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42 王子達の事情(イサク視点)

どうぞよろしくお願いします。

ブックマーク、ありがとうございます!

とてもうれしいです! 頑張れます!

 なんだかよくわからない話だったが……。

 クルト兄さんは現在、王族の方と御一緒しているらしい。

 そして、シーザー王国から出てマイルズ共和国あたりを旅しているらしい……。

 その王族の方はこれまで王族と思われていない方で、最近、王族だと判明した方なのだそう?

 その方をできるだけ内密に探し出したい……。


「その王族の名はエドガーというのだが……。

 彼の容姿などはっきりわからないことが多くてな。

 そなたの兄のクルトを探す方が早いと思うのだ。

 弟であるそなたなら、クルトに会えばわかるであろう?」


 私は自信無げに頷いた。

 たぶんわかると思う。ただ、最後に会ったのは3年以上前だ……。

 母に預ける形で手紙でのやり取りはしていたが……、学校を卒業した後は連絡を取っていない、

 母はその後に話に行き、会っているのだから、確認すればもう少し最近の情報が得られるか。


「はい、わかります。

 視察をしながら、兄を探せばいいのですね」


 王妃殿下は満足気に頷かれた。


「シドに同行してもらう。

 詳しいことはシドから聞け。

 期待しているぞ」



 シドに別の部屋に連れて行かれ、いろいろ旅の準備のことなど聞かれる。

 そして、準備金として金貨を5枚渡された。


「たぶん、長い旅になる。

 丈夫な鞄といい外套と靴を買っておけ。

 係長の方には私が報告しておこう。

 あの母さんにもしばらく会えなくなるんだ。

 これから急いで買い物をして帰宅し、今夜は親子で過せ」


 そう言われて、シドと一緒に部屋を出た。

 シドは図書室の方へ向かい……。 

 僕はほけっとしてしまったが、自分の荷物が図書室の事務室の方あることに気づき苦笑した。

 エドワード王子殿下にもご挨拶をしていきたいが……、勝手に部屋に押しかけるわけにもいかない……。

 しばらく、そこで考え込んでいたらひそひそ声が聞こえた。


「イサク! イサク!」

 

 見るとエレノア王女殿下で!

 天の助け!


「エレノア王女殿下!」

「しっ! 声小さく!」


 小さな声で怒られるみたいに言われてしまう。


「え?」

「来て!」


 手をつかまれ、ずんずん廊下を小走りで駆ける。

 今日は思いもよらないことばかり起こる……。

 連れて行かれたのはエドワード王子殿下の部屋。

 エレノア王女殿下と僕はゼーゼーしてしまっていた。


「大丈夫!?

 エレノア、イサク……」


 エドワード様がオロオロして、椅子を勧めてきたり、お茶を入れるようにメイドに指示を出してくれている。

 

「……明日から、イサクが旅に出るわ!」


 エレノア王女殿下の言葉にエドワード様が動きを止めた。


「それは……、私がイサクと親しくしていたからかっ!?」

「うーん、それはないでしょう。

 別件でイサクを利用しようとしているのよ」

「別件……?」


 私は思わず呟き、話をしているエドワード様とエレノア王女殿下を見つめた。


「兄のことですか?

 そ……、そうだ。シドはなぜ()()母さんと言ったんだ?

 母さんに会ったことがある!?」


 エレノア王女殿下が頷いた。


「ええ、少し前、4日前ね。

 イサクのお母様、ライザさんが王城に呼ばれていたの。

 その時の使いが、あのシドだったわ」

「かっ、母さんが王城って……!?

 なんで、それにクルト兄さんも……。

 何が、起きているんだ!?

 僕は視察の旅に出てしまっても大丈夫なんでしょうか!?」


 エレノア王女殿下が少し困った表情で頷いた。


「大丈夫とは思うけど……。

 ライザさんのことは私も気を配ります。

 安心して」


 エドワード様が少し白い顔で言った。


「エレノア……、イサクにも伝えた方がいいのではないか?」

「でも、これからイサクはシドとずっと旅をするのよ。

 知らない方がいいこともある」

「エドワード様、エレノア王女殿下……。

 僕は知りたいです……、何が起きているんですか!?」


 エレノア王女殿下はため息をついた。


「知ったら……、後悔することになるかもよ。

 それでも、いい?」


 僕は頷いた。


 そこで初めて僕はクルト兄さんがカノンの娼館の従業員をして僕達を養っていたことを知った。

 そして、クルト兄さんが実はエドワード様の双子の兄弟で隠されて育てられていたエドガー王子であること。

 王妃と王の結婚の時に、当時の乳母に預けられたこと。

 それがライザ……、僕の母。

 母は亡くなった息子のクルトとしてエドガー王子を育て……。

 そこまで聞いてわかった。

 クルト兄さんも自分はクルトだと信じていたんだ。

 僕が生まれ、兄弟として育ち、父が亡くなり、クルト兄さんは僕達を養うために、娼館従業員という外聞が悪い仕事に付いたのだ。僕達が噂に巻き込まれないようにわざと王都から出て、ひとりで……。


「で、望み通り王妃は自分の息子をエリオットを第2王子にすることができた。

 でもね、エドワードがその……」


 エレノア王女殿下が口籠る。


「いいよ。気にしないで。

 私の容姿が王に相応しくないというのは聞いているだろう?

 本当に私は王になる気はないんだ。

 私が引くとエリオットが王太子になれる、が、エランが神殿に入るという話になる」

「エラン第3王子殿下?」

「そう、王妃は私よりエランの方が嫌いみたいだ。

 まあ、エランの母はまだ生きてるということもあるかもね」


 エドワード様が寂しげに笑った。

 

「そこで、私の双子のエドガーのことを思い出したわけだ。

 エドガーを隠されていた王子として公表したら?」

「……第2王子殿下ということになる?」

「うーん、まあ、僕の位置にスライドだよね。

 でも、エドガーはクルトとして生きてきたから、いきなり王になるのは無理だろう。

 エリオットが王太子になり、エドガーを神殿に入れればいい。

 たぶん、平民として育てられてるエドガーなら、言うことを聞かせやすいと思っているんだろうね」

「だから、クルト兄さんの姿を知っている僕に探しに行かせるために……」


 エドワード様が頷いた。


「それと……、ひとつ他に気になっていることがある」


 エドワード様がエレノア様を見た。


「カノンの『エスタ』という娼館に人をやって聞きましたの。

 そうしたら、クルトはどうやら逃げる人を助けるために同行しているようですわ」

「え、エドガー様……、あ、本人なんだっけ!

 エドガー様という隠された王子殿下を探すんじゃなくて、クルト兄さんを探せと言われたけど同一人物で……。

 他の逃げてる人!?」

「ええ、同時にミコト、プリシラ、ミカエラという三人の女性が娼館を出て行ったそう。

 クルトは彼女達と仲が良くて、特にこの中の一番小さなミコトっていう女の子を妹のようにかわいがっていたんですって。

 で、ややこしいんだけど、エリオット……、第2王子のエリオットが彼女達を追っているの」

「は!?」

「つまり、彼女達はエリオットに追われてる。

 そして、クルトはエドガーとして王妃に追われてる。

 王妃はエリオットが娼館の娼婦、もう自由になったそうだけど、彼女達を追っていることは知っているけど、そこにエドガーが一緒とは思っていない。

 もし、エリオットと王妃がお互いの情報を付き合わせることがあったら、ばれるかもだけど……」

「え? 

 ちょっと待って下さい。

 クルト兄さんは娼婦上がりのおんな達を守って、一緒に旅をしていると?」

「……そういう言い方は嫌ね。

 彼女達は自分で望んで娼婦になったわけじゃない。

 もし、エドガー……、クルトを見つけ出すことができても、彼女達を蔑むような態度を取ったら、あなたのお兄さんはあなたを許さないと思うわ」


 エレノア王女殿下の厳しい表情……。

 僕ははっとした。

 彼女達を蔑む心の中に、兄も蔑むような気持ちが……。

 彼女達も兄も、みずから進んでその仕事に就いたわけではなく……。確かにそうだ……。


「イサク。

 頼む。クルトを、エドガーを見つけてやってくれ。

 そして……、彼が望むなら、王城に……。

 彼が望まないなら……、王妃が彼を探し出すのを諦めさせて欲しい」

「そっ!

 そんなことできるわけがないでしょう!!」


 僕は震えた。

 でも、クルト兄さんには自由に自分らしく生きて欲しい。


「……わかりました。

 とりあえず、兄さんを探しながら、視察の旅をして……。

 シドは兄さんの姿を見たことがない。

 何とか、先に接触して、希望を聞いてみます……」

「ありがとう、イサク……」

「でも、それで、エドワード様はいいんですか?」

「ああ、僕は……、いいんだよ」


 エドワード様は寂しげに微笑まれた。


読んで下さり、ありがとうございます。

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