表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/51

24 バラされるか、自分で言うか(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

「え……!?」

「特に人前で大きな声で言われたとかじゃなくて……。

 ユミエラだけに、ばらされたくなかったら、夜、ギルドの前にひとりで来いと言われたそう。

 変だなと思って……。

 やっと白状したんだから」


 ということは、ひとりで行くつもりだったということ!?


「ユミエラ!

 今日、ここを出よう!」


 私はベッドに座って項垂れているユミエラに駆け寄り、手を握った。


「……でも逃げたら、ばらされちゃう、かも。

 この宿の御主人や奥さん、ディーにソーマにもばれちゃう……」


 胸がぎゅっと苦しくなった。

 ユミエラの悲しみがわかる。

 騙してたわけじゃない、でも、騙していたと思われたりもしちゃうだろう。


「……誰だって過去はあるもの」


 シアがぽつりと言った。

 不思議と心の中にそうだよなぁ……という気持ちが広がる。

 嫌な感じではなく、温かい感じね。

 

「その男を捕らえて口止めしても、そういう奴は……」


 ライカンも悔しそうに言った。

 うん、理不尽だけど、今は逃げた方がいい。

 その男もまたユミエラと会った時に弱味として使おうと黙ってるかもしれないし……。


「ユミエラ、私もすぐ逃げなきゃなんだ」

 

 私の言葉にユミエラが目を上げて私を見た。

 みんなに聞こえるようにはっきりと言った。


「ロバートさん、デュランで、『ミコト、プリシラ、ミカエラの三人を知らないか? 見かけてないか?』 と聞かれたんだって。

『知らない』って答えてくれたそうだけど。

 ギルドや宿の周辺で、私達を見てた人や気にしてた人もいただろうし。

 私達のためにも、逃げよう!」


 エドガーも言ってくれる。


「ミコトと食料は買い出ししてきた。

 すぐに出られる。

 そして、たぶんこのルートなら首都ジュノーに向かったと思われるだろうから、このままサライに出て、アサニヤ王国へ船で入ったらどうだろう」


 シアとライカンは頷く。


「ジュノーへ急ぎで行くという風を装って出るのね?」


 シアの言葉に私とエドガーが頷く。

 ユミエラも頷いた。


「じゃあ、すぐに準備を!」


 私の言葉にライカンとエドガーも部屋から出て行こうとした。

 その時、ユミエラがぽつりと言った。


「この場所、楽しかったのに……」


 シアがユミエラを抱きしめた。

 ライカンとエドガーは一度立ち止まったが、無言で部屋を出る。

 私は聞いた。


「……黙って出ちゃって、大丈夫?」


 ユミエラが頷いた。


「どうせ、私が娼婦だったって聞いて……。

 みんな、すぐ、そんな私のことは忘れるよね」


 ライカンが御主人と奥さんに急ぎでジュノーへ行かなくてはならなくなり、すぐに発つことを伝えて宿賃を清算してくれた。

 ディーはまだもどってないみたい。

 宿を出る時に奥さんはお弁当と言って鍋ごと渡してくれた。


「今日の夕食にと思ってたものよ。

 ディアの煮物。

 野菜も入って煮込んであるから、パンにはさんでも美味しいわよ」

「ありがとうございます!

 お鍋のお金……」

「古い鍋だからいいわよ!

 使って!」

「ありがとうございます……」


 私は受け取って収納した。

 宿を出て、ジュノー側への街の出口を目指す。

 特に声を掛けられることなく門に到着し、門番と話していたら「ライカン! ユミエラ! シア!」とディーが追いかけてきた。


「家に帰ったら、急いで出て行ったって!

 今日の狩りの金!」


 皮袋をライカンに渡してくれる。


「三人分入ってる。

 なんで、買取の金を待たずに急に発つなんて……」


 ライカンが「ありがとう。すまない、いろいろ事情があって」とだけ言った。


「また、マイネに来たら、うちの宿に来てくれよな!」


 ディーの寂しそうな微笑み。

 ユミエラがディーに近づいた。


「本当に……、そう思っててくれる?」

「え? そう思ってるよ」

「私が何者でも?」

「……何か訳ありなんだろうなとは思ってた。

 でも、俺は……、一緒に過ごしたみんなが、ユミエラがいい奴だって知ってる」


 ユミエラがふっと笑った。


「ありがとう……。

 後で他人から変な風に言われたら嫌だから言っとく」


 ユミエラはディーの耳元に口を寄せると何か言ってる。

 ディーの目が丸くなる。

 ユミエラはぼそぼそ囁き続けて、離れた。


「……もう自由なんだよな」

「うん、でも、こんなふうに過去は消えないから」


 ディーは真剣な顔になるとユミエラに言った。


「ぜひ、また宿に来てくれ」

「いいの?」


 ディーが頷く。

 シアが近づき、ユミエラの肩を抱いて「もしマイネに来ることがあったら!」とユミエラの代わりのように言った。



 薄暗くなりかけている道を急ぎながら、私はミカエラに聞いた。


「ディーには話せたの?」


 頷くユミエラ。


「だって、他の人から勝手にばらされてなんて嫌じゃない!

 フィオナあたりが『やっぱりね』とか言いそうだし。

 宿の御夫婦もディーもソーマも、本当にいい人達だと思ってたんだから!

 だから、自分で伝えたかった」

「うん」


 私は、マイネの街の方を振り返った。

 もう街は見えない。

 もし、マイネに戻って来られる時があって、ディーと再会できたら、もしかしたら、ユミエラが望んだような一世一代の恋ができるのかも。

 

「さて、この先の道を右に行くよ。

 サライへ出て、船でアサニヤ王国か……。

 サライへは行ったことはあるが……、アサニヤ王国はほとんど、行ったことがない。

 話は行った者から聞いたことがあるという程度だ」


 ライカンが苦笑して言った。


「シア、アサニヤ王国で気をつけることって、何かある?」


 私がそう聞くとシアが笑った。


「私のは本で読んだものだから、ライカンの聞いたことのある知識と擦り合わせね。

 ミコトはシーザー王国と同じくらいの感覚で髪を隠した方がいいわ。

 シーザー王国では神殿といながら王家が転移者を独占していた。

 アサニヤ王国は、神は同じなんだけど、教義が少し違うのよね。

 なので『教会』と呼ばれるわ。

 教会の力が強い、つまり宗教の力が強い国よ。

 そして転移者はとても大切にされる」

「とても大切?」


 なんか引っかかる言い方。


「そう本には書かれてたし、民衆にも慕われていて『王国巡回』と言って、転移者の女性は『聖女』と呼ばれて尊敬されているそう。

『神の愛し子』で聖なる魔法が使えるから『聖女』ね」

「へー、それはすごいじゃん!!」


 ユミエラが私を見て言うが、ライカンが冷静な声で言った。


「その転移者の意思はどうだったか、だな。

 拒絶することはできるのか、自由はあるのか?」


 ユミエラの表情が強張った。


「そうね……。

 聖女が喜んで、国を巡回とかやってるとは思えない。

 しかも、ミコトのように違う世界から来た女の子なら、この世界のために奉仕するとか、わけわかんないだろうしね。

 それなのに、従っているということは、悪いことも考えておいた方がいいかもね。うん」


 私はシアに笑いかけた。


「シア!

 私、髪を切ろうと思うんだけど!

 後、見た目を変えるのなんかないかな? 

 肌に何か塗るとか?

 化粧したら……、それは変?

 逆に男の子みたいにしてた方がいい?」


 シアが笑う。


「あー、なるほど!

 そうね、私とミカエラも髪型変えようか!」

「え、ああ、それもいいかもね!

 私、一度短くしてみたかったんだ!」

「マイネの街で聞いたんだけど、マイネより南のほうだと日除けにスカーフを女性は巻くんだって!

 シアとユミエラの分もプレゼントに買ったの!

 これだと頭包むから髪の毛隠せるし。

 でも長いとやりにくいかなと。

 明日の朝、巻いて見ようよ!」

「いいね!

 今夜、髪の毛切ってみる?」


 ユミエラの言葉に笑ってからエドガーを見る。


「どれくらい切ってもいい?」

「んー、ミコトの好きにしていいけど。

 あんまり短くは……」


 あ、そうなの?

読んで下さり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ