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111 見つけた!(ユミエラ視点)

どうぞよろしくお願いします。

 シドが馬車を用意してくれて、私とミレニアとディーを連れ出してくれた。

 目指すは王城の北側の倉庫のある街。

 実はシドが調べてくれて。

 弟の仕事を伝えて、手紙を出したいと相談した時、「もしかしたら……、こちらに出てきているかもしれない」って言ったんだよね。

 夜会があるでしょ。

 それで、ガラス職人達が新しいゴブレット、グラスと名付けられた透明度の高い薄いガラスのゴブレットをたくさん王城に納めるため少し前に王都へ来たんだって。

 弟のいる工房の名前もあった記憶があるとかで……。

 王都の北、運河がある所まで職人達が出て来ていて、そこに仮の工房を作り、まだ作業しているとかで!


 調べてくれたところ、本当に弟のいる工房の師匠が弟子を連れて来ていて、弟もいるって!

 手紙を出しても行き違いになるところだった!

 で、馬車で行ける距離なので、直接向かっているってわけ。

 北の運河?

 なんかで聞いた気がするんだけど……。

 ミコトからだ! フィオナがいるかもって!

 そういえば、シドにはフィオナのことを話したっけ?

 話してないか!

 でも、北の運河の街なら……、話しておいた方がいいかも!


「シド、今日はありがとう。

 で、ちょっと別の話なんだけど……」

「別の話!? 何?」


 シドが少し困った顔をする。

 でも、ちゃんと言っといたほうがいい。もしかしたらアサニヤ王国が絡んでるかもしれないんだもん。


「うん、ごめん。

 でも、ミコトに言われてて、伝えておいた方がいいと思うから……。

 ディー、フィオナのことだけど、実はミコトがこの前、魔力感知してくれてさ。

 王都の北の方の運河と倉庫みたいなのが見えるって言ってて。

 これから行くのってその辺りだよね!」


 シドが驚いたように言う。


「ああ、北の運河なら、そうだな。

 魔力感知?

 ミコトはそんなこともできるのか!」

「えーと。

 フィオナっていう19歳の女性で、ディーの幼馴染なの。

 ディーの故郷のマイネから冒険者と駆け落ちして行方不明になってる。

 それで、ミコトがマイネで感知して、アサニヤ王国へ入ってそのままシーザー王国の方に向かっているってわかって」

「アサニヤ王国?」


 シドが眉を顰めた。


「ええ、で、その冒険者がアサニヤ王国の人だったんじゃないかって話があって。

 で、この前、王都に入る直前に馬車の中でミコトが魔力感知してくれて。

 ミコトととシアが、駆け落ちにしては動きが変だし、冒険者なのに倉庫街にいるのも変だよねって話になって……。

 もしかしたら、アサニヤ王国のスパイとやらに利用されてるんじゃないかって話も出て」


 シドは考え込んでいる。

 ディーが少し不満そうに言った。


「でも、ミコトは俺には北の運河なんて話は……」

「ごめん、ディー。

 ミコトは知っているところだとよくわかるんだって。

 だから、王都の北の運河って、見えたけどちょっと不確かな情報だし、話したように、おかしいところがあるから、もう少し調べてからディーに言おうってことになってて。

 でも、今、北の運河の街に来ちゃったから、共有しておいた方がいいかなと話した」

「そうか……。ミコト忙しそうで、あまり捜してくれって言い出せなかったけど、捜してくれてたんだな」


 ディーがそう言ってくれた。

 良かった。


「わかった。

 その男がアサニヤ王国の間者だとして、一緒にいるのはマイルズ共和国のフィオナだな?」

「ええ、冒険者の女性。19歳よ」


 私はもう一度念を押した。

 ミレニアが「駆け落ち……」と呟いた。

 わ、妹には刺激が強かったかな!?

 ミレニアが少し赤くなる。


「わ、私とシドさんは駆け落ちしたことになってるん、ですよ、ね」


 シドが『えっ?』という顔をしてから「ああ! そう言ったな!」と笑った。


「何!?

 どういうことよ!」

「いや、ユミエラ、落ち着け!

 ミレニアを連れ出す時に、マリアとホルヘに関わったことは口止めしたんだが、さすがに父親には何か言わなきゃだろ!?

 その時、ちょうどシアの駆け落ちとかそういう話が頭に残ってて!

 ミレニアも男と駆け落ちしたんじゃってことにでもしとけって」

「えーっ!

 結婚前の、しかも14歳のミレニアに、それはないんじゃないの~!!」

「ユミエラ!

 あの親父が誤解するだけの話だから!

 落ち着け!」

「お姉ちゃん!

 私、うれしかったの!」


 ミレニアが急に言うから、私は「へ?」ってなった。

 シドも同じ表情をしている。


「シドさんと、噂だけでも、こんなにカッコイイ、その、貴族の使いをしているような男の人とその駆け落ちしたとか……。

 なんか、お話しの主人公みたい。

 馬に二人乗りもしたし……」

「ミレニア!?

 だめよ!

 シドはすっごい年上の、ミレニアにとってはおじさんだから!」

「おじさんってなんだよ!

 ミコトとエドガーは結婚してるぞ!」

「えっ、そーいう目でミレニアを見てるの!?」

「いや、そういうわけじゃ!

 おい、ディー、お前の奥さんだろ!

 少し落ち着かせろ!」


 なんだか楽しかったけど。

 ミレニアも笑ってたし。でも、ミレニアはシドの嫁にはやらんからな!

 まだ、シドってよくわかんないし。


 馬車はそのまま北の倉庫街に入り、運河を眺めながら大きな建物に入った。

 そこが仮のガラス工房らしい。

 3つのガラス工房が共同で作業しているとかで。

 

 倉庫の番人みたいな人が案内してくれて、ミレニアが先に見つけて叫んだ。


「お兄ちゃん!!」


 ユーリがびっくりしたようにこちらを見た。


「ミレニア! それに……、ユミエラ姉ちゃん!!」


 ユーリは周囲の職人に何か話すと、慌ててこちらに走ってくる。

 ミレニアが飛びつくように抱きついて、そして、ユーリが私を見て涙を目に溜める。


「姉ちゃん……、頑張ったんだってね。

 お疲れ様でした。

 俺、逃げてごめん。

 でも、姉ちゃんを買い戻すことを考えて……」

「うん、マダムに聞いたよ。

 手紙くれたんだって。気に掛けてくれてありがとう、ユーリ。

 で、ミレニアが14になるから心配で、シーザー王国の方に帰ってきたから調べたら、あの親父、また娘を売ろうとしてて、ミレニアを攫って来てもらっちゃった!」

「姉ちゃん、外国にいるの!? ミレニアを攫う!?

 え、じゃあ、親父、今、ひとりで!?

 ま、子どもに迷惑かけずに、自分自身の責任で生きてくれればいいか!」

「ミレニアは私が引き取る。って、ディー、いいよね!?」

 

 勢いで言っちゃったけどディーは頷いてくれた。


「ああ、そうしよう」


 良かった。

 でもミレニアがちょっと悲しそうな……。


「シドさんはシーザー王国の人なんだよね……」

「……シド!

 あんたもマイルズ共和国へおいで!」

「姉ちゃん? その人は……?」

「ん、ディー、私の旦那様!」


 そんな感じで話をしていたら……。


「ディ―!?」


 ディーの名を呼ぶ女性の声。

 みんなで振り返ったら、フィオナ……だよね?

 なんか老けた?

 ちょっと太った?

 服装もあるのかな?

 ちょっとくすんだ生成りのブラウスに茶色のスカート……。

 もう冒険者はやめたの!?


「フィオナ?」


 ディーがびっくりしたように叫んで。

 フィオナが私を見て逃げ出そうとした。

 私は走って捕まえる。

 冒険者ユミエラさんを舐めてもらっちゃ困る。

 フィオナは難なく捕まった。


「放して!

 なんであんたがディーと一緒に!」


 みんなが喚くフィオナと、フィオナをがっちり捕まえてる私の周囲に集まる。


「駆け落ちした男ってのは!?」


 私の言葉に項垂れるフィオナ。


「王都へ行ったわ。

 今夜、夜会なんでしょ!

 あの人は王城へ行くって……」

「あの人?

 やっぱりアサニヤの間者!?」

「え? 

 間者って?」

「何ていう男だ?」


 シドが鋭く言った。


「カイっていうの。

 瞳が金色で、少し浅黒い肌でカッコ良くて、すごく物知りなの。

 ミコトのことも知ってた。

 ああいう子のこと転移者って言うんでしょ。

 アサニヤでは転移者が特別なんだってね」


 カイラム!?


「カイラム、じゃないの?」


 私の言葉にシドがはっとする。

 フィオナが首を傾げながら話を続けた。


「え?

 カイって。

 あ、でも、アサニヤではカイラム様って呼ばれてた時があった。

 いいお家の人みたい。

 私、ここでカイが帰って来るのを待ってて。

 今、ここで、調理の仕事をさせてもらって……。

 だから、ディー、私は帰らないわよ!」


 ディーが絶望したような目で私を見た。

 たぶん、カイラムは帰ってこないだろう……。

 でも、今、それを言っても、フィオナは信じないだろうし。


「……わかった。

 今日は帰る。

 でも、鍛冶屋のおばさん、ものすごく落ち込んでいて、悲しそうだったよ。

 無事にいることぐらい知らせたら?

 私達、マイルズ共和国に帰る時にまた連絡するから」


 それだけ言って、フィオナを解放した。

 シドと私は目を見合わせ頷いた。

 王城に、夜会にカイラムが来る!!

読んで下さり、ありがとうございます。

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