106 許してくれると?(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
なんですと!?
そんな話聞いてないというか、全然思いもしなかったというか!
「そうか!
王がいるんだもんね。
あの第3王子もまだ生きてるのか!
王弟ってことになって!
エリオット王子は、まだ神殿で修業中みたいな?」
シドが答えてくれる。
「そうだ。
引き継ぎを……。
だが、エドワード王子の件があるから、王と神殿とどちらになるかはわからない状態だろう?
あまりというか、エドワード王子の方はほとんど引き継ぎは進んでいない。
エリオット王子もどちらになるかわからなくて、神殿でも今は様子を見ているんじゃないか?」
そうか……、神殿。
スミレコを追いつめた第3王子。そして、弟の妻となったのに通ってきた王……。
そういえば……。
「……スミレコのお墓はどこに?
神殿の敷地内、とか?」
ライカンとシドの声が重なった。
「「神殿だ」」
神殿に向かう馬車の中。
ユミエラとディーは昨日の夜ギルドに戻って来たんだけど、今日は最初から別行動をしている。
というか、弟さんと連絡を取ることになったんだよね。
ミレニアのことで、お父さんから連絡が行っちゃうかもだし。
昨夜は無事にミレニアに会えたって。
二人で抱き合って大泣きしたらしい、ディーの話では。
ミレニアは見つかる可能性もあるからってことでイサクの家で過ごしているんだって。
つまり、イサクの母ライザさんとね。
私もライザさんにご挨拶したいところだけど。それはもう少し後かな……。
私、エドガー、クラーク、ライカン、シア、ノルテス、それに議員のふたりの八名で神殿の視察に行く。
コステロは王城だしね。ゴードンはギルドで仕事があるそう。
エリオット王子が2台の馬車で迎えに来て、私とシアとエドガーとライカンの組とノルテスと議員二人とクラークの組と分かれた。
まあ、本当は最初言われた組み分けはちょっと違ったんだけど、夫婦は一緒にとこちらの意見を通してもらった。
エリオット王子はこちらに乗ってきた。
そりゃ、エドガーもいるしね。一応兄弟だってこと知ったのかもしれない。
そうか! 兄弟か!
昨日から、なんか不思議だな。
「ミコトはずいぶん大人っぽくなったね」
エリオット王子に微笑まれる。
私は使用済みのベッドの上に押し倒されて馬乗りになられたことを思い出した。
ユミエラの顔面への一発!
あの時、上裸だったもんなー。髪もぼさぼさでまさか王子とは……。
別人みたいだけど、あの時の坊ちゃんだ。
私が何と言い返すか考えているとシアが言った。
「ミコトのことをずっと追わせていたみたいですけど……」
「ああ、ミコトだけだとわかりにくいからふたりも。
『ミカエラ』と『プリシラ』も一緒にね。
途中で名を替えたり、アサニヤ王国に行ったりして、ずいぶんこっちを警戒していたみたいだが……」
「誰に追われているのか、わかりませんでしたから」
そうだよ。
ひとりの貴族に追われてるのか?
シーザー王国に追われているのか?
判断がつかなくて、大変だったもんな。
エリオットは苦笑した。
「ミコトが欲しかったからだよ。
神殿に入るなら……、相手はミコトがいいと思ったし。
それに私は転移者を守れる立場だ。
私は叔父と父のようにミコトを誰かと分けるようなことはしたくないと強く思ったし」
「だから、ミコトを個人で追っていた?」
「ああ、神殿にではなく、自分の屋敷に匿えばいいと」
「匿えばいいとかなんとか言ってるけど、私を閉じ込めて愛人にでもするつもりだったんでしょう?」
私が少し怒った口調で言うと、エリオットは目を細めてエドガーを見た。
「兄に取られるとは思っていなかったが……」
な?
「エドガーはそんなんじゃないし!
きちんと私に気持ちを伝えてくれて、結婚を申し込んでくれました!」
「それぐらいなら、私だって言えるよ。
あの時、ミコトを見つけて、捕まえた時、この子だと思った。
私の求めていた転移者だと」
「……転移者は王族のために転移してくるわけじゃないでしょう!」
「では何のために?
結局、ミコトは王族であるエドガーを選んでる」
「そ、それは結果的にそうなっちゃったけど、エドガーが王族ではない、クルトだって時から、その……。私は好きだったから……」
え、何を言わされてるんだ!?
急に抱きしめられる。
エドガーだ。
「ミコトが……俺のことが好きって……」
「な、珍しくないでしょ!?
ちゃんといつも言ってるでしょ!?」
「いや、クルトだった時から……って、うれしい」
うーん。
「デュカス様は今どうして?」
ライカンが言った。
デュカス様?
えっと、王がディウス王だったよね。
名前が似ている。
はっ!
王弟!?
エドワード、エドガー、エレノア、エリオット、エラン……。
その時の王子王女は名前の音を揃えるとかいうしきたりがあるのか!?
「叔父は、デュカス王弟は……、神殿にいる。
一応、仕事はしてるよ。
でも、何というか……、無気力……、うーん、早くスミレ様の所に行きたいが、自殺だと行き先が分かれるからね。
お迎えが来るのを待っているというところかな」
ライカンから殺気を感じた。
一瞬だけど。
自分が追い詰めて殺したも同然なのに、死んだら同じ場所に!?
許して迎えてくれると思ってるの!?
ぞわぞわする。
これは何か変だ。
えっと『デュカス様』だな。
関わらないようにしなくちゃ!?
「そういえば……、今、王城の方にオーテルロー侯爵家の分家のケルン伯爵家当主が来てたけど。
なんかエレノアと企んでる?」
「え?
当主って、オーテルロー侯爵ってこと?」
「違うよ。
オーテルロー侯爵は大臣だ。
母の、王妃の兄の。
でも、伯父は大臣で王城にいることも多いから、領地の方には弟が代理でいる。
分家のケルン伯爵家は親戚で領地が隣り合っているんだ」
「……ケルン伯爵とやらはおひとりで?」
エリオットは怪訝な顔をしてから、首を捻った。
「そういえば……、黒髪の男性を連れていたな。
言われてみれば、妙だな。
従者という感じではなかった。
従兄弟に黒髪はいないはずなんだが……」
分家の当主、ケルン伯爵とやらは、最悪の地雷を踏んでしまったようだ。
偽物のエドガー王子を仕立ててきたのだろう。
もしかしたら、クルト……、エドガーが見つからなかった時のために、すでに仕立ててたのかもしれない。
「……なんか、ミコト、知ってるのか?」
「昨日……、エドワード王子の所で、王が従者にオーテルロー侯爵家の分家にエドガー王子を預けていることになっているはずだと。
で、大臣から外部と連絡を取れないようにして、王からそのケルン伯爵? にエドガーはどうしている、もしいるなら連れて来いというようなことを……」
エリオットはエドガーを見た。
「ここに本物のエドガーがいるからか!?
伯父を試したってこと?
ああ、母もか……。
エレノアも知っていて、何も言わなかった!?
エレノア……、何を企んでいる?」
「エレノア様は、転移者のことを、もうスミレ……様のような悲しい人を出したくないと」
エリオットは面白そうに笑った。
「王にも神殿の主にもなれないから、何かとんでもないことをしようとしてる?
エレノアが何かしようとしても、何も変わらないと思うな。
エドワード王子をこのままいないものとして扱うことを言い出したのは、父なんだから。
父は私に王を、エランに神殿を任せる心を決められていたと思う。私は神殿を継ぐと思っていたから、勝手に動かされるのはイライラしたけどね。
王妃がエランのことを嫌がっていてもね。私も確かに面白くない。
でも、エランが王というのもどうかと思うし。
で、エドワードは神殿に預けるつもりだったんだと思う。
で、急に本物のエドガーが現れて、心が乱れたってとこかな?
さて、王城に帰ったらどんなになってるか楽しみだな!」
読んで下さり、ありがとうございます。




