118 特別な気持ち(エレノア視点)
どうぞよろしくお願いします。
首を絞められて苦しい。
身体が浮きそうになるのを、その締めている叔父様の手を掴んで身体を引き揚げて耐えてるみたいな状況。
「スミレから兄を奪い、子どもを奪い……。
そして、そして、俺に兄とスミレはまだ愛し合っていると!」
苦しいっ!
エドワード!!
あなた、そんなにお母様のことを!!
殺したいほど憎んでたの!?
涙が絞り出されるように滲む。
その時、首から手が離れて、私の足先が床に着いたけれど、力が入らなくて座りこむ。
誰かが床に崩れ落ちる前に抱き支えてくれた。
シド!!
「吐いてから息を吸う」
私は苦しいけれど、溜めていた息を吐いた、すると自然に息が吸えた。
「ゆっくり、大丈夫ですから、落ち着いて」
シドの声に励まされ、少しずつ、深く大きく息をしていく。
顔を上げると、デュカス王弟である叔父様は既に拘束されていた。
魔法塔のクラーク様、エリオットとスニフまでいる!?
クラーク様が私の視線に気づいて微笑んだ。
「間一髪でしたな。
ミコトがデュカス王弟がどこかの控室に、エドワード王子が庭にいると魔力感知して」
そして、私のそばに跪き、首の辺りを確認すると温かい柔らかな光が見えて、首元の痛みが和らいだ。
「これで大丈夫でしょうが、後でミコトにもう一度かけてもらいましょう」
聖魔法の治癒魔法ね!
これ!
すごい!!
「エドワード王子の侍女のヘレンは庭へ逃げた」
シドの言葉にクラーク様は頷いた。
エリオットが私の所に来て、シドと代わった。
シドとクラーク様と騎士が窓から出て行く。
「エレノア……、危険な目に遭わせてごめん」
エリオットが申し訳さなさそうにぽつりと言った。
「いいの。
私の役目よ。
叔父様、私がスミレ様を虐めた王妃だって。
やっぱり、私は王妃似なのね」
「そんなことはない。
エレノアはやさしい、それでいて人のことを思いやれる強さもある。
自慢の姉だよ。王妃なんかとは全然違う」
「エリオット……?」
「王妃への復讐じゃないよ」
「エレノア様……」
イサクの声。
見ると、背中を痛そうに自分で擦りながらそばにいた。
「すみません。全然守れず……。
申し訳ないです……」
「イサク……。
吹っ飛ばされたんだもんね。
ソファだったから、少しはいいかと思ったんだけど」
「……確かに、テーブルとかイスとか壁とかじゃなくて、少しはダメージが……」
「ふふっ、ありがとう。
イサクが叔父様を止めようと飛び掛かってくれたの、うれしかったの。
本当に……、ほ……」
急に涙がぼろぼろ出てきた。
しゃくりあげてしまう。
「ううっ、こ、こわかった……。
で、でも、イサクが、うう、飛ばされのが心配なのに!
なんでか、守ろうとしてくれたのが、うれしくて、変なの……」
エリオットが私の身体の支えをやめようとしてイサクが慌てて手を伸ばして抱きしめてくれる。
え?
「エレノアは王妃と間違えられて襲われたんじゃないよ。
エドワードがエレノアを狙ったんだと思う」
エリオットの声にイサクがはっと顔を上げる。
「お前のせいだと思うよ」
エリオットの視線はイサクに向いていた。
イサクのせい?
イサクは申し訳なさそうな顔をして私を見た。
「申し訳ありません。エレノア様」
「も、申し訳ないなんてこと!
なんで、謝るの!
イサクは何もしてないわよ!!
エリオット変なこと言わないでよ!」
「そうだよ、何もしてない。
思ってただけだよな。エレノアのことを」
イサクが赤くなる。
思ってた?
……私を?
え、エドワードのことを……。
「エレノアも自分のこととなると鈍いな。
エドワードの嫉妬だよ。
大好きな親友がエレノアのことをどんどん好きになってるってことに気づいて、エレノアの方を憎んできたんだよ。
精神が錯乱している王弟に王妃の悪口でも吹き込んで『殺して』とでも言ったんだろう。
今のエドワードがスミレとしたら、王妃はエレノアぐらいの年齢になるもんな」
私は頭が真っ白になった。
エドワードが私を殺したいほど憎んでた!?
エドワードのために……。
私……、エドワードを苦しめていたの!?
エリオットが立ち上がった。
「ミコト達も心配していると思うから、知らせてくる。
アンは大丈夫だ。
気を失っているだけだった。
薬を嗅がされたようで、医師が診察して大丈夫だと言ってくれたよ。
イサク、後は頼んだ」
「え?
エリオット王子!?」
少し情けない声のイサク……。
私は笑ってしまった。
エリオットとスニフが行ってしまい、私とイサクもお互い支え合うように立ち上がった。
「大丈夫ですか? エレノア様」
「ええ、大丈夫。
アンのところに行きたいわ。
それに、イサクも医師に診てもらわないと」
「僕は大丈夫です!」
イサクの顔を赤いわ。
僕、ですって。
かわいい。
でも、指摘しないでおいてあげましょう。
「ふふふっ」
「何、笑ってるんですか?」
「いえ、さっき、殺されそうだったのに、なんでこんなに幸せなんだろうって。
イサクと一緒にいるからね」
イサクがさらに真っ赤になった。
「そういうこと、言わないで下さい!!」
王と王妃は他の控室で食事を始めていた。
すごいわ。
あんな騒ぎの中、食事を始めてるなんて!
アンは他のベッドのある控室に寝かせられてるとかで、その部屋に行くと医師がいて、イサクも診てもらう。
やはりソファにぶつかったことでそれほどひどくなく済んだのだろうということだ。
ベッドにはアン、ソファにはイサク。
医師と信用のおける侍女と騎士が部屋の中に一緒にいてくれる。
「お腹空いたな」
そう呟いたら、侍女が外へ何か伝えてくれた。
しばらくするとつまめるようなパンに野菜やチーズやハムなどを挟んだ軽食が多めに届けられた。
侍女がお茶を入れてくれる。
「皆さんも交代しつついただきましょうね!」
医師や侍女や騎士に声を掛け、最初に私とイサクで頂く。
ソファの隣にイサクがいてうれしい。
「エドワードは……、私がイサクと仲良くしていると、嫉妬したのかしら」
「……気づいてましたか?」
「うーん、以前よりエドワードがトゲトゲしている感じはしたのよね。
遅い反抗期かと」
「は、反抗期ですか!?」
「そう、エリオットが少し前まであんな感じで。
なんかこだわってそうなのに、途中で投げやりになったり、イライラしてたり。
すぐ機嫌悪くなったり。
エリオットにはあんまり関わらないような感じでいたんだけど、エドワードはね。
ついつい、こちらも甘くなってというか、こちらが引いて対応することで、エドワードの機嫌を損ねることがないならって、確かに、余計イラつくかもしんない……」
「私が……、エレノア様のことを特別な気持ちでお慕いしている、そう気持ちが動いていることに、エドワード様は気が付かれたんでしょうね……。
だから、こんなことに……」
え?
特別な気持ちでお慕いしている!?
イサクが、私を!?
私は頭が心がばくんとした。
えっ?
「エレノア様!?」
私を心配そうに覗き込むイサク。
「あ……、私も、そう!」
「え?」
「わ、私も……、イサクのことを……。
特別な気持ちでお慕いしています、わ」
読んで下さり、ありがとうございます。
ふふ、かわいいふたりです。
エドガーとミコトとは全然違う……。




