ王国からもその……、カイラムにはシーザー王国でも……」
「カイラム様……、お姿は知りませんが、お名前は聞いたことがあります!
もしかしたら王弟殿下かもしれません。
マリナ様の跡目の大切な聖女だから、絶対に連れてくるようにと!!」
「この家にいると、誰に聞いたの?」
マルミさんがまたカテリーナさんに聞いた。
「本当に薬学研究所の方に聞いて。
図書館に行ったけれど、そこからマルミさんの家に行くようだと、訪ねるなら家の方がいいだろうと」
「じゃあ、アサニヤ王家にはこのことはまだ伝わっていないのね」
「はい……」
「……じゃあ、うちの子達が帰ってくるまで待つことは可能ね。
何とかするから、それまで待って!」
カテリーナさんはその場に崩れるように座りこんでしまった。
私とシアで支えて椅子に座らせる。
メグミさんが紅茶を入れてくれた。
「甘く味付けしました。
喉も渇き、お腹も空いているのでしょう。
お飲みなさい」
「……ありがとうございます」
カテリーナさんが飲んで「甘い……、おいしいです」とまた涙をこぼした。
少し待つとエルくんとナルちゃんを連れてレイさんが帰宅した。
「カイトくんだっけ、今日はお休みしていたそうだ」
「うん、カイト、来なかった……」
ナルちゃんが教えてくれてから「あれ? カイトのママ?」とカテリーナさんを見て言った。
「ごめんなさいね。
カイト、ナルちゃんにお手紙のお礼を言うんだって楽しみにしてたのに……」
私はメグミさんを見て……。
「メグミさん、私……、とりあえずカイトを助けに行きたい」
「捕まったら、どうするの?」
「カイトを解放したのを確認したら、逃げます」
「危険だわ。
何かしらあなたを拘束する方法は考えているはず」
「でも!」
「エル、ナル。
もう少しお誕生会の準備が掛かりそうなの!
お客様のシアとユミエラと、マルミと一緒にいてくれるかしら」
メグミさんの言葉の後半はエルくんとナルちゃんに向けられていて。
「うん、大丈夫」とナルちゃん。
エルくんは真剣な表情でメグミさんを見た。
「いいよ。非常事態?」
「ええ、非常事態」
メグミさんは満足気にエルくんに頷いて見せた。
「わかった。
ユミエラさんとシアさんとお母さんとここにいる」
「ナルもだよ!!」
ナルちゃんがそう言って、少しだけどなんかほっとした。
読んで下さり、ありがとうございます。




