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第十話 この森は宝庫です まて、千草。なぜ俺はタマ(鶏)を抱えねばならんのだ!

「父は『学問とは、まず生きて帰らねば語れぬものだ』と申しておりました」

「まて、何故生き死にの話が出てくる?」

「山や森での野外調査研究は、それはもう過酷なものでございましたから」


(まさか、我々軍人の野外演習よりも過酷なのか?)

これまでの千草の行動を思い出して戦慄する祥吾


千草は話の内容とは裏腹に、懐かしそうに言う


「死と背中合わせの中から、真実は見えるのだと

 父は、よく言っておりました」


「学者が言う台詞とは思えぬが」

「いえ、研究室に閉じこもっての研究では、真理には到達しません

 野外調査研究と合わせてこそ到達するのだと申しておりました」

「な、なるほど」

気圧される祥吾


不意に千草が、両手をパチンと合わせた。

「思い出しました。先程の川の畔に、珍しい植物を見つけたのです

 この森は動植物の宝庫もしれませんわ」


そのまま、結界の外に向かおうとする。

「ま、まて、どこへ行く」

「川でございます」

「さっき獣に襲われたのを忘れたのか。外は危ない」

「大丈夫でございます」

「大丈夫ではない!」


祥吾の怒りの大声に、千草がぴょんと跳ねる


自分の安全に頓着しない千草を見ていると、無性に腹が立つ

それ以上に危うさを感じてしまう。


「先程の獣でしたら、戻ってこないと思いますわ」

「どうして、そう言える」

「珍しい植物を見つけたと言いましたが、

 本当は、以前に見た植物と似たものを見つけたのです」


「それは、お父上といたときのことか?」

「はい、その植物は獣よけに使うものでして、

 獣はその臭いを嫌うのです。

 先程の礫には、その植物をこすって汁をつけておきましたの」


そういながら、いそいそと外へ出ようとする

千草の手をしっかりつかむ。


「旦那様?」

「だめだと言ったろう!」


うらめしげに祥吾を見る千草


「そ、そんな目をしても、だめなものはだめだ!」


言った祥吾は、千草が少し顔を赤らめているのに気がついた。

見ると、祥吾がしっかり握った手を見つめている。


「い、いやこれはだな——」


慌てて手を離すと、千草は脱兎のごとく走り去る。


「ま、まて!」


追いかけようとする祥吾は、結界にぶつかりすっころぶ。


「く、くそっ」


急いで起き上がる橫を疾風が走り去る


「おい、こら、待て!」


主人を見向きもしない疾風は、千草を追いかけていく。

祥吾をあざ笑うように、タマたちが、ケコッケコッと鳴く


「くそっ!」


祥吾は、タマたちに躍りかかり、1羽を抱きかかえた。

何をするのだ、と言わんばかりにタマが暴れる。

かまわず、そのまま結界に突進した。

するりと、何の抵抗もなく結界を通り抜ける。


鶏を抱きかかえて追いかけながら心の中で叫ぶ


(なんで、鶏を抱えなければならんのだー!)

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