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第39話「元同僚だからこそ難しい――二つの銀行の情報を混ぜてはいけない」


第39話です。


派遣四日目。


今回は、創にとって最も難しい一日になります。


昔から知っている企業。

元上司。

元後輩。

そして、現在所属する青嶺中央銀行。


知っているからこそ、話してはいけないことがある。


「それは東都共栄銀行在籍時に知った情報です」


創は、自分からはっきり線を引きます。


逆に青嶺中央銀行の内部情報について聞かれても、親しい相手だからと答えることはありません。


前職派遣だからこそ問われる、守秘義務と情報管理。


一方その頃。


璟瑶も重役会議、頭取室での決裁、各部署からの電話対応に追われていました。


そして夜。


地下五階の秘密基地で一人、明日で派遣を終える創のことを考えながら――。


璟瑶の中に、新しい考えが浮かび始めます。


「創を、中国へ連れて行こうかな……」


第39話です。



 火曜日。


 三谷雅臣との法人同行。


 松岡海斗が今も使い続けていた『業務確認メモ』。


 そして、その松岡が四人の後輩を教える先輩になっていたこと。


 城東支店での二日間は、宮嶋創にとって懐かしさだけではなく、自分がいなかった時間と、自分自身の変化を知る時間になった。


 翌日の水曜日。


 派遣三日目。


 創は、現在の城東支店における内部運営を学んだ。


 預金、個人営業、法人営業、融資稟議、若手育成、店内会議、業務改善。


 以前とは、端末も帳票も事務手順も変わっている。


『昔はこうだった』


 ではなく。


『今はどうなっているのか』


 を見る。


 それが、今回の派遣で創が自分へ課したルールだった。


 ◇◇◇


 木曜日。


 午前八時三分。


 派遣四日目。


「おはようございます」


「おはよう、宮嶋」


 創は派遣者専用端末を起動した。


 使用できるのは、東都共栄銀行から付与された限定IDだけ。


 以前使っていた行員番号、共有フォルダ、内部権限にはアクセスできない。


 そして、創自身も使おうとは思っていなかった。


「宮嶋先輩」


 松岡が少し寂しそうに声をかける。


「明日で最後なんですよね」


「そうだね」


「早いです。あと一週間くらいいてもいいのに」


「それだと普通の異動になるだろ。俺は青嶺の行員だから」


「分かってます。でも、久しぶりに先輩がいる感じがして、懐かしかったです」


 創は笑った。


「まだ明日までいる。今日は今日で、ちゃんと仕事」


「はい!」


 そこへ三谷が来る。


「宮嶋。九時から法人営業ミーティングだ」


「確認しています」


「今日は少し難しい話になる」


「……分かりました」


 ◇◇◇


 午前九時。


 法人営業ミーティング。


 神崎隆之支店長。


 牧野浩明副支店長。


 倉持俊介融資営業課長。


 三谷雅臣と法人営業担当者数名。


 派遣者である創は、閲覧を許可された範囲内で参加していた。


「次、南条電装株式会社」


 倉持が企業名を読み上げた瞬間、創の視線が止まった。


 南条電装株式会社。


 自動車や産業機械向けの電装部品を製造する、地元の老舗企業。


 創が東都共栄銀行にいた頃、三谷に何度か同行し、途中から担当補助も務めた先だった。


 社長の考え。


 取引経緯。


 過去の融資。


 そして、家族と事業承継の事情。


 今も覚えていることがある。


「現在、事業承継と設備更新を並行して検討中です」


 三谷が説明する。


「現社長は六十二歳。後継候補は三十五歳の長男」


「宮嶋」


 倉持が創を見る。


「ここには昔、お前も行っていたよな」


「はい。訪問したことは覚えています」


「当時、社長が後継者について何か話していなかったか?」


「……」


 記憶はあった。


 しかし、それは東都共栄銀行員だったから聞けた情報だ。


 今の創は、青嶺中央銀行から来た派遣者である。


「倉持課長」


「うん」


「それについては、東都共栄銀行在籍時に職務上知った情報です」


 会議室が静かになる。


「今の俺は、青嶺中央銀行から派遣されている立場です。昔聞いた内容を、現在の案件の材料として俺から話すのは避けるべきだと思います」


 倉持は黙って創を見る。


「必要であれば、現在の担当者が現在の情報として、改めて社長へ確認するべきです」


 数秒後、三谷が小さく頷いた。


「そうだな」


 倉持も息を吐く。


「悪かった。俺も、昔のお前がここにいる感覚になった」


「俺自身も気をつけないと、昔の記憶が自然に出てきます」


 神崎が全員へ告げる。


「そこが、宮嶋さんを元勤務店へ受け入れた意味であり、最大のリスクでもある」


 知っていることと、使っていいことは同じではない。


「これは宮嶋さんだけの問題ではない。こちら側も、昔の同僚だから何でも聞いていいという空気を作らないこと」


「はい」


 会議は再開された。


 創の胸には、重い緊張が残った。


 知らない情報なら、聞かなければ分からない。


 しかし前職の情報は、記憶の中に残っている。


 だからこそ、自分自身で止めなければならなかった。


 ◇◇◇


 午前十時二十分。


 会議終了後、三谷が創を呼び止めた。


「さっきは、よく止めた」


「正直に言えば、内容は覚えていました」


「だろうな。だからこそ、言わなかった。それでいい」


 三谷は静かに続ける。


「昔、俺がお前に教えたことを覚えているか?」


「確認ですか?」


「それもある。だが、顧客から聞いたことは、銀行員だから聞けたことだ。自分の情報だと思うな」


「……覚えています」


「銀行を辞めても、守秘義務は消えない。だから持ち出さない」


「はい」


「今日のお前は、それを守った」


「ありがとうございます」


 三谷は少しだけ表情を引き締めた。


「ただ、午後は逆のことが起きるかもしれないぞ」


「逆?」


「青嶺中央銀行の情報を、こちらから聞かれることだ」


 創は小さく息を呑んだ。


 ◇◇◇


 午後零時十分。


 支店内の休憩スペース。


 創は三谷、松岡、佐伯美咲、小野寺奈緒と昼食を取っていた。


「青嶺の本店って、本当に四十二階まであるの?」


 佐伯が尋ねる。


「あります」


「毎日四十二階へ行く?」


「行きません」


「頭取室は見た?」


「……あります」


「あるんだ!」


 小野寺が身を乗り出した。


「欧陽頭取には会ったことある?」


「あります」


「どんな人?」


 創の脳裏に、昨夜の璟瑶が浮かぶ。


『創、抱き締めて』


 すぐに消す。


「仕事では厳しい方だと思います」


「実際、怖い?」


「仕事の場では緊張します」


 三谷が眉を上げた。


「何だ、その妙な言い方は」


「普通でしょう!」


 松岡も興味津々で尋ねる。


「青嶺の頭取と普通に会話するんですか?」


「業務上必要なら話すよ」


「すげえ……」


「すごくない」


 何気ない雑談が続く。


 やがて佐伯が言った。


「青嶺って最近、設備投資案件に積極的なんでしょう?」


「……」


「取引先から、青嶺にも提案を受けている会社があると聞いたんだけど」


 空気がわずかに変わる。


「例えば、どのくらいの規模の案件なら本店で積極的に取りに行くの?」


 創は箸を置いた。


「佐伯さん。それは答えられません」


「あ……ごめん」


「一般論として、設備投資では返済力、事業性、投資効果、投資しない場合のリスクなどを確認します」


「うん」


「でも、青嶺中央銀行内部の営業方針、案件選別、与信判断基準、現在扱っている個別案件については話せません」


「そうだよね。宮嶋君が謝ることじゃない」


 三谷も頷いた。


「今のは、俺たちも気をつけるべきだ。元同僚だから、つい普通に聞いてしまう」


 松岡が少し寂しそうに尋ねる。


「じゃあ、俺が『今どんな案件を担当してますか』って聞いても、答えてくれないんですか?」


「松岡にも答えない」


「三谷さんにも?」


「答えない」


「……少し寂しいです。昔、先輩は何でも教えてくれたから」


 創は穏やかに笑った。


「仕事の進め方、確認の考え方、顧客対応、勉強方法。俺が経験して感じたことなら、話せる範囲で話すよ」


「はい」


「でも、顧客の秘密と銀行の秘密は話さない。それも銀行員の仕事だから」


「……はい」


 三谷が松岡へ言う。


「そこは宮嶋から学べ」


「はい」


「三谷さん、今、俺のこと褒めました?」


「松岡に言った」


「俺も入ってるでしょう!」


 ◇◇◇


 午後一時三十分。


 応接室。


 相互派遣実証の中間確認のため、東都共栄銀行本店からコンプライアンス統括部の久我山由梨・三十九歳が来訪した。


 法人情報管理を担当する調査役である。


 同席者は牧野、倉持、三谷、そして創。


「宮嶋さん。派遣四日目までに、旧勤務時代の顧客と接点はありましたか?」


「会議で話題に出ました」


「どう対応しました?」


 創は南条電装の件を説明した。


「過去の後継者に関する話を覚えているか尋ねられました。内容は覚えていましたが、在籍時に職務上知った情報なので、現在の派遣者として提供すべきではないと判断しました」


「適切です。逆の事例は?」


「青嶺中央銀行の設備投資案件への姿勢や、案件選別について聞かれました」


「答えましたか?」


「公開されている一般論を超える内部方針や、個別案件については答えていません」


「元上司でも?」


「答えません」


「元後輩でも?」


「答えません」


「親しかった行員でも?」


「答えません」


 隣で三谷がわずかに笑う。


「何ですか?」


「何でもない」


 久我山は真剣な表情を崩さなかった。


「今回の派遣で最も重要な点です。情報漏えいは、悪意だけで起きるものではありません」


 懐かしい。


 仲がいい。


 昔から知っている。


 この程度なら構わない。


「そうした善意や油断の方が、危険な場合もあります」


「はい」


「昔知った情報を、自分の所有物だと思わない。現在の銀行の情報を、昔の仲間への土産にしない」


 久我山は創をまっすぐ見る。


「その境界を、最後まで守ってください」


「分かりました」


「現時点での評価は良好です」


「ありがとうございます」


「ただし、最終日が最も緩みやすい」


 昔話。


 送別。


 昼食。


 終業後の会話。


「最後だからこそ、気をつけてください」


「はい」


 ◇◇◇


 午後二時十五分。


 確認終了後。


「疲れたか?」


 三谷に聞かれ、創は正直に頷いた。


「かなり。今日は法人営業より、情報管理の方が疲れます」


「だろうな」


「でも、今回の派遣では一番大事かもしれません」


「そうだ」


 銀行は、信用で仕事をしている。


 一つ境界を間違えれば、青嶺中央銀行だけではなく、東都共栄銀行にも迷惑がかかる。


「三谷さん」


「何だ?」


「今日、銀行員になってから一番難しい日かもしれません」


 三谷は静かに答えた。


「その感覚を覚えておけ」


「……」


「難しいと思えているうちは、まだ確認できる」


 そして。


「簡単だと思い始めた時が、一番危ない」


「……はい」


 ◇◇◇


 同じ木曜日。


 午前八時四十五分。


 青嶺中央銀行本店、四十階。


 欧陽璟瑶は、十二人の役員を前に重役会議を進めていた。


 国内法人営業。


 海外信用集中。


 若手相互派遣。


 デジタル金融。


 地域製造業四社の設備投資案件では、総額約三百四十億円のうち、青嶺中央銀行が百十二億円を負担する計画だった。


「地域銀行が主幹事ではない二件について、青嶺が主導する理由は?」


「海外調達、為替、大型設備の三点で、当行に専門性があります」


「それなら構いません。ただし、『地域企業だから支える』という言葉で返済力を曖昧にしないでください」


「承知しました」


 海外信用集中では、中国華東地区への追加融資を急がず、協調先の追加を優先する。


「集中リスクは一案件ではなく、地域全体で見てください」


「はい」


 やがて、若手相互派遣の報告へ移る。


「東都共栄銀行への派遣は、本日四日目です」


 御子柴専務が説明する。


「問題は?」


「現時点ではありません。本日、東都共栄側のコンプライアンス担当者が中間確認を行います」


「個人評価は通常ラインで処理してください。私へ個別に上げる必要はありません」


「承知しました」


 恋人としては、創の様子が気になる。


 しかし頭取として、特別に聞かない。


 調べない。


 報告を上げさせない。


 それが二人の守る境界だった。


 ◇◇◇


 会議後も、璟瑶のもとには次々と判断が持ち込まれた。


 融資審査第一部からは、設備投資案件における追加担保の相談。


「私へ答えを求める前に、審査部としての結論を出してください」


『承知しました』


「担保なし、一部担保、追加担保。三つのケースで返済余力と回収リスクを比較し、そのうえで審査部の判断をください」


 全国地域銀行連携本部からは、瑞央銀行との第二回若手交流の打診。


「今度は瑞央銀行の若手を青嶺本店へ受け入れたいと考えています」


「候補者は?」


『三名です』


「適正な受入人数は?」


『現時点では二名です』


「なら、無理に三人にしないでください。人数の多さが交流の成功ではありません」


 さらに、瑞央銀行側が何を学びたいのかを先に確認するよう指示した。


「青嶺が見せたい部署へ、一方的に当てはめないでください」


 金融犯罪対策部からは、海外送金モニタリングの誤検知率が四・六%から三・八%へ改善したとの報告。


「検知件数が減っただけで、良くなったとは言えません。見逃しがないか確認してください」


『はい』


「正常な取引を、正しく正常と判断することも金融犯罪対策です」


 午後には、ベトナム現地法人の非常用電源案が届いた。


 外部電源車契約。


 自家発電設備の増設。


 蓄電池の併用。


「工場停止による損失も含めましたか?」


『設備費を中心に比較しています』


「それでは比較になりません。安い設備と高い設備ではなく、操業停止を含めた総コストで出し直してください」


『承知しました』


 午後五時二十分。


 ようやく電話が止まる。


 しかし、決裁は十一件残っていた。


「頭取、コーヒーをお持ちしますか?」


「お願いします」


 ほんの一瞬だけ背もたれへ身体を預け、すぐに次の資料を開く。


「これは承認。こちらは差し戻しです」


「理由は?」


「人員削減額しか出ていません。顧客への影響も確認してください」


「こちらは地域銀行への出資案件です」


「地域側の取締役会は?」


「来週です」


「なら、青嶺だけで先に決めない。待ちましょう」


 午後六時四十八分。


「本日の決裁は以上です」


「お疲れさまでした」


「頭取、夕食は?」


 璟瑶は時計を見る。


「今日は少しだけ、地下へ行きます」


「承知しました」


 秘書たちは理由を聞かなかった。


 ◇◇◇


 午後七時十分。


 地下五階。


 六桁の暗証番号。


 452114。


 認証を終え、璟瑶は秘密基地へ入った。


「……」


 創はまだいない。


 派遣四日目を終え、支店内で報告をしている頃だろう。


 璟瑶はジャケットを脱ぎ、ソファへ座った。


「……疲れた」


 一人で口にする。


 テーブルには二つのマグカップ。


 創がいないと、この部屋は少し広く感じる。


「明日で終わりね」


 金曜日は派遣最終日。


 頭取として個別評価を聞くつもりはない。


 恋人として案件の詳細を尋ねるつもりもない。


 ただ、帰ってきた創に。


「お疲れさま」


 そう言って、抱き締めたかった。


 璟瑶は私用スマートフォンを取り出し、一枚の写真を開いた。


 重慶の夜景。


 以前、母の欧陽美智子から送られてきたものだった。


 重慶には、父・欧陽崇岳と母・美智子が暮らしている。


 二人はまだ、創の存在を知らない。


 もっとも、美智子にはかなり疑われていた。


『今度帰る時は、一人で帰ってくるの?』


「……」


 璟瑶は小さく笑う。


 創の家族には会った。


 父の和久も、母の恵美子も、少しずつ受け入れ始めてくれた。


 恵美子とは二人でカフェへ行き、スーパーまで歩いた。


『璟瑶さん』


 そう呼んでくれた。


 ならば次は、自分の家族。


「創を連れていこうかな……」


 元青嶺中央銀行頭取の父、欧陽崇岳・七十二歳。


 日本人の母、欧陽美智子・六十八歳。


 その二人へ、二十一歳の恋人を紹介する。


『お父さん、お母さん。紹介したい人がいるの』


『宮嶋創。二十一歳です』


「……無理かも」


 想像しただけで、顔を覆いたくなる。


 母は間違いなく、あらゆることを聞くだろう。


 父も、簡単には黙っていない。


 それでも。


 創だから会わせたい。


 二十四歳年下の日本人銀行員を、なぜ好きになったのか。


 両親にも、創自身を見てほしい。


「派遣が終わったら、聞いてみよう」


『創。今度、私と中国へ行かない?』


 ただし、今はまだ言わない。


 明日の最終日。


 創が城東支店での役目を最後まで終えてから。


 ◇◇◇


 その時、スマートフォンが震えた。


 創からだった。


『今日終わった』


『お疲れさま』


『かなり疲れた』


『仕事?』


『うん。今日は銀行員として一番難しい日だったかも』


 璟瑶の指が止まる。


 何があったのか聞きたい。


 しかし、それは聞かない。


『案件内容は言わなくていい』


『うん』


『昔の銀行と今の銀行の線引きって、難しいと改めて思った』


『それに気づけたなら、それも派遣の成果だと思う』


『頭取評価?』


 璟瑶は少し笑った。


『今は彼女評価』


『何点?』


『明日、無事に終わったら百点』


『今日は九十九点?』


『今日は疲れてるから百一点』


『増えた』


『特別扱い』


『銀行では禁止』


『これは彼女として』


『なら受け取ります』


 そして、最後に送る。


『明日、最後まで気をつけて』


『分かってる。終わったら連絡する』


『待ってる』


 中国のことは、まだ打たない。


 明日。


 派遣最終日。


 創が、最後まで青嶺中央銀行員として城東支店でやり遂げた後に話す。


 創の家族に会った。


 今度は、自分の故郷。


 重慶にいる両親へ会ってほしい。


「……創」


 誰もいない秘密基地で、璟瑶は小さく恋人の名前を呼んだ。


 宮嶋創・二十一歳。


 派遣四日目。


 昔の顧客。


 かつての上司と後輩。


 そして、今所属する青嶺中央銀行。


 二つの銀行の間にある、最も難しい境界を守った。


 明日はいよいよ最終日。


 成果報告。


 そして、城東支店との二度目の別れ。


 その扉を出る時、創は何を感じるのか。


 さらに派遣を終え、青嶺中央銀行へ戻った後。


 璟瑶から、新しい言葉が待っている。


『創。今度……私と中国へ行かない?』


 そのことを、創はまだ知らない。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、創が二つの銀行の間にある「情報の線」を守る重要な回となりました。


昔知った情報は、今の自分が自由に使える情報ではない。


そして青嶺中央銀行で知ったことも、昔の仲間だからという理由で話していいわけではない。


三谷や松岡が相手でも、その線引きは同じです。


コンプライアンス担当からも、


「前職派遣だからこそ、今の姿勢が重要です」


と評価されました。


一方、璟瑶は朝から重役会議、部署との電話、重要案件の決裁まで頭取業務に追われる一日。


それでも夜、地下五階で一人になると考えるのは創のことでした。


明日は、城東支店への派遣最終日。


そしてその先には――重慶。


創の家族へ自分を紹介した璟瑶が、今度は自分の両親へ創を紹介したいと考え始めます。


ただし、その話はまだ創には秘密。


まずは最終日を無事に終えること。


第40話へ続きます。


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