124 カイラム王弟(ラスタル視点)
もう少しで完結する予定です。最終話のイメージは決まったので、そこに向けて書き進めています。
このまま、最後までお付き合いをどうぞよろしくおねがいします。
私は苦笑した。
そうだよな。あれはマイルズ共和国での話だもの。
「うん……。国からの命令でさ。
私は表で、まあ使節としてコタンの研究所や図書館を普通に視察してる役目だったけど」
「……アサニヤ王国って、本当にそんな風に裏で動いてたりするんだ……。
もしかして今回も?」
エランが言って。
「特に言われてないけど、何かしら裏は動いているかもね」
「カイラムって奴か、王弟だろ?
ミコトが王城にいるかもと話していた。
実際、王都にいたことは確認できてる」
エリオットにそう言われ、私はため息をついた。
ミコト……、そうだよな。
警戒してるよな。
それもあって、今回はマイルズ共和国の女性を利用してシーザー王国に入国するとかは聞いてたんだけど。
「ミコトの能力?
魔法塔へ行って、魔法使いの修行をして、ミコトはすごく強くなったよね」
コスが慌てて言う。
「エドガーもすごく強いんだ!
聖魔法も持ってるし、属性魔法はえっと、複数持ってる!
エディもギルドで調べてみなよ!
で、魔法塔に来い!
一緒にパーティ組もう!」
エディが目を丸くする。
「私が、冒険者になれる!?」
ミコトのコタンでの話辺りから聞いていたんだろう。マイルズ共和国の首都ジュノーのギルド副長のゴードンがそばへ来た。
「まず、ギルドに登録。
だいぶ身体を鍛えて頂くことになりそうですが。
ギルドに登録すれば、ギルドがある国なら出入国がスムーズにできますよ!」
「旅、冒険の旅。狩り……。
私にもできるんだろうか……」
「やってみなきゃ、わからないって!」
コスが大きな声で叫んだ。
「俺も、シーザー王国で本格的な狩りデビューしてさ。
すごく楽しかった。
みんなで役割を分担するんだ。
ミコトは魔法で魔物のいる場所を把握して、属性魔法で追い立てる。
ライカンやゴードンは魔物が逃げる方向を読んで、待ち構えてて、狩るんだ!」
「はははっ、それぞれが役割分担していたこと、やっとお分かりか!」
ゴードンが笑った。
コスが恥ずかしそうにする。
「はい、あの時は……、ミコトにひどい態度を……」
「まあ、わかればよろしい。
コステロ殿はこの旅でだいぶ成長しましたな」
「……はい!
ゴードン、お願い!
また、ここのみんなで狩りに行きたい!
ミコトに頼んでみて!」
ゴードンは私達を見回して、ニヤッと笑った。
「すごいパーティ名になりそうですね」
夜遅く、私はアサニヤ王国使節団の部屋へ荷物を取りに戻った。
エリオット王子の従者のスニフがついて来てくれた。
「ラスタル王子!
御無事で!
この夜会、終わった後からいろいろわかったのですが、トラブルが起きていたようで!」
使節のひとりがそう言ってから、スニフに気づき黙った。
「私は荷物を取りに来ただけだ。
王子達の方に合流する。
かなり親しくなったよ。
王弟にそう伝えておいてくれ」
使節の男はぎょっとしてスニフの方を窺う。
「連絡は取っているんだろう。
今回はミコトに近づくのは無理だ」
私はそれだけ言って、スニフにはそこで待っていてもらい、自分の部屋に入った。
そこにカイラムがいた。
「ラスタル、本当にミコトだけを呼び出せそうな機会はないか?」
「カイラム……。
もうやめよう!
無理やりミコトを攫っても、魔法塔、マイルズ共和国、シーザー王国を敵に回すことになる。
話を聞いただろ!?
シーザー王国と魔法塔が協力して、転移者を見つけたら魔法塔で保護して育てるって。
アサニヤ王国もそこに入るべきだ。
そして治癒魔法のできる魔法使いに時期を決めて来てもらうんだ。
『聖女』はもうやめよう。
カイラムだって、わかっているだろ。
他の国の転移者の扱いを見てさ。
魔法塔で自立できる魔法使いになれば、転移者は自分の人生を守り楽しんで生きていける。
結婚して家族を作ることもできる。
それが転移者にとって、この世界にとってもいいと思う」
カイラムは静かに聞いてくれ、そして話し出した。
「聖女がいなくなる。
今まで助かっていた者が助からなくなる。
民を納得させるのは大変だぞ。
それに……、今まで苦労していた聖女、転移者……。
彼女達を救えなかったのは……」
「今まではそうだったかも。
ここで直せるなら直した方がいい!
今までの転移者には申し訳ないけど、これからの転移者を守ることになる!
過ぎてしまったことは取り戻せない。
だからって、これからの転移者に同じことをくり返させていいわけじゃないって!
カイラムならわかるよね!」
カイラムは黙って目を伏せた。
「……わかった。
次の『聖女』は現れない。
マリナ様で終わり。
それもいいかもしれない。
転移者として魔法塔に保護されて……、魔法使いになった転移者の姿を見れば、隠そうとする者も少なくなるかもしれない。
ラスタル。
後のこと、アサニヤ王国のことは頼んだ。
私は……、領地に引っ込む。
マリナ様を連れて行く。
私達は、彼女にひどいことを……。
最後くらいはしたいことをさせてやりたい……」
「……マリナ様、あまり良くないの?」
「まあ、長くはないと思う」
「ソーサラのキアラさん。
オグル商会の奥様だよ。
友人だったそう。転移してきた時に友達になって、幼馴染みたいな。
キアラさんも病気がちで……、早く会わせてあげた方がいい」
「わかった……、ありがとう。
私は一足先に帰る。
シーザー王国がこちらとの婚姻の話を白紙にしたこと、そして転移者を魔法塔で保護し育てるための提携と協力を約束したこと。
ラスタルはそこにアサニヤ王国も加わった方がいいと考えて動き始めていること……。
伝えておいてやる」
「わかった。ありがとう。
よろしくお願いします」
カイラムが私の話を聞いてくれた。
ミコトのことを諦めてくれたのか!?
「早く行け!
シーザー王国の王子達が待っているんだろ?」
「うん。マイルズ共和国の今のドージュの家の子もいるんだ!
……ミコト、人妻なのにもてもてだよ」
カイラムが笑った。
「だろうな。
でも、もう、ひとりの男のものだな」
「うーん、少し違う気がする。
ミコトとエドガーはお互いに支え合ってるみたいな。
お互い自立して、手を繋いでいる、みたいな。
素敵な関係だよ。
何も持たずにこの世界に送り込まれてくる転移者の少女でも、ああなれるんだ。
このことをアサニヤ王国も知るべきだ」
「ああ、わかった。王にそう伝えよう」
王子達の部屋に戻った時、エリオットが微笑んだ。
「ん?
ラス、なんか顔つきが凛々しくなったな!?」
「そ、そうですか?」
自分では何とも……。
カイラム王弟が引退したら、第3王子の私に裏の仕事が回ってくるかもしれない。
でも、言い返す。断る。
父王に何を言われても、自分の良心を大切に生きたい。
あ、カイラム王弟は、王が兄だから、そういうことを言い返しにくかったのかもしれないな。
私だったら『家出……、いや国出してやる!!』と脅してやれるかもしれない。
そんなことを考えたら、笑ってしまった。
「何? ラス、楽しそう!」
エランが笑って。
「いや、なんか親父に言われたら『国出』してやろうかなって」
「わあ、『家出』ならぬ『国出』!
いいね!
そしたら、シーザーにおいでよ!」
「いや、マイルズ共和国に!!
ライカンもエドガーもミコトもマイルズ共和国にいるから!!」
「コス、それは魔法塔ってことだろ!?」
エランの正論にみんなで笑う。
まあ、ライカンと約束してしまったこともあるから、頑張るさ。
でも、いざとなったら、行くところがあるというのはこんなに心を晴れやかにするもんだな。
読んで下さり、ありがとうございます。
カイラムはまだ出てきます!




