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第52話「帰国翌日――頭取は休みます、宮嶋さんはいつも通り出勤します」


第52話です。


中国から帰国した翌日。


創はいつも通り青嶺中央銀行へ出勤し、法人営業第一部で中国出張の報告を行います。


黒瀬と琴葉には、約束していた重慶のお菓子も。


一方、璟瑶は休暇。


頭取不在の重役会議では久世副頭取を中心に通常通り業務が進み、水城と劉川も「頭取をきちんと休ませる」ために予定を調整していきます。


そして夜。


創は一人でB5へ。


しかし、そこに璟瑶の姿はありません。


電話をすると、


「早く家に帰って」


とだけ言われます。


創が自宅へ戻ると――。


合鍵を使って先に来ていた璟瑶が、ソファで静かに眠っていました。


そこから二人は初めて、


「一緒に暮らす家」


について話し始めます。



 日本・東京。


 帰国翌日。


 月曜日、午前六時十二分。


「……日本だ」


 宮嶋創・二十一歳は、見慣れた天井を見上げた。


 昨夜は遅い時間に帰宅し、荷物を最低限だけ片づけ、シャワーを浴びてすぐ眠った。


 身体には中国出張の疲れが残っている。


 それでも今日は通常勤務だ。


 スマートフォンには、璟瑶との昨夜のやり取りが残っていた。


『無事に着いた?』


『着いた』


『明日、仕事でしょう。早く寝て』


『璟瑶も』


『私は休み』


『ずるい』


『頭取命令ではありません。水城さん、お母さん、創の三人に休めと言われた結果です』


『三対一』


『そう』


 創は少し笑う。


 だが、すぐに重慶で告げられた言葉を思い出した。


『妊娠反応は陽性です』


『ただし、まだごく初期です』


「……」


 まだ実感はない。


 自分が父親になるかもしれない。


 そんな大きな可能性を抱えている。


 それでも銀行では、いつもどおりの若手行員だ。


「今日は仕事」


 創は自分へ言い聞かせ、起き上がった。


◇◇◇


 午前七時四十八分。


 青嶺中央銀行本店。


「おはようございます」


 社員証を認証し、ゲートを通過する。


 法人営業第一部のフロアへ入ると、チームリーダーの桐生雅人が顔を上げた。


「宮嶋、帰ってきたな」


「はい。おはようございます」


「中国はどうだった?」


「一言で言うと、情報量が多すぎました」


「いい答えだ」


 指導担当の相沢拓也も声をかける。


「時差ぼけは?」


「中国とは一時間なので、そこは大丈夫です」


「なら問題は疲れだな。今日は報告の整理から始めよう」


「はい」


 佐伯遼が尋ねる。


「初めての中国は?」


「街がすごかったです。上海も、深圳も、重慶も」


「重慶にも行ったのか?」


「出張後、私用で少し滞在しました」


 藤崎美優が楽しそうに聞く。


「辛い料理は?」


「食べました。そして負けました」


「何に?」


「花椒です。舌が完全に痺れました」


 周囲に笑いが広がる。


 いつもの職場の空気だった。


 午前八時二十分。


「宮嶋。十時からチーム内で中国出張の簡易報告を頼む」


「分かりました」


「その前に情報区分を見直せ。現地で知ったことを全部持ち帰ったつもりで話すな」


「はい」


「同行したからといって、頭取級の会議内容を知っている前提でも話さないこと」


 相沢も補足する。


「宮嶋自身が見聞きした範囲だけだ」


「承知しています」


 創は席に着き、報告書を開いた。


 上海での若手実務者との意見交換。


 地域銀行と海外法人支援。


 深圳の工場で見た設備、物流、為替、決済。


 そして最も強く残った言葉。


『海外でも、「確認」は入口である』


 城東支店の三谷から教わった姿勢は、中国でも変わらなかった。


◇◇◇


 午前十時。


 小会議室。


 桐生、相沢、佐伯、藤崎、長谷川直樹、北川玲奈が揃う。


「では、宮嶋。始めて」


「はい。中国出張の若手同行報告を始めます」


 創は資料の一枚目を表示した。


「今回、私が参加したのは頭取級、経営級の会議ではありません。中国現法の若手担当者との意見交換、地域銀行連携、現地企業の視察など、実務側が中心です」


 最初に情報範囲を明確にする。


「一番強く感じたのは、海外法人支援では設備融資だけを見ても足りないということです。為替、物流、現地雇用、決済、親会社、部品供給。複数の要素を同時に見なければ、企業の判断が見えてきません」


 相沢が尋ねる。


「それを全部、宮嶋が判断するのか?」


「いいえ。むしろ逆です。一人で全てに詳しくなる必要はありません。ただ、何が論点なのか、誰へ確認すべきなのかは把握する必要があります」


 桐生が頷く。


「いい。続けて」


「地域銀行との連携についても、青嶺が大きいから全てを引き取るのではなく、地域銀行がお客さまとの関係を維持し、青嶺が海外機能を補完することが重要だと感じました」


「瑞央銀行へ行った時に学んだことと同じか?」


「考え方はつながっています。ただ、海外では為替や物流など、論点が一気に増えます」


 藤崎が笑う。


「宮嶋君、成長したね」


「え?」


「以前は、何でも自分で答えようとしていたでしょう?」


「最近、同期にも同じことを言われました」


「そこは良くなった」


 桐生が続ける。


「分からないと正しく言うことも仕事だからな」


「はい」


 午前十一時十分。


 報告が終わった。


「よく整理できている。ただし、中国を五日間見ただけで分かった気になるな」


「はい」


「それを忘れなければ、今回の経験は十分生きる」


「ありがとうございます」


 創は深く頭を下げた。


◇◇◇


 同じ頃。


 四十階、重役会議室。


 頭取席は空席だった。


 欧陽璟瑶は本日、休暇。


 代わって副頭取・久世宗一郎が会議を進める。


「頭取は休暇中です。通常案件はこの場、または各担当部門の決裁で処理します」


 最初の議題は、中国出張の事後整理だった。


「上海、深圳の予定案件は全て終了しました。頭取判断が必須となる案件は、現時点でありません」


 国際部門担当の陳高明が報告する。


「なら、頭取には送りません。休ませてください」


「承知しました」


 御子柴泰成専務が確認する。


「若手同行者の宮嶋君は、今日は通常勤務?」


「はい。法人営業第一部へ出勤しています」


「体調面の問題は?」


「所属部署から特段の報告はありません」


「出張評価は、国際部門、全国地域銀行連携本部、法人営業第一部の三者で通常どおり処理してください。頭取は個人評価に入れない」


「承知しました」


 水城絢乃は資料を見ながら、黙って聞いていた。


 頭取と宮嶋が恋人だと知っている。


 だが、この会議では必要のない情報だ。


 次は、東央精密製作所の設備投資。


 一億八百万円規模の設備に対し、借入希望は一億円。


「設備導入案と現状維持案、双方を比較中です」


「投資しない場合のリスクだけでなく、現状維持で守れるものも見てください。どちらかへ結論が偏らないよう、同じ基準で比較すること」


「承知しました」


 続いて、デジタル融資システム。


「入力時間は一七%短縮。しかし、差戻し率は二%増加しています」


「速くなることと、良くなることは同じではありません。入力項目、画面遷移、チェック機能を分けて原因を確認しましょう」


「はい」


 最後は若手交流制度。


「次期候補者が四名上がっています。頭取の復帰後、個人名まで確認してもらいますか?」


「その必要はありますか?」


「……ありません」


「なら、頭取が確認するのは制度方針だけ。個人選定は人事と各部門で進めましょう」


 頭取がいなくても、銀行は回る。


 そして頭取は、必要以上に個人の人事へ触れない。


 二人の関係を知った水城には、その姿勢が以前より重要に見えていた。


 会議終了後、久世が水城へ告げる。


「今日は頭取へ連絡しなくていい。緊急案件以外は明日以降だ」


「承知しました」


◇◇◇


 午後一時十分。


 秘書室。


「頭取、昨日の帰国時はかなり疲れていた?」


 劉川景仁が尋ねる。


「はい。休養を優先した方がいいと思います」


「明日は執行会議、海外部門、地域銀行連携が連続している。少し削るか」


「地域銀行連携の資料確認は、久世副頭取、八神さん、瀬戸口さんで一次整理できます。一件減らしたいです」


「頭取は嫌がるだろうな」


「はい。全て出ると言うと思います」


「どうする?」


「秘書判断で減らします」


 劉川が笑う。


「中国出張で強くなったね」


「頭取を止める人が必要だと学びました」


「それは前から知ってる」


 水城も少し笑った。


「でも、今回は随分と頭取の休養を気にするね」


「秘書ですから」


「まあ、そうだね」


 劉川は、それ以上聞かなかった。


 水城が知っているのは、二人の関係と、頭取の体調不良まで。


 妊娠の可能性については、まだ何も知らない。


◇◇◇


 午後零時二十五分。


 二十一階、社員食堂。


「宮嶋!」


「来た」


 黒瀬颯真と水無瀬琴葉が、創を見つける。


「何が来たんだよ」


「お土産」


「俺は人じゃないの?」


「それで、持ってる?」


「持ってる」


「よし」


「何がよし!」


 三人が席に着くと、創は紙袋を差し出した。


「重慶に寄った時に買った」


「桃片?」


「重慶の伝統的な米菓子。甘いお菓子らしい」


「誰に教えてもらったの?」


「美智――」


 創の言葉が止まる。


「美?」


「現地の人に教えてもらった」


「今、美智って言わなかった?」


「言ってない」


「言った」


「聞き間違い」


 琴葉が創をじっと見る。


「宮嶋君、中国に知り合いがいるの?」


「……いる」


「いるの!?」


「知人くらい」


「誰?」


「言わない」


「怪しい」


「仕事とは関係ないから」


「余計に怪しい」


 創が紙袋を引き寄せる。


「お菓子、いらない?」


「いる」


「なら黙って」


「卑怯」


 琴葉は袋を受け取りながら笑う。


「でも、ありがとう。中国はどうだった?」


「広かった」


「小学生みたいな感想」


「真面目に言うと、国内の法人営業より論点が一気に増えた。為替、物流、現地雇用、決済、親会社。全部つながってる」


「難しかった?」


「難しかった」


「でも、前より落ち着いた顔をしてる」


「そう?」


「以前は、分からないことを分からないと言うのが苦手だったでしょう?」


「最近、そればかり言われる」


「良い変化だよ」


 黒瀬が尋ねる。


「もう一度、中国へ行きたい?」


 創の頭に重慶が浮かぶ。


 璟瑶。


 崇岳。


 美智子。


 そして、そこで知った新しい命の可能性。


「行きたい」


「即答だな」


「仕事でも私用でも、また行きたい」


「相当何かあったね」


「何もない」


「顔に出てる」


「最近、それ流行ってる?」


◇◇◇


 午後。


 創は東央精密製作所の案件へ戻った。


「宮嶋、中国出張は終わった。今度は国内案件だ」


「はい」


「投資しない場合、何が守れる?」


 相沢の問いに、創は考えて答える。


「借入増加を抑えられ、短期的な資金繰りを安定させられます。既存設備を使い切る選択肢も残る。新設備への移行時に、生産が止まるリスクも回避できます」


「では、投資しないリスクは?」


「修繕費の増加、故障、部品供給停止、納期や品質への影響です。それに、古い設備が採用や若手の定着へ影響する可能性も確認したいです」


「中国へ行っても、国内案件を忘れてないな」


「はい」


「明日までに二案の比較表を作って」


「分かりました」


 午後五時四十二分。


「お先に失礼します」


「宮嶋、今日は早めに帰れよ。中国帰りなんだから」


「はい」


 創は退勤した。


 しかし、すぐには自宅へ向かわなかった。


◇◇◇


 地下五階。


 二人だけの秘密基地。


 業務資料も顧客情報も持っていない。


 私物だけで、暗証番号を入力する。


『452114』


 認証を終え、室内へ入る。


「璟瑶?」


 返事はない。


 今日は休暇中で、ここへ来る約束もしていなかった。


 創はソファへ座り、スマートフォンを取り出す。


『もしもし』


「今、大丈夫?」


『うん』


「寝てた?」


『少し』


「また?」


『うん』


「体調は?」


『昨日よりは大丈夫』


「本当?」


『本当』


「今、どこ?」


 一瞬、間が空く。


『創は?』


「B5。一人」


『何をしに行ったの?』


「璟瑶がいるかなって」


 電話の向こうで笑う気配がした。


『いないでしょう?』


「いない」


『なら、家へ帰ってきたら?』


「自分の家に?」


『そう』


「どうして、そんな当たり前みたいに……今どこ?」


『内緒』


「絶対怪しい」


『帰れば分かる』


「……すぐ帰る」


『待ってる』


 創が止まる。


「待ってる?」


『気のせい。じゃあね』


「ちょっと――」


 通話が切れた。


「絶対、何かある」


 創は入室からわずか五分でB5を出た。


◇◇◇


 午後六時十九分。


 創のマンション。


 玄関を開けると、見覚えのある女性物の靴が置かれていた。


「まさか……」


 リビングへ向かう。


「璟瑶?」


 ソファには、薄手の部屋着姿の璟瑶が毛布をかけて眠っていた。


「本当にいた」


 テーブルには水と、少し食べたクラッカー。


 薬は置かれていない。


 日本の病院にはまだ行っておらず、今日は予約を取っただけだった。


「璟瑶、起きる?」


「……創?」


「ただいま」


「おかえり」


 璟瑶がゆっくり身体を起こす。


「どうしてここにいるの?」


「合鍵で入った」


「それは分かる。休むなら自分の家じゃないの?」


 璟瑶は少し視線を逸らした。


「創の家へ来たかった」


「どうして?」


「一人でいたくなかった」


 創の胸が詰まる。


「電話してくれればよかったのに」


「仕事中でしょう。邪魔したくなかった」


「休憩中なら出られたよ」


「それでも……」


 創は隣へ座り、体調を確認する。


「吐いた?」


「吐いてない」


「食事は?」


「お粥を少し。水も飲んだ」


「眠気は?」


「かなり」


「病院の予約は?」


「明後日。高峰先生が入れてくれた」


「なら俺も休む」


「仕事は?」


「半休を普通に申請する。一緒に行くって約束したから」


 璟瑶が少し笑った。


「ありがとう」


◇◇◇


 創は改めて自分の部屋を見回した。


 一人暮らしには十分な広さ。


 小さなリビングとキッチン。


 浴室と寝室。


 収納も一人分なら困らない。


「どうしたの?」


「この部屋、狭いなと思って」


「今さら?」


「今までは一人だから、そう思わなかった。でも今日、璟瑶がここで寝てるのを見て……もし本当に赤ちゃんがいたら、この部屋では狭い」


「……うん」


「ベビーベッドを置いたら通れないかも」


「そこまで?」


「収納も足りない。俺の服を減らしても――」


「そういう問題ではないでしょう?」


「では、どうする?」


 璟瑶は少し考えた。


「創。もし本当に赤ちゃんがいたら、一緒に暮らす?」


「……今、何て?」


「創と私。それから、無事に生まれてきてくれたら赤ちゃん。三人で」


 創の胸が強く鳴る。


「暮らしたい。俺も璟瑶と一緒に暮らしたい」


「なら、家を探そうか」


「マンション?」


「一軒家でもいい」


「むしろ一軒家の方がいいかも」


「どうして?」


「頭取の家だと分かりにくい場所がいい。マンションは住民の出入りも多いし、子どもがいたら音も気になる」


「確かに」


「でも、二人とも本店へ通える場所じゃないと」


「本店まで三十分から四十分くらいなら十分ね」


「青嶺の行員が多く住む場所は避けたい」


「頭取と若手行員が同じ家へ入るところを見られたら、説明できないものね」


「水城さんに相談する?」


「まだ早い。まずは二人で考える」


 創は少し笑った。


「何だか楽しい」


「家を探すことが?」


「まだ妊娠が確認できたわけじゃない。でも、赤ちゃんがいなくても、俺は璟瑶と一緒に住みたい」


「……創」


「何?」


「もう一度言って」


「赤ちゃんがいなくても、璟瑶と一緒に暮らしたい」


 璟瑶の目が潤む。


「ずるい」


「何が?」


「今日は泣かせないで」


「最近、よく泣くね。ホルモン?」


「創!」


「冗談!」


 二人は顔を見合わせ、笑った。


「それと、この部屋のお風呂、一人用だよね」


「新しい家には、二人で入れる大きなお風呂が必要ね」


 創の顔が真っ赤になる。


「今、それを言う?」


「重慶で『日本に帰ってから』って言ったでしょう?」


「覚えてるけど!」


「約束よ、創」


「誰のせいで顔が熱いと思ってるの」


「私」


 璟瑶は楽しそうに笑った。


◇◇◇


 夕食は創が作った。


 うどん、卵、少量の野菜。


 香りの強い調味料は使わない。


「食べられる?」


「うん」


「無理なら残して」


「大丈夫」


 璟瑶はゆっくり食べる。


 今日は比較的、箸が進んだ。


「おいしい」


「本当?」


「うん」


「よかった」


 食後、璟瑶は再びソファへ横になる。


 創が毛布をかけた。


「創。今日の仕事はどうだった?」


「いつもどおり。中国出張の報告もした」


「きちんとできた?」


「できた。頭取として褒めてくれる?」


「今は頭取じゃない」


「では、璟瑶として」


 璟瑶は目を閉じたまま答えた。


「お疲れさま」


「ありがとう」


「私も今日は何もしてないけど、疲れた」


「なら寝て」


「うん」


「明後日、病院へ一緒に行こう。それまでは仕事禁止」


「水城さんが、明日の会議も減らすと思う」


「嫌?」


「少し。でも受け入れる」


「珍しく素直」


「最近、みんなに言われる……」


「では、おやすみ」


「まだ八時」


「眠いでしょう?」


「うん」


 数分後、璟瑶は眠りに落ちた。


 創はソファの横へ座り、部屋を見回す。


 一人で暮らすには十分だった部屋が、今日初めて狭く見えた。


 璟瑶が一人増えただけで、そう感じる。


 もし本当に赤ちゃんがいるなら、三人になる。


 寝室。


 収納。


 キッチン。


 浴室。


 今のままでは、どれも足りない。


「……家、探すか」


 住所も予算も、まだ何も決まっていない。


 それでも今日、初めて二人で暮らす未来が言葉になった。


 一人暮らしを終え、二人の家を探す。


 その最初の一歩が始まった。


 そして二人は、まだ知らない。


 もし新しい家族が増えるなら、三人ではないことを。


 璟瑶のお腹の中では、一つではなく、二つの小さな命が静かに育ち始めている。


 未来の男の子と女の子。


 無事に成長すれば、必要なのは三人の家ではない。


 創。


 璟瑶。


 そして双子。


 四人家族が暮らす家になる。


 その事実を知る日は、もうすぐそこまで近づいていた。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、創が通常勤務へ戻る一方で、璟瑶はしっかり休む一日となりました。


頭取がいなくても、青嶺中央銀行は久世副頭取や各役員を中心に通常通り動いていきます。


そして水城と劉川も、璟瑶の予定を少しずつ減らす方向へ。


夜。


B5ですれ違った二人でしたが、創の家へ帰ると、そこには璟瑶の姿がありました。


「一人でいたくなかった」


その一言から、二人はこれからの生活について考え始めます。


もし本当に赤ちゃんがいるなら。


いや、赤ちゃんがいなくても。


「一緒に暮らしたい」


そうして初めて、新しい家を探す話が現実になりました。


二人はまだ知りません。


必要になるのは三人で暮らす家ではなく――四人で暮らす家になるかもしれないことを。


次回、第53話。


日本でもう一度、妊娠の可能性を確認します。


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