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4 隣の国に行っちゃうよ!(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

「ミコトの冒険者登録は他国でしたほうがいいよな。

 ここだと王都に近すぎるし、例の坊ちゃんが手を回している可能性もある。

 ここからだとすぐに入れるのがマイルズ共和国だが……、下流に向かう船に乗れば、アサニヤ王国もすぐ、だな。

 どうする?」

 

 クルトの言葉にプリシラが「とりあえずマイルズでしょ。王国じゃない方が安心」と返事した。

 

 そこで、川を渡り、隣国のマイルズ共和国のケレスという街を目指すことになる。


 川を渡れば、もうマイルズ共和国。少し歩けばケレスという街だそう。


「ケレス……、聞いたことある。

 マルスさんの家族がいるところじゃなかったっけ?」


 私の言葉にクルトが頷く。


「俺も聞いたことがある。

 でも、そっとしておこう。

 マルスはわざとこちら側に出稼ぎに来ていたから。

 娼館の従業員だと家族に話していたかも、わからないし」


 そっか、そんなもののか。


 私達は手持ちのお金で船賃を払うと、渡し船に乗った。


「さらば! シーザー王国!!」


 ミカエラが大きな声で叫んで。

 ふふふってプリシラも笑う。


 確かに嫌な思い出の国から出られてせいせいしたのかも。

『エスタ』を出た時に名前を呼ぶ時に姉さん、兄さんをつけるのをやめるように言われた。

 できるだけ、心機一転! ということと、確かにこの国だと、二人を買ったことがある人がいるって事実はそのままだからね。娼館を思い出させるような呼び方はもうやめようということ。

 クルトはじっとシーザー王国側の岸を見つめていて……。

 私は小さな声で聞いた。


「家族がいたんだもんね。

 国を出ちゃって、大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だよ。

 覚えててくれたのか!

 弟も無事に学校を卒業して、働き始めたし、な」


 近くにいたミカエラが驚いたように言った。


「え、じゃあ、いつでも『エスタ』やめられたのに、いたの?」


 ミカエラの言葉に笑うクルト。


「あー、なんかなー。

 ミコトのことも気になってたし……。

 ……カイラム、いただろ?」


 私はきょとんとする。


「カイラム?

 調理助手の?」


 浅黒い肌に黒と灰色の中間みたいな髪色で目が金色だった。

 いつもニコニコしてたよ。


「クルト同じぐらいの年だよね?

 まだ『エスタ』に来て2年くらい?」」


「俺より1コ上ね。

 カイラム、ミコトのこと……、なんか狙ってたんだと思う」


 狙う?


「あ……。でも、私、その時はもう12歳だけど、8歳とか言ってたし?」

「そういう趣味の奴もいるってこと」

「あー、そうだったんだ。

 ちょっとそれは、そこまで気にしてなかったかも。

 あ、それで、お小遣いの時、誰からって!」

「まあね。

 奴がミコトとふたりっきりにならないようには気をつけてたけど。

 マルスも気にしてくれてたんだよ」

「そうなの!!」


 全然気がつかなかった……。


「客には気をつけていたみたいだけど、身内には……だよな」

「あ、そう、お客にはそういう趣味の人がいるかもと顔は合わせないようにして、客が入れる場所では気にしてたけど……」

「信頼してたって、そういうこともあるから、気をつけて」


 クルトはぽんとフードの上から私の頭を撫でるように叩くと、船の前の方に行ってしまった。



 娼館で5年間過ごしたことで、私はけっこうそっち方面のいろいろな知識を得てしまった。

 いや、あんまり外に出られないからね。本をたくさん読んでたけど。

 恋愛物でも結構過激な奴とかね。そこにあったから、普通に読んじゃってた。

 まあ、環境が環境で、普通にいろいろ見聞きしちゃうから、ねえ。

 まあ知っているのとやっているじゃだいぶ違うけど。

 まだ13歳だしね。でも小柄なので10歳ぐらいに見られることが多い。

 知っているからこそ、身を守れることもあるので、ね。


『神の愛し子』だけど、神殿に保護されると閉じ込められて、力を搾取され続けるらしい。

 もし保護されずにいたとしても、成長しきるとその外見でばれやすいから、その……、その場合は売られちゃうことが多いらしい。

 つまり、観賞用というか愛玩用というか……。まずいと性奴隷ってか。

 弱々しく、いつまでも若くかわいらしく、見えるらしい、よ。

 この世界の人からすると、成人したら異種族くらいに見えるのかな?

 成人するまでに、子どもだと誤魔化せなくなるまでに、何か自分の身を守って居場所を作らないとはいけないと思うけれど、どうすればいいのかすら、よくわからない。

 これから、プリシラとミカエラとクルトといる間に考えて見つけなくちゃ。


 でも、性奴隷だなんて、娼婦よりひどくない!?

 娼婦は……、あ、でも、『エスタ』はいい方なんだっけ。

 合法できちんと登録していて、それを守ってくれて、自分を買い戻すこともできる。

 違う店だったら、親や男が追加で借金を負わせたり(それは違法らしいんだけど)、その結果、死ぬまで働かされるなんて聞いたこともある……。



 そんなことを考えていたら、対岸に着いた。

 三人はギルドカードで入国できたが私はクルトの妹として申告された。

 まだ小さい妹ってことで。

 無事に入国できた!!


 このマイルズ共和国は商人が強い国なんだって!

 貴族はいるけど、そこまで威張ってなくて、商人、職人、農家が力があると教えてもらった。

 この船着き場の周辺もなんだか活気がある!


 ケレスまで行くのに歩いていたら、商隊の馬車が通りかかり、声をかけてくれた。


「おちびちゃん、乗って行くかい!?」


 ミカエラがすぐに返事した。


「この子とプリシラを乗せてくれるなら!」


「親子かい!?」


 そう聞かれて驚くけど、私は小さく見えるし、10代で子どもがいる人もいる。

 ぎりぎり親子って線もありかも!?

 でも、プリシラは若くてきれいなのに!


「ありがとう!

 娘と乗せてもらうわ!」


プリシラが笑顔で言って、私達は馬車の後ろに座らせてもらう。


「そっちはお母さんの妹さん夫婦かい!?」


 商人のおじさんにそう聞かれたミカエラは「そうでーす!」と答えて、クルトは顔を顰めていた。

 ふふっ、そんなふうに他の人からは見えるのか!


 私は景色を観るのに大忙しだ。

 カノンとは全然違う。

 こちらは畑が広がっている。


「覚えてる?

 マイルズの穀倉地帯のこと」


 プリシラの言葉に私は頷く。


「うん、ここの食材がカノンにも入ってきてたよね。

 さっきの船着き場も活気があったし、ここからマイルズ川を利用して作られた穀物や野菜が売られて行くんだね」


 プリシラは満足気に頷いて、補足してくれた。


「ケレスに着いたら、街の市を覗いてみましょう。

 小麦を使った料理がいろいろあると思うわ」

「楽しみだね!」

読んで下さり、ありがとうございます。

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