28 生胸(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
「痛み引いたよ、ありがとう。
たぶん、聖魔法を使っていると思うな」
「そうかな?
あ!
洗濯物の時とかもぶつぶつ歌ってたかも!?」
私は布をそっと外してみた。
「うん、赤味もなくなった。腫れもないってことだね。
良かった!
もう痛くない?」
「……ミコト、その、もう少し、ちょっとだけまだ痛い」
「そう?
じゃあ、直接念じてみる!」
私は濡れた布を近くの木に引っ掛けてエドガーのところに戻り、向かい合うと左肩に右手で直接触って『治れ! 痛みがなくなりますように……』と心の中で念じた。
エドガーが私の左手を右手で握って、自分の胸に押しつけた。
えっ?
エドガーは半裸!? いや、半分はシャツ着てるけどさ!?
いや、でも、私、エドガーの生胸触って……、えっ?
女性なら大問題だけど、男性は平気なのか!?
肩を治療中ですでに直に触ってるって、でもそれは?
え、胸?
私は意識してしまって、真っ赤になってると思う……。
なのに右手は肩を治療中だし、左手はエドガーの胸の上だし、エドガーに握りこまれてるから離れられないし、顔を隠せないし!
俯いてしまう。
うう、恥ずかしい……。何だこれっ!?
ユミエラはこうなることを狙って肩を叩いたわけじゃないだろうに、なんでこんなことに!?
あ、私が脱げって!!
うぎゃー!
何かよくわからないけど、なんかやってしまったー!!
エドガーの左手で抱き寄せられる。
は、そうか肩、もういいんじゃない!?
そう思った時にはエドガーの裸の胸に顔をぎゅっとされてしまい、慌てた。
ど、ど、ど……、どうすれば!?
その時、自分の右手を見た。
そうだよ、もう治っているんだから、外してもいいじゃん!
ぱっとエドガーの左肩から右手を離して、身をよじって、せめてエドガーの裸の胸に背中を向けるようにしようとしたけど、がばって背中から抱きしめられるみたいになってしまって、私のピンチ(?)は続いている。
私は立ち上がって逃げようとして、でも引き戻されエドガーの膝の上に抱っこされてる形になり「放して……」と言いかけて顔を見上げた。
エドガーの手で頭を支えられて、キスされる。
私は固まってしまった。
支えられてるとはいえ、なんか体勢が辛い、腹筋耐えてるようなプルプルしちゃう。
思わず「んんっ、はぁ」と呻いてしまい、それが自分の声じゃないみたいな、変に色っぽく聞こえてそれにびっくりしてして、余計に恥ずかしくなり、顔が痛いくらい赤くなってたぶん涙目になってるのがわかる。
うう、もうダメ、どうしたらいいのかわかんないし、何も考えられない。
私はもう考えることを放棄して(というか考えたくても考えられない)、くたっと身体の力を抜いて、ただエドガーのキスを受け入れて……。
気づいたら、エドガーに抱っこされて、頭をなでなでされてた。
「あれ?」
「あれ、じゃないよ。
急に気を失ったみたいになるからびっくりした」
あ……、私、気を失ったの!?
恥ずかし過ぎて、頭の中グルグルしたし、身体中の力抜けたら、そのまま、ふわっとなっちゃったんだ……。
恥ずかしくなり、顔を隠そうとして、エドガーの裸の胸に顔をつけてたことに気づいて、また身体がきゅうっとなっちゃった。
「ミコト?」
「……ごめん、シャツ着て、シャツ……。お願いだからシャツ着て!」
エドガーは左腕をシャツの袖に通して「ボタンして」と言うので、私はボタンをしてあげた。
手が震える。
はあ、ボタンできた……。
「ミコトって、裸に……、まあ、男の裸は見慣れてないか……」
「うん、女性のは見慣れているけど」
「……それは自分の?」
「いえ、姉さん達の入浴よく手伝ってたからね。
この前、シアとユミエラとも風呂に入ったし」
「ふーん、じゃあ、俺の入浴の手伝いもしてよ。
一緒に入ってもいいけど」
「!! ……!! な、何……」
「俺の裸にも早く慣れて」
「それは、なんか違う……」
「こういうシチュエーションの話はなかった?」
「……読んだことない」
「なら良かった!」
何が良かったんだっ!?
私は力が抜けてがっくりだよ。
焚き火が小さくなってる。
私はエドガーから離れると、焚き木を足した。
「ここから見える範囲で焚き木拾ってくる!」
「気をつけて」
私は大きく深呼吸してから、近くの木に向かい、落ちている枝を拾い始めた。
私はエドガーが好きで、婚約してて。
キスされるとうれしい気持ちもあるし、恥ずかしい気持ちもある。
でも、キスとあの裸の身体をってのは次元が違うというか、うーん。
エドガーは私に見られて恥ずかしくないのか?
私は見られたら……、恥ずかしい……。
まだ子どもだからなのか……。
いや、大人になったって恥ずかしいと思う、んだけど……。
あー、こんなこと考えてもしょうがないから、考えるのやめよ。
上を見上げると枯れかけている枝があって、周囲を見ると誰もいないし、ひとつだけ「ウインドカッター」と呟いて、太めの枝を切ることに成功。
落とした枝もさらに切って、焚き木にできた。
おお、これ練習にもなる。
私は上を見て、枯れかけている枝を探しては『ウインドカッター』でジャンジャン切っていった。
枝を収納して、少しだけ抱えて戻る。
「魔法使ったのか?」
枝の切り口でわかったのかエドガーに言われた。
「はい、だいぶ上手くいくようになったよ」
「うん、気をつけて使うんだよ」
「そういえば、エドガーの土魔法、あんまり見たことない」
「ストーンバレットは使えるだろ?」
「う、少々。
今度見せて」
「うん、今度な」
エドガーが私の頭を撫でて、そのまま首の方に手を滑らせた。
嫌な感じはしなくて、気持ち良くて、エドガーの手に自分の頬をすりすりした。
「こういう時は触らせてくれるのにな……」
え?
ある姉さんから聞いた話を思い出した。
その姉さん曰く、相手がしてくることは、その相手が自分にもしてもらいたいことでもあるらしい。
『だから、指を舐めてくれば、指を舐めてあげると喜ぶし。
胸をよく触るなと思えば、相手の胸も触ってやると喜ぶんだな、これが』
そんな風に話していた。
となると、エドガーが生胸を触らせようとすることは、私の生胸も触りたいということか!?
あれ、してくることだから、違う?
なでなでして欲しい?
あれ?
もうそういうこと考えんのやめようとしてるのに!!
もう、私のバカ!!
やっぱり、フィオナに言われたように私って……。
……ああ、もう考えない!!
そろそろ夕食の準備始めるか!!
私は収納からシチューセットを取り出した。
鍋と野菜とお肉と牛乳と調味料をセットにしてあるんだ。
野菜もお肉ももう切ってある。
収納魔法は時間が止まるので、下ごしらえだけしといて入れておくということもできるんだよね。
私はお肉と野菜を炒め始めた。
今後はエドガーが焚き木拾いに行ってくれた。
私は料理しながら、だんだん気持ちが落ち着いてきて、ほっとした。
ま、なるようにしかならない。
私が嫌じゃなきゃ、エドガーと……。
『一緒に入ってもいいけど』
エドガーの声と楽しそうな表情が思いだされて、ドキッとした。
「もう!」
私は鍋をぐいぐいかき混ぜた。
読んで下さり、ありがとうございます。




