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第十八話 疾風、それは食べ物ではありません! それってなんじゃ、わし、神様じゃぞ-!

昼餉の頃には、祥吾はすっかり元気を取り戻していた

かわりに、落ち込んでいたのが屋敷神だ

部屋の隅っこで柱に向かって小さくなっている


「おーい、神爺、どうしたんだ 食べんのか?」

祥吾の声にも反応がない


「屋敷神様、こちらに専用のお膳をご用意いたしました

 お召し上がりください」

だが、千草の声には、ビクッと体を震わせ、瞬時に振り返る

「こ、これは、かたじけない——」

言いかけたが、目の前のお膳を見て、言葉に詰まる

「お、奥方、このお膳は?」

「はい、神棚のお膳でございます」

「いや、こんなに小さいのは、さすがに」

千草は、小首をかしげる

「お体が、小柄でしたので、それにあわせたのですが」


「まさか、俺たち並みの量がいるのか?」

祥吾が、驚いて聞く

「いや、まあ、わしは、食べるのではなく、

 その精気を取り込むのじゃから、別に形には……

 けど、やっぱり、皆と同じの方が……」

ブツブツつぶやきながら、千草を見る

「わかりましたわ

 少々お待ちください」

にっこりと笑いながら、神棚のお膳をもって

台所に引き返す千草


「奥方は、優しいのう

 誰かさんとは、大違いじゃ」

「ふん、子どもみたいに甘えおって

 神爺でなく、神坊にしてやろうか」

「やくな、やくな」

「だ、誰が、お前などに」


西園寺家の昼餉は賑やかに過ぎていく


「さて、それでは、外の様子を調べに行くとするか」

外に出た祥吾は、そう言って気合いを入れるが、

ふと、千草の方を見て、

「おい、神爺、どうしてお前は、そこにいる?」


神爺は、千草が胸の下に組んでいる両手のひらに

ちょこんと座っていた

「気にするな」

「いや、気になるだろ!」

抗議する祥吾の周りで、いつの間にかタマ(鶏)たちが、

同じように、ケココケーと騒ぎ立てる

「みろ、タマたちも怒っているではないか」

「神としては、当然の居場所ではないか」

偉そうにふんぞり返る、その頭を

突然、疾風がカパッと咥えて持ち上げる


唖然とする祥吾

突然のことに何が起こったのか分からず

意味のない叫び声を上げる神爺

そこに千草の穏やかに諭す声がする


「疾風、それは食べ物ではありません

 はきだしなさい」


「それってなんじゃ!

 わし、神様じゃぞー!」

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