126 復讐の準備(エリオット視点)
どうぞよろしくお願いします。
この話を入れて、4話で完結の予定です。
エラン達は狩りに行くとギルドへ行ってしまった。
私はエレノアと作戦会議だ。
エレノアは将来というか、まあ1~2年後くらいにはイサクと結婚して王家を出たいと……。
「残念だな。
王も、王妃も残念がるだろう」
エレノアはにっこり笑う。
「それもあるの。
王妃への……私なりの復讐。
王妃はエリオットを王にしたかった。
でも、神殿の主をエランには渡したくない。
それなのに転移者をアサニヤ王国に追い出すために私をアサニヤに嫁に出そうと。
その話が白紙になり、エドワードも暗殺なんてせずに上手く廃嫡できたし、私が神殿に入ればいいと、なんだか希望通りになって今、うれしくてたまらないんでしょうけど……。
私はエランに譲るつもり。
2年経てば、エランも16歳。
立派にやっていける」
私は微笑んだ。
「その話、私も乗りたいな」
エレノアは驚いた顔をした。
その日の夜、狩りとギルドから大興奮のエランとエディとラスを連れて王城に帰ってきたシドを、部屋へ呼び出した。
「どうしたんですか?
話ならエラン王子とエドワードも……。
なにか、やばい話ですか?」
シドは部屋にエレノアがいるのに驚きつつ、秘密の話と察したようだ。
私はニヤッと笑った。
「ああ、やばい話かもね」
「うわ、勘弁して下さいよ」
「そういえば、シド。
ヘレンはどうなったの?」
エレノアが心配そうに聞いた。
「ヘレンは実家の男爵家の領地の方へ返しました。
元気になった息子もそっちにいて。
退職金もオーテルロー侯爵家から出させました」
「……結婚していたのよね?
旦那様とは?」
シドは首を振った。
「そのうち、正式に離婚するそうです」
「そう……、でも、この件を離れて、息子さんとの生活の一歩を確実に踏み出したってことね」
「はい」
「良かった……。いろいろありがとう。
シドも、自由になりたい?」
「は?
そうですね……。
今は……、エレノア王女とイサクが無事に結婚したら、俺も何か、新しいことを考えてみよう、かな?」
「ふふっ、そこまでは付き合ってくれるのね。
心強いわ、ありがとう」
私は改まって、シドにこれからの予定を話した。
「はー、こりゃ、ずいぶんな計画だ。
エラン王子とエドワードには?」
「ふたりには何も言っていない。
エディは魔法塔へ行けたらとクラークには既に申し入れている」
「……エドワードは知らないと。
わかりました。
エドワードがマイルズ共和国へ行き、王妃が安心して退いたところで、ドカン! ですね」
シドが面白そうに笑った。
「ああ、エレノアが言い出して、一番効果的になるだろうと私も乗った」
シドがエレノアと私を見て、また笑った。
まず、エディのマイルズ共和国にある魔法塔入りが決まった。
本人も乗り気で、すっかりミコトに懐いて、魔法を習っている。
風魔法を持っていたそうで収納魔法ができるようになったのがうれしくて、もう王城を出る準備をせっせと始めているそうだ。
エランとラスと一緒に王城の中を歩き、庭を走り、剣の練習を……。
まだ体力が周囲に追いついていなくて全てはこなせないが、休みつつ、行動を共にするようにしている。
エランは後3日ほどで学校へ戻る。
本人は寂しがっているが、この王城からもエディ、ラスもいなくなるし、コスはもう王城を出て使節団としてギルドで過ごし、王都周辺の視察に参加しているという。
エランが学校に戻った次の日にラスがアサニヤ王国へ戻ることになった。
アサニヤ王国、シーザー王国、マイルズ共和国の友好条約を私達は結んだ。
そして転移者については見つけたら保護し、ギルドにて情報を共有し、すぐに魔法塔へ送り出すという約束を交わした。
そして、魔法塔からは年に2回、聖魔法の治癒魔法ができる魔法使いが1カ月間、アサニヤ王国とシーザー王国に滞在してくれることになった。
この魔法使いは転移者とは限らない。
もしかしたら、将来、エディやエドガーが来ることもあるのだろう。
「ラスター!
アサニヤ王国の方、かなり制度が変わるから大変だと思うけど、しっかりね!」
ミコトが心配そうにラスに話し掛けている。
「はい!
カイラムにも言われたけど、やってみると言ったのは私です。
ミコト……、アサニヤに来てくれるんだよね!?」
「うん、転移者の保護を訴えるには転移者が魔法塔でちゃんと魔法使いになっているところを見せた方がいいもんね。
それは、約束する」
「ありがとう……。
その、手紙を出す。
魔法塔へ出せば、ミコトに届くよね?」
「うん、家は商会のことで引っ越しとかあるかもだけど、魔法塔にはいるから!」
ラスは頷いて、私と向き合った。
「エリオット……、これからもよろしく頼みます」
「ああ、シーザーにはエランもいるし、大丈夫だ」
「エランは後1年半、学校ですよね。
そうしたら、これから協力し合えることに、楽しみです」
ラスは馬車から身を乗り出さんばかりに手を振って去って行った。
次の日、エディがマイルズ使節団の方に行くことになる。
話がまとまったことで、マイルズ共和国の使節団もカノンを通りケレスを渡り、船利用でマイルズ共和国の方へ帰るそうだ。
エディはそのまま一緒に魔法塔へ行く。
そのため、慣れるためにという口実で、少し早く王城を出ることになったのだ。
エディがギルドへ移った日の午後、私とエレノアは王と王妃に報告に行った。
すでにシドからいろいろ報告してもらっているが、正式にという感じで。
王はエドワードがシーザー王国を出ることに寂しそうな表情をしたが、王妃は喜びを噛み殺すのに忙しいと言った表情だった。
「でもこれで、シーザー王国も安泰ね。
ディウス……、早めにエリオットに王位を譲る準備を始めません?」
王妃が予想通りの言葉を口にする。
私は心の中でほくそ笑む。
「そうだな……」
「エレノア、あなたにこの王城の采配を任せるわ。
エリオットが王になりあなたが支える。
そして、転移者はもう見つかり次第、魔法塔へ送るのですから、神殿も縮小しましょうか?」
「いえ、王妃。
神殿を王と王妃の退位された後に過ごす場所にしたらと思います。
お父様にとって、懐かしく、愛着のある場所なのでは?」
エレノアがさらっと言ってくれた。
王は何かを思い出すような目をした。
そして頷く。
「ああ、懐かしい思い出でいっぱいだ」
王妃は私をちらりと見る。
エレノアを黙らせなさい、という表情だ。
でも、王城の采配をエレノアに任せると言ったのはあなただが?
エレノアは王妃のイライラに気づいた様子で少し声のトーンを下げた。
「では……、王はそのように。
王妃は神殿はお嫌と……。
それなら、側妃に王のお相手として神殿に入って頂きましょう、か?」
「エレノア!?
何を言い出すの!!」
「だって、お母様はお父様と神殿で過されたくないようだから……」
「そんなことはっ!」
「神殿は私がとりあえず代理の主として見ることにします。
叔父様にはもう無理ですし、たぶん、王城のあのお部屋から出ることはもうないでしょう。
転移者もいつ現れるかわかりませんし、それは王城のエリオットと協力をして、ね?」
「はい、エレノアと王城と神殿を守ります。ご安心を!」
王妃の表情が和らぐ。
「それなら……、ディウス、いいかもしれないわね」
王妃の言葉に王が頷く。
「そのようにしよう」
王と王妃が部屋を出てから、私とエレノアは安堵のため息をついた。
「シドに少し吹き込んでおいてもらったのが良かったみたいね」
エレノアがにっこり微笑んだ。
「ああ、計画通りに!」
私もニヤリと笑った。
読んで下さり、ありがとうございます。




