3 娼館『エスタ』(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
森を出る前にクルトさんがなんか大きな布のようなものを私を包んで抱っこすることになる。
それまでの話で私の外見、黒髪のサラサラなのが珍しく、また黒目も珍しいんだって。服装だってね。
見つかって転移者だとわかると『神殿』に保護されて自由を奪われるということを教えてくれたので私は素直に従った。
まあ、プリシラさん、ミカエラさん、クルトさんは悪い人じゃないと思ったからだ。
そのまま運ばれて、どこかの建物に入ったようだ。
ドア開けて、足音が外から建物の中とかそんな変化を感じたから。
そのまま、階段を上がって、やっと下ろされた。
布を外されるとそこは小さな部屋で、プリシラさんとミカエラさんの部屋のようだった。
「私達はミコトを匿う。
だから、心配しないでここにいて欲しい」
プリシラさんの言葉に私は頷いた。
「ここはどこ?」
プリシラさんはちょっと困ったような顔をしたけど、教えてくれた。
「娼館『エスタ』よ。
私達は……、ここの従業員で……、私とミカエラは娼婦、クルトは私達を守っているというか、見張ってるというか……」
「そういう職業のことを『兄さん』と言うんだ。
プリシラ姉さんは私の先輩だからね」
ミカエラさんが言って。
娼婦……、ん、なんか外国の昔の本で読んだことがある。
身体を売る女の人のこと……、だよね。
「プリシラ姉さん、ミカエラ姉さん、クルト兄さん、だね」
三人はちょっとほっとしたように微笑んだ。
クルト兄さんが言った。
「プリシラとミカエラは親や家族に売られてここに来たけれど、嘆くばかりじゃなくて、冒険者でも稼いで、自由になるために頑張っているんだ。
俺は……、それを手伝っているというか……」
「うん、クルトもね、お金が必要なのよ。
弟くんを学校に行かせてるんだもんね。
それで、三人で副業で冒険者してるの。
その時に泣いてるミコトを見つけた!」
ミカエラ姉さんがにかって笑った。
プリシラ姉さんが頷いた。
「そう、何とかミコトをここにおいてもらうようにするから、しばらくはこの部屋から出ないで待っていてくれない?
食事とかは私とミカエラで何とかできるから」
「ありがとうございます。
えっと、御迷惑ではない?
私はここにいて大丈夫?」
私の言葉にプリシラ姉さん、ミカエラ姉さん、クルト兄さんは同時に頷いてくれた。
「「「大丈夫!」」」
それから数日、私はこの部屋に隠れるようにしていたんだけど……。少しずつ、娼館内で行動範囲が広がっていくにつれて、なんとなくこの世界の様子がわかってきた。
ここはシーザー王国という国で、王都テイルの近くの街カノン。
王都から国境の川の方に来たところで、大きな森などがあり、貴族が気晴らしに狩りに来たり、豊かな自然で魔物を狩るのを仕事にしてる冒険者がいるという、自然豊かなリゾートというか、観光地というか、そんな感じの街らしい。
それでそういう街なので小さいながら歓楽街もあり、娼館がいくつかあるそう。
ここ『エスタ』はマダムと呼ばれる女主人が夫さんから店を引継ぎ、手堅く信用できる商売をしていると評判なんだそうだ。
どんなのが信用になるのかよくわからないけれど、マダムは元娼婦であったことから娼婦に理解があるのだそう。
元々採用(?)するに基準も厳しくて、美人揃いだし、娼婦をバカにするような客はお断りだよ! という感じらしい。
つまり姉さん達を大切にしてくれてるということかな?
まあ……、他の娼館に比べるといいところらしい。
プリシラ姉さんは現在25歳。
家族を亡くし、叔父家族に引き取られたが、18歳の時にその叔父に売られたのだそう。悲惨な話だ。でも、自分で自分を買い戻して自由になると決めて、いろいろ副業をしていたらしい。
冒険者として登録して、薬草集めとか弱い魔物を罠で捕らえたりしてたそう。
三年後、15歳のミカエラ姉さんが父親に売られてきたそう。
女性にしては身長が高く、筋肉もついていたことから、プリシラ姉さんが冒険者仲間にスカウトして、パーティというのを組んだんだそう。チームみたいなもの。
そこにクルト兄さんが加わった。
クルト兄さんはミカエラ姉さんと同じころ、『エスタ』に従業員として就職したそう。
従業員の仕事以外に冒険者をして稼ごうと思っていたみたいで、ギルドでばったりプリシラ姉さんとミカエラ姉さんに出会ったんだって。
なんだか家族のためとか聞いた。
私が助けてもらった時は、プリシラ姉さんは20歳。ミカエラ姉さんはまだ15歳。クルト兄さんは17歳だったから、男の子ってプリシラ姉さんが言ったんだね。
だから、今はミカエラ姉さんが20歳、クルト兄さんが22歳ってこと。
私は13歳だけど、もうすぐ14歳になる。
で、話を戻すと、助けられて匿われた私はこの世界の服とかに着替えさせてもらい、いつの間にかプリシラとミカエラがこっそり飼っている孤児みたいなことになり、小さな女の子のふりをして、クルト兄さんにくっついて厨房の仕事をしたり、掃除をしたりするようになり、マダムからもここにいていいとOKを貰えた。
まあ、食費はきっちり入れろって言われたみたいで……。
プリシラ姉さんとミカエラ姉さんとクルト兄さん三人が払ってくれてたけれど、私がひとりで掃除の仕事をてきぱきできるようになると、マダムは食費と仕事を相殺してくれるようになった。
立派な掃除婦誕生!
この世界の人は身体が大きい。
私はかなり華奢な部類に入ると思う。つまり平均的な日本人だと小柄で華奢ってことになっちゃうと思う。
なんか骨格からしてちょっと違うんじゃないかと思うくらい。
9歳の時でも、マダムに「6歳?」とか言われたし。
今、13歳だけど「10歳くらいに見える」とよく言われる。
なので、まだ子どもだから、娼館の中では姿を隠して働かないといけないと理由をつけて、フード付きの上着を着て、顔や身体を隠すようにしていた。
娼館内では掃除婦として働き、時々、森に姉さん達が冒険者として狩りをする時にお供として連れてってもらうのが楽しみだった。
この世界には魔法もあるんだよ!!
勉強はプリシラ姉さんが教えてくれた。
平民でも通えれば学校があるみたい。
ミカエラ姉さんとクルト兄さんは平民の学校に通ってたそう。
クルトが、プリシラ姉さんは元貴族かもしれないな、なんて言ってた。
私に教えてくれる勉強が平民の学校の内容より難しいらしい。
歴史とか地理とか特に詳しくやってるとか!?
でも、私はそこのところが全然わからないとこだから、教えてもらってとてもうれしい。
計算とか文章を読む、書くはもうけっこうできていて、逆に驚かれたし。
私はそんな風に5年間、娼館で『妹』として飼われていたというか、保護してもらっていたというか……。
おかげでじっくりこの世界に馴染むことができた、と思う。
そしてどうやら『神殿』は私のような転移者を保護はするけども、それはその力を利用したいからで、元の世界に、日本に返してくれるわけではない、ということもなんとなく知った。
プリシラ姉さんが昔、神殿で私のような転移者、神殿では『神の愛し子』と呼ばれるようだけど、が、ひどい目に合っているのを見てしまったらしい。
その内容までは教えてくれなかったけど……、その表情からは、十分ひどいことなんだろうなって伝わった。
プリシラ姉さんとミカエラ姉さんとクルト兄さんは、私を守ろうとしてくれている。
そして、プリシラ姉さんとミカエラ姉さんと一緒に時期が来たら『エスタ』を出て行こうとは話していたんだけど、それが思いもよらず、早まったという感じかな。今は。
読んで下さり、ありがとうございます。
これまでの説明も終わり、旅に出るよ!!
これからもどうぞよろしくお願いします。




