101 フィオナの行方(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
王都に入るのは午後から夕方になるように調整するとかで、なんか留め置かれてる感が……。
コステロは「狩りに行こう!」って言うし。
カノンの森で確かに狩りをしていたことがありますが……、あまり出歩きたくないのですよ、私達。
ディーとライカンは大丈夫だろうってなったんだけど、追い立て役がいない……ということで私も行くことになる。
私は、まあ、逆にカノンにいる時に顔を隠してたからねー。
エドガーとザイマも心配したけれど、ライカンも一緒だし、大丈夫っしょ!
なんて話をしていたら、ゴードンも一緒にってことになって!
私は服装を前に狩りの時に来ていた動きやすい服にして、スカーフで髪を隠した。
上着のフードってのも考えたけど、それだと以前の感じ寄りになっちゃうから、微妙かなと。
「顔……、小さいな!?」
コステロに言われて。
「……転移者だからね。
体格はどうしても小柄な感じになるよ」
「転移者って、違う世界からこちらに呼ばれたんだよな。
どんな感じだった?
神に会ったりしたのか?」
「……何もないよ。
歩いていたら、急にこっちに来てた」
「ふーん」
なんか転移してきた場所でこの話題は嫌だなあ。
私はライカンの隣に早足で並んだ。
ちらりと振り返るとコステロはまだ話したそうな感じだったけど……。
森の中を進み、私は魔力を探った。
おおっ!
以前との違いがすごくよくわかる!
なんかね、けっこう遠くまで見えるのよ!
『エスタ』にいた時と比べると見える範囲は10倍くらい広がり、そして気になるところはズームできるみたいな!?
だんだんできるようになってきてたから、実感なかったけど、修行前に狩りをしていた所で同じことをしてみると自分の成長に驚いた。
『魔法塔』での修行は伊達じゃない!?
「こっちにディアの群れがいる。
6頭いるね」
一番近くにいるディアの群れを知らせた。
いやー、ボアとか一角ウサギとかも見えるんだけど。
一番狩りをしやすくて、した感を感じられるのがディアかなと。
けっこう大物だからね。
ボアは……、初心者には危険かな……と。
コステロの安全に配慮しました、はい。
小さな声で配置を確認し、私とディーが追い立て役に。
私ひとりでも大丈夫だろうけど、やはりみんなほぼ初見の慣れてない狩場。私自身も久しぶりだし、ね。それにここは狩りに来る人も多いんだ。一応、周囲に人がいないのは確認してるけど、何があるかわからないからね。
風下から回り込み、地形や木の生え具合を見て……、もうライカンとゴードンはディアが逃げるであろう方向にいてくれてる。
コステロは緊張している。
私はディーに周囲を警戒してもらい、ディアの動きだけに集中した。
弱めのアクアバレットで脅かし、続けてストーンバレットで逃げる方向を誘導した。
ライカンとゴードンはさすが!
一撃で仕留めたよ!
コステロが足を傷つけたディアを仕留めるのを見守ってくれた。
何とかコステロが仕留めることができた。
「やった……、狩れた……!」
コステロのうれしそうな声。興奮した表情。
まあ、いい家のお坊ちゃんだろうから……、狩りはあまりしたことがないのかな?
マイルズ共和国は商人が強い。なので、狩りは冒険者や騎士の仕事っていう感じがきっちりしてて。
商人は自分からは狩りに行かない。
必要あれば冒険者に依頼したり、護衛を頼んだりする。
シーザー王国では狩りを生活の基盤としている冒険者がいて、嗜みというか趣味として楽しんでいる貴族がいるという感じかな。
アサニヤ王国もラスター様達のことを思い出すと、シーザー王国と同じ感じだろうな。
ライカンがディア3頭を収納してくれた。
「次の獲物は!?」
コステロ、俄然、やる気。
属性魔法が火って言ってたから、魔法での狩りは無理だよね。
私は一角ウサギの群れの方へ歩き出した。
時間的に次の狩りでおしまいだろう。
お昼には出発だし。
やっぱり弱めのストーンバレットで、群れ全体を弱らせる。
剣で狩るのはコステロとライカンとゴードンとディーに任せた。
ライカンとディーが苦笑している。
だって、ストーンバレットで仕留めちゃったら、狩りにならんのじゃ、ですよね!?
上機嫌なコステロに「魔法塔の魔法使いの攻撃魔法、たいしたことないなー」なんて言われたけど……。
まあ、『能ある鷹は爪を隠す』と心の中で唱えてやり過ごした。
ギルドで買い取ってもらい、五人で等分にお金を分けたんだけど。
「えっ?
追い立てただけなのに!?」
コステロの言葉にライカンがムッとしてる。
静かな声が響いた。
「追い立て役がいい仕事をしなければ、我々の前に獲物は出てこないのだよ」
ゴードン!
さすが首都ジュノーの副ギルド長!!
「それは……、そうなんですが……」
「少年、もう少し注意深く周囲を見なさい」
「……はあ」
帰り道でコステロがさっと私の所に来て言った。
「楽して稼げて良かったな」
むー!!
全然わかってないな!!
宿で魔法使いの服に着替えて、はい、使節団っぽく真面目な顔をする。
王都に入れば、シドやイサクに会える。王妃と大臣の動きは要警戒だけど。
ユミエラの妹ちゃんのことも聞けるよね。
あ、フィオナのこと、シドに言うの忘れてた!
あ、魔力を探らないと!
私は動き出した馬車の中でフィオナの小石を取り出し魔力を広く探る。
さっきの狩りの時とは違って、浅く広くって感じ。
……王都にいるかな?
私が王都に詳しくないので、どこらへんかわからないのだけれど、運河のような人工的な川がイメージとして浮かんだ。
シアに王都の特徴的な場所として聞いてみると、北側に有名な運河があるそう。
北の方の物産。チーズ、木材、それとガラスや金属細工が主な物産なんだそう。
重いから運河を整備して船で王都の中心に運んで、マイルズ川の方へ運んでいるのだそう。
「じゃあ、王都の北の方か……。
王都に到着して視察でいろんな馬車に行けば、詳しくわかるかも!」
「ディーに言ってもいい?」
ユミエラに聞かれて……、少し考えた。
「王都にいるらしいことは言ってもいいと思う。
でも、北とかはまだ言わないで。
なんか……、気になるの。
相手の冒険者って、アサニヤ王国の人って言ってたよね」
「ええ」
「マイルズ共和国よりシーザー王国の方がアサニヤ王国のなんていうか、諜報? スパイ? そういう活動が活発らしいんだよね」
「もしかして、マイネからアサニヤ王国を経由してシーザー王国にまっすぐ入国してるってことは……」
シアが思い当たる様に言った。
「フィオナを、自分のこと存在を隠すのに使っているってこと?」
「うん、マイルズ共和国出身を装えたら、動きやすいんじゃない?
アサニヤ王国の色を薄めるために……。考え過ぎかな……」
ユミエラが悲しそうな顔をする。
「それじゃあ、フィオナは恋人だと思っているのに……。
利用されてるってこと!?」
「まだはっきりしたわけじゃないよ!
でも、何か気になる……。
それに冒険者なのに運河の方って……。
もっと狩場とかギルドとか……」
私の言葉にユミエラとシアが考え込んだ。
私は右手に握っていた小石のお守りを握り直すと窓の外を見た。
フィオナ……、無事でいて……。
その時、なんだか見覚えのある三人の姿が馬車の窓を通り過ぎた。
ん?
私とシアは思わず窓にへばりついて後方を見る。
やっぱり……、リンデウム伯爵家の三人だった。
伯爵と令息はまだいいとして、ドレス姿の令嬢が歩いているのは異様だ……。
シアはため息をついた。
「本当に財産を食い潰してしまったみたいね……。
王都に戻る馬車すら雇えないとは!
領地はどうなっているのかしら……」
読んで下さり、ありがとうございます。




