123 転移者について(ラスタル視点)
どうぞよろしくお願いします。
エドワードは年上なのにまるで私達より年下みたいな雰囲気で。
一番年長がエリオット王子。その下の弟達みたいな関係にすぐなってしまった。
コステロはコス。
私はラスタルという名前だが、アサニヤではラスターと呼ばれることが多いとエランに話したら『なら、ラスね!』と言われてから、エランからはラスと呼ばれ、そのままコスにもそう呼ばれ……。
エランは元々短くてエラン。エラだと女の子の名前になっちゃうからだと。確かに。
エドワードの愛称もみんなで考えて『エディ』となった。
『エド』より『エディ』の方が柔らかい感じがするってコスが言ったんだ。
「柔らかい?
じゃあ、硬い名前って?」
エリオットが笑って言うと「エドガーだな」とコスが即答した。
確かに。
エディがちらりと従者や騎士達の方を見て「ゴードンもけっこう硬そうだ」と言った。
「ああ! いい勝負!」
なんてエランが笑って。
ひとしきりそんな他愛ない話をして笑ってから、コスが言った。
「エディ……。
エディが言ったこと。
俺、ちょっとわかる。
俺もそういうことを感じることがあるというか、そういう自分に気づいて、あーあと思うことがある」
エディが首を傾げた。
「言ったこと?
ああ、私の部屋で話してたことか……。
必死で、自分の苦しみを知ってもらいたくて、いろんなことを喚いたから、何をどう言ったのか……。
あんまり細かく覚えていないんだよね」
「そっか……。
俺もさ、もっと自分を認めて欲しいって気持ち、けっこうある方だと思う。
一番になりたいってとこも。
あの言葉は、なんかぐっときた。
俺だけの悩みじゃないんだというかさ」
コスの少し真剣な告白の後にエランが声を上げる。
「あー!
『イサクのエドガーの一番になりたい。
エレノアより、ミコトより、美しいと言われたい』だっけ?
俺はその後の『エレノアにやさしくされるたびに、自分はだめな奴なんだと思われてるみたいな』とか『自分はもういらないと言われているような……』が心に残ったな。
誰かの一番になりたいって気持ちは、誰でも持っている気持ちだと思うよ。
で、他人の気持ちはこちらからは見えないってこと。
向こうもそうなんだよ。
だから、気になるなら、こちらから聞いてみないとって思うね」
「聞いてみないと……」
エディがそう言って、クスッと笑った。
「でも聞くのは、怖いし、難しい。
そもそも、深刻に考え過ぎてたかな?」
「うんうん、そんなものだよ」
コスがにかって感じで笑って、話を続けた。
「使節団でさー。
最年少はミコトなんだよ。
でも、なんとなく、俺が一番下のおまけみたいな扱いで。
最初、ミコトには舐められたくないって、すごく嫌なツンツンした態度取っちゃって。
ツンツン……、いや、自分はその時は背伸びというか、でも、後から考えてみるとガキっぽいっていうか……。
でも、一緒に過ごすうちに、本当にミコトの方が大人で。
なんか全然俺と人生経験が違うんだよな。
何もかも敵わない。
なのに、それを認めたくなくて、また変なこと言っちゃったり。
そんななのに、ミコトのことかわいいな……とか思うんだ。
ミコトを見るとドキドキしたり……。
俺、頭おかしくなったのかと、思った」
エリオットが笑った。
「コスもミコトに一目惚れか?
実は私もそうなんだ。
ミコトを見かけて、この子だと思って抱きついて。
悲鳴上げられて、駆けつけてきた赤毛の女に……、使節団で来てたよな、ユミエラ? に顔を殴られて」
「「「「「えっ!?」」」」
「うそー!?」
コステロだけ驚きの後『うそー!?』って付け足した。
私もみんなもびっくりしている。
エリオットとミコトはそんな前に出会っていたのか!?
「あはは。
本当だよ。
それでミコトを自分の手元に引き取りたくなって、自分のものにするならねって」
「自分だけのもの……。
好きになるとそう思っちゃうの?」
私の言葉にエリオットが頷いて説明しようとしてくれる。
「特に転移者は、このシーザーでは王や神殿の主のあたりを行ったり来たりさせられるような。
そんな歴史がシーザーではあるんだ。
現に、エディとエドガーの母のスミレ様は二人の夫と……。
王家は転移者を妻にするものが定期的に出てくるから、転移者の血を他の家より多く受け継いでいる。
だから、余計に惹き合うのかもしれないけどね」
「そうか、シーザー王国に保護されると、自分だけのものにはなってくれないんだ」
私は呟いた。
なんだかアサニヤとは逆なのに、同じような気もする。
シーザーではたくさんの男から求められ、受け入れるしかなくて。
アサニヤでは清らかな存在であり続けるために、人との関りや男との接触がかなり制限されている。
逆なのに、転移者の立場、感情、彼女達の人生という大切なことがすっかり抜け落ちているのは同じだ。
「ああ、だから、ミコトのことを、王家や神殿には伝えずに自分の裁量で人を雇い、追わせていた。
本当にミコトを自分のものにしたかったから。
もし神殿に保護されていたら、自分とエランとエディに取られるか、共有するなんて話になっていたかもしれない。
そんなことを恐れていたのに、いつの間にかもうエドガーに取られてて!
そのエドガーは本当は兄とか!?
結局、兄に取られて、恐れていた通りになった。
でも、それで、私は吹っ切れた。
兄と分け合いたくはないし、私の方から兄とあんなに愛し合っているミコトをどうにかするってのは、変だよなと思えたから」
「……よく思い切れたね」
私は言ってしまっていた。
カイラムは諦められずに、まだ何かしようとしている。
アサニヤ王国の国民のため、王家のため、そして今の聖女マリナ様のためって……。
でも、ミコトに惹かれていて、ミコトの一番になりたいっていう気持ちもあったような気がするんだよな。
もういいんじゃないかな。
カイラムはマリナ様に子どもの頃、命を助けられたことがあるそうだ。
それで、マリナ様にすごく懐いているというか、祖母と孫みたいな?
「ラスはミコトのことをどう思うんだ?」
エランに急に言われて、現実に引き戻された。
「あ?
ミコト……。
最初、ミコト、髪の毛、こうくるくるにしてて」
「くるくる?」
エディが首を傾げる。
「うん、アサニヤのヤシマに学校の休みに友人と行っていて。
ミコト達がその隣のソーサラっていう街のギルドを拠点に狩りしてて。
まだ若い冒険者の元気なかわいい女の子って感じで。
髪も短くしてくるくるって。
でも、もうその時にはエドガーと恋人って感じだったし。
アサニヤが追っている転移者だなんて、最初は全然気が付かなかった。
ライカンがすごく強くて、憧れたなあ。
獲ってきた獲物をギルドに出すのを見せてもらったりした。
本当に楽しかった。狩りに行く約束してたのに、行けなかったんだ。
今度、一緒に行けたらいいな」
そこまで滔々と話してしまって顔を上げたら、みんなびっくりした顔をしている。
「ミコト達とかなり前に会ってる?」
コスが言って。
「そうだな。
私はアサニヤ王国のソーサラと、マイルズ共和国のコタンでも会ってる。
コタンではほとんど話せなかったけど」
「コタン……、ミコトが言ってた。
隣の家の親子を人質にされて、ミコトだけ呼び出そうとしたとか?」
読んで下さり、ありがとうございます。
そうです。
コタンでアサニヤ王国がやらかした事件です。




