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第53話「日本でも陽性――そして、もう一つ気になり始めた“二人で暮らす家”」


第53話です。


午前中、創はいつも通り法人営業第一部で仕事。


東央精密製作所の案件を整理し、正式な早退手続きを取ったうえで、午後から璟瑶の付き添いへ向かいます。


そして日本の産婦人科で行われた再検査。


結果は――再び陽性。


ただし、まだごく初期。


四十五歳という年齢もあり、焦らず慎重に経過を見ていくことになります。


診察を終えた二人が戻ったのは、創の一人暮らしの部屋。


狭い浴室。


限られた収納。


一つだけの寝室。


それらを見ながら、二人はついに、


「一緒に暮らす家を探そう」


と本格的に決めます。



 日本・東京。


 青嶺中央銀行本店。


 午前七時五十二分。


「おはようございます」


「おはよう」


 宮嶋創・二十一歳は、いつもどおり法人営業第一部へ出勤した。


 中国から帰国して、二日目。


 今日は昨日と違い、午後に重要な予定がある。


 欧陽璟瑶・四十五歳が、日本で改めて妊娠の確認を受ける。


 創も、その診察に付き添う。


 私生活では、人生が変わるかもしれない日。


 それでも午前中は、銀行員として仕事をしなければならない。


「宮嶋」


「はい」


 相沢拓也が声をかける。


「昨日頼んだ、東央精密の二案比較はできてる?」


「はい。一度見ていただけますか」


 創は、設備投資実行案と現状維持案を並べた資料を差し出した。


「投資する場合のメリットは、生産効率の向上、設備停止リスクの低減、中長期的な修繕費の抑制、新規受注への対応余力、品質の安定です」


「デメリットは?」


「借入と返済負担の増加。立ち上げ期間中の一時的な生産効率低下、新設備の習熟や教育コストです」


「現状維持は?」


「短期的な借入負担を抑えられます。設備入れ替えによる停止時間もなく、従業員が既存設備の操作に習熟しています」


「その一方で?」


「修繕費の増加、故障、部品調達の難化。将来的には品質や納期にも影響が出る可能性があります」


 相沢は資料をめくり、頷いた。


「昨日より良い。ただ、一つ足りない」


「何でしょう」


「東条社長は、どうしたいんだ?」


「……」


「数字の比較はできている。でも社長が何を守り、何を変えたいのかが薄い。銀行が設備を買うか決めるわけじゃない。顧客が何を実現したいのか、そこからもう一度整理して」


「分かりました。十一時半までに修正版を出します」


「頼む」


 創は自席へ戻った。


 午後の病院が頭から消えることはない。


 しかし、それを理由に仕事を雑にしていいわけでもない。


「集中しよう」


 小さく呟き、資料を開いた。


◇◇◇


 午前九時十七分。


「宮嶋君、今日は午後に早退だっけ?」


 藤崎美優が尋ねる。


「はい」


「体調が悪いの?」


「俺は大丈夫です。知人の付き添いで」


「病院?」


「……はい」


「分かった。それ以上は聞かないけど、午前中に無理して詰め込まないでね」


「ありがとうございます」


 そこへ桐生雅人も来た。


「早退申請は通ってる?」


「昨日、相沢さん経由で提出しました」


「通してあります」


 相沢が答える。


「なら問題ない。時間になったら仕事に区切りをつけて帰れ。変に残って遅れるなよ」


「分かりました」


「私用の内容は言わなくていい。必要な手続きを踏んでいるなら、それで十分だ」


「ありがとうございます」


 創は少し安堵した。


 言えるはずがない。


 付き添う相手が、青嶺中央銀行の頭取であること。


 その頭取が、自分の恋人であること。


 そして、妊娠している可能性が極めて高いこと。


◇◇◇


 午前十一時二十六分。


「相沢さん、修正版です」


 相沢は数分かけて資料を確認した。


「社長の意向を加えたね」


「はい。東条社長が不安に感じているのは、設備の老朽化そのものより、納期と取引先からの信用、若手採用への影響ではないかと整理しました」


「いい。ただし、今は可能性だ。次は本人への確認が必要になる」


「はい」


「午前中でここまでできれば十分。昼を食べて、十三時には上がっていい」


「ありがとうございます」


「続きは明日だ」


「分かりました」


 午後零時十二分。


 創は社員食堂で軽く昼食を取り、今日は黒瀬も琴葉もいない。


 早退の理由を聞かれずに済むことへ、少しだけ安心する。


 スマートフォンが震えた。


『今起きた』


 璟瑶からだった。


『また寝てた?』


『一時間くらい』


『朝も寝てたよね』


『うん』


『体調は?』


『軽い吐き気はある。でも昨日よりはいい』


『食事と水分は?』


『お粥を少し。水も飲んでる』


『病院の準備は?』


『できてる』


『俺、十三時に上がる』


『本当に来るの?』


『行くって言った。正式に早退申請もした』


『頭取権限は使ってません』


『使わせない』


『分かってる。待ってる』


 創は、その最後の言葉を見つめた。


「今日は病院で、か……」


◇◇◇


 午後零時五十七分。


「お先に失礼します」


「お疲れ」


 桐生が声をかける。


「明日は通常出勤?」


「はい」


「なら、今日は気をつけて行ってこい」


「ありがとうございます」


 相沢も続ける。


「案件の続きは明日だ。今日は仕事を忘れて、私用を優先していい」


「はい」


 創は一礼して退勤した。


 正式な早退として記録を残す。


 頭取の恋人だから特別に抜けるのではない。


 一人の行員として、通常の手続きを使う。


 それが二人で決めた線引きだった。


◇◇◇


 午後一時四十三分。


 東京都内、高峰レディースクリニック。


 大規模な総合病院ではないが、長く地域に根差してきた産婦人科で、プライバシーに配慮した個室の待合室も設けられている。


 創が入口から少し離れた場所で待っていると、黒いワンピースとロングコート姿の璟瑶が現れた。


 マスクと眼鏡を着け、秘書車ではなく一般の配車サービスを利用している。


「璟瑶」


「外では名前を小さく」


「ごめん。体調は?」


「少し気持ち悪いけど、歩ける」


 創は手を伸ばしかけた。


 しかし入口付近には人がいる。


 それに気づいた璟瑶が、小声で言った。


「中で個室に入ったら、握って」


「うん」


 二人は受付へ向かう。


「こんにちは。予約しております、欧陽です」


「欧陽璟瑶様ですね。高峰院長より伺っております。こちらへどうぞ」


 受付担当者は騒がず、表情も変えない。


 頭取としてではなく、一人の患者として扱う。


 個室待合の扉が閉まると、創はすぐに璟瑶の手を握った。


「約束」


「うん」


「手、冷たいね」


「緊張してるから」


「俺も」


「重慶で陽性だったのに、日本でも同じ結果になるか分からないのが怖い」


「違っても怖い。本当でも怖い」


「同じだね」


「うん」


◇◇◇


「欧陽様、診察室へどうぞ」


 二人が入ると、女性医師が立ち上がった。


「初めまして。高峰レディースクリニック院長の高峰澪奈です」


「欧陽璟瑶です。よろしくお願いします」


「宮嶋創です。よろしくお願いします」


「母から必要最低限のことは聞いています。ただし、診察に必要な内容は、改めてお二人から伺います」


「はい」


 澪奈は、中国で受けた検査、市販検査薬の結果、最終月経の開始日、普段の周期を確認した。


「出血は?」


「ありません」


「強い腹痛は?」


「ありません」


「吐き気は?」


「軽くあります。食事量も減りました」


「眠気とだるさは?」


「かなりあります」


「発熱は?」


「ありません」


 さらに既往歴、服薬、アレルギーを一つずつ確認していく。


「こちらでも妊娠反応を確認します。超音波検査も行いますが、時期がかなり早いため、今日何もはっきり見えなくても、直ちに異常ということではありません」


「つまり、今日陽性でも全て分かるわけではない?」


「そのとおりです。この時期に大切なのは、一回の検査で未来まで決めようとしないことです。一つずつ確認していきましょう」


「はい」


 創は、その言葉を胸に刻んだ。


 美智子も同じことを言っていた。


『症状だけで決めない』


◇◇◇


 検査後。


 二人は個室待合へ戻った。


「創、手」


「うん」


 指を絡める。


「もし陰性だったら、多分落ち込む」


「うん」


「でも、子どもがいなくても結婚したい。一緒に暮らしたい」


「俺も。そこは変わらない」


「陽性だったら、怖い。でも嬉しい。四十五歳だから、無事に育ってくれるのか不安で……」


「今日、全部を決めない。先生が言ってたでしょう。一つずつ確認しよう」


「うん」


 十数分後、再び診察室へ呼ばれた。


「欧陽さん。こちらの検査でも妊娠反応は陽性です」


「……陽性」


 璟瑶の息が止まり、創がその手を強く握る。


「では、妊娠しているんですか?」


 澪奈は慎重に言葉を選ぶ。


「現時点では、妊娠している可能性は非常に高いと考えます。ただし、まだごく初期です。超音波検査でも、今日の時点で確定的に判断できることは限られます」


「赤ちゃんは見えますか?」


「今はまだ、はっきりお見せできる段階ではないと思ってください。数日から一、二週間ほど経過を見て、再度確認します」


 創が尋ねる。


「次はいつ頃がいいですか?」


「一週間前後を目安に再診しましょう。ただし、それ以前でも、強い腹痛、出血、急激な体調悪化があれば、すぐ連絡してください」


「分かりました」


 澪奈は璟瑶をまっすぐ見る。


「欧陽さんは四十五歳ですので、今後は一般的に、より慎重な管理が必要になります。ただし、年齢だけで今から全てを悲観する必要はありません」


「……はい」


「反対に、絶対に大丈夫だと簡単に言い切ることもできません。一つずつ確認していきましょう」


 璟瑶の目が潤む。


「先生。私の仕事は、かなり忙しいんです」


「職業は母から聞いています。でも、私は頭取を診ているのではありません」


「……」


「一人の患者である欧陽璟瑶さんを診ています。必要なら仕事を減らしてもらいます。休む必要があれば休んでもらいます。頭取だから例外、ということはありません」


 創は静かに頷き… 璟瑶は苦笑する。


「母にも同じことを言われました」


「母親はそういうものです。うちの母も、患者さんには厳しかったですから」


「四十五年前、私の母を先生のお母様が診てくださったんですよね」


「はい。当時の美智子さんは、かなり心配性だったと聞きました」


「今もです」


「確かに」


 創が答えると、璟瑶が横を見る。


「創」


「ごめん」


 診察室の空気が少し和らいだ。


「宮嶋さんにもお願いがあります」


「はい」


「欧陽さんの体調変化に、本人より先に気づくことがあるかもしれません。ただし、過度に心配して全てを止める必要もありません。本人、医師、ご家族と相談しながら進めてください」


「分かりました」


 診察を終え、会計と次回予約を済ませる。


 診療記録は通常どおり管理する。


 特別扱いはしない。


 ただし、個人情報は診療上必要な範囲に限って共有する。


◇◇◇


 午後四時二十五分。


 クリニックの外。


 二人は静かに歩き始めた。


「日本でも陽性だったね」


「うん」


 璟瑶が立ち止まる。


「創」


「何?」


「抱きしめて」


「ここで?」


 人通りは少ないが、外だ。


「家に帰ってから」


「うん。絶対?」


「絶対」


「なら帰ろう」


◇◇◇


 午後五時二十分。


 創のマンション。


「ただいま」


「おかえり」


 玄関に二人の靴が並ぶ。


 リビングへ入った瞬間、創は腕を広げた。


 璟瑶が、その胸へ飛び込む。


 強く締めつけるのではなく、身体をいたわるように優しく抱く。


「日本でも陽性だった」


「うん」


「まだごく初期で、赤ちゃんは見えなかった」


「うん」


「でも、妊娠している可能性はすごく高いって」


「うん」


 璟瑶は創の胸へ顔を埋める。


「嬉しい」


「うん」


「怖い」


「うん」


「どちらが大きい?」


「同じくらい」


「俺も」


 二人は、しばらくそのままでいた。


「お腹が空いた」


「食べられそう?」


「少し。うどんがいい」


「昨日も食べたけど」


「いいの」


「分かった」


 創がキッチンへ向かう。


 璟瑶はソファへ座り、部屋を見回した。


「創。昨日の話」


「家のこと?」


「うん。本格的に探す?」


「まだ早くない?」


「早い。でも、条件を考えたり、見るだけならいいと思う」


「そうだね」


◇◇◇


 夕食後。


 二人は今の部屋を改めて確認した。


 最初は浴室。


「狭い」


「昨日も言ってた」


「一人なら普通。でも二人で入るのは無理」


 璟瑶の口元が上がる。


「試してみる?」


「やめて」


「密着できるよ?」


「そういう問題じゃない!」


 璟瑶が笑う。


「新しい家には、大きなお風呂が欲しいね」


「二人で入れるくらい?」


「将来、子どもとも一緒に入れるくらい」


「……家族でお風呂に入るのか」


「小さいうちなら普通でしょう?」


「そっか」


 次は収納。


「創の服だけで、かなり埋まってる」


「そんなに持ってないよ」


「私の服が来たら?」


「……絶対に入らない」


「でしょう?」


 寝室にはベッドが一つ。


「二人で寝るだけなら大丈夫。でも、赤ちゃんがいたらベビーベッドを置く場所がない」


「リビングでは夜に困るね」


「寝室は、もう少し広い方がいい」


「将来は子ども部屋も必要」


「うん」


「璟瑶には書斎も必要だよね」


「在宅で確認が必要な場合に備えて、専用の空間は欲しい。原則、機密資料は持ち帰らないけど」


「俺も資格の勉強をする場所が欲しい」


「なら書斎は二つ?」


「贅沢じゃない?」


「一軒家ならできるかも」


 二人は顔を見合わせた。


「やっぱり一軒家がいい?」


「私は、その方がいいと思う」


「理由は?」


「三つある。一つは、子どもの音を気にしなくていいこと」


「うん」


「二つ目は、同じ建物に青嶺の行員が住んでいる可能性を、マンションより下げやすいこと」


「確かに」


「三つ目は、私と創が同じ玄関へ帰るところを周囲から見えにくくできること」


「防犯対策も必要だね」


「絶対に必要。塀、植栽、防犯カメラ、警備会社との契約。でも、要塞みたいな家は嫌」


「分かる」


「本店まで三十分から四十分くらいなら通える」


「電車と徒歩が基本。必要な時だけ車」


「秘書車が毎朝家の前へ来たら、かえって目立つものね」


「青嶺の行員が多く住む地域も避けたい」


「うん」


 創はノートを開いた。


「条件を書こうか」


「書きましょう」


◇◇◇


「一軒家」


「うん」


「4LDK?」


「5LDK」


「いきなり増えた」


「主寝室、子ども部屋、私の書斎、創の書斎、客間。これで五部屋」


「なるほど。でも、子どもは一人の想定だよね」


「まだ想定と言える段階でもないけど……今はね」


 二人は、まだ知らない。


 子ども部屋が一つでは足りなくなる可能性を。


「LDKは広め」


「二十畳以上」


「豪華だね」


「二人で料理できるキッチンが欲しい」


「風呂は?」


「二人で入れる浴槽。絶対条件」


「それ、子どもと関係ないよね」


「夫婦には大事」


「まだ夫婦じゃない!」


「そのうち」


 創の顔が赤くなる。


「庭は?」


「子どもが遊べるくらいの広さが欲しい」


「駐車場は二台分」


「俺、今は車を持ってないよ」


「将来必要になるかもしれないし、来客用にも使える」


「駅から徒歩十分前後。防犯性が高く、本店まで四十分以内。青嶺の行員が多い地域は避ける」


 条件を書き終えた創が、ページを見つめる。


「これ、かなり高そう」


「うん」


「簡単に言うね」


「私、四十五歳で頭取だから。それなりの貯蓄と資産はあります」


「分かってる。でも、俺も出したい」


「まだ金額も決まってない」


「全部を璟瑶に出してもらうのは嫌だ。二人の家だから」


 璟瑶は創を見つめた。


「なら、二人で出そう」


「うん」


「でも、完全な折半にはしない」


「どうして?」


「収入と資産の差が大きすぎるから。創が無理をして半分出す意味はない」


「でも、俺も自分の家だって言いたい」


「言える形にすればいい。創も無理のない範囲で出して、私が多めに出す。それでも二人の家よ」


「例えば七対三?」


「創が三?」


「頑張る」


「無理なら二でもいい」


「それは嫌」


 璟瑶が笑う。


「では、実際の家を見てから決めましょう」


「うん」


 ノートには、二人の未来が並んでいた。


 一軒家… 5LDK前後の広いLDK。


 子ども部屋と二つの書斎に大きな浴室。


 庭。


 駐車場。


 高い防犯性。


 本店へ通勤可能で、行員に気づかれにくい場所。


「本当に、家族みたいだね」


「『みたい』じゃなくて、なりたい」


 創が顔を上げる。


「子どもがいても、いなくても、一緒に暮らしたい。昨日、創が言ってくれたでしょう?」


「うん」


「私も同じ」


「なら探そう」


「うん。次の診察まで、ネットで見るだけでも」


「そうしよう」


◇◇◇


 璟瑶は創の肩へ寄りかかった。


「疲れた?」


「少し。でも、まだ創と一緒にいたい」


「ここで休んで」


「うん」


 創は毛布を持ってきた。


 ソファへ横になった璟瑶が、自分のお腹へそっと触れる。


「日本でも陽性だったね」


「うん」


「本当にいるのかな」


「多分、いる。まだ見えないけど、可能性はすごく高い」


「一人かな」


「多分?」


「普通は、そう思うでしょう?」


「うん」


 二人は、まだ知らない。


 一人ではないことを。


 ごく小さな二つの命が、同じ場所で静かに育ち始めている。


 未来の男の子と女の子。


 双子だと分かるのは、もう少し先。


 今、二人が考えている新居には、子ども部屋が一つしかない。


 近いうちに、もう一部屋必要かもしれないと知ることになる。


「次の診察、怖いね」


「うん。でも一緒に行こう」


「絶対?」


「絶対」


 日本でも妊娠反応は陽性。


 ただし、まだごく初期。


 焦らず、決めつけず、一つずつ確認する。


 そして同時に、二人はもう一つの未来を考え始めた。


 一人暮らしの部屋を出て。


 二人が、そして新しい家族が暮らせる家を探すこと。


 まだ二人は、三人で暮らす家を想像している。


 けれど未来に必要となるのは、四人家族の家。


 その事実を知る日は、少しずつ近づいていた。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


日本でも確認された妊娠反応陽性。


それでも、まだごく初期のため、すべてが分かったわけではありません。


「一回の検査で未来まで決めない」


高峰澪奈の言葉どおり、二人はこれから一つずつ確認していきます。


そしてもう一つ。


今回から本格的に始まったのが、新居探し。


子どもがいても、いなくても、一緒に暮らしたい。


その気持ちを確かめた創と璟瑶は、広い浴室や子ども部屋、書斎、防犯性、通勤のしやすさまで考え始めました。


まだ二人は「子ども部屋は一つ」と考えています。


けれど――。


璟瑶のお腹の中には、まだ誰にも知られていない二つの小さな命が育ち始めています。


次回、第54話。


創と璟瑶は、和久と恵美子へ大切な報告をするため、再び宮嶋家を訪れます。


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