105 王弟(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
クラークはエドワード王子とエドガーと私を見た。
「転生者と王の御子であるおふたり。
それと転生者でとても強い魔法使いに成長したミコト。
この三人がシーザー王国と魔法塔の絆になるのではないでしょうか」
エレノア王女がぱあっと明るい表情になり、エドワード王子を見た。
「エドワード!!
明日の夜会! 出席しましょう!
そして、魔法塔との繋がりを発表しましょう!」
エドワード王子が顔を引き攣らせる。
「む、無理だよ!!
私に、人前に……、しかも夜会に!?
それに……、エドガーと……並んで!?
できない!!」
「エドワード……」
エレノア王女がやってしまった……という表情になり、少し身体を丸めるようにして小さくため息をついた。
「そうね。エドワードは嫌よね。人前に出るの」
クラークがその様子を見て言う。
「では……、エドガーの立場を利用するしかありませんな。
元シーザー王国王子だが、今は魔法塔に所属する魔法使い。
転生者ミコトの夫であると……、公表する……」
シドとイサクも頷いている。
えっ!? 公表って!?
まあ、マイルズ王国では公表も何も、首都に住んでいる人ならば、普通に結婚してるとみんな聞いたことあるだろうけど。
まあ、私が小柄で若いから、姿を見て、結婚って聞いて驚くことが多いけどね。
えーと、なんだかみんな、やる気になってますけど……。
でも、なんだかエドワード王子だけが、置いてけぼりにされた子どものような不安な表情をしている。
「ミコトと結婚していることを知らしめられるのはいいと思う。
エリオット王子のこともあるし、カイラムのこともあるからな」
エドガーの言葉に私は頷いた。
エレノア王女が聞き返した。
「カイラム?
アサニヤ王国のカイラム王弟のこと?」
「ああ、ミコトが転移して俺達が匿っていたんだが……、3年ほどか?
ミコトの存在を嗅ぎつけて探りに来て、狙っていたようだ。
マイルズ共和国へ行ってからも、追っていたようで、狙ってきた」
「そうなの!?
今、王城に滞在しているのはラスタル第3王子よ」
ラスタル? ラスター様!
ラスターって愛称だったのか!?
第3王子だったんだ。
「カイラムは来てない?」
私は聞いてしまった。
「王城にはいないわ。
ラスタル王子はエランとも仲良くて……。
従者や護衛騎士の中にも……、王族っぽい人はいないと思う」
うーん、ラスター様を公の場に出しておいて、自分は隠れて動くのってカイラム得意だもんな……。
「そういえば、コステロは王城に泊まるのかな?」
エレノア王女が微笑む。
「そうなると思うけど。
ミコト様は?」
「もう、ミコトでいいよ!
エレノア王女!」
「では、私もエレノアと」
「え……、それはさすがに……」
王女を様もつけずにとか!?
あ、様をつければいいのか!?
「エレノア様?」
「呼び捨てでいいわよ」
私がとんでもない! って顔をしたからだろう。
エドガーが笑った。
「いいんじゃない?
身内だけの時なら。
エレノア王女は、まあ、ミコトにとって義妹だよ」
え?
あ、まあ、そうか!
エレノア王女はエドガーの母親違いの妹になるもんね。
エレノアがまたうれしそうに笑う。
「ミコトお姉様!!
私、姉妹がいないから、うれしい!!」
「いや、ミコトで!!」
「なら、私もエレノアと!」
「まあ……、周囲に他の人がいない時は……ね。
エレノア、これからもよろしくね」
「はい! ミコト!
エドガーも、エドガーと呼んでいい?」
「ああ、どうぞ」
エレノアはほっとしたような表情になると、周囲の展開について行けずにただ黙って窓辺に佇んでいるエドワード王子に声を掛けた。
「エドワード、お邪魔したわ。
明日、またお見舞いに来るわ!
ミコト、エドワード、クラーク様!
そろそろみなさんの所へ戻りましょう。
イサク、シド、行きましょう!」
みんなでエドワード王子に礼を言って部屋を出る。 入れ違いに侍女が戻ってきて部屋の中に戻って行く。
「シド、ユミエラの妹のこと……」
私は歩きながらそっと聞いていた。
「保護した。
こちらも危なかったよ。
クズな父親は2日後に売るつもりになってたようだ」
「保護してくれたの!
ありがとう!」
「ああ、帰りにユミエラに伝える手筈になっている」
「うん!」
ユミエラの妹……、ミレニアちゃんだっけ。
そっちはもう大丈ってことだな。良かった。
何となく、エドワード王子の部屋の方を振り返る。
「ほら、ミコト!
階段に気を付けて!」
エドガーに手を取られ、私は階段を下りるのに集中した。
上ってきたのを逆に下っていくわけだしね。
王城から出る時、イサクがユミエラとディーを家にと誘ってくれていた。
私達には声掛けなし。
そして、シドが私達をギルドまで送ってくれるという。
なんかわけがあるの?
イサクが微笑みながらユミエラ達を連れて出て行った。
コステロは王城でエラン王子と一緒に過ごすことに。
エリオット王子が来て「明日は神殿を案内しよう」とノルテスに声を掛けていた。
……みんなで行けば大丈夫だろうし、エドガーも……。
あ! ライカン!?
元神殿の護衛騎士だってばれないか!?
でも、当時の詳しいことを知っているのはライカンだしなー。
まあ、ギルドに帰ってから話をしてもいいか。
そして夜は夜会とやらだっけ?
私達は使節として来ているから、魔法使いの服で出るんだろうし。
おいしい物食べられたら、それはうれしいけど。
いっぱいの人と挨拶したり話したりは疲れそう……。大変だよね。
それにさっきの話ではエドガーが元王子で、私と結婚していることまで公表するとか……。
大注目されるよね!?
それも不安だけど……。
エレノア王女のアサニヤ王国への輿入れ話をぶち壊すにはそれぐらい頑張らないとだな。
ギルドへ戻る途中の馬車の中。
二台に分乗し、こちらにはシドが乗り込んできて教えてくれた。
「イサクとライザの家にミレニアを預かってもらっているんだ。
だから、俺が案内するより、イサクが仲良くなったからと家に招待する方が自然だからな」
「そうだったんだ!
本当にありがとう!」
私がお礼を言うと、シドが面白そうに笑う。
「ふふっ、自分が思えたことをするのは楽しいな」
「楽しい?」
「ああ……、命じられたことを、やりたくないのにと思いながらする……のではなく。
自分でその時に、救いたいと心が動いたことをする……」
「シド……。大丈夫?
大臣と王妃から何か……」
「大臣はともかく、王妃はこっちと共闘なんて目も出てきたからな」
「それって、王妃は大臣を、兄を切るってこと?」
「ああ、オーテルロー侯爵家と分家の対応に掛かってくるだろうな。
何も知らない、言われてないと言うか。
大臣が何かしていたんだろうと……、まさかエドガーの替え玉を連れてくるとか、バカなことはしないと思うが。
大臣は連絡がつかない。王妃には連絡がつく。
どう動くか。明日の夜会もあるしなー」
「そういえば!
ライカンは神殿に行っても大丈夫なの?」
ライカンが返事をしてくれた。
「そうだな。
上の者や同期の者がまだいれば、もしかしたら覚えているかもしれないが……。
もう10年になるし、大丈夫だろう。
別に出奔したわけではないし、きちんと退団して出ている。
それに……、まだ奴がいるだろうからな」
「奴?」
「王弟というか……。第3王子だ」
読んで下さり、ありがとうございます。
今週は仕事が忙しく、やっと今日、集中して話を書く時間が取れました。




