31 くるくる(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
山の狩場はとてもいい所だった。
自然豊かで、緑が生き生きしている感じ。
あまり人が入らないからかもれない。
海産物が海で獲れるし、他の食べ物が豊富ってことだもんね。
地元の人にしてみれば、冒険者より漁師になるのが自然なのかもしれない。
他の狩りをしているパーティと出会ったが、一組だけだった。
それも、仕事ではなく、観光の、アサニヤ王国貴族の少年達のパーティだった。
隣の街のヤシマに学校の友人と遊びに来ていて、今日は足を延ばしてソーサラに狩りに来た、とのことだ。
「マイルズ共和国にはこんなに美しい女性の冒険者がいるなんて驚きです!」なんて言われたけど、狩りについての話しかほとんどしなかったし。
狩場の魔物。
一角ウサギが復活!
ここいらは出歯ではなくて、一角が多く生息しているんだな。
そして、ウジューが多い気がする。その代わりレミーが少ない?
私は『ウインドストーム』でウジューの群れを巻き上げて、ふらふらにしてから仕留めた。
ふたつの群れを狩ることができたから30羽は獲ったと思う。
ボアも大きいのがいる!?
あまり狩られてないのだろう。
大きな個体が多く、1頭を三人がかり、ライカン、エドガー、ユミエラでやっと仕留めた感じだ。
一角ウサギはエドガーが『ストーンバレット』で群れの半分ほどを一気に仕留めてから、残りを剣で仕留めた。
おお、前に『ストーンバレット』見たいと言ったからだ!
私はエドガーに「見せてくれてありがとう」と伝えた。
一角ウサギとウジューが大量。大きなボアが1頭。
昼休憩にして、パンとチーズを食べる。
「明日はミコトだけあのお屋敷か」
ユミエラが言って。
「でも、お昼までだもん。
帰りはみんなが帰って来るの待ってて、合流すればいいよね!」
「時間をきちんと確認しなきゃね」
シアが言ってくれた。
「本当に大丈夫か?」
ライカンはまだ心配そうだ。
「うん、あの御夫婦からも従者の人からも変な嫌な感じはしないけど」
「ミコトに悪いことをしているという認識がないこともある」
私は頷いた。
「わかった、気をつける」
そうなんだよね。
悪意を持っている人だとなんとなく嫌な感じがしてわかる。
でも、私が嫌だと思うことでも、それが私のためになると相手が信じていたら、わかりにくいだろう。
午後も狩りを続けてもう1頭ボアを狩ることができた。これも大きい!
少し早いけれど、これでおしまいにしてギルドへ戻る。
ギルドに着くとさっき山の狩場で会ったパーティがいて、私達の獲物を見たいとギルドの倉庫まで付いてきた。
少年のひとりがウジューと一角ウサギがたくさんいるのを見て驚いている。
「罠? で捕らえたんじゃないか!?
剣の傷があるし……、こちらは魔法、ストーンバレットか?」
「はい、隠れている群れを魔法で追い出して狩ったり、そのまま魔法で狩った個体もあります」
本当は向こうが気づく前に見つけているんだけど、それは言わないでおこう。
それからボアが2頭、どちらも大物だ。
「すごいな……」
「あの騎士が強いんだな、きっと」
少年達はライカンを見てひそひそしてる。
エドガーもユミエラも強いんだからね!
そこで少年達とは別れて、ギルドのカウンターに戻る。
けっこう高値で引き取ってもらえてやったー!
それから私宛に仕事が来ていないか聞いてみる。
オグル商会の丘の上のお屋敷の奥様の話し相手。
明日から5日間。午前9時から午後2時まで。お昼付き。
話し相手がメインだが、簡単なお世話をお願いすることありと追記がある。
ギルドの職員に確認するとメイドの日給と同じくらいの賃金だという。
半日で一日分の賃金ならいいほうだよね。
今回は初めての依頼なので、5日間が終わる前にギルドからもオグルさんへ私の仕事ぶりを確認を入れるという。
うん、そのほうが安心。
次の日、私はみんなと出発し、オグルさんの屋敷前で狩場に行くみんなを見送った。
よし!!
考えらえる準備はちゃんとしてきたし、大丈夫なはず!
少し早めだったけど、従者のトロアさんが来て、門を開けてくれた。
「おはようございます。ミコトさん」
「おはようございます!
今日からよろしくお願いします!」
今日は玄関の方に案内され、屋敷の中に入った。
エントランスから廊下を進み、庭に面したテラスへと。
テラスは昨日のように窓と戸を大きく開けて、奥様が椅子に座っていた。
「おはよう。ミコトさん」
「おはようございます。奥様。
ミコトとお呼び下さい。
5日間、どうぞよろしくお願いします」
オグルさんもこれからお仕事のようだ。
テラスに顔を出されて、私に挨拶してくれた。
そして、「行ってくるよ」と奥様と頬にキスをし合って、出かけられていく。
なんかいいなあ。
エドガーとこういう夫婦になれたら……なんてほのぼのした。
トロアさんもオグルさんの仕事に付いて行ったようだ。
「ミコト、ここは屋内なのでね。
その日除けのスカーフを外したらいかがかしら?」
奥様が微笑みながら言って。
「はい、そうさせて頂きます」
私はスカーフを外した。
奥様が私の髪を見て、少し驚いた表情をした。
「髪……、元からくせ毛なのかしら……?」
「はい!
日によってゆるくなったり、ぼわっとしたり、天気のせいですかねー」
私はくるくるな髪に触って微笑んだ。
昨夜、シアに心配そうに言われたんだ。
「家の中に入ったら、スカーフを外せと言われるかもよ」
「そうか、何も考えてなかった!」
だって、前はいつも上着着てフード被ってたからね。
ユミエラが私の髪を触って言った。
「熱魔法で癖付けたらどうかしら?
ミコトの髪なら取れやすいかもだけど、半日なら持つと思うな」
私の髪を一房指にくるくるしてから、片方の手で握り、軽く熱魔法を掛けてくれた。
ユミエラが手を放すと一房がビヨンと縦ロールみたいになっていて!
シアが「どれくらい持つか、やってみましょう。明日の朝どうなってるか!?」と言って、私の髪を全体的にゆるく縦ロールにしていった。
一晩寝てみて……。
朝、少しゆるくなっていたけど、くるくるというより、ふわふわ感は残ってた。
なので、ユミエラが全体的な形を見ながらくるくるやくしゅくしゅな癖をつけてくれて、天パみたいな髪の毛になってる。
熱魔法は火魔法の上位魔法。
「ユミエラ、すごい! ありがとう!」
私がお礼を言うとユミエラは笑った。
「最近できるようになったの!
野営で火魔法をたくさん使ったからかしらね、
でも、上位魔法なのにいまいち使い道がよくわからなくて……。
布の皺を取ったり、髪を巻いたり……、なんだか上位魔法なのに攻撃って感じがしないのよね……。
生活するのに便利で使っちゃう」
あー、確かにアイロンとかドライヤーっていうかヘアアイロンみたいな!?
でもさ、火だと森の中で仕えないけど、熱なら使えそうじゃない!?
触らないとできないのが……。
もし、離れたところから熱で攻撃できたら……。
一気に焼きボアというか蒸しボアにしちゃうとか……。そう考えたら、けっこう怖い……。
読んで下さり、ありがとうございます。
6話の属性魔法のことを書いた時、息子にそれぞれの属性の上位魔法を相談しました。
熱魔法って地味かなと話したのですが、遠隔で相手の身体の中を熱せられたらすごい恐ろしい攻撃だよね、という話になりました。
息子が言うには「ジョジョにそういう攻撃ができる人がいる」と言うのですが、私はジョジョを知らないので「目を熱してドロリと…」という説明に震えました。タンパク質は熱に弱いからっ!!




