13 一世一代の恋
どうぞよろしくお願いします。
おばあさんの宿は二人部屋がふたつあって、私とプリシラが同じ部屋で、ミカエラはひとりでもうひとつの部屋となった。
私はまだもやもやしていて……。
プリシラに言われた。
「ホークと話して、いろいろ考えたのね」
私は頷いた。
「今までの考え方が……、私の都合でしかなかったことに気がついて。
プリシラやミカエラやクルトのことを私が縛っちゃってるって気づいた。
私の夢、みんなで家を買って住みたいなっていうのは本当だったの。
でも、みんなが私と一緒にいてくれるのは当たり前じゃなくて……。
みんなは自由になれるのに私につきあって逃げたりしてくれてるって気づいたら……。
それに、ミカエラのことも大好きなのに……。
ミカエラが来るとのことを好きなんだって気づいたら、なんかもやもやして。
イライラするってか、そんなのも嫌」
プリシラが微笑んで私をぎゅっと抱き寄せた。
「ずいぶん成長したなあ。
かわいい妹のミコトから、もう恋の苦しさを知る女の子になったのね」
「恋って……。
私はクルトに恋してるのかな?
でも、クルトはずっと大人の人だよ。
私のことは妹だとしか思ってないよ。
それにミカエラ……。
姉さんのようなミカエラには幸せになってもらいたい」
「……そうね。
ミカエラはクルトに……。
でも、それもミカエラの都合よね。
ミコト、あなたの視点だと、クルトの都合だけが見えていないんだと思う」
「クルトの都合っていうか、思ってること?
うん、私を守ろうとしてくれてるのは信じられるけど、それ以外はわからない……」
「クルトはこの3日間で自分の答えを出してくるつもりなんだと思う」
「自分の答え……。
うん、クルトには好きなように、自分のことを大切に行動してほしい」
「そうね、待ちましょう。
その間、自棄にならないでね」
「やけ?」
「さっきのミコトを見ていて不安になったの。
私達を自由にするためっていって、違う男の人に縋ったり、利用したりしないで」
さっきのホークのこと?
ホークからの提案を生け入れれば、つまり私を差し出せば、守ってもらえるということ……か。
私は頷く。
「待っていようね」
もう一度念押しされるように言われて。
そしてプリシラは私を離した。
「ミカエラのほうにも行くんでしょ」
プリシラは笑って頭を撫でてくれた。
「……ミコトはいい子過ぎて、何しでかすか怖いわ」
次の日からはプリシラとミカエラと私で狩りに行った。
私はプリシラの剣を貸してもらった。
魔物の気配を感じたら、プリシラの魔法で追い立てて、ミカエラと私で仕留めるというやり方で一角ウサギやレミーという名の大型のネズミみたいなのとか狩ることはできてる。
狩りの合間にキノコや木の実や薬草などの採取もできた。
大型の魔物は諦めないとだけど、三人で生活するには十分だ。
私は水魔法が上達し『アクアバレット』『ウォーターアロー』もできるようになった。
おかげで、プリシラと交互に魔法と剣を使ったり、逃げそうになった獲物を魔法でも仕留められるようになった。
ミカエラにも教えてもらって、火魔法で水を温めたり、『ファイアボール』という初歩の攻撃魔法も教えてもらった。
火は便利だけど、森の中で使うのは難しい。山火事起こしたら大変だもんね。
だから、ミカエラは剣の腕を磨いていたってことなんだね。
まあ、体格に恵まれて得意だった、好きだったてのもあるけどね。
「ごめんね。
ミコト、心配かけたね」
ミカエラに言われて驚いた。
「何?」
「確かにクルトのこと好きになりかけてた。
でも、それは私の過去のことを話さなくていい相手で、そういうことを気にしなくていいって思ったことが大きい。
私、他の人と知り合って、好きになって、自分の過去を打ち明けるのが思ってたより怖いみたい。
その心配がなくてちょうど良い、楽だな、そんな気持ちでクルトのこと見てた。
ミコトに言われて、気がついたわ」
「……でも、きっかけは何でも、好きって気持ちは」
「うん、クルトのことは好き……だけど、どうなんだろ?
その、恋とか惚れたとか言うんじゃなくて、一緒にいて楽だからっていうのが大きい……。
それってちょっと物足りない。
私にもクルトにも失礼な気がする。
だから、ミコト。
私はミコトと旅を続けたい。
いつか自分が本当にこの人ならって思える人と、自分の過去もきちんと話せて、それでも一緒に生きていきたいと思う人と、一世一代の恋をしたい!
私まだ、そういう恋をしていない!!」
「……一世一代の恋!!」
すごい壮大な、大恋愛!?
「……ミコトも自分の気持ちに素直になりなさいよね」
「自分の気持ち……。
そんなこと言ったら、私だってクルトしかそばにいなかったわけで……」
「そんなことないでしょう!
アインは? カイラムも!
従業員で独身でミコトに優しかった男の人は他にもいたわ。
まあ、優しいかというか微妙だけど、あの坊ちゃんもね」
私は坊ちゃんのことを思い出して笑ってしまった。
そうか、女子としてはドキッとするシチュエーションであったか!?
その後、貴族とわかり、私を保護したいとか言って、もし、私が普通に娼館の従業員だったら、シンデレラみたいな話、なんだよね、きっと。
でも、全然、そうは思わなかった。
もしかして、私の心にはクルトがいたから……?
「今日は前祝い!
ごちそう買って帰ろうね!」
ミカエラの言葉に「なんの?」と言ってから気づいた。
「私の誕生日か!」
プリシラとミカエラが笑った。
「14歳、おめでとう!
ここまで無事に大きくなってくれて、お姉ちゃん達はうれしいっ!」
プリシラがそう言ってくれて……。
「ありがとう。
本当に、あの時、プリシラとミカエラとクルトに見つけてもらえなかったら……。
本当にありがとうございます。
これからも……、よろしくお願いします!」
「まかせといて!」とプリシラ。
「うん、幸せになってほしい」とミカエラ。
ミカエラの表情が一瞬悲し気な少女のように見えた。
私は思わず、ミカエラに抱きつく。
「ミカエラ……」
なんて言ったらいいんだろう。
ミカエラもプリシラも、とっても傷ついた少女時代を。
傷ついて、さらに踏みにじられたというか……。
そこから、そんな境遇にめげず、自分を取り戻していて、そして、そんな中で私を助けてくれた。
「ミコト……。
あなたは私のために幸せになってほしい。
あなたが清らかで幸せになってくれたら、私は……、自分を認めることができるような気がするの」
ミカエラの呟きに抱きしめる手に力を入れた。
「私はまだ守られているけど。
もっと強くなって、プリシラもミカエラも、奪われたものを取り戻すお手伝いをしたい!」
ミカエラが笑って、私をぎゅっとして、私は「ぐえっ!」ってなった。
力強いからね。ミカエラ。
「期待してる!!」
ミカエラが素敵な笑顔で笑ってくれた。
うん、どういうことになろうと、私はミカエラとプリシラと一緒にいたいと思えた。
その日の夜は宿のおばあさんも一緒にみんなでごちそうを食べた!
女子会っていうの? こういうの?
楽しかった!
おばあさんの恋話というか、おじいさんとの出会いとか結婚式の話とか!
読んで下さり、ありがとうございます。
さあ、いよいよ、クルトとの約束の日!




