35 3日目(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
今夜はボアの肉で焼き肉だ!!
調理はシアとライカンとユミエラに任せて、私とエドガーは鍋持参で魚のスープを買いに行くことにした。魚のスープ、おいしんだよね。前の世界だとスペインとかイタリア料理みたいな感じなのかな?
賑やかになりつつある夕暮れの通りでハナさんらしき人を見かけた。
あれ?
でも、こんなところにいるかな?
人混みに見失ってしまった。
人違いかな?
3日目。
お屋敷へ。これでちょうど真ん中過ぎるってことだ。終わりが見えてきた。
今朝は奥様、お部屋で朝食中とのことで、私はテラスでアスバル様とラスター様とお茶をして待つことになった。
早く奥様来て欲しい。
出身のこととかいろいろ聞かれて困ったけれど、話題が狩りのことに移り、ヤシマの狩場のことも聞くことができた。
ふたりが行ったことのある狩場はあるけれど、貴族が楽しむみたいな管理されてる狩場らしい。
冒険者達は少し遠くの山の方へ足を延ばしているという話だ。
なので、物足りなくてソーサラの方へ来てみたということだった。
「昨日は白いディアを狩ることができて!」
「へー珍しいね。ここらに生息してる話は聞いたことがあるけど、見たかったなあ!」
アスバル様が目を丸くして言った。
「君達のパーティはどんな集まりなの?」
ラスター様に興味津々といった感じで聞かれてしまう。
「私とユミエラとシアは昔からの知り合いです。
二人ともお姉さんみたいな。
で、エドガーも同じくお兄さんみたいだったけど……、今は婚約してます。
ライカンはエドガーとシアの親戚みたいな人で、私達のことを心配して一緒に来てくれています」
「へー、みんな昔からの知り合いなんだね。
幼馴染かな?」
ん?
私には幼馴染かもしれないけど、みんなはもう大きかったからなあ。
「私にしてみれば、そうですね」
その時、奥様とハナが来てくれて、助かったー!
ハンドマッサージをすることになり、私が奥様にやっている横でハナがアスバル様の手を同じようにマッサージした。
ラスター様は面白そうに見ていて、終わったら「私もやって欲しい」と言った。
奥様は笑って「やって差し上げて」というので、私が右手、ハナが左手をマッサージした。
「なんかいいな!
すごく贅沢だ!」
両手をマッサージされながらラスター様がすごくうれしそうというかちょっと恥ずかしそうというか、まあ、喜んでた。
その後、庭を散策したんだけど、その時、私はハナに聞いてみた。
「昨日、夕方、街の方にいなかった?」
「……行っていません」
「じゃあ、見間違えかな?
買い物に店の通りに行った時、見かけた気がして」
「私ではありません」
本当に心外そうにそう言われたんだけど、なんか引っかかった。
でも、今はこれ以上、言わない方が良さそう。
「わかった!」
そう答えて私は奥様と庭師さんの方へ行った。
昼食の時、オグルさんとトロアさんが戻って来て、ラスター様に手紙を渡した。
それを読んだ後、残念そうに言われた。
「私は今日、一度ヤシマの方に戻らないといけないようだ。
ミコトは明後日まで、だよね?」
「はい、明後日でこちらに伺うのは最後です」
「その後は?」
えー、どう答えておこうか。
「みんなと話していて、行き先は検討中なんですけど、他の街へ行ってみようかと」
「へー、ぜひ王都に来て欲しいな」
「ラコルムでしたっけ?」
「ああ、古い部分と新しい部分と、いい街だよ」
「古い部分……?」
「聖女教会とか、昔からの建物だからね。
ぜひ見ておくといいよ!」
私は頷いた。
聖女教会なんてのがあるんだー。
「テーベにも大きな古くからの教会があるの!」
奥様が言って、テーベの話になった。
「テーベの教会はシーザー王国の影響も受けていて、神殿と呼ばれたり、教会と呼ばれたりの歴史がありますね」
ラスター様が言った。
帰りにまたアスバル様とラスター様に門まで送られる。
門の所にエドガーしかいない?
「どうしたの……?」
エドガーが駆け寄った私を軽く抱きとめて山の方を見る。
シアが、ライカンとユミエラに支えられながらこちらにゆっくりと……。
右足を庇ってるみたいな?
「シア、怪我したの!?」
「ああ、狩りの途中に……」
私はシアの方へ駆け寄った。
エドガーはラスター様とアスバル様に話し掛けられて門のそばにいる。
「シア! 大丈夫!?」
「ミコト! 大丈夫よ。
自分で転んじゃったの。
ボアを追い立てていたら、こちらに向かって来られて」
この狩場は長生きしている大きな個体が多い、追い立てられた時に逆を行けば手薄なんて知恵を持ったボアだったのかな。
「慌てて逃げて、ボアは躱せたのよ。
逃げた先で、落ちてた太めの枝を踏んで滑っちゃって……」
捻挫ってところかな。
ラスター様の従者がこちらに来てくれてライカンに何か言い、二人で腕を掴み合うようにするとシアをそこに座らせた。
シアの膝裏と背中に二人の繋いだ腕が支えてる。椅子に座っているみたいな感じになってる。
「ここからまだ緩やかだが下り坂の道が続く。
馬車で送ろう」
従者の言葉に私は「ありがとうございます」とお礼を言った。
「とりあえず、門の前まで!
調子を合わせて進もう!」
従者がライカンに声を掛けてくれて。
すごい、二人でこんな風に人を運ぶことができるんだ!
門の前まで来ると、トロアさんとアスバル様と従者が門の所にいて、馬車がこちらへ向かってきている。
ラスター様は、馬車の中から降りてきた。
「ちょうど、ヤシマに帰るところなんだ。
ご遠慮なくどうぞ!」
「あ、ずるいぞ!
それだと、俺は一緒に行けないじゃないか!」
アスバル様がなんか怒った顔をしている。
「どうぞどうぞ!
ギルドまでお送りします!」
ラスター様と従者に促され、ラスター様の馬車にシアを乗り込ませ、私も馬車に乗り込んだ。
ユミエラ、ライカン、エドガーと乗り込み、またラスター様も乗りこんで来て。
「アスバル!
明日の夜には戻るから! 出して!」
ラスター様の従者は御者台に乗ったようだ。
馬車はラスター様の声にすぐ動き出した。
あ、トロアさんにちゃんと挨拶してないや!?
でも、アスバル様、怒ってたみたいだけど、いいの?
私はびっくり顔でラスター様を見たけど、楽しそうに笑ってる。
「ミコトに聞いたギルドの宿って見てみたい!
シアを運ぶの手伝うから、招待してくれよ!」
ギルドに馬車が到着。職員に馬車を停めておく許可をもらい……。
従者とライカンとエドガーでシアを宿の部屋に運んだ。
私はシアの右足を見た。
足首だ。腫れてる。冷やした方がいい。
布を濡らして右足首に当てる。
ラスター様がくっついてきちゃったから、治療ができない。
私はライカンに言った。
「ラスター様と一緒に獲物を出してきてよ!
私とユミエラで休めるようにお世話するから」
エドガーとライカンはわかってくれて、ラスター様と従者を連れてギルドの方へ行ってくれた。
私はすうっと息を吸い歌い始めた。
「足の痛みよ♪ 早く引け♪ 足の腫れも引け♪
傷んだところは元通り♪ 腫れも痛みも早く引け♪」
でたらめな歌にユミエラとシアがくすくす笑った。
そっと布を外してみると、腫れは引いているようだ。
赤味も治まっている。
「良かった!」
私は白い布を取り出してシアの右足首を包むように巻いた。
「治ったのに?」
不思議そうなユミエラ。
「ラスター様達に聖魔法で治したことを知られないようにするためね?」
私は頷いた。
読んで下さり、ありがとうございます。




