12 兄離れ?(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
ホークが話し掛けてくる。
「ミコトはみんなから大切にされてるのな」
「うん、大切にしてもらってる……」
「ふーん。
プリシラがミコトとクルトの従姉……。
旦那から逃げてるとか?」
私は顔を顰めた。
逃げているのは私だけなんだけど……。
「聞いちゃいけない話?
話題変えよう。
ミコトはランク何?」
「私は登録したばかりだから、Fです」
「へー、新人だな!」
「ホークはCランクって、どこかのパーティにいたり?」
「俺の地元、魔物がよく出るところだったのよ。
で、村にいるうちに討伐隊でけっこう活躍しててさ。
いつの間にかDになってて。
だから、冒険者というよりは村の防衛団みたいな、村の人達や幼馴染の友達とって感じだな。
で、近くのギルドに才能あるから本格的に冒険者にならないかって声掛けられて、勧められて。
村の方も下の奴らが育ってきてたし、な。
出ていいよってことになって。
で、ギルドの紹介でパーティもいくつか組んだことあるけど。
基本ひとりだな。
まだ若いのと、村出身、つまり平民で元農民とわかると、みんな下に見てくるのが、うざったいというか」
「……チャラい感じなのかと思ったら、けっこう、苦労してるんだね」
「まあな、そっちは?」
「私はクルトやプリシラとミカエラが守ってくれてたから……、恵まれてる方だと思う」
「ああ、そんな感じするよ。
一緒にいるとほっこりするっていうか。不思議な感じだ。
周囲にもミコトが大切にされてきて幸せなのが漂っているというか」
「それってどういう……。
まあ、みんなを褒めてくれてるんだよね。ありがとう」
ホークはちょっと上を見てから言った。
「14歳になるって……。
じゃあ、そろそろ兄さん達から離れるとか?
まあ、プリシラとは一緒にいた方が良さそうだけどな。
でも、兄さんとミカエラとはそろそろ別行動?」
「なんで?」
「だって、あっちは恋人でけっこういい年齢じゃないか。
結婚してどこかで落ち着きたいんじゃないの?」
あ、そういう考えもあるか。
ミカエラが『大きな街に住んでみたいな!』『普通の暮らしってものをしてみたい』と言ったことを思い出した。
ああ、そういう……。
私は口をきゅっと結んだ。
「あ、兄さんとはまだ一緒にいたい感じ?」
「うん……。
私の夢は4人とどこかに家を買って住むことだったから……」
「そんなに仲がいいのか!
じゃあさ、ミコトは俺と結婚して、兄さんの家の隣に家建てようぜ!
敷地が一緒とかでもいいかな」
「なに、それ!?」
私は笑ってしまった。
でも、ミカエラとクルトの幸せを考えるなら……。
私とプリシラだけで逃げるのも……。
そう考えるなら、いつかはプリシラも解放してあげないといけない。
でも、私はまだ非力で……。
強くならないと!
自分で自分を守れるように!
私はホークに笑いかけた。
「そうだね!
私が強くなって、自分のことを守れるようになったら!」
ホークが赤くなる。
「……だから、俺の嫁になれば俺が守ってやるって!」
「宿で見かけた女の子に簡単に声かける男は信用できないわね」
急にプリシラが私の背後にいて、笑ってるのに怖ーい感じで言った。
ホークのおかげで、デュラン近くの狩場、しかも穴場というか、ホークの勘で(これまでの出没話や他の冒険者の動向も入れて)ボアが集まっているかもしれないという所に案内してもらえて、ボア5頭も倒した。
すごい、ひとり1頭の分け前になります。
私が収納しているとホークがびっくりする。
「収納魔法って……。
さっきプリシラと水魔法練習してたよな!?
風もできるってこと?」
私は頷いた。
「まさかの2属性持ち!?」
「俺も2属性だ」
クルトが言うとホークは「ひえ~!」と驚く。
「才能ある兄妹なんですね!
すげー。
じゃあ、ミコトと俺の子も2属性になるかも!?」
クルトと私の顔が引き攣った。
ミカエラが笑って、プリシラも苦笑いして私を見てた。
歩いている時に私とプリシラは薬草の採集もできていたので、一番大きなボアはホークに取ってもらい、残りのボア4頭と薬草は全部お金にしてから四人で分けた。
私は端数をお小遣いにして、残りを生活費としてプリシラに渡した。
クルトとプリシラが何か話してる。
プリシラがギルドの職員に何か声を掛けられて、紙を渡されてた。
ギルドを出ようとしたら、ホークが出入り口で待っていたんだけど。
「私達、今日は違う宿に泊まることにしたの。
昨日、ゆっくり休めなかったから」
プリシラが微笑みながらホークに言うと、ホークが慌てた。
「俺も一緒に!」
「悪いな。家族で過ごしたいんでな」
クルトが私の肩を抱いて歩き出す。
「ミコト!
明日も一緒に!」
ホークの声に私は振り返って「会えたらね! 今日はありがとう!」と挨拶したけど、クルトに引っ張られるように前を向いて、歩いた。
「ホーク、いい子だったじゃん!
ミコトにデレデレだったね!」
ミカエラが笑って。
「そうだね。
守ってもらうなら……、恋人とか嫁とか、結婚しなきゃいけないんだね」
私が呟くとプリシラが怖い顔で言った。
「そんな考え、だめよ。
守ってもらう対価に自分を差し出すっていうの?
それは本当の愛ではないわ」
「そんなのわかってるよ。
でも、私のためにみんなを……。
せっかく自由になれたみんなを、私の都合に付き合わせてる。
ホークと話してて思った。
私はどこかで家を買って四人で暮らすのが夢だったけど、それは私だけの都合のいい夢で、三人のことを何も考えていなかったって……。
ごめんなさい。
私、急いで強くなる!
自分で自分を守れるようになったら……。
プリシラ……、それでも一緒にいてくれる?」
「いるわよ! ずっと!」
プリシラが私を抱きしめてくれた。
ほっとした。
「ありがとう。
本当にひとりになると考えたら……、怖くて」
「ん?
ひとり?
プリシラだけ?」
クルトは首を傾げてから、私を睨む。
「俺は?」
「……クルトとミカエラは結婚するでしょ?
そうしたら、ふたりの方がいいんじゃない?」
「え?
なんでそんな話になってるの?
ホークが何言ったんだ?」
「うん……、兄さんが結婚したら、兄離れしなきゃなって。
それにミカエラも『大きな街に住みたい』『普通の暮らしがしたい』って言ってたし。
二人でなら可能でしょ?」
「ちょっと待て!
俺とミカエラが恋人ってのはミコトが考えた『設定』だろ!?
俺とミコトが兄妹っていう嘘と同じ、嘘だ」
「……嘘じゃないよ。
ミカエラとクルトなら、本当に恋人になれるし、仲良いし。
いいと思うよ、私は」
「ミコト!
何か勘違いしてるんじゃない?」
ミカエラがおずおずと言って……。
うー、やっぱりもやもやする……。
「うーん、私から見てて、ミカエラとクルトは……、もう恋人に見えるけど」
だから、私はもやもやしているわけで……。
大好きなふたりなのに、心から祝福できないのが、本当に自分が嫌になる。
私、この5年間でクルトとプリシラとミカエラに……、こんなにお世話になっているのに、こんな気持ちになるなんて……。
クルトとミカエラが幸せになるのはうれしい。
けど、そばにいて、それを見ているのは、なんか苦しい……。
ふたりで私を置いてどこかへ行ってくれた方がマシだ。
ああ、でも、それも……。
もう、何かぐちゃぐちゃだな。
でも、それをぶちまけるほどの我儘さは私にはない。
ぶちまけたら、クルトは困るだろうし、ミカエラも傷つく……。
なんかシーンとしてしまい、誰も……と思ったら、クルトがプリシラに言った。
「……しばらく。
3日間、俺は別行動していいか?」
「クルト……。3日間ね。
わかった、気をつけて。
とりあえず、私達の宿を決めるからそこまで付き合ってくれない?」
私とプリシラとミカエラは街の中心から少し離れた住宅街の方に小さな宿というか下宿というかそういうところに泊まることにした。
おばあさんがひとりで自宅でやっている宿なんだって。しかも安めで、女性限定なんだってさ。
「じゃあ、3日後、迎えに来るから」
クルトはそう言って、ギルドの方に戻って行った。
ミカエラが寂しそうに見送っている。
私もそれを見て悲しくなる。
ああ、言っちゃいけなかったかな。
でも、クルトとミカエラを見てて、あれぐらいは、そう私が思ってるってことは伝えたかったし……。
読んで下さり、ありがとうございます。




