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104 それぞれの目的(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

「俺はシーザー王国へ戻るつもりはありません。

 俺は今はマイルズ共和国の魔法塔の魔法使いエドガーです」

「しかし、私の息子だ!」

「あなたには……、王には王子が三人もそれに王女もいるではありませんか。

 俺のことは王城を出た時に消えたものと」

「王城を出た?

 赤子だったお前が?

 王妃の侯爵家の方で預かると……。

 出したわけではない!

 預けたのだ!!」


 エドガーは苦笑した。


「俺は……、王都で育ちましたが?

 隊士の父、手先が器用で料理上手な母、弟もできて。

 とても幸せでした」


 王は引き攣った顔のまま大臣を見る。


「ヒューゴ!

 どういうことだ!?」

「……私には何とも。

 分家の方に問い合わせてみなくては!」

「もういいっ!」


 王は自分でドアの方へ向かい、そこに控えていた従者達に叫んだ。


「オーテルロー侯爵家の依頼でエドガー王子を預かっていた分家の当主を王城へ呼べ!

 早急にだ!

 もし、エドガーがまだそちらにいるならば、一緒に王城に連れてくるように、と!」

「はっ!」


 従者のひとりが去っていく。

 大臣が慌ててその後を追うように部屋を出ようとしたのを王が止めた。


「大臣、私に付き合ってくれ」

「しかし……、私も確認しませんと……」

「私は、お前に聞きたいことがあるんだ。

 私がいいと言うまで、誰とも連絡を取るのを禁ずる。

 来いっ!」


 大臣は部屋をぐるっと見回しシドの姿を見て目で何かを訴えるが、シドは私とエドガーの方へ来てソファの方へ促すような素振りでわ(・)ざ(・)と(・)大臣の方を見ないようにしている……。


 王と大臣が行ってしまうとクラーク様とエレノア王女が笑った。


「父王、やっと気づいたのかしら!

 遅すぎよね。

 でも、見物ね。

 王からの問い合わせに分家がどう答えるか!?」


 エドワードが窓から少しだけこちらに足を踏み出してきた。


「エドガー……、本当に私の双子のエドガーなんだね!!」

「どうもそうらしいです。

 私も20歳過ぎてから知りましたし……、もう今更、なんと言われてもどうしようもありませんが」


 エドワードは少し興奮したように叫んだ。


「私は覚えている!

 もうひとりの私がいたことを! 

 急にいなくなって、私はひとりになった……。

 さっきの映像。見せてもらった……。

 私達の小さい頃の姿、母と父の若い頃の姿。

 うれしかった。私は生まれてからしばらくは……、ひとりではなかったんだな」


 エドガーが微笑んだ。

 イサクが進み出てエドワード王子に話し掛ける。


「そうです、エドワード様。

 エドガーとは小さい頃に生き別れてしまったのかもしれませんが……。

 その後も、エレノア王女を始めとして、エドワード様の周りには人がいました!

 エドワード様のことを、本当のお兄様だと思って、エレノア王女は……」

「イサク?

 本物の兄って何よ!?

 エドワードは私にとって母は違うけれど、本物の兄様なのよ!?」


 イサクの言葉に笑いながら突っ込みを入れるエレノア王女。 

 なんだか、空気がふっと緩んだ。

 その時にクラークがズバリ聞いた。


「王妃と大臣がエドガーを急に探し始めたのは、やはりエドワード王子の廃嫡を企んでいるからか?」


 エレノア王女はイサクと目を合わせてから、シドを見て、そして頷いた。


「そうだと思います。

 でも、エランを神殿の主にもしたくない」

「……シーザー王国では、王女は女王になれない?」


 クラークの『女王』という言葉に驚くエレノア王女。


「エレノア王女……、あなただけが王か神殿の主か、その話の中で名が出ていない」


 エドワード王子が自嘲気味に言った。


「かつて、王女しかいない時は、即位して女王がいたことはあります。

 男兄弟がいれば……、王女が第1子であっても、弟が王になる。

 そういう歴史を歩んできたのです。シーザー王国は。

 私は……、兄弟の中で一番エレノアが、王に相応しい公平性ややさしさや強さを持っていると思う」


 イサクが頷いてじっとエレノア王女を見つめた。

 その姿にエドワード王子が少し、目を細める。

 エレノア王女は首を振った。


「私はアサニヤ王国へ嫁に出されますもの。

 まだ、どなたの妻になるのか相談中みたいですけれど。

 相手は決まっていないのに、私が嫁に行くことだけは決まっている。不思議よね!?

 でも、アサニヤ王国へ行ったら、私は『聖女』のことをなんとかしたいなと思っている。

 清い存在であることを強いられて、結婚も子どもを持つことすら禁止されている聖女に対して、王族の女性として何かできることはないかと思っている」


 クラークがもう少し話を進めた。


「エレノア王女がアサニヤ王国に行き、シーザー王国に出現した転移者がアサニヤ王国へ渡されることもあるそうですしね」


 エレノア王女はクラークを驚いたように見てから、ため息をついた。


「そんなことまでご存じなのですか!?

『魔法塔』の情報網はすごいですね……。

 そうです。

 アサニヤ王国と転移者についての約束というか……。 

 お互いに譲り合うとでもいうか。

 その絆を強くするために、私が嫁いで血縁を結んで……。

 転移者の力をもっと有効に引き出すノウハウを学ぶというか……」


 私は考えながら言った。


「シーザー王国では転移者は神殿に王族の妻として囲われてしまうけども……、アサニヤ王国では『聖女』としてその力を国民に届ける、巡業とやらまであるとか!」


 私の言葉にエレノア王女は悲しそうな顔をする。


「スミレ様のような……。

 悲しい思いをする方が出ないように……。

 アサニヤ王国のやり方の方がいいというわけではないのですけれど、シーザー王国の現状よりはまだいいのかなと」


 なら、アサニヤ王国でなくてもいいんでは?

 私はエレノア王女に駆け寄ると手を取った。


「それなら、アサニヤ王国でなくても!

 悲しい思いをする方が出ないようにというのが目的で、アサニヤ王国のやり方がいいってわけではなのでしょう!?

 転移者は『魔法塔』で保護して、魔法使いの修行をして、もし希望があれば、それぞれの国に仕事に行くみたいなのは?」


 クラークが笑った。


「ミコトはとんでもないことを考えるな!

 でも、確かにそうだ。

 シーザー王国は王族との婚姻で一生を縛り、アサニヤ王国は聖女として奉仕することで一生を縛る。

 確かに魔法塔で魔法使いとして期間を決めて、仕事として対応できるようになれば。

 魔法使いとして期間を決めて仕事として対応できるなら。

 転移者も自分らしく生きることができるだろう。

 メグミやミコトのように、恋をして自由に結婚をして子を産んで母になることもできよう」


 クラーク様の言葉にザイマが大きく頷いている。

 私も頷いて、エレノア王女を見た。


「そうだよ! 

 エレノア王女!

 アサニヤ王国に学ぶことなんてないよ!」


 エレノア王女が驚いたというかぽかんとした顔をしてからゆっくりと微笑んだ。


「そんなことができたら……、素敵です。

 私はどうしたらいい?

 シーザー王国で何かしらできるかしら!?」


「エレノア王女の結婚話を進めているのは?」


 私はシドに聞いた。


「王妃だ。

 神殿に転移者を、王族と婚姻もやめさせたいんだろう。

 でも、過去の慣習があって、続いてしまうから、それをやめさせたいんだろう」

「ん? 

 なら、転移者と王子の結婚とかいう話がなくなる方向になら、協力し合えるんじゃ?」


 シドが頷く。


「エレノア王女を女王にという話ももしかしたら、気に入るかもしれないな。

 今、大臣が王に拘束されて指示を出せないから、婚姻の話も少し止まるだろうし」


 エレノア王女がクラークを見た。


「『魔法塔』とシーザー王国が提携を結ぶにはどうしたら?」


読んで下さりありがとうございます。

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