110 被害者(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
「そうね。
こうなったら、アサニヤ王国にも足元を見られることになりそうだ。
いいでしょう。
エリオットが国のことをそこまで考えてくれるようになるとは……」
王妃が愛おしそうな表情でエリオット王子を見ている。
そうか……、王妃は、ただ、自分の子を王にしたかっただけなのだな。
まあ、だからと言ってエドワード王子やエドガーにしたことは……。
エドガーはもう気にしてないようなことを言ってるけれど、エドワード王子はそうは思ってないだろう。
私は声を低く、ゆっくりと話し掛けた。
「王妃……、今日、神殿でデュカス王弟と会いました。
彼は正気ではないと思います」
「デュカス……。
ああ、スミレに溺れた哀れな男だな。いや、男達のひとりとでも言うべきか。
それで?」
「デュカス王弟を王城に担ぎ出してくる者がいるやもしれません」
王妃は目を瞬かせた。
「それは……、確かに厄介だな。
何者だ?」
「エドワード王子です」
「……エドワード?
引きこもりの!?
そんなこと無理だろう!
ひとりでは王城も出られまい!
ヘレンの報告では、ずっと部屋でおとなしくしていると!」
「侍女がヘレンでしょうか?
エドワード王子はそのヘレンと一緒に神殿へ行っています」
「え?
外出している……!?」
「ええ、しかも変装して。
神殿でも侍女と一緒に行動しているようです。
王妃はそのようなことまで御命じに?
それとも、侍女が報告せずに動いていたということでしょうか。
変装していたということは以前より準備をしていた、そして、使節が来ている時期で夜会もある日、以前にもこのような気づかれにくい日を選んで外出したことが、きっとあるのでしょう」
「……エドワードは何を企んでいる?」
「それがわからないのです。
御自分のスミレ様によく似た容姿を使って、デュカス王弟を動かそうとしているようですが、どのような目的で動機で、何をしようとしてるのか、まだわかりません。
夜会でシーザー王国の品や権威を落とすようなことを仕掛けてくる可能性もあります」
「私にどうしろというのだ?」
「一緒に備えて頂きたいのです。
これからのエリオット王子とエレノア王女のシーザー王国を守るため!」
エラン王子の名は意識的に避けた。ここは王妃に味方してもらわないとだもんね。
「それは協力したいが、私はここに幽閉の身」
エレノアが進み出た。
「いえ、王妃は王妃として夜会に出席される予定です。
王はそのように話していましたから」
「わかった。
私はエリオットとエレノアが語ることを支持すればいいのだな。
そして、デュカスとエドワードがもし参加していたら、警戒して知らせる。
シドは……、兄と一緒に捕まったのだろうか?」
「シドは捕まっていませんわ!
マイルズ共和国に行くところから、伯父様とは離れていたでしょう。
帰ってきてからも、一緒に視察に行ったイサクと私の手伝いをしてくれることが多くて、今も私のお願いでマイルズ共和国の使節の方のお世話をして王城の外にいます。
王にお話しできたら、そのように言って、シドを私とエリオットが使えるようにして頂けませんか!」
王妃は頷いた。
「わかった。そのように……、そのような機会があったら、そのようにしよう」
とりあえず、王妃はこちらの味方をしてくれて、エドワード王子とデュカス王弟を警戒してくれることになった。良かったんだよね。
ほっとして、王妃の部屋を出ようとしたら「転移者ミコト!」と王妃に呼び止められた。
「はい、なんでしょう?」
私は王妃に向かい合う。
「私は転移者が嫌いです。
急にこの世界に現れて、かわいらしい無垢な、まるで守ってやらなければならないか弱く美しい容姿で男を誑かし、癒しの魔力で理性を奪う。
マイルズ共和国まで逃げたというのに、結局はエドガー王子と……。
でも、あなたはエドガーを選んで結婚した。
約束しなさい!
エドガーだけを愛すると!」
私は笑ってしまった。
「そんな当たり前のことを誓えと言われても!
いくらでも誓います!
私はエドガーを愛しています。
ずっと一緒にいたいから、結婚しました。
エドガー以外の男性とその、お付き合いするとか、そういうことはないです……。
あ、自分が産んだ子はカウント外ですよね!
息子を授かるかもしれないし!」
王妃は鋭い目を丸くしてから笑った。
「そうね、息子は別ね」
そしてエドガーを見た。
「エドガー、絶対に離すんじゃありませんよ。
野放しにされるとシーザー王国がまた危うくなる」
「当たり前です。
誰にも渡さないし、もし、王の時のように別れろと言われたら、俺はミコトを連れて逃げます」
王妃は静かに微笑んだ。
「そうね。
それがいい。
地獄の底まで一緒にいて。被害者が減るわ」
私は妖怪か怪物か、なんかか!?
むむっと思ったけれど、王妃も被害者なのかもしれないと唐突に思った。
第2王子だった王が、スミレコを離さず、自分の妻だと主張していたら。
弟に王を譲り、自分は神殿でスミレコと双子と暮らすと決めていたら……。
第3王子が王になり、王妃はそちらの王の妻になりなんて、未来があったのかもしれない。
ああ、なかったことを考えるときりがないけれど。
そういう、未来も、今よりは幸せな未来が、あったのかもしれないなんて、思ってしまった。
自分達の部屋に戻るとシアとライカンが困っていた。
「どうしたの、これ!?」
部屋の中にドレスが届けられていて……。
シアが既に着付けられて戸惑いながら直しをチェックされてるみたいな。
ライカンの騎士服もきれいに手入れされてお直しされてて困惑している。
「さあ、お嬢様も!」
メイド達に私も捕まり、衝立の向こうへ連れ込まれ、魔法使いの服を脱がされそうになり……。
「わー、自分で、自分で脱げますからっ!
エレノア!
なんだこれ!」
エレノアが笑う。
「王からじゃない?
エドガーの妻、つまり仮とはいえ王子妃ですしね」
「違う!
私は魔法使いで!」
「さ、王子も!」
「俺は王子ではなくて!
魔法塔の魔法使いだ!」
そのメイドはため息をついて手にした式服を残念そうに見て言った。
「わかりました。
では、魔法使いの服をきれいに直しますので、お脱ぎ下さい」
エドガーが渋々上着をメイドに渡した。
それを合図に私はまた衝立の後ろに連れ込まれた。
結局、私達はドレスやら服のお直しやらで部屋を動けなくなり、エレノアとエリオットが王のところに話に行ってくれることになった。
クラークとノルテスも一緒に行ってくれるとかで、ノルテス、いきなりこんな話で大丈夫なの!?
「あくまで『魔法塔』の話だからね」
クラークはウインクして出て行ったけども……。
私は服を脱がされ、ドレス用の下着を着せられ、お腹をぎゅっと抑えられ……。
ぐーきゅるるるるぅー。
すごいお腹の音が鳴り響いた。
「あら、お腹が空いていらっしゃるのね!」
「まあ、空腹ですわ!」
「大変!」
急にメイド達があわあわし出してひとりが外へと出て行った。
「さ、お食事が届くまでに試着を済ませますよ!」
わ……、ぐえっ!
お腹、苦しいんですけどっ!!
空腹だから!
これ基準にしたら、入らなくなるから!!
読んで下さりありがとうございます。
昨日、インフルエンザ予防接種受けたんですけど、今日になってだるい……。
午前中寝てました。
あ、休みなのにいつものように朝早く起きて、ストックを投稿できたのは、イベントに参戦する息子を送り出さなきゃいけなかったからです。例大祭楽しんでるかなー。




