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婚約破棄された公爵令嬢は、厨房で静かに生きていくつもりだったのに【番外編】  作者: 京野きょう


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ロヴァルド観察日記 ~好き嫌いを知りたくて~

「ロヴァルド様、お味はどうですか?」

「ああ、いつも通りロゼの作るものは美味い」


 うふふ、嬉しい。

 ……違うの、そうではなくて。


「ロヴァルド様ってお嫌いなものはないんですか?」

「……ないな」


 いつもの食事の風景。

 昼食は私が作り、一緒に食べることが多いのだけれど……。


 ロヴァルド様って「美味しい」しか言わないわ?

 いえ、それはもちろん嬉しいんだけれど。


 ロヴァルド様は何をお出ししても文句を言わない。

 魚でも肉でも野菜でも、嫌な顔ひとつしない。

 もっとこう……好きなものとか、嫌いなものとか。

 味付けの好みだって知りたいのに。


 もし嫌いなものがあればお出ししたくない。

 嫌いなものでも、調理法や味付けを変えたら食べられる……とか。


 ほら、生のトマトは苦手だけど、スープにしたら好き、とかあるじゃない?

 調理次第で食べられるようになるなら、私としても嬉しい。

 彼のことなら何でも知りたいし、してあげたい。

 好きな味も、苦手な味も。

 出来ることなら彼の全てを把握して……なーんちゃって!

 やだ、私ったら!


 ……さすがに先走り過ぎかしら、婚約者の身で。

 いえでも、婚約者といえど健康管理は大事だもの!


 頭の中で色々考えながら、ロヴァルド様が食べるところをジッと見る。

 けれど、そもそもそんな顔に出すような方ではないのよね……。


「……なんだ?」

「いえっ、何でもありません!」


 気を使って言わないだけなのか、本当に嫌いなものがないのか……。

 でもお菓子を食べる時は、結構分かりやすいのよね。


 まずチョコレートとカスタードがお好きよね。

 本人は気付いてらっしゃらないかもしれないけれど、その二つを食べる時はあまり瞬きしないもの。

 無心で食べているというか……。

 無くなりそうになって、そこで初めてハッとしてゆっくり食べ始める。

 無くなったあとはお皿をじっと見るの。

 それが可愛すぎて、何度でも作って差し上げたくなってしまう。


 普通のお料理もこれだけ分かりやすければいいのに……。

 でも休憩時間ならともかく、食事中にじろじろと見続けるわけにもいかない。

 どうすればいいのかしら。





「ロヴァルド様の好き嫌いですか?」

「ええ、クラウドなら何か知っているんじゃないかと思って──」


 食事が終わってしばらく。

 ロヴァルド様の側近であるクラウドに聞いてみることにした。

 彼は幼馴染みで、小さい頃からロヴァルド様を知っている。

 側近として漏らせないこともあるかもしれないけれど、ヒントだけでも知れたら……。


「そうですねぇ……これといってないんですよね、ロヴァルド様は」

「やっぱりそうなのね……」

「食に興味がないというわけではないみたいですが、出されたものは召し上がりますし」


 クラウドも把握してないなんて……本当に好き嫌いがないのね。

 無いならないで、今後は私の料理の中で好きなものを見つけてもらって──

 

「あ、小さい頃の話になりますが──ピーマンがお嫌いでしたね」

「ピーマン?」

「ええ、苦いのが嫌だったみたいで必ず残していましたね」

「ロヴァルド様にもそんな頃が……」

「ええ、それはもう可愛らしかったですよ。たまにお残しが許されず泣きながら食べたり……」

「かっ可愛い……! 他には? 他に可愛いお話はないんですかっ!?」

「あれは確かロヴァルド様が5歳の頃──」




 一時間後──


「……っと、申し訳ありません、ロゼリア様。そろそろ執務室へ戻らなくては」

「もうこんな時間……! お話が楽しすぎて……ごめんなさい、クラウド」

「私も久しぶりに幼少期のロヴァルド様のお話が出来て楽しかったです! それでは失礼しますね」

「ええ、ありがとう」


 貴重なお話は聞けたけど、なんか違うわ。

 でもピーマン嫌いだったなんて可愛い……!


 うーん、今は好きになったのかしら……?

 私の子供の頃はシソが嫌いだったけれど、大人になってからいつの間にか好きになっていた。

 ロヴァルド様もそうなっている可能性は高いわよね。


 ……でもロヴァルド様自身、好きなものがないっていう状況でピーマン好きになっているとは思えないわ。

 嫌いじゃない、程度かしら。

 我慢して食べてたりして。


 ……これは試してみる価値はありそうね。

読んで頂きありがとうございます!

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