55 メグミさんと魔法塔(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
今日は朝からみんなで薬学研究所へ出かける。
そう、メグミさんに会わせてもらう予定だ。
エルくんかナルちゃんの誕生日のお祝いでコタンに来たんだよね!?
昨日、それを思い出して、どちらかわからなかったので、二人にプレゼントを用意したんだ。
ナルちゃんにはセーブルの飾り玉ひとつのペンダント。
魔法を表すという星のモチーフにした。
気に入れば、これから自分で気に入った物を集めていっても楽しそうだしね。
エルくんには読書好きって聞いたから、携帯できる植物についての本にした。
魔法か植物かで迷ったんだけど、レイさんは魔法の研究者だし、持ってそうだもんね。
マルミさんは薬学の範囲で食べ物の研究をしているけど、エルくんもフィールドワークとか行きそうだよね、これから。
乗合馬車にのり、薬学研究所に!
博士とオハラさんに昨日の話をして、大きめなコオロギの死体と巨大マンイーターの根っこを渡したら、本当にお小遣いくれた!
マルミさんと会って、みんなを紹介した。
シアとライカンはちゃんと紹介してなかったからね。
エルくんは学校、ナルちゃんも今日は学校での学び場に行ってるそう。レイさんは魔法学の研究所の方だけど、午後には図書館の方に来てくれるという。
カイト、ナルちゃんにちゃんと素直に話しているだろうか?
確かに、この時期の男の子って、ちょっと乱暴な感じのお友達のことが大人っぽくてカッコいいと思っちゃったりがあるのかもね。
ん?
『断崖の剣』の三人もまだ、そんな段階だったのだろうか!?
マルミさんがメグミさんは図書館の方に到着する予定なので、そろそろ移動しましょうと話してくれて、私達は図書館へ行くことにする。
図書館、中に入るのは初めてだ!
すごく大きくて広い!!
真ん中に大きな建物があり、周囲にもいろいろな建物が増築っていうんだよね、付け足されて行ってる感じ。
少しそんな廊下をどんどん進む。
図書館と魔法塔の関りは古代からあって、深いそう。
みんなで招き入れられた部屋に女性がひとり。
白髪混じりの黒髪に背筋がぴっと伸びた凛々しい感じの人だった。
「マルミ! 会いたかったわ!」
「お母さん!」
マルミさんと抱き合ってから、マルミさんが私達を紹介してくれる。
「シーザー王国の転移者のミコト。
それとミコトを王家や神殿には知らせずに保護して育てていたエドガーとシアとユミエラ。
マイルズに逃げて来てから、協力してくれている騎士ライカン、だそう。
エドガーは最近、母親が転移者だったことがわかったそうよ」
メグミさんが頷いて私を見た。
「初めまして。メグミです。
ミコト……は何歳でこちらに?」
「9歳の時です。
家に帰るために公園を出たら、森の中の道にひとりで立ってて……」
メグミさんは悲しそうな表情で頷いた。
「そんな小さい時に……、怖かったでしょう。
私は14歳だったから。
転移には驚いたけれど。
でもそれ以上、自分でも意外なほど冷静に行動できたの。
なんだろう、大きかったから転移者の魔法とか勘とかそういうものを無意識に使い始めていたのかもしれないわ。
そう、シーザー王国で……。
いい人達に守られて良かったわね」
「はい!
それで、シーザーの貴族に見つかり逃げてマイルズ共和国の方に来たのですが、どうやら探されてるようで、一度アサニヤ王国にも逃げたのですが、そちらでは王家に存在がばれてしまい……、またマイルズ共和国のコタンに逃げてきたところでした。
そして、マルミさんと知り合って、転移者のメグミさんの話と魔法塔についてお聞きしました」
「……そう、アサニヤ王国とシーザー王国の方からも追われているのね。
私のように魔法塔に所属したいと?」
私は何と行ったらいいか考えてから、ゆっくりと切り出した。
「私はエドガー、シア、ユミエラ、ライカンと一緒にこれからも暮らしていきたいと思っています。
みんな、もう私の大事な家族です。
追われることなく安心して、暮らせるようにしたい。
そのために『魔法塔』に所属することが……」
メグミさんが笑う。
「心配?
そうよね。
シーザー王国のスミレ様のことは聞いてるわ。
シーザー王国だと神殿に閉じ込められ、王族と結婚させられる。
アサニヤ王国だと、今の聖女のマリナ様か……。
マリナ様はご自分で納得しているのかもだけれど、私達から見れば、自由を奪われて働かされている感じはあるわよね。
どちらも自由からは遠い。
ミコトが行きたい道ではない」
「……はい。
私は、エドガーと結婚の約束もしています。
シーザーでも、アサニヤでも、一緒にいられない。
家族のようなみんなと一緒に暮らすことはもちろん、会うことすらできなくなるでしょう」
「……みなさんはそれでいいの?」
メグミさんがエドガー達にも聞いた。
「はい、俺はミコトと一緒に生きていきたい」とエドガー。
「私はミコトを守りたいです。
自分は守れなかったけれど……、ミコトは守ることは諦めたくない!
妹のような娘のような気がするんです!」とシア。
「私も同じ。
ミコトには私のような目に遭って欲しくない。
大切な妹のような気がする……」とユミエラ。
「私はスミレコを守れなかった。
スミレコと育ち、彼女が神殿に行ってから、騎士として神殿に仕えましたが、彼女がひどい目に遭っていることに気づけなかった……。
彼女を守りたいと思いながら守れなかった。
今度こそ、ミコトを守りたいと思っています」
ライカンの言葉にメグミさんは驚いた。
「あなたは……、スミレ様と一緒に育ち、騎士になった方なのね!
シーザーの騎士をやめて、マイルズの騎士になり……、ミコトと出会った」
「そうです。
スミレコ……、スミレ様が亡くなって、私はシーザー王国にいたくなくなり、放浪の旅に出て、結局、マイルズ共和国で落ち着き、騎士をしていました」
「そう……、自分が信じていたものが根底から覆された経験がおありなのね……」
メグミさんは少し目を閉じて考えた。
私達はじっと待った。
メグミさんが目を開けた。微笑んでいる。
「ミコト、エドガー。
あなた達を『魔法塔』は受け入れます。
魔法の素質や力として十分です。
『魔法塔』は、現在はマイルズ共和国で活動していますが、魔法使いの共同体とでも思ってくれればいいわ。
古代からある組織で、ギルドと似ている。
図書館ともギルドとも騎士団とも協力関係を築いています。
『魔法塔』所属の魔法使いとなれば、シーザー王国もアサニヤ王国もなかなか手を出せないでしょう。
そして、ライカン、あなたにミコトの護衛騎士を頼みたいわ。
シアとミカエラ……。
あなた達はミコトの世話係というか、付き人というか……、そんな感じでどうかしら?」
私はみんなを見回しで、叫んだ。
「私はそれでいい!
護衛とか世話係ってのちょっと気になるけど……、今はそれでもみんなと一緒にいられて、追われてることに怯えないで過ごせるなら!!」
みんなも頷いてくれた。
ライカンが代表して返事をしてくれる。
「よろしくお頼みします!」
とてもほっとした。
良かった。みんなと一緒にいられる!!
私はシアとユミエラに抱きついた!!
その上からエドガーとライカンがみんなごと抱きしめてくれた。
「では、私がジュノーの魔法塔に戻る時に一緒に行き、細かいことはそれから決めましょうね!」
メグミさんの言葉に私は「はい! よろしくお願いします!」と返事した。
気持ちが落ち着いてから、図書館の中を案内してもらい見学した。
すごーい!!
古代からの本が残っていて、それを修理したり、写本したりして残す仕事をしている場所もあって、そこでセーブルの皮が使われていて!
なんだか、うれしかった。
それから、レイさんと合流し、図書館近くのレストランで昼食を頂いた。
その時に転移者の歴史のことを聞いた。
どうやら、アサニヤとシーザーのあたりに転移者が現れるスポットというか、そういう地脈というか魔力の流れというのがあるらしい。
だいだい20~30年周期で現れる子が特に魔力が強い転移者なのだそう。
時々イレギュラーでふと巻き込まれて来てしまう子もいるとか。
そういう子は周期で現れる者より力は少なめなことが多いが、そういう子も含めてこの世界にはない力や魅力を持っていると言える。
その力のために、転移者は王家や神殿が保護するということになり、シーザー王国では婚姻の対象、アサニヤ王国では異世界から来た聖女とかそういう流れになっていったのではということだ。
読んで下さり、ありがとうございます。




