113 王家の言葉(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
「よし! やるぞ!」
エドガーがライカンやクラークと話し合うために私とシアのそばを少し離れたので、気合いを入れて叫んだ。
その時、コステロが合流して、こちらに来たところで「何、叫んで……」と嫌味を言いかけられたと思ったら、何も聞こえない。
「ん? コステロ?」
コステロを見ると赤くなっている。
ははぁ、シアのドレス姿にノックアウトか!?
人妻の威力だな。
あ、私も人妻だったけど、ま、まだまだなのは……、個人差っていうものもあるからね……。
エドガーが花を手に戻ってきた。
青と白のかわいい花だ。
「これ、髪に」
エドガーが加減を見ながら髪に挿しこんで飾ってくれた。
出来上がり、鏡を見る。
黒い髪に白い花が映える。青い花がドレスとの調和をもたらしてくれていて、かわいい!
「ドレス着るなんて思ってもいなかったから。
今度、ドレスに会う装身具も買おうな」
「いやいや、そんなのいらないって!
花、いいアイデア!
私らしい! 本当にうれしい、ありがとう!
エドガーもかっこいい!
魔法使いの正装、よく似合う!」
エドガーと微笑み合う。
コステロが聞いてきた。
「エドガーって、本当に元王子なの?
エランがそう言ってて、ラスもなんか納得してたし」
「ああ、夜会で事実だけ公表することになった。
第1王子が双子で、俺は王城外に出された方なんだ。
自分が元王子とかは知らずに育って、大人になったけどな」
「やっぱり、そうなんだ……」
「コステロ!
使節団のみんなと同じ所にいてね。
今日の夜会、荒れるかもしれないから」
「荒れるって?」
「エランに聞いてない?
シーザー王国の大臣が捕まったこと」
「あ……、うん、ちょっと聞いた」
「それで、大臣がアサニヤと進めていた話が白紙になって。
新たに『魔法塔』との提携っていう話が発表される。
アサニヤ王国にしてみたら、面白くないし、シーザー王国の貴族達も初めて聞く話だろうから、ざわつくかもしれない。
安全のため、使節団のみんなで一緒にいる方がいい」
「そうなんだ……、エランとラスとは……。うん、わかった」
何となく歯切れ悪く返事をするコステロ。
確かに友達と一緒に過ごしたい気持ちもわかるけれど……。
「夜会の後も、気をつけようね!」
念のため、もう一度注意しておく。
案内の係に呼ばれて、部屋から大広間へと移動する。
ノルテスも少し緊張しているみたい。
マイルズ共和国には、ないもんね。こんな夜会とか。
商人や議員の集まりみたいなものはあっても、雰囲気とか全然違うし。
「マイルズ共和国使節団!!」
係が入口で呼び上げ、すでに来場していた人達から一斉に見られた気がした。
私達は入り口で礼をしてから大広間に足を踏み入れた。
ずっと奥まで、玉座のそばの最前列って感じのテーブルまで案内される。
ひそひそ声が聞こえていた。
「魔法塔の転移者!?」
「あの中にユニコーン商会長がいらっしゃるとか!」
「あの男性……、ディウス王によく似ているな。ご親戚なのか?」
なんて聞き取れた。
私達が席に着こうとした時、「アサニヤ王国使節、ラスタル第3王子!」と係の声が響いた。
ラスター様と従者が3人入場してきて、私達とは反対側のテーブルの席へ案内されてる。
「ラスは名前呼んでもらえるんだ!」
コステロが私の隣で呟いた。
名前呼ばれたいの!?
大広間のドアが閉められて、ざわめきが静かになり、緊張感が漂う。
玉座のある壇より低い方に杖というか長い棒みたいな……。ほら、門番がよく持ってる奴!
あれを持ってる人が出てきて、カン! カン! と床に落としつけるようにして鳴らした。
貴族達が立ち上がる。私達も立ち上がった。
そして礼!!
「シーザー王国ディウス国王陛下! 王妃殿下!」
また、カン! カン! の音でなんとなく顔を上げた。
ディウス王と王妃が一番高い壇上の真ん中の玉座の目に立っていらした。
そこから一段低い所の横の方にエリオット王子、エレノア王女、エラン王子が順番に並んだ。
みんな手にグラスを持っている。
透明なグラスが美しい。私が知ってるワイングラスよりは厚い。でも、透明なグラスができたのはすごいよね!
これ、パフェいれたら映えそうだよね!
果物のソースというかジャムみたいなのもいいかも!
中に入っているのはお酒かな? ワイン?
飲まない方が良さそう。口つけるふりだけしよう。
国王の声が響く。
「今宵はアサニヤ王国、マイルズ共和国とふたつの隣国の使節をお迎えし、親交と友情を深め、歓談の場としての夜会を開催する!
この三国に幸いあれ!!」
「「「幸いあれ!!」」」
こういう乾杯の音頭なのね。
私もグラスを軽く掲げてから、グラスを口につけて飲まずに離した。
ざっと見た感じ、シアやエドガーとライカンもそうしてたみたい。
ゴードンもね。
ノルテスや議員達もちょっと舐めたぐらいみたいだ。ほっとする。コステロも同じようにやり過ごしたみたいで、ちょっとほっとした。
注意すると逆に飲んだりしそうな気もして、言えなかったんだよね。
王達の手のグラスを従者が下げに来た。
壇上の国王以外は椅子に座った。
エリオット王子、エレニア王女、エラン王子が前の方に出てきた。
エリオット王子の声が響いた。
「すでに知っている者もいると思うが、オーテルロー侯爵家とケルン伯爵家当主が罪を犯していたことが発覚し、捕らえられた。
そのため、王家ではこれからのことを改めて話し合った。
私、第2王子エリオット、第1王女エレノア、第3王子エランで力を合わせ、これよりシーザー王国のために尽くす所存だ!」
エリオット王子の言葉にみんな聞き入っている。
なかなか声も響いていい感じだ。
「まず、エレノア王女とアサニヤ王国の婚姻について、申し訳ないが白紙に戻すと申し入れた!」
ざわざわっとする。
貴族の多くがアサニヤ王国のテーブルを窺う。
ラスタル王子、なかなか落ち着いて座っている。
続くエリオット王子の言葉。
「エレノア王女はシーザー王国にとって、大切な……。
王家のために必要な人材だからだ!」
そこで王が立ち上がった。
「この場に第1王子であるエドワードがいないことを不思議に思う者もおるだろう。
大臣の罪につながる話なのだが……、聞いて欲しい!
第1王子は双子であった。
私は王子妃スミレとの間に双子を授かったのだ。
どちらが第1王子であるとも言えぬ、争いの種になる、双子。
私は王家の慣例に従い、ひとりだけ、私と同じ金髪で青い瞳のエドワードの方を選び、第1王子として発表した。
黒髪に青い瞳のエドガーは隠された王子として、王城で秘密に育てられていた」
「双子!?」
「でも、エドワード王子は!?」
「ここにいない理由にはならないのでは?」
「いや、引きこもりが……」
ざわざわが大きくなる。
しかし王が再び話し始めようとすると、静けさが戻る。
「王になったことで、スミレとは別れ、私は新たに貴族の中から王妃を迎えることになった。
そのとき、王妃の兄のオーテルロー侯爵からエドガーを王城の外で育てた方がいいと言われ、そのようにした。
オーテルロー侯爵家の分家のひとつであるケルン伯爵がエドガーの養育を引き受けてくれたと。
そして、時が経ち、マイルズ共和国の使節団の中に、エドガーと名直る青年がいた。
彼は、私の息子のエドガーであった!!」
みんな、シーンとしている。
うん、わけがわかんないもんね。
「エドガーは冒険者となり、マイルズ共和国に渡り『魔法塔』の魔法使いになっていた。
驚いたことにケルン伯爵家ではなく、王都の隊士の実子としてエドガーが育っていたのだ。
ケルン伯爵家に預けたエドガーのことを問い合わせると、偽者を仕立てて王城へやって来た。
そこでオーテルロー侯爵とケルン伯爵が、王家に対して犯していた罪が明らかになり、このふたつの家の当主は、今、捕らえられ、取り調べを受けている!」
少しざわっとしているテーブルがある。
このふたつの家と親しい家の人達だろうか?
「魔法塔の魔法使いエドガー!
そしてその妻のミコト!
こちらに!」
そのテーブルの方に気を取られていたら、王は椅子に戻り、エリオットがこちらを見ながら言ったので、私は少し驚いたが、エドガーと立ち上がり、壇の方へ歩いていく。
「やはり彼が!」
「第1王子と同じ身分ということか!?」
「いや、しかし、今はマイルズ共和国にいるのだし!」
なんて声が聞こえる。
読んで下さり、ありがとうございます。
イメージ的に結婚披露宴みたいな感じ?
元々これからのことを発表するという予定だったので、社交の華やかな夜会ではなく、おじさん多めな食事会みたいな。
なので、ドレス着ない予定でした。
今日は午後仕事で、午後の投稿はお休みします。




