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18 過去(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

 お昼にプリシラ達がお昼ご飯を持ってテントの方に来てくれたんだけど、私達はテントの中で手を繋いで寝ちゃってて……。

 クルトはプリシラに怒られてて、私はミカエラにすっごく服チェックされてしまった。

 でも、そういうことはしてないし。

 まあ、ファーストキスが……、どこが初めてだよっていうくらい濃厚なキスになっちゃったけどさ……。



 私達が昼食を食べ終えた頃、ライカンさんも合流した。


 いよいよだ。

 

 まず、クルトが指輪のことをもう少し説明した。

 魔道具屋では指輪の主にすでにクルトがなっていて、前の持ち主とかはわからなかったこと。

 新しい物なのか、古い物なのか、判断がつかなかったこと。

 名前のことは意識的に伏せているようだ。

 確かに、もし自分の名前なら、気をつけないといけない。


 ライカンさんがクルトに聞いた。


「育ててくれていた父と母の名は?」

「母はライザ。

 昔、王城に短期間だけど勤めていたことがあると話してくれたことがあります。

 平民なので、下働きだと思うのですが、内容は聞いていません。

 父はレックス。 

 王都の警備隊の隊士でした。……騎士でもありません」

「そうか、可能性があるようなら母の方の伝手のようだな……。

 ありがとう。

 何か、昔話をしていたら、思い出すかと思ってな」


 プリシラが少し困ったように言った。


「えーと、どこから話したらいいのかしらね」

「私から話そう。何しろ、昔の話になるから……」



 ライカンさんは伯爵家の次男だったそう。

 10歳の時、領地にスミレコと名乗る黒髪黒目の女の子が転移してきたそうだ。

 伯爵家としてスミレコを保護し、王家と神殿に報告。

 でも、その時は王都の政情が不安定だったことと、たぶん、スミレコがまだ子どもだったということで、そのまま伯爵家預かりになったんだそう。

 ライカンはスミレコと同い年ということもあり、親しくなった。

 頼りにされ、守り、お互いにずっと一緒にと思っていた。

 初恋、だね。

 時々、神殿から神官が様子を見に来るくらいだったんだってさ。


 スミレコが14歳になると、神殿へ入ることが決まった。

 伯爵家で同い年のライカンと心を通わせ、伯爵家のみなさんにも大切にされていたスミレコ。

 その頃には『スミレ』という名で呼ばれるようになっていたが、ライカンだけはスミレコと呼んでいたそうだ。

 ライカンは彼女を追って、神殿の護衛騎士になるため頑張り、17歳の時に神殿に騎士として入ることになった。

 すでにスミレ様は第2王子の妻となっていて、子どもを妊娠していた。

 ショックではあったが、自分がそばでお守りできればと気持ちをなんとか切り替えた。

 出産前に、当時王太子であった第1王子が馬車の事故で大怪我をして、お亡くなりになった。

 次の王太子をどうするか?

 第2王子が神殿を出て王太子になり、すぐに王へ即位した。

 スミレ様は神殿で男の子を出産。その子は王の子ということになり、現在の第1王子となったわけだ。

 乳母が二人も雇われ、丁重に育てられることになったそう。


 まもなく、王とスミレ様の離婚が決まり、スミレ様は我が子と引き離されたまま、今度は神殿に入った王の弟の第3王子の妻ということになった。


 ひどい話だけど、スミレ様は神殿から離れられないし(というか監禁されてるんじゃない!?)、強い特別な魔力を持つ異世界からの転移者ということで、王妃にはできないと。

 でも、自由にさせるのも、他の貴族のものになったり、王家に対して何か企んだりしたら厄介だ。

 神殿の王族の妻という立場にして、閉じ込めておく方が王家と神殿は楽だったのだ。


 その頃、王城では不思議な噂があったそうだ。

 第1王子エドワードがふたりいる。

 乳母は二人、食事も二人分。

 金髪のエドワードと黒髪のエドワードがいると。

 スミレ様の呪いでは……?


 王は貴族令嬢の中から王妃を迎えた。

 その時から、その噂はパタッとなくなった。


 王と王妃の間には第1王女エレノア、第2王子エリオットが生まれた。

 

 スミレ様は体調を崩されることが多く、神殿の居住区の奥にいることが多くなり、ライカンもなかなか会えなくなってしまった。

 ある夜、ライカンは恐ろしいことに気がついた。

 王が、いまだにスミレ様のところに忍んで通っていることに。

 スミレ様は子どもを奪われ、でも、その子どもの話を聞くために不本意ながら、元夫である王の夜の訪問を受け入れているようだったと。


 そして夫である第3王子、王弟もまた癖がある人物で、スミレ様に歪んだ愛を持っていた。

 スミレ様のことを愛しく思いながら、兄との間に子を成し、自分という夫がいながら、未だに別れた王を訪問を受け入れている……。

 冷静に考えれば、王のことを拒絶などできるわけがなく。しかも愛する子どものことを話せる、様子を教えてくれる元夫なのだ。

 何か妻のためにできないか、愛しているなら守る方に動けばよかったものを……。


 王弟は愛を歪ませ、『かわいさ余って憎さ百倍』とか言うんだっけ? 

 そういう感じになっちゃったみたいで。

『淫乱』『あばずれ』とスミレ様を罵り、『そこまで男好きならば』と神官がスミレ様を自由にしていいとまで言い出して……。

 そのことを責めながら、自分の妻としての義務は果たせという……。

 なんて歪んだ、愛。いや、それはもう、愛ではない。


 ライカンは王の訪問には気がついていたがどうすることもできず。

 王弟と神官による嫌がらせや乱暴はスミレ様が亡くなる少し前に知ったのだそうだ……。



 ライカンさんの沈黙を受け、プリシラが話し出した。


「今から12年前ね。

 私が13歳の時に神殿へお参りに行った時、見てしまったの。

 神官がスミレ様に乱暴しているところを……」



 貴族令嬢の間では13歳の間に神殿にお参りに行くという慣習があるそう。

 14歳でプチ成人なわけだからね。


 プリシラは貴族令嬢で、どうやらライカンと親戚関係だったのかもしれない!?

 スミレ様とプリシラのお母様が、子どもの頃から親しくしていたそうで……、たぶん伯爵家での話だろうから、、ライカンさんも知ってるはずだ。

 その縁でプリシラとそのお母様にはスミレ様を訪ねる許可が出たそう。

 親子でスミレ様の部屋に向かうと、神官ふたりとすれ違ったのだそう。

 この先はスミレ様の部屋しかない廊下で。

 ドアをノックしても返事がなく、プリシラとお母様はそっとドアを押したら開いていて。

 スミレ様が服が乱れたまま、倒れているみたいな感じだったそう。

 慌てて人を呼ぼうとすると、止められて、現状をぽつぽつと話してくれたそう。


 転移してきた者は『聖魔法』という特別な魔法が使える。

 癒しの力。

 他の魔法と同じで、学んで修行すれば傷や病気の治療や緩和、汚れたものを清浄にするなどの奇跡を起こせることが知られているが、彼女のそばにいたり、特に肌に触れることでその力を直接与えることもできるのだとか。

 この力のために、王家は神殿で修業を積んで強い奇跡の力を発現するようになった転移者を他の貴族に奪われることを恐れて、王族との婚姻を義務とした。


 元夫の王はそれをわかっていて、また、スミレ様のことを妻として愛していたので、他の男を彼女に近づけなかった。

 が、別れなくてならなくなり、自分が近づけなくなったのに、直接肌に触れて得ていた力とスミレ様への愛が忘れられず、通ってきていたのだ。

 それが第3王子と王妃、つまり弟と妻の機嫌を損ねて、スミレ様がひどい目に合わされているとわかっているのに、王はやめることができなかった。


『こんな話を若いあなたにしてごめんなさい。

 でも、私、もう長くないと思うのです……。

 誰かに、真実を話したかった……』


  そう、スミレ様は13歳のプリシアに謝ってたと。

 プリシラの母は屋敷に戻ると、どこかへ連絡を取っていたそうで……。



「たぶん、ライカンさんにそれが伝わったのではないかと?」

「……君はもしかしてリンデウム伯爵家の?」


 プリシラが小さく頷いた。

 ライカンさんが驚く。


「なぜ、伯爵令嬢が、こんなところに!?」

読んで下さり、ありがとうございます。

プリシラの過去&上裸坊ちゃん(エリオット)の名も出てきました。

でも、みんなは上裸坊ちゃん=エリオット第2王子とは気づいてないです。

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