47 前に……(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
「珍しい水筒ですね」
はっ!
和食に興奮しすぎて、人前で水筒出しちゃった。
オハラさんが私の水筒を見ている。
私は動揺を悟られまいと『落ち着けー』と自分に言い聞かせながら、返事をする。
「はい、親から貰ったもので。
由来とかはわからないんですけど」
「湯気が立っているところをみると、魔道具でしょうか?」
「うーん、そうかもしれません」
笑って誤魔化す。
「おにぎり、おいしかったです!
薬学研究所ではああいう珍しい食べ物を作ったり食べたりしているんですか?」
「ああ、お口に合いましたか!
味噌は最初、ぎょっとされるんですよ」
「材料は豆ですか?
もしかして……、なっ……」
言いかけて考える、納豆はだめか。
「……あの糸引いた煮豆とか?」
「納豆、知っているんですか!?」
あ、そのまんまだった。
「あるんですか!」
私の頭の中では白いご飯に納豆……、お味噌汁に……。
「はっ! 醤油は!!」
「よくご存じですね……。
しかし、醤油は名前とどんなものかは伝わっているんですが、作れていません」
そうなんだー、残念。
「今日、薬学研究所に寄りますし、その時にお見せしますよ」
「ぜひ!
味噌作れるなら、私も作りたいです!!」
昼食後、今度は青い布の印がある方へ進んで。
小さな食虫植物の群生地に出た。
これは何だか小学生の時に図鑑などで見たことある。
ハエトリグサとか言うんだっけ。あの触るとパタンって閉じる奴。
少し湿地気味で、そして土地の養分が少ないのだろうと博士が教えてくれた。
少し採取して、戻る途中に赤ボアに遭遇。
襲ってきたのでこれは狩った。
私達の獲物にしていいと言われたが……。
「あ、雑食食物を、特にマンイーターを食べてる可能性もありますね!
やっぱり検体として引き取れますか?」
博士に言われちゃった。
「そういうことならば……」
ライカンが言って。
研究のためならね、しょうがない。私達は雇われてるからね。
途中、一角ウサギの群れを見つけて、私とエドガーでストーンバレットで仕留めた。
1羽だけ検体に欲しいと言われる。
後は私達の獲物だ。
オハラさんが私のペンダントを見て「一角ウサギが好きなのですか?」と聞いた。
「『幸運』のモチーフと聞いたのですが?」
「ああ、そう考える人もいますね。
たぶんそれはユニコーンと混同していると思います」
「ユニコーンって白い一角獣? 馬みたいな?」
「はい、でも、伝説の魔物ですよ。
いると言われていますが、捕えられた記録はありません」
異世界でも伝説なんだ。
でもウサギに角生えてるくらいだし、角生えてる馬がいてもおかしくないよな。
それでも伝説なんだ。
『ユニコーン』か……。
「一角ウサギがユニコーンからそう思われた幸運のモチーフだけど、ユニコーンなら伝説の幸運のモチーフ?」
「ええ、そう思う人が多いと思います。
このコタンは、まあ、学のある人が多いですからね」
ふーん、そうなのか。
『ユニコーン』……。パーティ名にどうかな?
かわいい感じもするし、かっこいい感じもする。
大丈夫かな。痛い感じはしないかな!?
私はライカンの隣に行き「ライカン、パーティ名の候補に『ユニコーン』ってどうかな」と言ってみた。
「ユニコーン?
神獣のユニコーン?」
「オハラさんに幸運のモチーフの伝説の魔物だと聞いて。
シーザー王国だと神獣なんだ!?」
「ああ、神殿によくモチーフとして使われている。
ユニコーンか、いいかもな」
「大丈夫かな? 変じゃない?」
「ああ、そこまで変な感じはしないが……。
後でみんなで候補を出してみよう」
「はい」
馬車との待ち合わせの所まで戻ってきたら、ディアの群れに遭遇というか、なにかに追われて私達の前に茂みから飛び出てきたみたいな。
ライカンとエドガーとユミエラが素早く剣を当てて、ジャンプしてるところを斬りつけて落とすみたいな感じで動きを鈍らせて仕留めた。
オハラさんが「これも……」というので、ライカンが「1体検体ですね」と笑った。
しかし、何に追われてきたんだろう。
私は魔力を探った。
うん?
犬みたいな?
なんだろう?
狐とか?
ガサガサッと茂みから現れたのは、ね、猫?
ここのディアは他の所より小さいとはい、普通のボアくらいはある。
うん、ボアとディアの体格を比べるのは難しいけど、今までのディアはボアより体高というかそういうのは大きい、でも、ここのディアはボアの高さと同じサイズ感っていうか。
そのここのディアと同じサイズって言うと、普通の猫(私の知ってる日本の猫)よりはかなり大きい。
野生の山猫みたいな感じかな!?
私達を見ると、慌てて、逃げて行った。
ちょっとほっとした。
けっこうかわいい顔してて、モフモフしてたから、狩るってなったら、心が痛かったかもしれない。
馬車が来て、薬学研究所へ。
馬車の中で博士とオハラさんは「いいフィールドワークだった!!」と大変満足そうだった。
それは良かった。
私達もたぶんこんな方の狩場には来なかっただろうから、勉強になった。
薬学研究所に到着。
採取した物や検体として獲物を1体ずつお渡しする。
使わなかった採取瓶などもお返しした。
今回のことやまた次回頼む話をしたいと博士に言われて、博士の部屋へ行くことになり、ライカンとシアが行くことに。
その間に私とエドガーとユミエラにはオハラさんが「ミコトさん、味噌を分けてあげますよ」と言ってくれ、その食べ物の研究室に連れて行ってもらった。
女性の研究員がいて、オハラさんが話をしてくれている間に、私はふたりにさっきのおにぎりの話をした。
「おにぎり? 味噌?」
ユミエラとエドガーは不思議そうに私の説明を聞いている。
女性研究員がこちらに来た。
うん?
なんだか、少し顔立ちが日本人ぽいような……。髪の色も濃い茶色……、セーブルのような上品な感じの焦げ茶で瞳が黒いからよけいにそう思えた。
女性研究員は私を見た。
「あなた……、もしかして……」
「お姉さんは?」
「私はマルミといいます。
あなたは?」
「私はミコトといいます」
「……あら、マイネで会ったわね」
マイネで!?
お姉さんはエドガーを見て、ユミエラを見て……。
「同じ宿に泊まってた、小さな女の子よね!
フード被ってたじゃない?
こちらの女性は髪の毛長かったし、男性は変わってないわね」
「え?
ディーの所の?」
「ええ、同じ宿にいたわ。
でも、私ひとり旅だったから、用心して部屋で食事とか済ませてたから!」
「あ!?
個室のお客さん!!」
ユミエラが思い出したように言って。
「私、時々食材を買い付けにサライ経由でマイネあたりまで行くのよ」
オハラさんが驚いている。
「知り合い?」
「いえ、宿が同じだっただけで。
私はちらっと彼女達を見たことはあるけど、彼女達はほとんど私のこと見てないと思うわ」
「でも女性の一人旅って……」
私が呟くとオハラさんが笑った。
「マルミはすごく強い魔法使いなんだよ。
母親が共和国の魔法塔のすごい魔法使いだしね。
その母親がいた世界の食べ物を研究しているんだ」
母親がいた世界……。
じゃあ、マルミさんのお母さんは転移者!?
オハラさんが「マルミ、ミコトはおにぎりとか味噌や納豆や醤油のこと知ってるようだよ」と言った。
マルミさんは頷いた。
「あら、じゃあ、時々ここに来て研究を手伝ってくれるとうれしいわ」
「ミコトに味噌を分けてやってくれよ。
とても喜んでおにぎりを食べていたから」
「あら、ふふふ。じゃあ、持って行って。
こっちよ」
マルミさんに手招きされて近寄るとこそっと言われた。
「やっぱり、転移者なの?
内緒にしといた方がいい感じ?」
私はぱっとマルミさんを見て、小さく頷いた。
「母に会ってみる?
あなたの生き方の参考になるかもよ」
もう一度、小さく頷いた。
転移者で結婚してマルミさんというお子さんがいて。
スミレコとは違う生き方をしている先輩だ。
マルミさんはそこに伏せてある瓶のひとつを手に取り、熱魔法で温めた。
「こうやって熱殺菌してから使うといいわよ」
樽から味噌をしゃもじで取って瓶に詰めてくれた。
「どうぞ!」
「ありがとうございます……」
読んで下さり、ありがとうございます。
※後からいろいろ思い出して、煮干し、頭のこと追記してます。
子どもの頃から一人暮らしの時は味噌汁の具としてもそのまま煮て食べてました。
今は夫の方の実家の味噌汁がほんだし派だったこともあり、便利な顆粒を使ってます。




