122 忘れてた!(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
私はエドワードに笑いかける。ヘレンにも。
「ヘレンはお子さんの所に帰ればいい。
スミレコが双子と一緒にいられなくて、辛かったこと知ってるでしょ。
子どもの立場もわかる。
だから、ヘレンがこれ以上罪を重ねる前に、やめて、解放してあげて」
エドワードはヘレンを見た。
「そうか……、ヘレンの息子は、私と同じように母を恋しく思うだけの寂しさを抱えて成長することに……」
「エドワード様!?」
ヘレンがエドワードを見て信じられないという表情をする。
「ヘレン、ヘレンは息子のそばにいてあげて。
息子が私みたいにならないように」
「エドワード様!?」
「エリオット、ヘレンの罪を軽くしてあげて。
私につき合って、こんなことを、いや、強要されたってことにしよう! ね?」
「違います! 違う!
私は!
エドワード様をお助けしたいのです……。
ずっとおひとりで……、耐えていらして……」
「ありがとう、ヘレン。
なんか、いろいろ話したらすっきりした。
君と息子まで巻き込まれることはない。
シド! 頼む。
王妃というか大臣の暗殺の手から私を守ってくれていて、勘違いしてたとか、なんとか、できない?」
シドが笑う。
「あー、なんか。
でもいいでしょう。悪くない。
ヘレン、控室に行ったら、アンを守るためにということにしようか」
「でも、私、アンを!」
「アンは何も覚えていないと」
「え?」
「アンは洗面所を掃除していて、人の気配に手伝いに来てくれたと思って、洗面所のドアをそっと丁寧に閉めている時に後ろから襲われて、薬を嗅がされたと言っているそうだ。
襲ってきた人物は見ていないと。
もしかしたら、それはデュカス王弟だったかもしれない」
「でも!!」
「で、控室にたくさんの人が踏みこんで来て、エドワード様のことが心配になり窓から逃げて、エドワード様の部屋に急いだ」
「……それは、確かに」
「な、理由はつくよ。
エドワード様を悪人にしなくても大丈夫だ」
「本当に……?」
「ああ、なんとかしてやる」
ヘレンは手に持っていたナイフを下ろし鞘に入れた。そして、シドの方へ滑らせてきた。
シドは足でナイフを押さえて、拾い上げた。
「では、先にヘレンは俺と王城を出るよ。
エドワード様、ヘレンを助けて頂き、ありがとうございます」
「私は……」
「これはヘレンの息子の分です。俺のお礼じゃない。
でも、そう言いたかったんです。
言いたいことをすればいいし、やりたいと思ったことをしてみればいい。
エドワード様にはそれができるんだから」
そうシドは言って、ヘレンを連れて部屋を出て行った。
うん、シドはヘレンをきちんと助けてくれるはず。
「エレノア、ごめん。
怖くて、痛くて、苦しかったろ……」
「ええ、でも、もう大丈夫。
クラーク様にも、ミコトにも治癒魔法かけてもらったから!
で、私も、エドワードに言いたいことがある。
腫物を扱うように接しちゃってごめん。
家族なら、もっと本音でぶつかるべきだった。
エリオットとかエラン、みたいにね。
遠慮してたのは私も。
だから、言うわ。
私、イサクを愛してることに気づいたの。
エドワードのおかげよ!
私達を引き合わせてくれて、一緒にいる、過ごす時間や考える事をたくさん与えてくれたのはエドワードだから!」
「え……、今、そんなこと、私に言うかな!?」
「今だから、言う。
家族だから、もう遠慮しないの」
エレノアの微笑みにエドワードも笑った。
エリオットとエランが進み出た。
「エドワード、もう廃嫡ってことになって、本当に自由にどこへでも行けるよ。
デュカス王弟は『スミレに命じられた』って言うだろうね。
エドワードの名は出ないと思うな。
だから、王城を出て、好きなところへ行けるよ。
それぐらいの金は慰謝料として持たせてやるよ」
エリオットの淡々とした言葉。
エランがその後を引き取った。
「エドワード兄さん。
ほぼ初めましてだね。
僕は自分の方が王家を出て自由になるだろうと考えていたのに。
こんなことになっちゃったな。
でも、エドガーもエドワードも僕の半分兄さんなのは変わらないから、
これからも連絡を取れるとうれしいな」
エドワードはぎゅっと両手を握りしめて、俯くと頷いた。
「うん、自分で好きなように生きてみる」
エラン王子のそばへ、ラスター様とコステロがわっと近づいて、エドワードと無理やり握手しようとする。戸惑いながらも握手してるエドワード。
「エドワード!
アサニヤに来ない!
聖魔法が使えるなら、初めての男の治療魔法使いで、『聖女』の今までの概念ぶっ壊しで面白そう!」
「なんだよ、ラス!
聖魔法持ちならまずマイルズ共和国の魔法塔で強い魔法使いになることをお薦めします!
そうすれば、本当に自分で行きたい所に自由に旅ができるでしょう!」
そんなそれぞれの国を売り込んでるふたりを見て、笑っちゃったよ。
あれ、何か忘れてるような……。
エドワードはエラン王子とラスター様とコステロとエリオット王子とスニフとゴードンとエラン王子の従者をと一緒に、エリオット王子の部屋に行ってしまった。
おいおい、女装したままでいいのか!?
変な噂にならなきゃいいが!?
私はシアと顔を見合わせ、微笑んだ。
「シアの言葉、とてもよくわかった。
シア、すごくがんばった」
「ふふ、ありがとう。
まあ、あんなこと言って、私も復讐したようなものよね」
「ううん。
シアのは復讐じゃないよ。
相手が自滅したっていうの。
シアは貶めようとしてなかったもの。
復讐なんてしてないよ」
「うん、ミコト。
ありがとう……」
「うん、エドワードの気持ちに届く言葉を、ありがとう。
エドワードは一応私の義兄弟になるからね。
お礼を言います」
「あら、じゃあ私にもお礼を言わせて!
シア、ありがとう!」
エレノアがきゅうにお礼を言ってきて。
なんだかみんなで笑い合ってしまって。
クラークやノルテス、緊張しながら護衛として付いて来てくれていたザイマ、関係ないのに分かれない方が安全面でいいかと連れてきちゃった議員のふたり。
もう若い王子達の方について行ってくれたゴードンはここにいないけど。
「みんなつき合わせちゃってありがとうございました!
無事に、なんとか、終わったかな?」
私の言葉にクラークが変な顔をする。
「終わってないだろう?
カイラムはどうなった?」
「……あ、忘れてた!!」
「忘れてた!?
まあ、盛りだくさんではあったかな。
そろそろ、夜会もお開きになる頃だろう。
大広間に行って、視察団らしく、シーザー王国の貴族と交流をするか!」
「そうですね。
王子や王女が最後に出て来ない状況で王と王妃がどのように夜会を締めるのか興味はあります」
エドガーの言葉にクラークが大笑いする。
「なんか意地悪でいいな」
行かないといけないかと気にするエレノアに「おとなしくしてなさい!」と言って、アンのいる控え室に帰した。
そして、大広間に入り、自分達のテーブルに戻る。
王と王妃が壇上に現れた。
貴族達は、その場で立って姿勢を正した。
私達も立ち上がった。
「今日の夜会を楽しんでくれただろうか!
実は我が国の王子と王女、そしてアサニヤ王国の王子、マイルズ共和国の使節団の少年と、若い者で集まって、親交を深めて対話を楽しんでいるようだ。
このようにな関係が育つこと、そのきっかけがこの国であったこと、うれしく思う!
それでは、明日も良い日を!」
「「「「良い日を!」」」」
あー、締めの言葉はこうなんだ!
おもしろい。
私達はこのまま王城に泊まることになってしまった。
本当はギルドに戻ってユミエラ達の話、聞きたかったのになー。
それにカイラムはどこにいるんだろう?
王城に入り込んでいると思うんだけど……。
読んで下さり、ありがとうございます。
まだ断罪というかやってたことへの仕返しというか、その後の見届けというか。
そんなことを書きたい人が何人かいますので、もう少しだけ続きます。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです。
よろしくお願いします。




