120 助け出して(ミコト視点)
最後までお付き合い頂けたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「では、エレノアの所に行こう!
それから、エドワード……のところも行かなきゃだよな」
エリオット王子がため息をつき、エラン王子が「エドワードにも廃嫡のことを伝えなきゃでしょ」と言った。
そうか!
エドガーとエドワード王子は王家から廃嫡扱いということになったんだもんね。
もう王子とは呼べないのか。
というか、エドガーは納得してたからいいけど、エドワードには知らせずに発表しちゃうのってどうなの!?
でも、部屋から出ない引きこもりじゃ、いずれ、どうしようもなかったのかな……。
エラン王子が「ラスも連れてっていい?」とエリオット王子に言って、みんな目が点になる。
いや、こんな、シーザー王国の裏側をアサニヤ王国王子に見せるなんて……。
エラン王子は私やコステロを見た。
「マイルズ共和国や魔法塔の若手にはもう見せてるじゃん」
言われてみればっ!
私達、他の国の人でしたっ!
「……それもそうだな。
でも、ラスタル王子ひとりで来れるかな?」
「ひとりかあ。どうかな?
コス、一緒に説得してくれない?」
「えっ?
でも、ミコト? いいの?」
私は考えた。さっきラスター様に感じたこと。
頷く。
「私もラスター様と話をしてみたい。
こちらにひとりで来て下さるなら、いいと思う」
するとゴードンが前に出た。
「私が三国の若き王子と将来のある若者を守りましょう。
ギルドはどの国とも中立ですし、いかがでしょう?」
そして、エリオット王子、エラン王子、コステロとゴードンで、本当にラスター様を誘いに行ってしまった。
そして、本当に連れて帰ってきた!!
「ミコト!! 会いたかった!!
マイルズ共和国の使節の中にミコトを見つけて、うれしかったんだ。
髪の毛、くるくるじゃないね! って、ずっと言いたかった。
それに、エドガーと本当に結婚、おめでとう!!」
もう両手をぐいぐい握られて揺すられる勢いで親し気に言われて、『は?』となった。
「カイラムは?」
申し訳なさそうな表情になり、しゅんとするラスター様。
なんだか、私より二つぐらい上なんだけど、年下みたい。というか、犬みたいな感じもする。
「カイラムは……、まだミコトのことを狙っていると思う。
マリナ様がもう巡業がきつそうだからね。
でも、私は、これからの転移者を守るのに賛成だ。
だから、アサニヤもここで一度聖女が不在になった方が制度を変えやすいと思うんだ。
シーザー王国にも振られたことだしね」
エリオット王子が少し申し訳ない表情をした。
「急にあんな申し出をして、その数時間後に新たな提携を発表するとか、本当に無茶しました。
でも、姉のエレノアを守りたかったんです。
エレノアはシーザー王国になくてはならない人材です」
「うん、もういいよ。
で、シーザー王国に振られて、このまま帰るわけにもいかないし、アサニヤもシーザーと魔法塔との提携協力に入れてもらえたらと思う。
私の考えなので、こちらでもう少し詰めなければならないけれど……。
聖女という概念が染みついているアサニヤには最初は難しいかもしれないけど、教義をいじるとかよりはいいと思うんだ」
私はラスター様の言葉に少し驚きながら言った。
「あ、本当に聖女の在り方を変えつつ続けようとしてたの!?」
「うん、カイラムが『王族と婚姻している』っていう条件にすればいいのだろうって。
ミコトは結婚しても力は衰えてなかったし」
「え?
あ、まあ、そうだけど」
「だから、奪って来て、自分の妻にすればいいと思ったんだろうな、カイラムは」
は?
なんもわかってない気がする!!
「ラスター様は魔法塔に協力して、私を守ってくれるってことでいいのね!」
「うん、カイラムは怖いけどね。
そっちの方がこれからの転移者のためにもなると思う。
今までは転移者の視点が抜けていた。
保護すべき者であると同時に利用すべき者という国の、力を持つ者の都合に翻弄されて不幸になる。
ミコトもそう思うでしょ?」
私は頷く。
提携すれば、転移者を一緒に保護して育成することができる。
そっちの方が断然いいだろう。
エリオット王子が笑った。
「では、エレノアの所へ行こう!」
エレノアの首、イサクの背中、アンの解毒。
私とエドガーが治癒魔法を掛けていくと、ラスター様とエリオット王子とエラン王子とコステロが『わぁ!!』っという表情で見ていて、苦笑してしまった。
スニフに案内されて、シド、クラークも合流した。
「エドワードの所へ行くのね」
エレノアが何か思い詰めたような感じで言った。
「うん、行ってくる」
「……私も行きたいんだけど」
「え?
少し休みなよ!!」
首締められたんでしょ!?
「……エドワードを救えなかったというか、救えると思っていた私が傲慢だったのよね。
私だけが彼の理解者になろうと、なんだと。
そんな風に思っていたから、エドワードの本当の気持ちに気づけなかったんだと思うの。
きちんと向き合いたい。
でも、さっきのデュカス王弟のように……狂ってしまっているということも考えられるのよね……」
「はい。
ヘレンも気になるし、あまりお勧めできない……」
エレノアはイサクを見た。
「きちんとエドワードに言いたいの。
私はイサクのことが好きだと。
エドワードがイサクと私を引き合わせてくれた。ありがとうと」
「い?
そんなこと言って……」
「そうね、大丈夫じゃないかも。
でも、私、エドワードを思いやるようで、自分の本心を言わなかった。
だから、エドワードは私にイライラしたんだと思うのよね。
宣言してやりたい。
悪いことじゃないんだもの!」
「ふふっ、何それ!
お兄さんに言うことじゃない気がするけど。
男を取り合った姉妹に言うような感じだな」
エレノアも苦笑した。
「そうね。でも、ちゃんと伝えておきたいの。自分の口でね」
結局、私達はかなりの大勢でエドワード王子、あ、もうただのエドワードの部屋に押しかけた。
ヘレンは戻ってた。
エドワードはまだ女装してた。
ふたりとも部屋の奥、窓の辺りにいてこちらを見ている。
「エドガー、イサク、来てくれたんだ!
見て!
この姿!
お母様みたいでしょ!
ミコトやエレノアに負けないくらい、きれいでしょ!」
エドワードは軽やかにくるっと回って見せる。
やはり、精神的におかしくなってるのか?
「デュカス王弟は捕えられたよ。
エドワード、君の廃嫡ももう発表された。
何をしようとしてたんだ?」
エリオットが声を掛けた。
エドワードは微笑み、ヘレンはこちらを睨みつけてきた。
「エドワード様には誰一人触れさせない!!
この方は神よ!
素晴らしい力と美しさを持って生まれてきたがために、虐げられて!!」
「……虐げてなんて!
確かに両親からの愛は受けられなかったかもしれないけれど、乳母もいて、成長し、その後も侍女や教師がついてきちんと養育を受けられたでしょう!
だんだんと部屋を出なくなり、引きこもったのはエドワード自身だわ!」
エレノアが叫んだ。
ヘレンが睨む。
「この元凶の王妃、王妃によく似た娘が何を言っている!!
エドワード様を生かさず殺さず……」
「だから、私は外に出ようと誘った!
少しでも、エドワードに楽しいと思ってもらいたいと!」
「暗殺するために?」
「え?」
「王妃からはエドワード様が外出した機会を窺って、いつでも殺れる準備をしておけと!
王城は汚したくないから、外出したらと。
だから、人に知らせぬように外に出ることにしたのよ。
ずっと王城の部屋にいる振りをしてね」
「そ、そんなこと知らない!
私は本当にエドワードの健康を気にしてっ!」
緊迫したやり取りの中、エドワードが「ふふふっ」と微笑む。
「エドガー。
私の魂の片割れ。
私はずっとあなたが訪ねてきてくれるのを待っていた気がする。
ここから助け出してくれて『離れてごめん。これからはずっと一緒にいる』って言ってくれることを。
でも、実際はもう妻がいて、それが母や私に似ている転移者の少女で、その少女を大切にしたいから、過去は全て捨てると。
イサク。
初めてできた、私の親友。
あなたは私の寂しさをわかってくれていると思った。
イサクといると、話していると楽しかった。
なのに、なのに……。
あなたは途中でエレノアに心惹かれて……。
私の親友という立場から、エレノアを思う男に……。
だから、エレノアを殺してやろうと思った。
最初はミコトをと思ったんだけど、ミコトは魔法使いだし、魔法塔がついてるから厄介だなって」
読んで下さり、ありがとうございます。
ブックマークしてお付き合いして下さっている11名の方、どうもありがとうございます。
とても励まされています!
いろいろな人の立ち直りや許し、破滅や復讐や断罪を巻き込みながらラストへ向かってますので、最後まで読んでいただけたらとてもうれしいです。




