21 恋人らしいこと(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
私はにこやかに説明した。
「もう5年も一緒に暮らしてるので、お互い、いろいろ知ってるかな?」
そう答えたら、フィオナは少し怯んだ。
「私とディーはもう21年間だからっ!」
「フィオナも21歳なの?」
「違うっ!
私は19歳!!」
「……じゃあ19年じゃない!?」
「もう、細かいこと言うと嫌われるわよ!」
……誰に?
いやいや、なんだか面白い人だ……。
そうか、ディーとフィオナは付き合っているんだな。
エドガーが戻って来た。
「今日はディアを狩りたいそうだ」
「ディア……、それだともっと山寄りの森の中かな?」
鹿ってことだもんね。
八人もいるからね、狩場に着く前に二つのグループに分かれることになった。
私とエドガーとフィオナとディー。
ユミエラとシアとソーマとライカン。
私とライカンが収納できるから。
ディーはライカンとも狩りしたいのだから、午後はまた組み直しをすることにした。
狩場について、昼の待ち合わせする場所を決めてから、グループで行動する。
ディーがフィオナに気を遣っている。
エドガーもディーと行き先の確認をすることが多く、なんとなくフィオナと話すことが多く。
うれしそうなフィオナ。
私の方を見て『フフン』という息が聞こえそうというか、なんというかドヤ顔というのだろうか。そういう半笑いのような微笑みを浮かべている。
まあね。私よりお姉さんで、シアとユミエラには負けるけど、たぶんマイネの冒険者の中ではきれいでかわいいとちやほやされてる女性なんだろう。
エドガーが私の方に来ようとすると、腕を掴んで引き留めて。
ディーが私に話し掛けようとすると「ディー、この間の!」と話し掛けて引き留める。
すごっ!
えっと、こういうのは三面六臂の大活躍とでもいうのだろうか!?
そんなことを考えながら、森の道に入ったので、魔力の気配を探る。
ここのウサギは角がないんだけど、牙というか歯というか、それが発達して大きくて『出歯ウサギ』と呼ばれてるらしい。
ハダカデバネズミっていたなー。
そんな感じなのか?
でもウサギだから、かわいいのかな?
でも名前……、出歯ウサギって……、もう少しなんとかならなかったのか?
その出歯ウサギの群れの気配があって。
その奥にたぶん鹿、ディアと思われる気配を4頭感じた。
私はフィオナ達に近寄って声を潜めて報告した。
「こっちの奥、手前にウサギ、奥の方にディアの気配があるよ」
私の言葉にフィオナが苦笑する。
「何?
気を引きたいからって、嘘言ってるの?」
「いや、ミコトは魔力を感じて気配を探るのが得意なんだ。
ウサギは避けて遠回りした方がいいな、ディアが本命なら」
エドガーがディーに言ってくれた。
フィオナがふくれた表情になる。
「気配を探るなんて、魔法使いみたいなこと、こんな子どもにできるわけにでしょ!」
フィオナが木の枝を拾うと、私が出歯ウサギがいると言った方向へ投げた。
枝がガツンと気にぶつかり茂みに落ちて大きな音を立てる。
ガザッ! ザザザッ! ビュン! ビュン!
出歯ウサギの群れが四方八方に飛び逃げたのが見えた。
ディーが目を丸くした。
「本当に!?
じゃあ、ディアも!?」
エドガーが答えてくれる。
「今ので、逃げただろうな」
わたしはもう一度探って、ため息をついた。
「うん、ウサギの反応というか動きと音で、ディアの群れもさらに奥へ移動したね」
ディーがフィオナをちらりと見た。
「私のせいじゃないわよ!
そんな気配とか、わけわかんないこと言うから!
本当だとは思わないじゃない!!
今のもたまたまかもしれないしっ!」
「フィオナ、でもせっかくのチャンスだったんだよ。
もうこんなことはしないでくれ」
「……ディー、ごめん」
しぶしぶ、ディーには謝るフィオナ。
その隙にエドガーが私の隣にくると「もう少し時間をおいて、また探ってみよう」と言ってくれた。
「うん、そうだね。
しばらくは魔物達も隠れたり、周囲を警戒するだろうしね」
「ミコト、ごめん!」
ディーが私に謝ってくれた。
「うん!
もう少し森の中が落ちついたら、また気配探ってみるから!」
ディーの後ろでフィオナが私を睨んでいて、でも周囲を見回しているエドガーがそっちを見た時だけぱっとやめる。
すご……。
『エスタ』にも男性の前では見事なか弱さを演じ、女性のみの場所では凄むみたいな姉さんっていたけど。
あれは狭い場所で、限定されてる場だからできるんだろうなと思ってた。
こんなに自然にオープンな場所でできる人……、面白過ぎる……。
「ミコト、面白がり過ぎ」
あ、エドガーも気づいていたんだ!
エドガーが俯いて笑いを堪えている私の頭にぽんと手を乗せた。
フード越しに重さと温かさが伝わってくる。
「だって、すごくない!?」
「まあな……」
フィオナが飛んできて、エドガーの空いている方の腕を掴む。
「エドガーってBランクなのよね!」
「ああ、そうだけど」
「すっごく、すっごく努力したんだろうね!
その時の話聞きたいな!
ね、ディーも聞きたいよね!」
ディーは戸惑ったような顔をしたが、話を止めない方がいいと判断したようで「ああ、聞きたい」と話を合わせた。
大人の対応。ここには狩りに来てるんですけどね。
エドガーは私の頭に乗せた手を肩の方へ降ろして、私を抱き寄せるようにした。
「ミコトに告白しようと決めて、3日間でCからBへ上げたというか……」
うん、最初はランクよりお金を貯めようとしたんだもんね。
フィオナの顔が歪んだ。
思ってたような話の入りじゃなかったんだろう。
そしてディーの反応も思ってたようなものじゃなかった。
すごく食いついた。
「3日間で!!
それはすごい!
でも、なんで3日間!?」
「3日後がミコトの14歳の誕生日で、その時に告白して結婚を申し込みたかったから。
決めたのが3日前でさ。
同じランクの年下の冒険者が手伝ってくれて、大変だったけど、面白かったよ」
「……年下でランクC?」
ディーの言葉にエドガーが思い出すように言った。
「ホークって奴で、あれ、何歳だったっけ?」
「17歳だよ、ホークは。
それにエドガーにつきあって、ホークもBランクになったって言ってた」
「ホークがミコトに『嫁になれ』とか言うから……、
それも焦ったからな。
後、ミコトもなんかいじいじしてたし」
「いじいじ?
あ、……うん。
あの時は……エドガーが私をその女性として好きって思えなくて。
お兄ちゃんのように思ってたのが長かったし……」
「でも、すごいな。
それで、結婚の約束をしたんだろ?」
ディーの言葉に私は照れて頷く。
下を向いてたからフィオナの顔は見えなかったんだけど、声は聞こえた。
「でも、全然釣り合ってないというか、変というか。
エドガーが苦労しそうだね!」
「フィオナ、やめろよ!
他人の恋愛に文句付けるのは!」
「だって、どう見ても、こんな子どもみたいなちっさい子を恋人で婚約者にしようなんて思わないわよ!
こんな感じじゃ、恋人らしいこと何ひとつ出来ないじゃない!」
私は顔を上げて、エドガーを見た。
「それは頑張ってる。
成長するのを待つってエドガーは言ってくれてるし、でも、そのわりにはすごいよね?」
「な、何がすごいのよ!?」
フィオナの戸惑った声。
「えっと、この前初めてキスしたんだけど、えーと、1回じゃ終わらなくて……、何分ぐらいのキスだったんだろう?
それを2回したよ。
恋人らしいこと、してる!」
フィオナが真っ赤になり、エドガーも赤くなってしまった。
ディーも……。
え?
フィオナとディーはまだそういう仲じゃないのか!?
恋人だから、私にディーに近づくなっていう意味もあるのかと思っていたんだけど!?
読んで下さり、ありがとうございます。




