116 私にできること(イサク視点)
どうぞよろしくお願いします。
「……いつからなんだ?」
そう声に出ていた。
そうか、厨房に聞けばいい!
そのまま、厨房へ向かう。
確認したところ、朝食は時間通りヘレンが取りに来て下げている。
その後は時々あるお茶の依頼もなく、昼食はまだ取りに来ていないとのことだった。
私はエドガー達の控室に慌てて戻り、報告した。
「エドワード様がいません!?」
エレノア様が何が起きたのか、部屋にいないということが信じられないようで「いない? 部屋にいない!? エドワードが!?」とくり返した。
「いない……?
えっ? 部屋にいない!?
外出したってこと!?
侍女は!?」
私はヘレンのことを思いながら告げた。
「侍女もいません!」
「……いつから?」
「わかりません。
厨房に聞きに行ったら朝食は侍女が取りに来ていたそうです。
昼食はまだ取りに来ていないと」
ミコトがちょっと首を傾げながら言った。
「エドワード王子の魔力が入っている物とかない?」
ミコトは魔力感知で人探しができるそう。
いつも狩りで魔物の居場所を探るのだそう、それで、人探しができるかもと、その人が魔力を込めた物から魔力を感じ取り、同じ魔力をこの近辺や少し離れた所まで捜すことができるんだそう。
私はエドワード様がいつも手に持っていたピンクのペンダントトップのような物を思い出した。
魔法塔の魔法使いであるクラーク様もこちらに合流してくれた。
ピンクの不思議に透明でつるつるしているのに石でもカラスでもない不思議な素材のペンダントトップのようなものを持って来て、ミコトに渡すと、クラーク様が珍しそうに覗き込んでいた。
エドワード様がよく右手に持っていたことを説明する。もしかして、魔力が少しでも……。
ミコトが目を閉じて、少し顔を顰めて目を開けた。
「……神殿にいます」
「神殿!?
え?
ミコト達は、さっきまで神殿にいたのよね!?」
エレノア様が驚く。
「はい、でも、エドワード王子が来てるとか、そういう話や神殿でのなんか混乱とか、そういうのは全くなかったですよ!?」
その時、ドアが開いた。
エリオット王子が従者を連れて入ってきた。
「何かあったのか?
なんだか人の出入りが激しいと……」
「エリオット!
神殿でエドワードを見なかった!?」
すごい勢いでエレノア様がエリオット王子に詰め寄る。
「ちょっ!
何を!?
神殿で、エドワード!? 見てないよ!」
従者が止めるかと思いきや、考え込んでいる?
ゆっくりと口を開く。
「エドワード王子……。
あの女性のように美しい方ですよね?」
エリオット王子がエレノア様に胸を押されてるみたいになりながら叫んだ。
「スニフ! 見たのか!?」
「エドワード王子とは思わなかったのですが……。
デュカス王弟を部屋までお送りした時に、部屋に女性がふたりいらっしゃいました。
たぶん金髪でその上から黒いヴェールを被った美しい女性と……、侍女のような感じの女性と。
侍女は茶色の髪でした」
ミコトが叫んだ。
「それじゃない!
女装して、王子だとわからないように出て行った!」
女装!? エドワード王子が!?
「女装……?
女装って?
確かに、敵の目を欺くために王子が女装して敵陣を突破とかいう話はあるけども……。
エドワードが!?」
エレノア様が混乱している。
エドワード様はずっとお部屋で過されてて、王城の庭にも他の部屋にも出ることがなく……。部屋を出るなんてありえない。しかも、女装して出て行ったとか!?
なんで女装?
確かにエドワード様は美しいから、似合うとは思うけども……。
でも、服とかヴェールとか、前から用意していたということか!?
ミコトがエリオット王子の従者に言った。
「いや、あれだけきれいな方なら、女装似合いそう。
スニフも普通に女性だと、令嬢だと思っちゃったんでしょ?」
「はあ……」
まだ自分が見た者がエドワード王子だとは思えない様子の従者スニフ。
エレノア様が首を振る。
「でも!!
なんで神殿に!?
しかも、デュカス王弟のところになんて!?」
エリオット王子が何かに気づいたようにはっとする。
「だから、デュカス王弟は急にスミレ様の墓に!?」
「デュカス王弟を、スミレコのふりをして動かしている?」
エドガーが呟いた。
エドワード王子がスミレ様のふりをしている!?
男性だぞ? エドワード様は!?
「夜会で、何をする気?」
ミコトが呟いた。
エレノア様が弾かれたようにミコトの方を信じられないという表情で見た。
「夜会に出ようとしている?」
「いや、もしかして王弟を送り込んで何かをさせようとしているのかも。
それとも自分も出る!?
そういえば……、王と王妃の方はどうなったの?
エリオット王子!
えっとワーテルローじゃない、オーテルロー侯爵と何だっけ、分家の伯爵だっけ。
どうなったの?」
エリオット王子が真顔になり、語り始めた。
「大臣は免職、しばらくは罪人として王城に留め置かれる。
過去、王にエドガーを保護して育てることを約束しながら放り出し、私を王にするべくエドワードの廃嫡を企み……。
しかし、エランが神殿に入るのも阻止するため、市井に出したエドガーを捜して迎えようとしたが、見つからないことまで考えて替え玉まで用意していたこと。
そこら辺まで明らかになったかな。
オーテルロー侯爵家はどうだろう。
さすがに王妃の出身の家でもあるし、取り潰しにはならないと思う。
かなり関わってしまったケルン伯爵家は、中心で動いたとして取り潰しになるだろうな。
伯父も王妃もケルン伯爵が主導していた、知らないと突っぱね続けるだろうし」
私はこんな話を聞いてしまって大丈夫なのだろうか!?
呆然としているとミコトがそばに来て小さい声で話し掛けてきた。
「シドはユミエラ達と?
王城に戻ってこないようにと伝えた方が!」
私ははっとした。そうだ、シドは大臣の直属の部下みたいなところもあった。
「そうですね。母に伝えます!」
私は急いで部屋を出ようとして……、でも、何か忘れているような気がして、立ち止まり振り向いた。
エドガー……、兄さんの姿が目に入る。
エドワード様の双子の片割れ……。
「兄さん!
エドワード様のこと……、よろしくお願いします!」
エドガーではない、兄さんとしてお願いしたくなったんだ。なんでだがわからないけど。
兄さんは驚いた表情をしたが、頷いてくれた。
「わかった」
私は少しだけ、安心した気持ちになり部屋を出ることができた。
急いで家に戻る。
母さんが家にいて、シド達はまだ戻ってきていないと言う。
王城で起きていることを伝えることができた。
良かった。後はシドが判断できるだろう。
すぐに王城に、図書室に戻る。
図書室に戻る途中で、エリオット王子、エレノア王女が王妃に面会を求めて許可されたとか、噂のように、他の文官に今の王城で起きていたことを聞いた。
あの後、王妃に!?
一体、どうなってるんだろう!?
でも、そこで何かしらの決着はついたようで、マイルズ共和国使節団もエレノア様も夜会の準備に取りかかられているそうだ。
私ができることはここまでだろう。
図書室に戻る。
そこで、資料を広げ、栞を取り出して、読み始めたが、全然頭に入ってこない。
読んで下さり、ありがとうございます。




