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第十一話 旦那様、あまりにご無体な仕打ちです 俺は嫉妬深い夫じゃない!

タマを抱えたまま、川より手前で千草に追いつく。

さすがに走る速さは、祥吾が勝っていた。


(走りで遅れをとっては、軍人としての面目が立たん)


ほっとして、後ろから千草の手をつかもうとするが、

千草の隣を併走していた疾風が、祥吾の手を鼻ではじく。


(こいつ、主になんて態度だ!)

長年の相棒のあまりな仕打ちに腹を立てる祥吾

「疾風、もういいのです

 旦那様、勝手をいたしまして申し訳ございません」

殊勝に謝る千草だが、その様子を、祥吾は何故か素直に受け取れない


不審げに見る祥吾に、うろたえる千草。


「そ、そうでした、昼餉を用意しなければなりません」


そう言って、そそくさと屋敷に戻りはじめた。


その後を、疾風とともに付いていきながら、

小声で、疾風に聞く


「なあ、このままで終わると思うか?」


当たり前のことを聞くなというように、疾風はブルルと鼻を鳴らした。


昼餉は、祥吾が恐れるような食材はなく、

朝餉の時の炎の龍も、いなくなって

心穏やかに済ますことができた


心穏やかでなかったのは、その後だった。


片付けも早々に、川の発見でできなかった牛の搾乳をやると言い出した。


「そうか、では、一緒に——」

「いえ、私一人で大丈夫ですわ」

「しかし——」

「結界内ですし」


千草の言うのももっともだが、ここは引いてはいけない気がした


「いや、結界内といえど、どんなことが起きるか分からん」

「けれど、旦那様もお忙しいでしょうから」

「この状況で、俺に忙しいことなど何もないのだから、遠慮はいらん」

自分に悲しく突き刺さる台詞まで言って譲らない


こんな事が何度も続く


「畑に行ってくる」

「庭の掃除に」

「蔵の様子を見に」

「離れの掃除を」

などなど


すべてに祥吾は付いていく。

(千草は、必ず外へ行こうとするからな)


「旦那様、あまりにご無体な仕打ちです」


千草が恨めしげ言う


その様子に、いつか読んだ小説内の情景が重なった


(今の俺は、あの小説の嫉妬深い夫と同じなのか?いや、ちがうよな)

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