16 スミレ(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
朝、話し声で目が覚めた。
もうテントの中、明るくなってきてる。
起き上がり見てみると、プリシラとクルトがいない。
ミカエラはまだ寝てる。
私は起き出して靴を履くと外に出た。
え?
ライカンさん、がいる?
ライカンさんだよね!?
鎧、着てないけど。
「おはよう! ミコト!」
クルトが言ってくれて、プリシラとライカンさんは何か話してる。
私はクルトの横に行くと隣に座る。
「ライカンさんだよね?」
「ああ、朝、焚火を始めたら今日は休みとかで来てさ。
顔、洗ったりする?」
「うん」
私はクルトと建物の水場とトイレに寄って身仕度を整えるとテントに戻った。
朝食の準備に取りかかる。
収納からフライパンと卵を取り出した。
焚火があるからね、目玉焼きをしてと思っていたら、ライカンさんが「これ、どうぞ!」とハムを差し入れしてくれた。5枚ある!
「一緒に食べましょう!」と誘った。
目玉焼きも作って、一度皿に取り、ハムも焼く。
その間にスライスしたパンを取り出して、焚火の熾火の部分で温めておく。
プリシラがお茶を入れてから、ミカエラを起こしに行く。
「ふぅあーっ! おはよ!」
ミカエラがあくびをしながらテントから出てきて、ライカンさんを見てびくっ! としてから「おはようございます」と小さな声で言った。
ハムの上に目玉焼きを載せて塩コショウ。
そして、温めたパンに載せて、出来上がり!
五人で目玉焼きハムパンを食べる。
「うん、うまいっ!」
ライカンさんが豪快に褒めてくれた。
ハムの塩気があるから、黄身のところだけ軽く塩を振ったんだ。
いい感じだ。おいしくできた。
食べ終えてから、収納から果物、今日はスモモみたいな木の実をみんなにひとつずつ渡した。
「洗ってあるから、そのまま皮ごと食べられます!」
私はそう伝えて齧りつく。
うん、酸っぱ甘い!!
でも、目が覚めるというか、元気が出る感じ!
プリシラの入れてくれたお茶もおいしいし!
なんか、のんびりして素敵な朝ごはんだな。
一息ついたところでライカンさんがプリシラに話し掛ける。
「このまま、マイネの方へ?」
「はい、次の村に泊まって、明日には」
ライカンさんは顎に手をやり言った。
「実は……、私もマイネに行く用事がありまして。
ご一緒してもよろしいかな?」
クルトとプリシラが素早く目を合わせた。
「……警戒されますよね。
突然の申し出……。
では、本当のことを話しましょう。
……私はシーザー王国出身で、シーザー王国を出て流浪の身になり、現在はマイルズ共和国の騎士として生活しています。
ここに来る前は……、シーザー王国で神殿の護衛騎士をしていました。
ミコトさんは、転移されてきた方ですよね?」
クルトが私を隠すように前に出て、ミカエラが剣に手をと思ったら、寝起きで剣を持ってなくて、あわてて、とりあえず構えてる。
ライカンさんはそんなふたりの臨戦態勢にも動じず話を続ける。
「私は12年前。シーザー王国で、神殿で、大切な人を亡くしました。
でも、復讐することもできず、国を出たのです。
私の愛した人は転移してきた方で……、国に、神殿に、王家に殺されたのです。
あなた方は、ミコトさんをお守りして、シーザー王国の神殿から逃げて来たのではないですか?」
プリシラが小さな声で言った。
「転移してきた女性を知っているのですね。
スミレ様のことを……」
「スミレコのことを知っているのか!?」
ライカンさんが驚いたようにプリシラを見た。
スミレコ……、菫子、かな?
「はい、私がお会いした時はもう、かなり弱られていて、それでも……」
「……奴らに殺されたようなものだっ!」
そう言い捨てるようにライカンさんは呟いて、私を痛ましそうに見た。
「神殿から逃げ出せたのなら、本当に良かった……」
ん?
私、神殿にまだ存在ばれてないと思うんだけど。
見つかっていなくて、逃げられて良かったってこと?
プリシラが頷いた。
「はい、転移してきたばかりで泣いている幼いミコトを私達で保護したのです。
5年前のことです。
それで、私はスミレ様のことを知っていたので、ミコトを神殿には渡せないと……。
ずっと、匿ってきました。
ミカエラとクルトはその時から協力してくれていて……」
「でも、ミコトさんは見つかってしまい……。
取り戻して、こうして逃げていると」
「え?」
プリシラが困った表情になる。
何か、話が噛み合っていない。
「あの、ミコトはまだ神殿に、シーザー王国には存在はばれていないと思います。
貴族の男性に見つかってしまい、その男性は自分の手元にミコトを引き取りたいと申し出はありましたが……。
でも、神殿のほうにはうまく誤魔化すからというような感じでしたので、通報などはされていないと思いますし」
ライカンさんが不思議そうな顔をする。
「まだ、王家のどなたにも会っていない?」
クルトが「王家?」と聞き返す。
「神殿には王弟になる予定の第2王子や第3王子が入る慣習があります。
転移してきた女性の名目的には夫ということに。
スミレコの時には第2王子が……。
しかし、第1王子がお亡くなりになり、彼が王になり……。
スミレコは……、子どもを奪われた」
菫子さんは神殿で第2王子と結婚して子どもを産んだってことかな?
で、その王子が王になったのなら、王妃様になるわけじゃないの?
ライカンさんが私を見た。そして、左手を……。
「まだ神殿には行っていない、王家の誰とも会っていないというなら……。
何故、彼女は王家の指輪をしているんだ?」
「王家の指輪?」
私はびっくりして自分の左手の薬指に嵌っている指輪を見た。
「そうだ、その指輪は王の子どもが生まれた時に作成される特別な魔道具。
名を刻んで持たせるものだ。
王女なら、我が子に。
王子なら、妻に譲られていく……」
「でも、その指輪って、クルトのものだったんだよね!?」
ミカエラがびっくりしたように言って。
プリシラも慌てている。
「え?
クルトのお母さんって、元王女とか!?
え、そんなわけないわよね!?
王子の御落胤とか?
でもそれなら、指輪は持ってないか!?」
私も何が何だかわからなくなって、クルトの背中にしがみついた。
「俺は……。
自分が誰だか、よくわからないんだ……」
クルトが絞り出すような声で言った。
「母だと弟だと思っていた家族は……。
弟が無事に学校を卒業して仕事が決まった時に、母に打ち明けられた。
俺はこの家の子どもではないと。
父と母は俺を預かったと。
その指輪と共に。
父は亡くなる時に打ち明けるなと、母には言ったらしい。
俺の命のために、伝えないほうがいいと。
だから、母もそれ以上のことは伝えられないと。
でも、母は家族のために、偽の家族のために人生を、自分と弟のために仕事をしてきてくれた俺に申し訳ないと……。
1年前だ。
今まで申し訳ない、ありがとうと……、告げられた。
この指輪を渡され、自分達は本当の親ではない、家族ではないと打ち明けられた。
クルトという名も、死んでしまった息子の名前だと。
名前も誕生日も父も母も弟も全て、小さな時に亡くなったクルトのものだったんだ。
指輪を調べたところ、どうやら王家に関係ある指輪だとわかり俺の先祖にいたのではないかと。
それで……、魔道具だと知ったんだ。
俺がこの指輪の現在の主として指輪に認められていることもその時にわかった。
その時に魔道具屋の職人に言われたんだ。
愛している人ができた時に指輪を贈るといいと。
俺を守って来た力が、その愛する人を守ってくれると」
読んで下さり、ありがとうございます。
急展開!?




