112 奥様?(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
昼ごはん……。
あんなにぎゅうぎゅうに締められる経験をした後で、また締められる思ったら、たくさん食べる気にならない。
でもさ。今食べておけば入っている状態で締められるわけで、それで夜会を迎える頃にはお腹が空いてスペースできる!?
なんて、自分のお腹と食欲のことばかり考えちゃったよ。
まあ、いつものようには食べられずって感じです、はい。
食べ終えたら、別部屋の風呂に連れて行かれました。
なんか……、デジャヴって言うんだよね、こういう感覚。
あ、結婚式の時だ!!
でもあの時はこんなにぎゅうぎゅう締められたりはなかったけど。
ドレスのデザインとかなんかな?
シーザー王国の正装のドレス、これ何回も着るなんて私には無理だよ!
今回はシアと一緒なので、なんか、ちょっと、安心する。
「シアは貴族の令嬢だった時、こういうドレスよく着てたの?」
「両親が健在の時にはね。
だいたい15から17歳ぐらいまでは3ヶ月に1回ぐらいのペースだったかな?
また着ることになるなんて思いもしなかったわ」
風呂の後、少し休みつつ、肌にクリームみたいなの塗られたりして、果実の香りがする水を飲んだ。美味しい!! 水分補給は大事。
下着をきちんと順番につけていき……。
ぎゅーってまた締められた。
ぜえぜえ。
シアは緑のドレス。
緩やかなラインでドレープが美しい。
大人な感じだよね。
女の私でもきれいだなぁと見とれちゃう胸と腰のくびれの曲線がきれい。
でも、上品で素敵。
金髪も上品に高めに結い上げている。そしてセーブルの簪。
大切に使い込んでいるから艶がきれいに出てる。
シーザー王国でもセーブルの角の細工物が流行ったりして!?
うーん、ギルドに相談してみようかな!?
私のドレスは青、なんだけど。
なんというか、うーん、ディズニープリンセスみたいな感じだ。
胸はあんまりないから、腰の細さとふんわりスカートを強調って感じか?
色的にエドガーの瞳の色ってこともあるらしい。
まあ、指輪も青い石だしな。
セーブルのネックレスはさすがにこのドレスには似合わなくて、外した。残念。
収納しとく。
それから化粧をしてもらったんだけど……。
シアは最初、顔を出すのをためらっていた。
なんかヴェールで隠せないかとか本当に相談してたんだけど……。
きっちりと上品に結い上げた髪型、そして、化粧も全然違うしね。
『エスタ』のプリシラの面影は消えた。
今はマイルズ共和国の騎士ライカンの妻でユニコーン商会長のパトリシアだ。
もともと、伯爵令嬢パトリシアは行方不明になったけど『エスタ』にいたことはあのクズ叔父一家しか知らないはず。
一番怖いのは、客として来ていた人に出会ってしまうことだけど。
これなら……気づかないと思う。
「シア!
すごくきれい!! 奥様って感じ!」
私の言葉に鏡を見ながら、ほっとしたように微笑むシア。
「ミコトも素敵よ!
でも、全然、奥様には見えないわね!」
「むー、エドガーの奥様なんだけど」
そんなことを言い合って笑い合っちゃう。
う、腹がっ!
そこへエレノアもやってきた。
エレノアは慣れた感じで風呂へと……。
あんまり見ちゃ悪いよね。
風呂から出て一息ついてから、下着で締めて、ドレスを……。 エレノアは黄色いドレス。
なんか明るい感じで、異なる黄色の色味の透ける布を重ねているのがとても豪華に明るく見える。
さすが、王女って感じ。
髪にもティアラをつけてるし。
やっとここまで準備ができたところで、お茶を飲みながら話ができた。
「王も納得してくれたわ。
大臣が失敗した今、私とエリオットに任せてくれると。
エドワードとデュカス王弟のことも報告したわ。
特に何も言っていなかったけれど……。
アサニヤ王国には大臣が不在というか、こちらで不祥事を起こし免職となったので、一旦この話は白紙にしたいと夜会前に、たぶん今頃、申し入れてくれてるはず。
もう大臣は捕えられてるしね。
夜会で『魔法塔」との提携協力を発表してから、お断りするなんて、ずるいものね」
「アサニヤ王国は怒るかな?」
「まあ、でも、今、シーザー王国には王国が保護している転移者はいないもの」
今のところ、所在がはっきりしている転移者はアサニヤ王国のマリナ聖女と私ぐらいか。
メグミ様はもう魔法使いと呼ばれることが多く、転移者とはほとんど呼ばれない。
アサニヤ王国としては若くて清らかな感じの転移者が欲しいわけで、まあ、すでに結婚しているとはいえ、若い私が一番狙われやすいっちゃ、狙われてるか。
そういう人がいればいいけど(いや、いちゃだめなんだけど!)、いないのならば、私をなんとかして、アサニヤ王国の聖女の認識を少し変えればいいわけで。
それが王族との婚姻って意味だったのかも……。
シーザー王国の転移者の扱いを思い出し、背筋がゾッとした。
シーザー王国の転移者の扱いは実はそういうことからの変質だったのかもしれない。
それに、転移者に子どもを産ませれば、聖魔法持ちの王子や王女が生まれることもある。
私とシアはメイドに案内されて私達の部屋に戻ってきた。
エレノアは王家の方の準備を見に行かないということで分かれた。
なんか大変そう。
部屋にはライカンとエドガーとクラークとノルテスとザイマ……、なんとシドとゴードンがいた!!
「シド! ゴードン!!」
シドよりゴードンがいる方がびっくり!!
「お姫様方。護衛に参りました」
なんてゴードンが式服でにっこり笑ってくれて!!
うー、かっこいい!!
「シドも来れたんだ!?」
「も?
おいおい、伝言聞いたけどな……。
フィオナに会ったぞ」
「フィオナ!
どこって、あ、北の方? 運河の?」
「そう、ユミエラが馬車の中で話してくれて。
ユミエラの弟ユーリの北の倉庫街の工房の料理人としていたよ。
話を少ししたんだが、ユミエラが相手の男がアサニヤ王国のカイラムじゃないかって。
カイラム王弟のことだよな?」
「カイラムも王都に来ていたんだ!」
エドガーとライカンとクラークが私の言葉に頷く。
「エドワード王子にカイラム王弟、それにデュカス王弟か……。
気を付けるべき相手がたくさんで全部王族か!」
クラークが苦笑しながら言った。
シドがユミエラ達のことを教えてくれる。
弟とは無事に会えて、父親には気を付けるように伝えられたそう。
師匠がいい人で、身元引受人、つまり義父として契約してくれていて、もし父親が現れて『給料をよこせ』と言っても、ユーリくんは守られるってことらしい。
それなら安心。
そして、ミレニアちゃんとライザさんと家に残しておくのは心配となり、ギルドへ行ったんだそう。
ゴードンがいて、話を聞いてくれて、ギルドでユミエラ、ミレニアちゃん、ルイザさんは守ってくれることに。
さらにディーを置いてきたということだ。
シドも伝言があったから王城に戻れなくて、でも、カイラムのこともあるし困っていたら、ザイマとゴードンがギルドの職員って形で連れて来てくれて、名乗らずに王城に入れた。
エレノアとエリオットとも会えて、シドとしてふたりに仕える形で自由に動ける権利をもらえたって。
良かった!
「それにしても……化けたな」
シドにぼそっと言われて、ムッとする。
「化けたって、なんだか王妃にも私は化け物扱いされたんだけど!?」
「あー、あの人の言う化け物はまた違う感じだろ。
俺が言いたいのは……。
そういう格好をしていると、普通の女の子に見えるってこと」
「私は普通の女の子だよ……」
「うん、かわいい」
「……ありがと?」
「何故に疑問形?」
「シド……、最初は何だか目上の人に対するみたいな感じだったよね。
最近、友達みたいに話してくれるようになったなって思って」
「命の恩人だからな。
やっとその恩を返せたような気もするし」
「そうだね!
すごくお世話になってる。ありがとう」
「どういたしまして!」
シドが笑う。
エドガーが来て「仲が良すぎだろ」と私の腰に手を回して驚いた顔をする。
「わ?
すごく細いんだけど!?」
「……シーザー王国の貴族令嬢ってすごいよね。
こんなのパーティーの度に着るって考えたら、逃げたくなる……」
シドが微笑んで去ろうとしたので、私は慌ててシドの腕を掴んだ。
「ごめん! シド!
エドワード王子の方で気になることがある!」
「何?」
「イサクとエレノア。
このふたりを見るエドワード王子の視線と表情が気になった。
エレノアのこと、気を付けてあげて」
「わかった。
エドワード王子が女装していたという話も聞いたし、もしかしたらイサクに好意を持っていたのかもな。
それだと、エレノア王女に憎しみが向くかもしれない。
エドガーもミコトを守れよ」
「何だ?」
「同じことだ。
エドガーに対してもそういう視線を向けていたと俺は感じたね。
すると、憎しみが向かうのはミコトになる」
「……わかった。守る」
「よし、ではまた!」
シドはエレノアとエリオットの方につき、ゴードンとライカンとザイマは使節団全体を守ってくれる。
いよいよだ。私はシアを守るんだもんね!
読んで下さり、ありがとうございます。




