39 憧れのコタン(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
えーっと。
海の船は川の船と全然違った。
スーッと海の沖へ出て、陸から離れるとマイルズ共和国の方向である東へ進んでいるんだろうけれど。
一応、岸というか、陸がうっすらとは見えてるんで、あっちが陸か! という感覚。
波が……、上に上がり、下に落ちる。それがくり返し。
陸地で見ているぶんには楽しかったその波が、船を上下させ、それが延々と続く。
最初は初めての感覚に面白いと思ったんだけど、夜になりじっとしてると、ふらふらになってきた。
目をつぶるとよけいに揺れているのを強く感じてしまう。
一番ひどく船酔いしてしまったのがユミエラだった。
私もちょっとふらふらはするんだけど、食べられない、動けないというほどではなく。
ユミエラのそばについて背中を擦ったり声を掛けたりして励ました。
船室は他の人との共同の大部屋だったので、小さい声で歌ったりして。
いや、いつものでたらめ歌じゃないよ。さすがに他の人がいるところで『船酔い治れ~♪』とか歌えない。
私が知ってる歌をハミングでゆっくりと歌って背中を擦った。
まあ、それでも聖魔法は少し発動してたみたいでユミエラと近くにいた家族で船酔いでぐったりしてたお子さんがけっこう良くなった。
その家族はお父さんがコタンに仕事というか勉強でいるそう。
息子君が大きくなった(5歳)ので、お母さんと息子でお父さんのところに行くことになったそう。
確かに、船に乗るだけとはいえ、幼児には厳しいよね。
5歳なら幼稚園年長、まあ小学一年生に近いもんね。
母子だけというのも心細かったのだろう。
大部屋に最後に乗り込んできた私達に声を掛けてきて……、なんとなく一緒にいる。
カイリくんというんだって、お母さんはカテリーナさん。
「ミコトさんの歌、なんだか心地いいですね。
カイリが寝つきがいいのはそのおかげかも」
カテリーナさんが寝てしまったカイリくんの頭を撫でながら言った。
ライカンとエドガーもちょっとふらふらすると言っていたが、私と同じくらいで、動けなくなる程ではなかったし、シアがけっこう平気で、食事とか飲み物とか世話を焼いてくれた。
この船はマイルズ共和国に入ってからとニース、モルドバと寄港して、終点の港はコタンだ。
ニースはサライに近いので、モルドバかコタンまで行こうと話していたんだけど(一応乗った時点ではまだ迷っていたから、お金はコタンまで払ってた)。
たぶん、私達がこの船に乗ったのは、目撃者とかいるからね、アサニヤ王国側が調べればわかるだろう。
モルドバで降りるか、コタンまで行くかまではわからない。私達も今決めるくらいだしね。
シアが「コタンまで行きましょう!」と言った。
そして声を潜める。
「たぶん、コタン行の船でコタンまで行くとは思わないでしょう。
それに、モルドバはジュノーにもまだ近いし」
私とエドガーも賛成した。
できるだけ遠くの方が良さそうな気がする。
それにカイリくん達のことも気になるよ。
ユミエラは「えー、船、降りられないのー!!」と涙目で言った。
そうなんだよね。
ユミエラが一番げっそりしてる。
船に乗って3日目(夕方に乗ったから丸2日間ってとこかな)、ニースに到着。
私達は降りずに我慢した。
次の日の早朝出航。
次の日の昼にはモルドバに到着した。
船の上から街を見たが、なんか古風な昔ながらの石造りの建物が多く、素敵な感じだった。
ここから2日間でコタンだそう。
全部で6日間の船の旅。
ユミエラはモルドバを過ぎたあたりから驚異的に回復して食べることができるようになった。
カイトくんもね。
コタンも古くからの港町で、古代から有名な図書館があるんだそう。
カイリくんのお父さんもその図書館というか研究所にいるとか。
エドガーが船の上から遠目に見えるコタンの街を見ながら言った。
「イサクが憧れてた街なんだ」
その時は私とエドガーが二人だったから。
「イサクって、弟さん?」
「そ、母は自由になれと言ったけど、ずっとイサクと俺は兄弟として育ってきたんだもんな。
今でも弟だと思っている……」
「勉強好きだったんでしょ?」
「よくできたし、読書も好きで、さ。
もし、就職しなくていいのなら、歴史とか研究したいと、このコタンの街が憧れだと言ってた」
「……役人になったんだっけ?」
「ああ、文官で、王都の王城内のどこかって言ってたな。
図書室があって、文官だと利用できるからって、決まった時、喜んでたよ。
コタンに俺が来たなんて知ったら、羨ましがるだろうな……」
「へー、じゃあ、その有名な図書館、ぜひ行かなくちゃね!
それで、今度会えた時に話ししなきゃ!」
私が笑うとエドガーも笑った。
「そうだな。
うんと自慢してやる」
終点ということもあり、船の中に役人が乗って来て、入国の手続きが行われた。
無事に終わり、私達はカテリーナさんとカイトくんと一緒に船を降りた。
降りた所で、お父さんが迎えに来てくれてたみたい。カテリーナさんがそこにいた男性と抱き合って。
カイリくんはびっくりして私にしがみついてた。
うん、お父さん、記憶にないくらい久しぶりなのね。
涙ぐみながら何か話しているふたりははっとしてカイリくんと私達を見て、こちらに手を伸ばした。
カイリくんを前の方へ、カテリーナさんの方へそっと押し出すとぎこちなく歩いて行く。
三人でまた抱き合うけど、カイリくんはちょっと困った表情をしている。
笑っちゃいけないけど、感動の対面なのに、ちょっと、笑ってしまいそう……。
私達はギルドに行こうとして歩き出したんだけど、呼び止められた。
お父さんにも紹介される。
クラウスさん、図書館付きの研究所の研究員だそう。
ここの図書館にはいろいろな研究所があって、その中の地理や歴史を研究する研究所にいるそう。他に医学とか文化とか海や生物の研究所などあるそう。
カテリーナさんが、私達が一緒で心強く、またいろいろ配慮してくれたり、手伝ってくれて本当に助かったと言ってくれ、御夫婦からお礼を言われた。
この後は? と聞かれ、ギルドに行って、宿を探し、仕事を、できれば狩りの仕事をする予定と話をすると、研究所に来ないかと言われた。
研究所に空いている貸家があるのだそう。
そこを安く借りられると!
それは魅力的!
というわけで、ギルドは後にして、クラウスさんとカテリーナさんとカイトくんと一緒にその研究所へ向かうことになった。
港から歩いて乗合馬車の停留所へ。
そこから図書館街の地理歴史研究所前まで!
わかりやすい!
図書館はお城みたいに見えた。
そんだけ大きな建物で……。
地理歴史研究所もけっこう大きな建物だった。
そこで、受付して、クラウスさんの紹介で貸家を借りられることになる。
家族向けの3部屋ある平屋だとか。
とりあえず、2週間借りる契約をした。
値段も宿を4~5日借りるくらいの金額だった。
研究所の馬車も空いていれば格安で貸してもらえるそう。
家を見に行くと、クラウスさんとこの隣だった!
庭もあって、かわいい家だ。
ざっと見た感じ、壊れてるところもなく、住みやすそう。
カイトくんがさっそく遊びにきたけど、大丈夫なの!?
すると遅れてクラウスさんとカテリーナさんも来て、馬車を借りて買い物に行くので一緒にどうかと誘ってくれた。
大人数乗れる? と思ったら、荷馬車で、荷台にならたくさん乗れるわ。
私達はギルドまで乗せてもらうことにした。
乗合馬車の乗り方はわかったから、帰りは乗合馬車で帰ってみよう!
読んで下さり、ありがとうございます。




