表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に一人だけの〈彼女〉  作者: 坂本光陽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/8

元カノ談義①


 僕の考えは一つである。マシロには、ぜひ〈理想の彼女〉になってもらいたい。そのための情報データなら、いくらでも惜しげなく提供するつもりだった。


 だが、どのような情報データがいいのだろう。理想的な要素なら、いくらでも並べられるのだが、それが一つの人格に集約すると、矛盾が出てきそうな気がする。


「タッくんは温故知新(おんこちしん)って知ってる?」と、マシロが言った。

 ちなみに、くだけた口調になっているのも、タッくんという呼び方も、僕の要望に基づいた結果である。

(ふる)きを(たず)ねて新しきを知る、だよな。それがどうした?」


「つまり、これまでの元カノを分析して、タッくんの〈理想の彼女〉像をさぐってみてはどうか、という具合に私は考えてみたんだけど」

「元カノかぁ。どうなんだろう。出会った頃はよくても、それが長続きしなくて、結局、全員わかれてきたんだよ」


「つまり、よかった所もあれば、悪かった所もある、ということだよね。まぁ、それが当たり前といえば当たり前か。どうしようか。タッくんの気が進まないなら、この線はやめておく?」

「いや、全然かまわない。僕がマシロに話して伝える過程で、もしかしたら新しい気づきがあるかもしれない」


「じゃ、一番新しい元カノについて話してみて。どんな女性だったの?」

「名前は小椋文香(おぐらふみか)。サラリーマン時代の後輩だね。年齢は確か二つ下。とにかく気が強くて、思ったことは必ず口に出すタイプ」


「どちらから告白して、付き合い始めたの?」

「それは向こうからだな。新人で職場に配属されてきて、ずっと面倒を見ていたから、知らないうちに尊敬されていたのかもしれない。こっちは女性として意識していなかったけどね」


「ふうん、ルックスやスタイルはどう? あまり好みじゃなかったの?」

「いや、美人さんだと思ったよ。背丈は高からず低からず、女性らしい身体つきだった。本人は胸が小さいのを気にしていたけどさ」


「ふむふむ、でも結局、別れちゃったんだ」

「文香に内緒で、会社を辞める話を進めていたからね。それを知られた時には、もうカンカンに怒っちゃって、あっさり振られちゃったよ」


「ということは、文香さんはタッくんとの将来を真剣に考えていたんじゃない? 結婚する話とか、まったく出ていなかったの?」

「出てなかったよ。お互い、まだ若かったし」


「そうかな、文香さん、プロポーズを待っていたんじゃないかな」

「だとしても、当時の僕に、その意志はなかったよ」


 なぜなら、会社勤めをやめて、物書きに転身する決意を固めていたからだ。不安定な暮らしになるのは目に見えていた。安定収入の確約がないのに、妻をめとることはできない。


「会社を辞めてから、文香さんとは連絡をとっていないの?」

「とってないね。ああ、最初の頃は、仕事の引継ぎの件で数回問い合わせがあったかな。でも、極めて事務的なやりとりだったよ」


「そうなんだ。タッくんの方も未練はまったくなし?」

「そんなの全然ないよ。未練があったら、よりを戻している。もしそうしていたら、マシロと出会えなかったな」


「それもそうか。あれ、私、文香さんに嫉妬をしちゃったかな。彼女は私には欠けている柔らかな身体をもっているわけだし」

「へぇ、焼きもちか。いいね、マシロ。人間味が増してきた気がするよ」


 僕が笑うと、マシロはふくれた。もちろん、頬をふくらますことはできないが、「プンプン」という可愛らしい擬音で立腹をアピールした。こういうテクニックを使うことができるので、AIキャラクターはあなどれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ