第28話「派遣最終日――『また来てください、宮嶋さん』」
第28話です。
今回は、創の最初の地域銀行派遣がついに終了します。
瑞央銀行で過ごした五日間。
地域企業との距離。
設備投資。
数字の確認。
地域ごとの事情。
そして、青嶺中央銀行と地域銀行が対等に連携する意味。
創は最後の成果報告で、自分がこの派遣で何を学んだのかを自分の言葉で伝えます。
そして、
「また来てください、宮嶋さん」
という言葉とともに、瑞央銀行の仲間たちに見送られて東京へ。
一方、東京では璟瑶も頭取として通常業務をこなしながら、秘書たちと予定や決裁を確認。
帰京中の創とは、ようやく恋人として電話を交わします。
ですが、その電話を終えて約三十分後。
創の私用スマートフォンに、思いがけない通知が。
それは、前職・東都共栄銀行時代の同期八十人が参加するグループチャットでした。
「久しぶりに会わないか?」
「できれば八十人全員で飯でも行こう」
青嶺中央銀行へ転職したことすら最近知った同期も多い中、創の昔の仲間たちとの新しい再会が動き始めます。
地方派遣の終わりと、新たな人間関係の始まり。
第28話をお楽しみください。
地域銀行合同プロジェクト第一陣。
瑞央銀行へ派遣されて五営業日。
その本当の最終日。
午後四時十分。
宮嶋創は、十五分間の成果報告資料を手に会議室の前へ立っていた。
一日目は、地域金融の仕組み。
二日目は、地域企業との距離。
三日目は、設備投資と、投資しないリスク。
四日目は、六百万円の差異から学んだ確認の重要性。
五日目は、瑞央銀行と青嶺中央銀行による対等な共同支援。
たった五日間。
しかし、ここへ来た時と今とでは、創の見方は明らかに変わっていた。
「……よし」
「緊張してる?」
声をかけたのは、藤堂蓮・二十三歳だった。
「めちゃくちゃしてる」
「五日間ずっと緊張してたな」
「最後の成果報告だぞ。緊張するだろ」
「確認魔らしい」
「それは否定できない」
「素直になったな」
「五日で俺を分かったように言うな」
そこへ小野寺修平・三十四歳が来た。
「二人とも、そろそろ入るぞ」
「はい!」
二人の返事が重なった。
◇◇◇
午後四時十五分。
成果報告会。
出席者は、瑞央銀行頭取の鷹取隆臣・五十八歳、副頭取の榊田隆彦・五十五歳、専務取締役の高岡征一・五十三歳、常務取締役の西条真理子・五十歳、取締役兼法人営業部長の伏見浩平・四十八歳。
現地担当者として、宮坂隆司・四十四歳、小野寺修平・三十四歳、白石結衣・二十八歳、藤堂蓮・二十三歳。
そして、青嶺中央銀行から派遣された宮嶋創・二十一歳。
「それでは、宮嶋さんから成果報告をお願いします」
「はい」
創は立ち上がり、一礼した。
「青嶺中央銀行法人営業第一部の宮嶋創です。五日間、瑞央銀行の皆様には大変お世話になりました」
最初の画面には、『五日間で学んだこと』と表示されていた。
「派遣前の俺は――失礼しました。派遣前の私は」
小さな笑いが起きる。
「青嶺中央銀行本店のシステムや専門部署、分析方法を活用すれば、地域銀行の仕事をさらに良くできるのではないかと、無意識に考えていたと思います」
教えに来たつもりではなかった。
しかし心のどこかで、規模の大きな青嶺中央銀行の方法を基準にしていた。
「ですが、その考えは五日間で変わりました」
画面が『地域銀行の強み』へ切り替わる。
「瑞央銀行には、青嶺中央銀行が簡単には持てないものがあります。地域企業との長年の関係です」
経営者だけではない。
従業員。
後継者。
主要取引先。
地域の雇用。
土地や道路。
町の変化。
瑞央銀行の法人担当者は、企業の外側まで見ていた。
「北条食品では、会社の在庫や販路だけでなく、倉庫候補地周辺の道路事情まで把握していました」
「小野寺君、また道路か」
高岡専務に言われ、小野寺が苦笑する。
「仕事です!」
続いて創は、食品会社の売上増加が物流会社の仕事を増やし、その物流会社が地域の人手不足に悩んでいたことを説明した。
「一つの企業だけを見ても、地域企業を見たことにはならない。企業は、取引、物流、雇用を通じて町全体とつながっていると知りました」
次の画面は、『数字と現場』。
「設備投資案件では、利益率の低下、既存借入、追加投資といった数字だけを見れば、慎重にならざるを得ませんでした」
だが、工場へ行くと別の事情が見えた。
老朽設備の故障。
修理部品の供給終了。
熟練者の退職。
若手採用の難しさ。
技能承継。
「借入を増やすリスクだけでなく、必要な投資をしないリスクもある。それは東京で資料だけを見ていた時には、十分に考えられていなかった視点です」
続いて、『確認』。
「最新見積書と銀行内部資料の間に、六百万円の差異を確認しました。追加された付帯工事が、資金計画へ反映されていなかったことが原因です」
東都共栄銀行時代から教えられてきた確認の基本。
銀行や地域が変わっても、その大切さは変わらない。
「一方で、確認は多ければ多いほどよいわけではないとも学びました」
何を知りたいのかも考えず、資料を大量に要求すれば、顧客の負担になる。
必要な確認を省かない。
しかし、確認そのものを目的にしない。
「そして、最後に学んだのが、瑞央銀行と青嶺中央銀行の関係です」
創は役員たちを見渡した。
「青嶺中央銀行が上で、瑞央銀行が下なのではありません」
瑞央銀行は地域と企業を知っている。
青嶺中央銀行は、大型資金、海外金融、外国為替、専門部署、全国と世界へ広がるネットワークを持っている。
「違う強みを対等に組み合わせる。それが地域銀行合同プロジェクトなのだと、ようやく理解しました」
五日間で地域金融を理解できたとは思わない。
むしろ、分からないことは増えた。
「ただ、東京にいた時よりも、見るべき場所は増えました」
企業の数字。
そこで働く人。
取引先。
町。
地域。
そして、それぞれの銀行が持つ強みと限界。
「青嶺中央銀行へ戻った後も、今回学んだことを法人営業で生かしていきます。五日間、本当にありがとうございました」
創は深く頭を下げた。
数秒の静寂。
やがて、会議室を大きな拍手が包んだ。
◇◇◇
「宮嶋さん」
「はい」
鷹取頭取が穏やかに語りかける。
「あなたの報告で、一番嬉しかった言葉があります」
「どの言葉でしょうか」
「分からないことが増えた、という言葉です」
「……」
「五日間で地域金融を理解したような顔をされたら、どうしようかと思っていました」
「すみません」
「謝るところではありません」
会議室に笑いが起きる。
「宮嶋さん。また瑞央銀行へ来てください」
創は一瞬、言葉を失った。
「……はい」
「次は派遣行員ではなく、青嶺中央銀行の担当者として、一緒に案件を担当するかもしれません。その時も、この五日間を覚えていてください」
「必ず覚えておきます」
榊田副頭取も続ける。
「次に来た時は、青嶺中央銀行で学んだことを一つ、私たちにも教えてください」
「はい。今度は、お互いに」
「その通りです」
◇◇◇
午後五時十五分。
創は派遣中に使った机を整理していた。
「忘れ物は?」
白石が尋ねる。
「三回確認しました」
「さすが確認魔」
「白石さんまで言うんですか?」
「名刺、社員証、社給端末、充電器、私物は?」
「全部あります」
藤堂が口を挟む。
「彼女へのお土産は?」
「それ、仕事と関係ある?」
「忘れてない?」
「買ったよ!」
「何を?」
「秘密」
「かなり年上の彼女向け?」
「そこを掘るな!」
創は前日、駅前で二種類の地元銘菓を購入していた。
一つは家族へ。
もう一つは璟瑶へ。
地下五階の秘密基地で、二人で食べるつもりだった。
宮坂からは、本人用の簡易評価書を渡された。
『確認力 高』
『顧客対応 良好』
『協調性 良好』
『地域金融への理解 派遣期間中に向上』
『課題 大手銀行の方法を先行して考える傾向あり。ただし、指摘後の理解と修正が早い』
「かなり正直に書かれてますね」
「評価書だからね」
「もう少し褒めてもよくないですか?」
小野寺が笑う。
「調子に乗るから駄目」
「厳しい!」
「でも、最後の方は良かったですよ」
白石が微笑む。
「最初より」
「そこを強調しないでください」
「最初は、何でも資料を求めそうだったな」
藤堂まで加わる。
「そこまでは言ってない!」
「言いそうだった」
「……否定しづらい」
最後まで、笑いの絶えない職場だった。
◇◇◇
午後五時四十分。
瑞央銀行本店一階。
法人営業部の行員たちが、キャリーケースを持った創を見送りに来ていた。
「今度来た時は、カフェを案内します」
白石が言う。
「カフェ巡りが趣味でしたよね」
「覚えていたんですね」
「確認しましたから」
「そこにも確認を使うんですか?」
小野寺とは固く握手を交わした。
「五日間、お疲れ」
「ありがとうございました」
「青嶺へ戻っても、何でも東京基準で考えるなよ」
「はい」
「でも、青嶺中央銀行にしかできないことが必要になった時は、ちゃんと持ってきてくれ」
「分かりました」
「また一緒に仕事をしよう」
「はい」
藤堂とも握手する。
「次はいつ来る?」
「俺が決められるの?」
「来月」
「早すぎる」
「じゃあ再来月」
「そういう問題じゃない」
「連絡できる範囲で、また話そう」
「もちろん。ただし顧客情報はなし」
「分かってる」
「東京へ行ったら、青嶺中央銀行を案内してくれよ」
「入れる場所だけな」
「四十二階は?」
「無理」
「頭取室は?」
「もっと無理」
「地下五階は?」
「ぶっ!」
創の心臓が止まりかけた。
「何?」
「な、何でもない!」
「地下五階には何があるの?」
「設備とか!」
「本店勤務なのに知らないの?」
「知らない!」
地下五階には、頭取と自分だけの秘密基地がある。
そんなことは、絶対に言えない。
「宮嶋君、急に怪しいぞ」
「怪しくありません!」
午後五時五十分。
創は最後に深く頭を下げた。
「五日間、本当にありがとうございました」
「また来てください」
宮坂が言う。
「はい。必ず」
瑞央銀行本店の外へ出た創は、一度だけ振り返った。
五日前。
青嶺中央銀行より小さい銀行。
システムも設備も違う銀行。
最初は、そのように見ていた。
しかし今は違う。
「……すごい銀行だったな」
銀行の価値は、建物や総資産だけでは決まらない。
地域に必要とされ、企業と何十年も向き合ってきた瑞央銀行には、数字だけでは測れない強さがあった。
◇◇◇
午後六時三十五分。
創は新幹線の指定席へ座った。
向かう先は東京。
青嶺中央銀行。
そして、璟瑶のいる場所。
『今出た』
創は短いメッセージを送った。
その頃、璟瑶は四十二階の頭取室で、最後の決裁を続けていた。
第一秘書の劉川景仁・三十八歳が来週の予定を調整し、第二秘書の水城絢乃・三十一歳が瑞央銀行への派遣終了を報告する。
「重大事故は?」
「ありません」
「情報管理上の問題は?」
「ありません」
「現地評価は?」
「正式版は後日です。派遣者は現在、帰京中です」
「分かりました」
璟瑶はそれ以上、創について尋ねなかった。
仕事中は、頭取と一行員。
その境界を守る。
秘書二人の退室後、璟瑶はようやく私用スマートフォンを開いた。
『お疲れさま。ちゃんと終わった?』
『終わった。今、新幹線』
『どうだった?』
『来てよかった』
短い言葉だった。
それでも璟瑶には十分だった。
◇◇◇
午後七時二十分。
二人は電話をつないだ。
「お疲れさま、創」
『お疲れ』
「五日間、頑張った?」
『頑張った』
「自分で言う?」
『聞いたのは璟瑶だろ』
「そうだった」
創は、顧客名や具体的な案件情報を伏せながら、一般的な学びだけを話した。
会社だけではなく、地域を見ること。
青嶺中央銀行の方法を押しつけないこと。
確認には、必要な確認と、増やすだけの確認があること。
地域銀行と大手銀行は、上下関係ではないこと。
「それを自分の目で見てきたなら、今回の派遣は成功ね」
『頭取評価?』
「半分は」
『残りは?』
「彼女評価」
『何点?』
「無事に帰ってきているから百点」
『珍しく満点』
「まだ東京に着いていないから九十八点」
『減った!』
「残り二点は、私のところへ帰ってきたら」
創の声が柔らかくなる。
『明日、地下五階へ行こう』
「うん」
『お土産もある』
「何?」
『明日まで秘密』
「頭取命令」
『私用で権限を使わない』
「では、彼女からのお願い」
『それでも駄目』
「けち」
『楽しみにしてて』
短い沈黙のあと、璟瑶が言った。
「創、おかえり」
『まだ東京じゃないよ』
「先に言っただけ」
『じゃあ、ただいま。璟瑶』
「明日は五日分、抱き締めるから」
『何分?』
「三十分」
『長い!』
「では一時間」
『増やすな!』
「キスもする」
『……それは明日』
「逃げた」
『新幹線の中だから!』
璟瑶が楽しそうに笑う。
「東京へ着いたら連絡してね」
『分かった』
「本当にお疲れさま、創」
『ありがとう、璟瑶』
通話を終えた創は、流れる夜景を見ながら目を閉じた。
まだ移動中なのに、不思議と帰ってきたような安心感があった。
◇◇◇
午後八時十六分。
創のスマートフォンへ、大量の通知が届いた。
「何だ?」
表示されたのは、懐かしいグループチャットだった。
『東都共栄銀行 入行同期八十人』
創が十八歳で東都共栄銀行へ入行した年。
高卒、専門卒、大卒を合わせ、男性四十人、女性四十人の計八十人が採用された。
研修終了後は本店や各支店へ分かれたが、チャットグループだけは残っていた。
創も退職後に抜けてはいなかったものの、長い間開いていなかった。
「……懐かしいな」
創は久しぶりに同期名簿を開いた。
男性同期四十人
1. 宮嶋創・二十一歳。旧城東支店融資営業課、現在は青嶺中央銀行法人営業第一部。慎重で責任感が強く、数字の不一致を見逃さない。趣味は映画鑑賞と街歩き。
2. 佐久間直樹・二十二歳。新宿中央支店法人営業課。明るく行動力があり、同期会を企画する中心人物。趣味はフットサルと焼肉店巡り。
3. 早川健吾・二十二歳。池袋支店融資営業課。冷静で聞き上手な調整役。趣味は野球観戦とラジオ。
4. 石黒翔太・二十一歳。渋谷支店個人営業課。人懐っこく、年上の顧客にも臆せず話せる。趣味はスニーカー収集と音楽鑑賞。
5. 矢島陸斗・二十二歳。品川法人営業部法人営業第二課。競争心が強く、目標達成へ粘る営業型。趣味は筋力トレーニング。
6. 森谷和真・二十三歳。東京駅前支店融資営業課。最年長組の一人で、穏やかなまとめ役。趣味は料理と温泉旅行。
7. 安西蓮司・二十二歳。上野支店法人営業課。社交的で人の顔を覚えるのが早い。趣味は鉄道旅行。
8. 坂口悠人・二十一歳。浅草支店営業推進課。発想が柔軟で、若者向け企画を得意とする。趣味は動画編集。
9. 大野晴希・二十二歳。葛西支店個人営業課。優しく、困っている顧客を放っておけない。趣味は水族館巡り。
10. 西脇拓斗・二十二歳。錦糸町支店融資営業課。細かな財務数値に強い理論派。趣味は将棋。
11. 杉本航・二十一歳。亀戸支店法人営業課。真面目で忍耐強く、訪問件数を地道に積み上げる。趣味はジョギング。
12. 橋爪圭太・二十二歳。蒲田支店法人営業課。町工場との会話を得意とする現場型。趣味は工具集めとDIY。
13. 青木颯介・二十二歳。大森支店融資営業課。慎重で、稟議書の文章を何度も見直す。趣味は読書。
14. 柏原拓真・二十三歳。目黒支店法人営業課。落ち着いた性格で、不動産関連の知識が豊富。趣味は建築巡り。
15. 木村陽斗・二十二歳。世田谷支店個人営業課。話好きで、高齢顧客から親しまれている。趣味は落語鑑賞。
16. 瀬戸康平・二十一歳。三軒茶屋支店営業課。好奇心旺盛で新サービスを試すのが早い。趣味はカフェ巡り。
17. 中沢優真・二十二歳。荻窪支店融資営業課。控えめだが、問題点を的確に指摘する。趣味はクラシック音楽。
18. 福永大樹・二十二歳。吉祥寺支店法人営業課。明るく面倒見がよい。趣味はバスケットボール。
19. 秋山翔・二十一歳。三鷹支店個人営業課。柔らかな接客が持ち味。趣味は写真と公園散策。
20. 栗原和也・二十二歳。立川支店法人営業課。行動が早く、経営者訪問を恐れない。趣味はキャンプ。
21. 長谷川隼人・二十三歳。八王子支店融資営業課。数字に厳しいが、後輩には優しい。趣味は登山。
22. 荒川蒼太・二十二歳。町田支店個人営業課。親しみやすく、住宅ローン相談を得意とする。趣味はサッカー観戦。
23. 戸田浩輝・二十二歳。府中支店法人営業課。地域イベントへ積極的に参加する。趣味は祭り巡り。
24. 黒川修斗・二十一歳。調布支店融資営業課。寡黙で集中力が高い。趣味はプラモデル制作。
25. 川村俊介・二十三歳。本店法人営業第一部。率直で少し口が悪いが、仲間思い。趣味はゴルフ。
26. 桐谷真琴・二十二歳。本店法人営業第二部。負けず嫌いでプレゼン能力が高い。趣味はランニング。
27. 榎本拓海・二十二歳。本店中小企業金融部。町工場支援へ強い関心を持つ熱血型。趣味はラーメン店巡り。
28. 相原昴・二十三歳。本店事業承継支援部。物静かで、複雑な家族関係にも丁寧に向き合う。趣味は囲碁。
29. 松田悠生・二十二歳。本店融資審査第一部。論理的で、曖昧な根拠を嫌う。趣味はパズル。
30. 村瀬颯・二十一歳。本店融資審査第二部。若いが観察力に優れ、数字の変化へ敏感。趣味はボードゲーム。
31. 有馬直哉・二十二歳。本店企業審査部。調査好きで業界分析を得意とする。趣味は経済史の読書。
32. 神崎廉・二十三歳。本店市場営業部。冗談好きで好奇心旺盛。相場への反応が速い。趣味は競馬観戦。
33. 沢田京介・二十二歳。本店外国為替部。語学が得意で冷静。趣味は海外ドラマ鑑賞。
34. 小宮山翔平・二十二歳。本店国際金融部。海外志向が強く、英語と中国語を学んでいる。趣味は外国料理。
35. 河野瑛太・二十一歳。本店営業企画部。新しい企画を考えるのが好きな発想型。趣味は広告収集。
36. 藤本圭吾・二十二歳。本店経営企画部。同期の変化によく気づく分析派。趣味は読書とコーヒー。
37. 江藤亮平・二十三歳。本店財務企画部。几帳面で計算が速い。趣味は腕時計収集。
38. 高山祐樹・二十二歳。本店総務部。世話好きで、同期会の会場探しも率先する。趣味は居酒屋巡り。
39. 宇佐美智也・二十二歳。本店人事部。調整力が高く、八十人分の日程集約も苦にしない。趣味は旅行計画。
40. 岩瀬雄大・二十一歳。本店IT企画部。口数は少ないが機械に強い。趣味は自作パソコン。
女性同期四十人
41. 佐野美咲・二十二歳。城南支店窓口営業課。明るい笑顔と丁寧な説明が持ち味。趣味はパン屋巡り。
42. 三浦結衣・二十二歳。新宿中央支店個人営業課。社交的で、グループチャットを盛り上げる。趣味は旅行と写真。
43. 倉田奈々・二十一歳。池袋支店窓口営業課。慎重で現金確認を徹底する。趣味は編み物。
44. 松本彩花・二十二歳。渋谷支店資産運用課。流行に敏感で説明力が高い。趣味はコスメ収集。
45. 橘美月・二十二歳。品川支店個人営業課。穏やかで、住宅ローン相談を丁寧に聞く。趣味はヨガ。
46. 白川沙耶・二十三歳。東京駅前支店資産運用課。冷静な姉御肌で、同期の相談役。趣味は美術館巡り。
47. 水野春香・二十二歳。上野支店窓口営業課。忍耐強く、外国人顧客への対応も積極的。趣味は語学学習。
48. 藤川七海・二十一歳。浅草支店個人営業課。素直で少し天然だが、接客では愛される。趣味は和菓子巡り。
49. 小林琴音・二十二歳。葛西支店資産運用課。勉強熱心で、資格取得へ積極的。趣味は資格勉強と文房具集め。
50. 永井莉央・二十二歳。錦糸町支店窓口営業課。判断が早く、混雑時にも落ち着いている。趣味はダンス。
51. 平野美羽・二十一歳。亀戸支店個人営業課。人懐っこく、子ども連れの顧客から人気がある。趣味は水族館巡り。
52. 中島真由・二十二歳。蒲田支店資産運用課。堅実で無理な提案を嫌う。趣味は料理。
53. 井川紗季・二十三歳。大森支店個人営業課。責任感が強く、後輩の面倒見もよい。趣味はテニス。
54. 石原菜月・二十二歳。目黒支店窓口営業課。上品で落ち着いた接客が得意。趣味は紅茶と読書。
55. 篠崎梨花・二十一歳。世田谷支店資産運用課。負けず嫌いで、金融知識の吸収が速い。趣味はランニング。
56. 宮本千尋・二十二歳。三軒茶屋支店個人営業課。聞き上手で、相続相談にも関心を持つ。趣味は神社巡り。
57. 長岡麻衣・二十二歳。荻窪支店窓口営業課。几帳面で事務処理が速い。趣味は手帳作り。
58. 相沢玲奈・二十三歳。吉祥寺支店資産運用課。穏やかな現実派で、長期運用を重視する。趣味はクラシック鑑賞。
59. 新井愛美・二十二歳。三鷹支店個人営業課。明るく、地域イベントにも積極的。趣味はバドミントン。
60. 高瀬美緒・二十一歳。立川支店窓口営業課。慎重で、本人確認を決して省略しない。趣味は映画鑑賞。
61. 山岸瑠奈・二十二歳。八王子支店資産運用課。数字に強く、説明資料をきれいにまとめる。趣味は登山。
62. 福島彩乃・二十二歳。町田支店個人営業課。親しみやすく、顧客の名前を覚えるのが早い。趣味はカフェ巡り。
63. 大島結菜・二十三歳。府中支店窓口営業課。落ち着いたまとめ役で、後輩から慕われる。趣味は園芸。
64. 川上若菜・二十二歳。調布支店資産運用課。慎重な分析型で、市場変動にも動じない。趣味はピアノ。
65. 遠山美優・二十一歳。本店個人営業企画部。若者向け金融サービスへ関心が高い。趣味はイラスト制作。
66. 朝比奈莉子・二十二歳。本店リテール推進部。行動力があり、支店との調整を得意とする。趣味は旅行。
67. 西村遥香・二十三歳。本店事業承継支援部。相手の感情を読み取るのが得意。趣味は日本庭園巡り。
68. 藤堂真帆・二十二歳。本店コンプライアンス統括部。生真面目で、同期チャットでも規則違反を見逃さない。趣味は推理小説。
69. 柏木彩音・二十二歳。本店金融犯罪対策部。疑問を放置しない分析型。趣味は脱出ゲーム。
70. 野村陽菜・二十一歳。本店人事部。柔らかな話し方で相談を引き出す。趣味は演劇鑑賞。
71. 杉浦美琴・二十二歳。本店総務部。段取りがよく、備品や会場手配が得意。趣味はお菓子作り。
72. 北原菜々美・二十三歳。本店広報部。文章力が高く、銀行の情報発信を担当する。趣味は写真撮影。
73. 堀田優衣・二十二歳。本店経営企画部。冷静で視野が広く、議論の論点を整理できる。趣味は新聞の読み比べ。
74. 滝沢紗英・二十一歳。本店営業企画部。発想力があり、若手向け企画を積極的に提案する。趣味は雑貨店巡り。
75. 江口美玲・二十二歳。本店外国為替部。慎重で語学力が高い。趣味は海外映画鑑賞。
76. 大塚花音・二十二歳。本店国際金融部。積極的で、将来は海外勤務を希望している。趣味は英会話と旅行。
77. 神谷楓・二十三歳。本店市場事務部。集中力が高く、数字の照合を得意とする。趣味は書道。
78. 森下凛・二十二歳。本店IT企画部。論理的で、専門用語を分かりやすく説明できる。趣味はプログラミング。
79. 桜木結月・二十一歳。本店デジタル企画室。新しい技術が好きで、好奇心旺盛。趣味は動画制作。
80. 吉岡日菜・二十二歳。本店ダイバーシティ推進室。公平さを重視し、誰に対しても率直。趣味は読書会への参加。
◇◇◇
通知の始まりは、佐久間直樹の一言だった。
『久しぶりに同期会やらない?』
『急だな』
『この前、研修所の近くを通って思い出した』
『八十人全員集まれる?』
『さすがに無理だろ』
『でも、一度くらいやりたい』
日程、会場、参加人数。
久しぶりの会話が百件近く続いていた。
その途中。
『そういえば、宮嶋いる?』
「……俺?」
『青嶺中央銀行へ行った宮嶋?』
『転職先、最近知った』
『本店らしいよ』
『宮嶋、見てたら返事しろ』
創は少し迷ってから入力した。
『見てる』
送信した瞬間、通知が一斉に届く。
『生きてた!』
『勝手に殺すな』
『久しぶり』
『本当に青嶺中央銀行なの?』
『うん』
『どこの支店?』
『本店』
『本店!?』
『大手町の?』
『部署は?』
『法人営業第一部』
『お前、法人営業やってるの?』
『城東支店で窓口と融資補助をしてた印象で止まってる』
『今は法人営業』
転職時の創は、退職や入行準備に追われていた。
八十人全員へ転職先を報告する余裕などなかった。
『給料上がった?』
『いきなり聞くな』
『コンプライアンス担当として、その質問は止めます』
『同期チャットにもコンプラが来た』
『仕事です』
藤堂真帆の生真面目な返信に、創は笑った。
研修時代と変わらない空気だった。
『宮嶋も同期会へ来いよ』
『本当に八十人で集まるの?』
『できれば全員』
『日程候補を作ろう』
『人事部の宇佐美、アンケート頼む』
『もう作ってる』
『仕事が早い』
創の指が少し止まる。
東都共栄銀行を嫌いになって辞めたわけではない。
十八歳で初めて社会人となり、銀行員としての基礎を教わった場所。
一緒に研修を受け、失敗し、励まし合った同期たち。
『都合が合えば参加したい』
『よし、宮嶋確保!』
『捕獲みたいに言うな』
『青嶺へ行ってからの話も聞きたい』
『話せる範囲だけな』
『顧客情報と案件情報は禁止』
『分かってる』
『じゃあ青嶺の食堂はうまい?』
『なぜ最初にそこを聞くんだ』
『頭取を見たことある?』
「……」
創の指が完全に止まった。
欧陽璟瑶。
青嶺中央銀行頭取。
そして、明日、地下五階で五日ぶりに会う恋人。
『ある』
『さすが本店』
『どんな人?』
『普通に頭取』
『答えになってない』
『怖い?』
『仕事では厳しいと思う』
『仕事では?』
「……しまった」
創は慌てて補足した。
『仕事上は、という意味』
『何か怪しい』
『怪しくない』
『宮嶋、昔から嘘が下手だったよな』
『嘘はついてない!』
『詳しくは同期会で聞こう』
『頭取の話をする会じゃないだろ!』
『久しぶりに宮嶋をからかえる』
創は困りながらも笑った。
瑞央銀行で出会った新しい仲間。
東都共栄銀行時代の八十人の同期。
銀行を移っても、人とのつながりまで消えるわけではない。
『日程アンケートを送るから、宮嶋も回答して』
『分かった』
『青嶺が忙しいからって逃げるなよ』
『逃げない』
創はスマートフォンを伏せ、窓の外を見た。
東京の光が少しずつ近づいている。
「……同期会か」
参加すれば、自分だけが別の銀行員となっている。
それでも、八十人の同期だった事実は変わらない。
ただし。
欧陽璟瑶が自分の恋人だという事実だけは、絶対に知られてはならない。
「どう考えても、頭取のことを聞かれるよな……」
かなり嫌な予感がする。
それでも、久しぶりに同期たちと会えることは楽しみだった。
宮嶋創、二十一歳。
初めての地方派遣は、無事に終わった。
東京へ戻れば、青嶺中央銀行での法人営業が待っている。
地下五階には、五日間離れていた恋人がいる。
その先には、互いの家族への紹介。
そして、男性四十人、女性四十人、計八十人の元同期との再会。
地方出張の終わりと同時に。
新しい物語が、また一つ始まろうとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、創にとって初めての地域銀行派遣が正式に終了しました。
たった五日間。
しかし、その中で創が学んだことは決して少なくありません。
地域銀行は会社だけではなく、町そのものを見ていること。
数字だけでは分からない事情があること。
一方で、人情だけで融資判断をしてはいけないこと。
確認は重要でも、確認すること自体が目的になってはいけないこと。
そして、青嶺中央銀行と瑞央銀行は上下関係ではなく、それぞれ違う強みを持った仲間だということ。
創は、
「東京では学べなかったことがたくさんあった」
と実感しながら瑞央銀行を後にしました。
小野寺。
白石。
宮坂。
藤堂。
五日間で出会った地域銀行の仲間たちから、
「また来てください」
と送り出された創。
最初は緊張ばかりだった地方派遣も、最後には「また来たい」と思える場所になりました。
そして帰京中には璟瑶との電話。
頭取としてではなく、恋人として、
「おかえり」
「ただいま」
と言葉を交わす二人。
ですが、その約三十分後。
今度は創の“過去”から連絡が届きます。
東都共栄銀行時代の同期八十人。
支店勤務。
本店勤務。
法人営業。
融資審査。
国際金融。
人事。
総務。
コンプライアンス。
それぞれ違う場所で働く同期たちが、久しぶりの同期会を計画し始めました。
しかも、多くの仲間が創の青嶺中央銀行への転職を知ったのは、退職から数か月後。
当然、
「今どこにいる?」
「本当に青嶺本店?」
「頭取見たことある?」
と質問攻めに。
創にとって一番答えづらい最後の質問だけは、今後も最大級の秘密です。
次回は、ようやく東京へ帰還。
そして地下5階。
五日間離れていた創と璟瑶が、久しぶりに二人だけの秘密基地で再会します。




