表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/53

25 王城の噂(エレノア視点)

どうぞよろしくお願いします。


 珍しくエリオットが機嫌悪そうに見えた。

 神殿の方で何かあったのかしら?


 私は王城に庭に出ていたのだけれど、弟のエリオットが王城内に入って行くのを遠くから眺めていた。

 エリオットはすぐ下の弟で17歳になる。母は私と同じく王妃。

 小さい頃はおとなしくて自分の意思がないのっていうくらい、そう、おとなしい子だった。

 さらに下の弟エランは14歳。

 子供らしくてやんちゃだったから、エリオットが変にいい子なのが目立ってた。


 実は母が違うエランの方が私と仲が良い。エランは学校の寮に入っているからここにはいないけど。

 私達、王子と王女は学校へは行かずに王城で王族としての教育を受ける。

 けれどもエランは学校へ行きたがり、許可をもらったのだ。

 まあ、第3王子でしかも側妃の子だし。

 彼にとってもそのほうが良かったと思う。


 庭師が私の侍女に声を掛けてバラの花束を持たせてくれた。


「ありがとう、ノルジー」


 私は庭師に直接お礼を伝える。

 そして、さて! と城を見上げた。

 いつものように参りますかっ!!


 王城に入ると階段を上がっていく。エドワードは3階に部屋があって……。訪ねるだけでも一苦労。

 だけど私は言い運動だと自分に言い聞かせて、一日一回はエドワードを訪ねる。

 息を整えて、ドアをノックする。


「どうぞ!」


 エドワードの声。

 ドアを開けると窓際に佇んでいるエドワードがこちらを見ている。逆光の中、金髪が輝き、微笑んだ顔。

 本当に綺麗よね。

 男にも女にも見えるその身体の細さ。

 男性にしては小柄で、女性にしては背が高い方になるのかしら。私と同じくらいなのよね。

 私より年上で兄様なのに、かわいく思える。

 父王譲りの金髪は、父王より繊細な感じで、短くしてるけれどさらさらしてる。青い瞳は宝玉のようにキラキラしてる。睫毛だって長いし。


 エドワードの母は転移者だったから、母親の体格に似てしまったのだろうと噂されていることは知っている。

 金髪と青い瞳は父王似なんだけどね。

 でも、父王はこんなにキラキラしてないんだけど……。

 それ以外は私が会ったことのない、その転移者のスミレ様似なんだろう。

 父王も父の弟であるダラス様も愛したと言われているスミレ様。

 エドワードを通して本当に美しい方だったのだろうとわかる。


「エレノア!

 毎日、お疲れさま!」

「ごきげんよう、エドワード!

 今日は元気そうね! 

 これ、ノルジーからもらったの、飾ってくれる?」

「いや、エレノアがもらったものだろう?」

「私、毎日ここに来るから、ここに飾ってもらった方がうれしいわ」

「……ありがとう。けてくれる?」


 エドワードの侍女がさっと来て、バラを持って部屋を出て行った。


「窓から外を見てたの?」

「ああ、さっきエレノアが歩いてた」

「じゃあ、エリオットが来たのも見た?」

「ああ、見えた。

 何か神殿であったのかな?」

「そうね。何かイライラしてるように見えた。珍しいよね?」


 その時、ドアがノックされてエドワードが「どうぞ!」と応える。

 若い文官が入ってきた。片手に本を三冊ほど抱えている。


「エドワード様、頼まれていた本をお持ちしました」

「ありがとう、イサク!

 そこの机に置いて」


 私は部屋に入ってくるその文官を見た。

 まだ10代かしら?

 私と同じくらい?

 私の視線に気づいたエドワードが紹介してくれる。


「イサクだ。

 一年前に王城の文官になって、図書文書係なんだ。

 時々本を頼んでいる」


 図書文書係……、私が会ったことがないということは平民で裏方仕事をしているのかしら?

 イサクがさっと臣下の礼を取る。

 私は声を掛けた。


「エレノアです。

 兄がお世話になり、ありがとう。

 あなたは何歳?」

「私は19歳になります」

「私と一緒ね!

 イサク、私も本が好きなの!

 今度、図書室に行ったら、よろしくね!」

「はっ!

 私は書庫整理などをしていることが多いのですが……。

 お待ちしております!」


 イサクはエドワードに礼をして部屋を出て行く。


「何?」

 

 私の視線にちょっと照れたようなエドワード。


「お友達になれそうな感じ?」

「……まだ、わからないけど、話しはしやすいよ。

 イサクの母は昔、王城に勤めていたことがあるそうだ。

 王妃のことも知ってるらしい」

「へー、女官……、いえ、メイドとかかしら?」


 少し間があって……。

 侍女が活けられたバラの花の花瓶を持って入ってきて、テーブルに飾った。

 バラの花の香りが部屋に微かに漂う。

 私は切り出してみる。


「少し外へ出てみようという気にはならない?」

「私の姿を……、王も王妃も……、見たくないだろうし」

「そんなことないわ!」

 

 まあ王妃はそうかもだけど、父王はそうは思わないと思う。


「でも、そういう噂があることは聞いている……」

「え?」


 私は周囲の侍女やメイドを見回してしまう。


「彼女達じゃないよ。

 窓を開けて、耳を澄ませているとね、いろいろ聞こえてくるんだ。

『エドワード王子の容姿は王に相応しくない』

『エリオット王子が王太子で、神殿はエラン王子がいるじゃないか!』

『王妃様がエラン王子の神殿入りを反対しているらしい』

 とかね。

 最近……、『髪色と瞳だけで、決めて残したのは早計だったか』っていう話も聞こえて……。

 エレノア、何のことだと思う?」

「……髪色と瞳の色って。

 どうしても父王と同じ金髪で青い瞳ってことを思わせるわよね?」


 エドワードも頷く。


「そうだよね。

 決めて残したってどういうことなんだろう。

 私がもうひとりいたとか?」

「……調べてみようか?」

「頼める?

 実は、とても気になっている」

「わかった! 任せて!

 じゃ、また明日ね!」



 私はエドワードの部屋を出ると2階の王妃の、つまり私の母の部屋に向かう。

 エリオットといい、王妃といい、ここのところなんか機嫌悪いのよね。

 ドアをノックしようとしてドアの隙間から漏れてきた声に驚いて手が止まる。


「エドワードが廃嫡となったら、エリオットが王にはなれるけど、神殿にエランがというのは気に入らないわっ!」


 エドワードを廃嫡!?

 第1王子なのに?

 王妃の声だわ……。


「忘れられていた王子を今更ですが、捜してみますか……。

 第1王子と同じ血筋であれば、血統的には問題ないと。

 しかも、王になる教育は受けてきていない。

 彼が生きていれば、王でも神殿でも私達の言いなりに動かせるのではないでしょうか?」


 伯父様……。王妃の兄で、大臣のひとりだわ。

 王妃がククッと笑いながら話を続けるのが聞こえた。


「黒髪の方か……。

 まさか、王似の金髪の方があんな出来損ないとはね……。

 まあ、いざとなれば第1王子を神殿にということを考えても……。でも前例がないか。

 前例……、今の王は第2王子で神殿に入っていたのに王になった。

 転移者の妻と離婚してね……。

 それにこのところ転移者も現れていないのよね?

 時期的にはもう現れていても良さそうなものなのに……」

「ここ数年、出現したという報告はありません。

 そういえば……、エリオットが最近人探しをしているようです。

 カノンの娼館の元娼婦のようですが、何か聞いていますか?」

「娼婦?

 神殿に入る前に……」


 私はそっとドアから離れて、廊下を進み始めた。

 

『忘れられていた王子』

『第1王子と同じ』

『黒髪の方』


 大変なことを聞いた。

 でも、エドワードが知りたいことに繋がっている気がする。

 王妃と伯父様がこれから誰を探そうとするのか……。

 気をつけて見ていないと。

 

読んで下さり、ありがとうございます。

エレノアは第1王女で王妃の子です。

でも、本人はそういうことを越えて異母兄エドワードを兄として(ちょっと弟みたいに思ってるところもあり)、異母弟エランを弟として見ています。

そして実弟エリオットのことは自分の気持ちを出せないと苦しいのじゃないかと少し心配してます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ