109 企み(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
「夜会に出ようとしている?」
「いや、もしかして王弟を送り込んで何かをさせようとしているのかも。
それとも自分も出る!?
そういえば……、王と王妃の方はどうなったの?
エリオット王子!
えっとワーテルローじゃない、オーテルロー侯爵と何だっけ、分家の伯爵だっけ。
どうなったの?」
エリオット王子が真顔になる。
「大臣は免職、しばらくは罪人として王城に留め置かれる。
過去、王にエドガーを保護して育てることを約束しながら放り出し、私を王にするべくエドワードの廃嫡を企み……。
しかし、エランが神殿に入るのも阻止するため、市井に出したエドガーを捜して迎えようとしたが、見つからないことまで考えて替え玉まで用意していたこと。
そこら辺まで明らかになったかな。
オーテルロー侯爵家はどうだろう。
さすがに王妃の出身の家でもあるし、取り潰しにはならないと思う。
かなり関わってしまったケルン伯爵家は、中心で動いたとして取り潰しになるだろうな。
伯父も王妃もケルン伯爵が主導していた、知らないと突っぱね続けるだろうし」
え……。
シドは?
私はイサクの所に行き、こそこそ話す。
「シドはユミエラ達と?
王城に戻ってこないようにと伝えた方が!」
「そうですね。母に伝えます!」
イサクはそう返事をしてくれ部屋を出て行こうとして、立ち止まり振り向いた。
「兄さん!
エドワード様のこと……、よろしくお願いします!」
エドガーは少し驚いた表情をしたが、頷いた。
「わかった」
イサクは出て行った。
うーん、考えろ!
何か手を打っておくこと……。
「……王妃に会える?」
私の言葉にエレノアがびっくりした顔で見た。
エリオット王子が笑う。
「この状況で王妃と共闘しようっての!?
すごいこと考えるね。
さすがミコト!」
「……この状態で敵を少しでも減らしておきたいだけ」
シアが心配そうな表情で私のそばに来て抱きしめてきた。
「ミコト!
無理しないで」
ライカンもクラークも心配そうだ。
「大丈夫。
王妃と考えを合わせられるところがあれば!
今は王妃が困っている。
私達は話していたようにエレノアとアサニヤ王国の婚姻の話を止めること。
これからはエリオット王子とエラン王子とエレノア王女でシーザー王国を支えていかなければならないこと。
そうしなければ、シーザー王国が危うくなる。
王弟とエドワード王子の動きもどう出てくるかわからないし。
ここは……」
私はエドガーを見た。
エドガーは幼い自分を王城から出した王妃と手を結ぶなんて……、できないか、な。
私は黙り込んでしまう。
エドガーがシアの反対側から私を抱きしめた。
「大丈夫。
俺は、不思議と王妃のことは憎んでないんだよ。
王と王弟は憎いけどね」
「エドガー、シア。
ありがとう。
クラーク!
一緒に話をして頂けますか!」
クラークが笑う。
「断る余地はないね。
これはマイルズ共和国としてではなく『魔法塔』としての話だな」
「はい!!」
私はにっこり微笑んだ。
エリオット王子、エレノア王女、クラーク、エドガー、そして私。
王妃の部屋に通された。
一応、王妃はこの部屋を出ないように王に命じられているとのこと。
まあ、見張られているんだろうな。
どこかへ、例えばシドとか他の分家と連絡を取ろうとしたら……、追及されるだろう。
私達は部屋に入るのを許された。
「王妃……」
エレノアの遠慮がちな声が響く。
奥から王妃が、顔色の悪い王妃が現れた。ベッドに寝てたのかな?
こちらに出てくると、ソファに座りこんだ。
「エレノア、エリオット……。
外では何が起きている?」
「もう知っているんでしょ?
伯父はもうダメだと思うよ。
大臣は免職になって、罪人として王城に留め置かれている。
オーテルロー侯爵家は代替わりして何とか……、でも、これからの展開では降爵もあり得るかもしれない。ケルン伯爵家はだめだろうな。取り潰しになると思う」
エリオット王子が淡々と伝える。
王妃がエドガーを睨みつける。
「お前が『魔法塔』などに入っていなければ!
平民のまま、ただ生きていてくれていれば、事は簡単だったのに!!」
わお、八つ当たり!?
私はエドガーに抱きついて王妃を睨み返した。
「ミコト、いいんだ」
エドガーがなぜか笑う。
ん?
なんで?
エドガーを見上げた私に微笑みを返してくれて……。
「俺のために怒って威嚇しているミコト……、かわいい」
んなっ!
私は真っ赤になってしまった。
「子猫が一生懸命威嚇してるみたいな?」
「な、な、何それ!?
私は頑張ってるのに!!」
「全然怖くない。かわいい」
んー。
こんなことやってる場合じゃないんだけど!?
「んんっ、話しを進めるよ」
エリオット王子が苦笑して話を始めた。
「王妃は兄である大臣が裏でやっていることは知らなかった、でいいんだよね?」
王妃が頷く。
「そっか。
じゃあ、まず、大臣が進めていたエレノアをアサニヤ王国に嫁に出す話、白紙にしたいんだけど、どうかな?
賛成してくれる?」
「……それは、アサニヤに転移者を送り付けるために。
転移者が現れると、王族が心を抜かれてしまうから」
「ふっ、それはなんとなくわかるけど。
アサニヤ王国じゃなくてもいいだろ?
『魔法塔』が引き取る、保護すると言ってくれてる。
エレノアが嫁に行くこともない。
こっちの方が同じ効果があり、シーザー王国にはお得じゃないか?」
「『魔法塔』? 転移者に力をつけさせる?」
「ああ、魔法使いとして自立してもらう」
「自立……」
「自立すれば、魔法使いとして自由に生きられるから。
保護して王族の妻になんて選択肢はなくなる」
「でも!
この子は、エドガーと結婚したのでしょう!」
エレノアが笑う。
「エドガーはもう王子ではないでしょう!
『魔法塔』の魔法使いよ。
自分の子だ、王子だとこだわっているのは王だけ。
エドガーは王子に戻るつもりはない。
そして私がシーザー王国に残れば、私とエリオットとエランで国と神殿を支えることができる」
「つまり、エリオットが王で、エレノアが神殿……ということも可能!?」
「まあ、そんな感じ」
エリオット王子が軽く言って微笑んだ。
王妃の表情が緩んできて微笑む。
「エリオットが王で、エレノアが神殿の主。
私の子が二人とも……。
スミレと側妃の子は権力の中に入らない……。
いいわね。その案」
クラークが進み出た。
「王妃。
魔法塔の代表として願いたい。
魔法塔とシーザー王国の提携を認めて欲しいのです。
今夜の夜会でエドガーの過去の身分と現在の身分、そして転移者のミコトとすでに結婚していることを公表して、シーザー王国との友好と提携を発表したいと思います。
そして、アサニヤ王国との婚姻の話は大臣が進めていたことなので、ここで一度白紙に戻すと」
王妃が考えながら頷く。
「なるほど……。
兄上が失脚した今、そのように筋書きを変えるのだな。
でも、私が望んでいたことは叶うと」
エリオット王子は頷いた。
「王はエレノアを嫁に出して、エランと私を王と神殿の主にするつもりだったみたいだけど。
こっちの方がいいと思わない?
王妃が承知してくれれば、王にも話をするよ」
読んで下さり、ありがとうございます。




