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53 冒険者のルール(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

 狩場に到着し、ギルドの馬車は夕方に迎えに来ると帰っていった。

 とりあえず、ここからはパーティごとかな?

 そう思ったんだけど、なんか『断崖の剣』がうだうだ言いながら離れて行かない。

 結局、とりあえず、ここを(馬車が迎えに来るところ)ベースキャンプみたいにしようという話になり、私とライカンは収納してた枝を出したり、鍋が引っかけられる棒を設置して、お昼ご飯がすぐ作れるように整えた。

 

「収納魔法ができるのね!」

 

『ラビリンス』のお姉さんに言われる。


「はい、私とライカンが風魔法持ちなので」

「私もそうなんだけど、うまくできなくて……。

 教えてくれない?」

「あ、じゃあ、ライカン……」


 私はライカンを見ようとしたが、シアの無表情が視界に入り、ひょっと息を飲んだ。

 あんまりライカンに頼らない方が良さそう。


「じゃなくて、私が教えます」

「あら、ありがとう!」


 お姉さんの向こうで『ラビリンス』のお兄さんがほっとしてる。

 こっちはこっちでそういう感じなの!?

 じゃあ、『断崖の剣』達とはあんまり一緒に行動したくなさそうだね。

 ユミエラが言った。


「ミコト!

 どんな感じ!?」


 私は魔物の気配を探る。

 うん、ボアらしい気配がけっこうある。

 

「右の方、森に入ってすぐに親子のボアかな。

 大きいのが2頭と子どもらしいのが12頭くらいいる。

 それから左、これは少し奥だけど、なんか掘り出して食べてるのが、ああ、雑食植物かな?

 こっちのは2頭でいるね。

 大きいし、強そう。黒ボアかもよ」


「なんだよ。それ?

 予言?」


『断崖の剣』のひとりにせせら笑うように言われる。

 無視無視。

 その時、かなり大きめのコオロギがぴょーんと飛んできて『断崖の剣』の他の人が悲鳴を上げた。

 ユミエラも、少し強張った顔をしたけども、叫ばなかった。

 2回目だしね。

 さっき、私を笑った人が剣を振るってコオロギを斬った。

 

「虫だよ。怖気づくなよ、みっともない!」


 悲鳴を上げた男性が恥ずかしそうにしている。

 他のパーティの人達、私達も見なかった聞こえなかったふりをした。なのに、同じパーティの人が蒸し返しちゃだめだろ!


 悲鳴を上げた男性が「こんなもの!」と言って、コオロギの死体をつかむと何故か私の方に放ってきた。


「こんなの怖がるなんて……」

「ありがとう! くれるの!」

「え?」


 私は瓶を出してその死体を採取した。

 博士に言われてたんだ、狩場で虫を見つけて持ってきたら、お小遣いあげようって。

 瓶もいくつか貰ってある。


「気持ち悪くないのか?」

「ええ。薬学の方では買い取ってくれるもの(お小遣い程度だけど)」


 しまったという表情の男性。

 今更、返せなんて言えないよな。ククッ。

 ライカンが他のパーティに言ってくれる。


「で、俺達は左の2頭を狙いに行く。

 右のは?」

「じゃあ、私達が!」


『ラビリンス』のお姉さんが言って、移動を始める。

『断崖』の方は迷って、『ラビリンス』について行くみたいだ。


 申し訳ないけど、ほっとした。

 左に進んで、穴を掘っている黒ボア2頭発見!

 シアとエドガーが追い立て役になり、ライカンとユミエラと私が仕留めることに。

 私は魔法でユミエラを援護する作戦。

 狙ってのウインドストームからの稲妻を出すことに挑戦だ!


 シアのアクアバレットとエドガーのストーンバレット!

 食べ物に夢中になっていたから、命中して慌てている。

 剣を持つエドガーを見て、こちら側に逃げてくる。

 ユミエラとライカンが1頭ずつに斬りかかる。

 足狙い。

 上手くいって、足留めできた。

 1頭はライカンに首元を突き刺され、ウインドストームからの稲妻で感電したみたいになった。

 私は足を引きずって逃れようとするもう1頭にウインドストームを展開して、稲妻を生み出して、鼻のあたりに押しつけるように落とす。

 黒ボアなので、背中側だと剣も魔法も弾かれるところがあるんだけど、ライカンのように剣を突き刺して流せば効くなら、目とか鼻とかを狙えばいいわけじゃないかと。

 鼻はいい感じに感電しやすかったみたい!

 狙い通り!

 倒れてひっくり返って動かなくなったところをユミエラが腹側から剣を突き刺して止めをしてくれた。


「いえーい!

 黒ボア2頭! やったね!」


 ライカンが収納してベースキャンプに戻ると、なんだか二つのパーティが険悪な感じになっていた。

 子どものボアの死体がたくさん……。


「え? 子どもを狩ったの!?」


 私は思わず叫んでしまい『断崖』の方から睨まれる。

 ライカンが前に出て「子どもは残さなくては! 狩るべきではないだろう」と意見してくれた。


「そうだ!

 何度もそう言ったのに! 

 こいつらはやめなかった!」


『ラビリンス』のお兄さんが悔しそうに言ってきて。

 まあ、この中で一番年長なのはライカンだもんね。


「獲物は獲物だ!

 ボアをということなんだから!」


 話が通じない。

 成獣のボア1頭を『ラビリンス』が狩ったのだそう。

 まあ、もうひとつのパーティに少し遠慮してね。

 向こうも成獣を狩るだろうと。

 でも、『断崖』は大きなボアをスルーして、子どもの方に襲い掛かり、12頭、全部狩ってしまったらしい。

 それは狩場のルールというか、そういうのが……。


「次の獲物はどこにいる?」


 聞かれたけど、私は答えなかった。


「さっきの本当にいたからな。

 数も合ってた。

 信じてやるよ。

 次はどこだ?」


 私を庇うようにエドガーとライカンが前に出て、ユミエラとシアが私を両側から抱きしめる。


「協力はできない。

 狩りをするなとは言わないが、冒険者としての最低限のルールは守って欲しい。

 破っているところを見てしまった以上、一緒には行動できない。

 ここから離れてくれ」


 ライカンが言うが、彼らは笑った。


「俺達の獲物がここにあるんだから、俺達は動けない。

 このまま、この場所は使わせてもらう。

 出て行くのはお前らの方だ!」


 ひとりが言うと、残りの二人もそうだ! と言わんばかりに頷いている。


 あーあ、もうダメだこの人達。

 ここ準備したの私とライカンだよ。


 私とライカンはため息をついて、出したものを片付けようとした。

 ライカンの棒は何も言わなかったのに、枝を私が収納しようとしたら「あ、それ、俺達のだから」と言われる。

 は?


「俺達も後から拾って足したんだよね。

 だから、その焚き木は俺達の物でもある」

「……じゃあ、下の方のはうちのだから」

「じゃねえよ!

 枝なんて、どれが誰が拾ったなんてわからないだろ!?

 全部置いてけ!」


 なんですと!!

 みんな無表情になってる。

『ラビリンス』と『ユニコーン』からギルドに報告するしかないな。

 

「もう言葉が通じないようだな。

 行こう、ミコト」


 ライカンの言葉で、私達はその場を離れることにした。

『ラビリンス』がどうしようか困ってる。

 ボアもあるもんな。


「収納しておきましょうか?」


 私は声をかけ、リーダーのお兄さんが頷いてくれたので、ボアを収納した。


「一緒に行こう」


 エドガーが声をかけてくれて、一緒に移動した。

 少し道を戻ったところにした。そうすれば、迎えの馬車に先に気が付けるからね。

 そこにまた枝を出して、鍋を掛ける棒を設置し、私は大きめの鍋と材料を出して、焚き火をするとシアとスープを作り始めた。2回分の材料をね。これでみんなで食べられる。

『ラビリンス』のお兄さんがカバンからパンを出してライカンに声をかけている。


「何か手伝うことない?」と妹ちゃんが言ってくれて。

「じゃあ、これかき混ぜててくれる?」とスープをかき混ぜるのをお願いする。


 私とシアはフライパンを出して、買ってあった魚のフライも温めて出すことにした。

 やなことあったんだもの。おいしいもの食べて、きれいさっぱり!

 午後は元気に狩りしよう!! ね!

読んで下さり、ありがとうございます。

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