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103 母の愛(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

 エリオット王子は何も言わず、エレノア王女が頷いた。


「わかりました。

 では、イサクとシド、一緒にお願いします」


 エリオット王子が慌ててエレノア王女を見た。



「エレノア! 私は!?」

「エランと一緒に他の方々を王城案内して差し上げて!

 エランだけじゃ心配でしょ!?」


 エレノア王女が面白そうに笑った。



 すごい階段を上がりながらエレノア王女が言った。


「エリオットがごめんなさいね。

 あなたを追いかけさせていたみたいで。

 スニフ……、あ、エリオットの従者なんだけど、話は聞いたわ。

 ミコト様、あなた、シーザー王国にいたんですって?」


 私はクラークとエドガーを見てから……、頷いた。


「はい、カノンの街の森の中に転移してきました」

「それで、娼館に匿われていた」

「はい……」

「隠れていて正解よ。

 この国もアサニヤ王国も転移者に対しての対応が異常だもの」


 そう言い捨ててから、息を整え、私の左手を見た。


「エドガー様、指輪を、ミコト様に渡したのね……」

「はい、ミコトは俺の妻ですので」


 エレノア王女は「本当なのね」と呟き、イサクとシドを見て、「エリオットには?」と聞いた。

 シドが首を振る。


「私達が命じられていたのは、『クルト』を探すこと、そしてシーザー王国へ連れてくること。

 このことについてしか、王妃、大臣には伝えていません」

「そう……」


 と……、まだ階段上がるの!?

 やっと部屋の前に到着した時には、私とエレノア王女とイサクが少し息を弾ませていた。

 エレノア王女と顔を見合わせ笑ってしまう。


「本当にね!

 いつも気合いを入れて上がってくるのよ!」


 息を整えて……。

 エレノア王女がドアをノックした。


「エドワード!!

 私とイサクよ!

 それにマイルズ共和国の魔法使いのお客様をお連れしたわ!」


 ドアが開いた。侍女が開けてくれている。

 中へ入ると窓の所に金髪の美しい人が立っている。

 窓から見える空の明るさと緑の葉の背景がまるで絵みたい。 

 一瞬、女性? と思ったけれど、王子だから男性だよね!?


「君は……!?」

 

 エドワード王子はエドガーを見て、視線を外せなくなり、食い入るように見ている。

 イサクが一歩前に出た。

 エレノア王女が侍女に「大丈夫だから席を外して」と言う。

 侍女は少し躊躇したが、シドを見て納得した顔をすると礼をして出て行った。

 ……王妃か大臣の息がかかっているってことか!?

 イサクがドアが閉まるのを待った。


「マイルズ共和国の魔法塔の魔法使いで、ギルドマスターのおひとりであるクラーク様。

 転移者で優秀な魔法使いのミコト様。

 そして、私の兄だったクルト……、今は魔法使いのエドガーです」

「クルトで、エドガー?

 イサクの兄だった!?

 なんて……、父王に似ているんだ……」


 そして私を見る。


「転移者……。

 母と同じ……。

 小さな身体で……。

 私の母も転移者だったそうだ。

 私は母に似てしまったらしい。

 男なのにこんなに小柄で……、力も弱く……、情けない」


 そこまで弱々しくはないけどな。

 日本だったら、普通だろう。

 この世界の女性の平均くらいな感じだもの。

 エドワードもエドガーもすぐに乳母がついて大切に育てられていたはず。

 お母様のスミレコとはすぐに引き離されたとしても、王城で、ちゃんとお世話を受けていたはず。

 その後エドガーは城から出されて、ライザの息子のクルトになって……。

 でも、義家族は家族と同じだけの愛情を注いでくれたのだろう。イサクは本当の兄と思っていたし、亡くなったお父さんもいて、母としてのライザもいて……。

 エドガーに自分の人生に戻りなさいと、突き放したようにも思えるけど、それはエドガーの人生を本当に考えてのことだとも思えるし。

 エドワードとエドガー。

 もしかしたら、王城に王子として残ったエドワードの方が、家族の愛情には縁のない生活をしていたのでは……、赤ちゃんの頃から……。


 私は収納から映像の魔道具を取り出した。


「私とエドガーの結婚式で!

 奇跡が起きて、エドガーと私の小さな頃の姿が空に浮かんだんです!

 魔道具に詳しい友人がこの魔道具の中に納めてくれて!

 一緒に見ませんか?」


 なんか我ながら……、唐突かな!?

 

「何で?

 それより……、エドガーとミコトは結婚しているの!?」

「はい、結婚したばかりです!」


 私は部屋の中で広く壁がある方を探し、その近くの棚に魔道具を置くと「シド! カーテン閉めてもらえる!」とお願いした。

 シドがカーテンを閉めてくれて。

 起動しようとした時、ドアがノックされた。

 イサクが開けると……、なんと王と大臣で!?


「カーテンを閉めて、何を?」


 怪訝そうに王に言われた。

 どうしよう?

 これ……、やばいか!?

 私は固まったが、エドガーがそばに来て囁いた。


「大丈夫、大臣にはもうバレてるし。

 エドワードに母の……スミレコの姿を見せてやりたいんだ」


 私は頷いた。

 あの幸せそうに双子を抱く姿を見たら、きっと、母に愛されていたことがわかるよね。

 起動させた。

 光が壁を探し出し、壁の上に映像を結ぶ。

 最初は結婚式の準備からだった!!

 うー、恥ずかしいな。早送り機能とかないもんなー!

 そういえば『エスタ』で見たのは動画だった。

 なんか他人にはそれほど面白くもないホームビデオを見せてくる親戚のおじさんを思い出した。

 動画はもっと恥かしいかも!? 静止画のスライドでまだ良かった……のか。

 ちょっと冷や汗……。

 進んで行き、やっと空の映像!

 私の小さい頃、エドガーの………。

 エレノア王女が「ああっ!」と声を上げて驚いている。

 エドワード王子はスミレコと王とエドワードとエドガーの……、その四人の幸せそうな姿を黙って、息を止めているかのように身じろぎもせずに見つめている。

 そして、ライザ達との映像になるとふっと息を吐き「いいな……」と呟いた。

 私との思い出!?

 そして、最後のキスシーンで終了……。映像の光が消えて、シドがカーテンを開けてくれた。

 誰も何も言わないのをいいことに、私はそそくさと魔道具を収納した。

 最後のキスがきつかったー!!

 途中で止めるとかできないのだろうか!?


「お前が……、本物のエドガー?」


 王がとうとう声を上げて、大臣を見た。


「エドガーは侯爵家が責任をもって、分家の領地で育てられているのではなかったのか?」

 

 あ!

 王にはそういう話になってたのか!

 大臣はすっとぼけたというか、困り顔というか……。


「どういうことでしょうな……。分家で何かあったのかもしれません」


 わー、分家に押しつけたよ、責任!!


「エドガー……、本当にエドガーなのか!?」


 エドガーは静かに話し始めた。


「俺はクルトとして育ってきました。

 2年前に、母に俺は母と父の子ではなく、お預かりした子だと打ち明けられました。

 その時に指輪を渡されて。

 何の指輪かさっぱりわからず、母もそれ以上は教えてくれなかったので……。

 指輪には『エドガー』と名があり、でも、それが自分の名前なのか、親の名前なのか、先祖の名前なのか、わかりませんでした。

 でも、まあ、気持ちを変えるためにも、マイルズ共和国へ行ってから、エドガーを名乗るようになりました」

「……指輪、映像の中でそちらの転移者がしていた?」


 わー、一斉に私の左手を見ないでくれ!!


「ミコトは私の妻ですから……。婚約した時から指輪を贈りました」

「転移者と結婚……!

 ならば、シーザー王国へ戻ってこい!

 神殿をお前に任せることができる!」

 

読んで下さり、ありがとうございます。

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