*95 そして・・・私は決意する
家に戻って夕食作り。なんかやる気が出ない。そんな時はシチューにしちゃおう。煮込んでいればいいだけだもの。あとは冷凍のコロッケを揚げて、他はサラダかな。
夕飯がすんだら、片付けをして休みましょ。
そんな感じで毎日を過ごし、気がついたら2月24日金曜日になっていた。
この間にお気に入りさんにしたい方が何人かいるの。気になるのだけど、どうしようかしら?
まずは片平久様。着物好きの私になんてタイムリーなエッセイを書かれているのかしら?
【キャラに着物を着せませんか】だなんて~。
次に秋月忍様。「赤い糸は見えないけれど」を読んでいたのよ。
他にはpeco様? この方って男性? 女性? ・・・あっ、男性か。なんか面白そうな人。
宮里蒔灯様も、お名前を皆様の活動報告で見るのよね。
他にもいらっしゃるけど、どうしよう。あまり手を広げると・・・。でもな~、気分転換に皆様のかっぽうを覗くのも面白いのよね~。
そうそう、活動報告のことをかっぽうというのですって。初めて知ったわ。
今日は珪は息子の尚人と約束したとかで、午後に荷物を持って家に来た。息子は学校が半日だったから、帰ってきたら珪と話し込んでいる。これがこの間、電話で話していたことだったようだ。
その様子を横目に私はパソコンと格闘中さ。とりあえず闘病記を書き上げて、予約をすると一休みをしようと立ち上がった。
「どこに行くの、母さん」
「お茶を入れようかと思ってね。二人とも飲む?」
「飲みたい」
「よろしく」
急須と湯呑、ついでにポットを持って居間に戻る。炬燵に入ってお茶を注いだ湯呑を渡し、私もお茶を飲んで息を吐き出した。
「母さん、疲れたの」
「う~ん、まあね。なんか画面が見ずらくて」
「まだ、そんななんだな」
「なんだろうねぇ~。あれかな、目の動きが画面を追うのについていけてないとか?」
私の言葉に尚人と珪は顔を見合わせた。
「というかさ、母さんがパソコンを使い過ぎている気がするんだけど」
「そんなことないよ~。時間を見てやめているでしょ」
また顔を見合わせる二人。
「あのさ、何か言いたいことでもあるの」
半眼で睨むように見たら二人が小突き合っている。お互いにお前が言えというように。
「その、母さん。何か悩みはないの」
「はぁ~? 私が悩み? あるように見えるの」
「あるように見えるから聞いているんだろ」
笑い飛ばそうとしたら珪に言われてしまった。いかんなあ~。隠していたつもりだったのに、バレていたとは。
「大したことじゃないのよ」
「そんなことないよね。母さんが何でもないふりする時って、絶対なんか隠してるだろ」
「ほら、舞。観念して話せよ」
二人の言葉に子供っぽいと判りながらも、私は軽く頬を膨らませた。
「その言い方嫌い」
「母さん、それってかわいくない」
「かわいくなくていいもん」
「だから、歳を考えろってば! ほんと、何で、中学生に混ざって普通に会話できるんだよ」
「お母さんに人徳」
「ガキの間違いだろ」
「なんですって!」
「尚人君、脱線してるから」
チッ 珪め、余計なことを言いおってからに。
「それで、どうしたって」
「・・・言わなきゃ駄目?」
「言ってよ。母さん」
私は観念すると、一度軽く深呼吸をした。
「あのさ、私、もう書けないかもしれない」
「えっ?」
「小説がか」
「うん。なんかさ、書きたい場面は浮かぶんだけど、言葉にしようとすると消えちゃうんだよね」
炬燵の布団を引っ張って、背を丸めるようにしてもう少し中に入り込む。
「それって月光の姫のこと?」
「まあ、そうなんだけどね」
「どんな感じに消えるの」
尚人が興味をひかれたようにで聞いてくる。
「どんなって言葉のとおりよ。イメージ映像を言葉に変換しようとすると、その映像ごと消えてしまうのよ」
尚人が珪の方を見た。珪は私の事を見つめている。
「それって掻き消えるような感じか」
「まあ、そんな感じかな」
「よくあることだから気にするな」
珪は事も無げに言った。
「ええっ? これってよくあることなの?」
「仕事をしていればそんなものだぞ。企画書を作っているとイメージを言葉にしようとするとよく消えるから」
「で、でも、それは仕事であって、創作活動とは・・・」
「企画書も創作活動だぞ」
「違う・・・いや、違わない? あれ? なんかわからなくなってきたような」
私が少し混乱していたら、珪が言ってきた。
「舞。焦る気持ちもわかるけど、もう少しゆとりを持てよ。書けないなら書けないでいいから」
「いや、それは不味いでしょ」
「舞、お前さ、そうやって自分を追い込むな。お前は完結させなきゃという思いと、話が長くなったことで、知らずに自分を追い込んでいるんだ。出来ないならできないでいいんだぞ。読者としては完結して欲しいけど、無理やりなこじつけの最後なんて見たくはないんだ。どんだけかかったっていいから、納得がいくものを書いて欲しいと思う」
珪が断言したら隣で尚人も頷いている。
「そうかな? 待っていてくれるのかな?」
「ああ。絶対な」
二人の顔を見ているうちにそうかもしれないと思った。
私だって、続きが出てくれるのを待っている作品がいくつかあるもの。
それと同じなんだ。
「それに、今回の入院で不安に思ったんだろ。いつまでまともでいられるかって」
「・・・まともって言い方は酷い気がする」
「痴呆になるって心配は、その時はその時だよ。なるかどうかわからないものを今から心配してどうすんだよ」
「そうだよ。一応俺もいるんだし、母さんは安心してなよ」
尚人が胸を張ってそう言った。その姿に大きくなったんだと改めて思った。
そうだよね。人は一年一年、歳を重ねていく。子供は成長し、親は老いていく。
自然の摂理を不安に思ったって仕方がないのだろう。
せっかく書いた作品を投稿する場所を見つけたのだ。先のことを不安がってばかりいないで、いまを楽しむことにしよう。
私は心を決めると二人に笑いかけたのだだった。
― 完 ―
ここまでお付き合いをいただきまして、ありがとうございました。
途中から日時を追いきれなくなりましたので、これで終了いたします。
まだ、病院との付き合いは続いていますが、気長に病気とつき合っていきたいと思います。




