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36 警告(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

「明日は狩りを休まないとか……」


 シアが残念そうに言う。


「一日ぐらいゆっくりしたら?

 もうソーサラにも後2日だもんね」


 私の言葉にシアが苦笑した。


「そうね……、そうしよう」


 エドガーとライカンが戻って来た。

 ラスター様と従者は『お大事に!』と言って、馬車に戻り、ヤシマへ向かったそうだ。


「手紙が来て、ヤシマに戻らなければって言ってた」

「それでか!

 明日は無理だが、明後日一緒に狩りができたらと言っていたよ」

 

 ライカンが笑って言った。


「ライカン!

 ミコトが治してくれて、もう足はいいんだけど、怪我をしたと知った人がいるから、私は明日一日おとなしくしてるわ」


 シアの言葉に頷くライカンとエドガー。


「ああ、そうした方がいい。

 明日は……、ユミエラも休みにするか?」

「いや、私は借金返さないとだからっ!」


 ユミエラが必死に言うので、みんな笑ってしまった。


「じゃあ……、ミコトは仕事。

 ユミエラとエドガーが狩りに行くか?

 私はシアと残ろう」

 

 ライカンの言葉にシアが反論する。


「私はひとりでも大丈夫です!」

「ううん、二人で行動した方がいいよ。

 ライカンがいれば買い物にもシア行けるし」


 私が言うと「ひとりでも平気よ」と言い返された。


「シア、じゃあ、私がひとりで買い物に行ってもいい?」

「それはダメ!」

「ふふ、シアも私も同じだよ。

 エドガーとユミエラに送ってもらって、帰りも一緒に帰ってくるから!

 シアはライカンと一緒にこれからの移動のこととか考えて、二人で買い出しに行ったりすればいいよ!」


 シアの表情がふっと緩んだ。


「私とミコトが同じなわけ……」

「同じだよ」


 私はシアの手を取った。


「私はシアが大切。

 シアも私のことを大切にしてくれるでしょ?」

「ミコト……」


「あ、でも、獲物を持ち帰るのにどうしたらいい!?」


 ユミエラが言って。

 エドガーが苦笑した。


「俺が担いでくればいいんだろ!?

 帰りに合流すればミコトに収納してもらえるし」



 夜、シアに謝られた。


「ごめん、獲物を出す時に『マリナ様』のことを聞いてみようと思ってたのだけれど、聞けなかったわ。

 明日、聞けたら、聞いておく!」

「うん、よろしくお願いします」


 明日、明後日でお仕事は終わる。

 とりあえず、今はそのことだけをしっかり勤めることを考えよう!



 朝、エドガーとユミエラと私は丘への道を歩いていた。

 お屋敷の門まで来るとアスバル様と従者が、待ってて。

 一緒に狩りに行きたいそうだ。


「今日はこちらも二人しかいませんが……」


 エドガーが困ったように言ったが、アスバル様は何だか鼻息が荒い。


「ラスターが昨日抜け駆けしたんだから、いいんだっ!

 それにうちのダイは収納魔法が使えるから!

 役に立つ!」


 それは確かに役に立つというか、今必要な!

 話し合い、四人で狩りに行き、私と合流した時に……渡してもらうなんて話になるのかと思いきや、ここまで来たらアスバル様の馬車でギルドへ行き、そこで一緒に買い取ってもらうということになった。


「ギルドの宿ってのも見たいし!!」


 あー、なんで貴族の坊ちゃま達はそんなに冒険者の生活に興味があるの!?


 私は四人を見送り、お屋敷に入った。

 トロアさんが今日はオグルさんもお屋敷で過ごすと教えてくれた。

 お休み?

 来客でもあるのかな?


 奥様とオグルさんとハナはテラスにいた。

 私は挨拶して、ハナと一緒に控えていようとしたんだけど、オグルさんに呼ばれて、テーブルについた。


「昨日、ラスター様を、ギルドの中を案内してくれたそうだね。ありがとう」

「いえいえ、こちらこそ!

 怪我をした友人を送って頂いて、本当に助かりました!」

「友人の怪我は?」

「捻挫でした。

 今日、一日休めば大丈夫そうです。

 怪我をしたシアと用事のためにライカンが宿にいます。

 他のふたりは狩りに来て、アスバル様と従者の方と狩場へ向かわれました」

「医者には見せずに?」

「はい、私達、冒険者としての生活が長いので、みんなで怪我などは診断というか様子を見て応急的な治療ならできますし。

 捻挫だったので、冷やして、安静にするくらいですし」

「なるほどね。

 ミコトは……、このまま我が家に仕えてくれる気はないかい?

 他の仲間も一緒に雇おう」

「……いえ、その、大変ありがたいお申し出なのですが……。

 私達は次の街へ移動を考えていまして、お断りします」

「定住して安定したいという気持ちはない?」

「はい、今は旅を楽しんでいるところです」


 私はにっこり微笑んだ。

 

「……そうか、それは残念だ。

 キアラがミコトのことをとても気に入ってね。

 このままいてくれたら良かったんだが……」


 奥様が私を見て言った。


「旅をしたいのなら、私がテーベに行く時に連れて行ってあげられるわよ」

「……ありがとうございます。

 でも、仲間とのんびり、相談し合いながらの旅を続けたいので」

「……そう、残念だわ。

 ミコトがいると、私、体調も気分もとてもいいのよ」


 そんな効果があるとは聞いている。

 ライカンもスミレコの力として肌が触れ合うと癒しの効果があるとか、第2王子が離婚したのにその力を求めて通ってきてたとか言ってたよな。

 なんか変な薬みたいに中毒性とかないよな?

 私は『ダメ、絶対!!』とかいうポスターを思い出した。

 私自身が、そういう効果があるのか!?

 でも、今まで生活していて、そこまで変にという人はいなかった気が……。


「それは良かったです。

 でも、私の力ではないと思いますよ。

 このお屋敷、とても居心地が良いですし、みなさん、オグルさんと奥様のことを大切にされてますし」

「そう……、あなたも行ってしまうのね」


 奥様の寂しげな微笑み。

 私は意味を計りかねて首を傾げた。

 オグルさんが言った。


「明日は最後だね。

 できたら君の仲間もみんな招待したいと思う」

「明日はラスター様が狩りをしたいと言ってました」

「そうか、では午前中はアスバル様やラスター様と狩りをしてもらい、昼食にみなさんを御招待しよう」


 その時、ハナの様子がというか、気配が私には少しちくっと感じた。

 なんだろう?


 屋敷の中はいつもよりばたばたしていて、なんだかシーツとか持って走り回っているメイドとか、シーツやカーテンを洗濯したり、布団を干していたりする様子が見られた。


 ラスター様がいない間に掃除?

 誰か、ラスター様と一緒に来るとか、かな?


 私は奥様とまた花瓶の花を入れ替えることに。

 一度花は全部抜いて、そこからもう萎れたりしている花は抜いた。

 メインの大~中の花瓶には新しく庭から切り出した花を使い活けていく。

 小さな花瓶には前からの花を短く切ったり、他の花を加えたりして、活け直した。


 奥様が昼食まで部屋で休むと言われ、私とハナは隣の部屋に控えることに。

 最初にここで、いろいろ奥様への接し方とか教えてもらったんだよな。


「ハナ、まだ明日があるけれど、本当にお世話になり、ありがとうございます」


 私はお礼を伝えた。

 ハナが何か言いたそうな顔をしている。


「何か?」

「……逃げた方がいいかも」


 私はびっくりした。


「逃げた方がいい。

 明日は、たぶん、大変なことになるわ。

 奥様が言う、マリナ様って、今の聖女様よ。

 奥様から聞いたことがあるの。

 親友だったんですって。

 でも、マリナ様が転移者だとわかって、聖女として王都へ行くことになって。

『また会おう』と約束したのに、会えないって寂しそうにお話されるのよ。

 奥様はあなたも転移者ではと思っていたみたい」


 私は息を半分止めていたみたいになった。

 息を止めたいというか気配を消したくて浅く呼吸しているみたいな、変な感じ。


「でも、私は……」


 何か言わなきゃだけど、何も言えない。


「旦那様はもしミコトが転移者で、聖女であるなら、自ら希望してこの街にこの屋敷を巡回地点に入れるようにと、仲間のみなさんをも引き取るというようなことを言っているのだと思う」


読んで下さり、ありがとうございます。

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